出版社 : 新潮社
江戸市村座の桟敷席から謎の怪人物が恋着したのは、今を時めく名女形瀬川菊之丞だったー。芝居小屋の地下の闇奥で、永遠に燃える怨讐、狂恋、役者の業等々に身もだえする、平賀源内(戯作者)、市川團十郎(二代目)、深井志道軒(講釈師)、稲生武太夫(物の怪退治で名を馳せる)、江島(大奥御年寄)、生島新五郎(島流しになった役者)などの面々…。虚実皮膜のあわいを壮大に描き切った伝奇時代エンタメの極地!
若だんなが、タイムスリップしたってぇ。おまけに、長崎屋は経営難!?鍵をにぎるのは、西方から舞い込んだ剣呑で寂しい妖?それともー。シリーズ最新作は待望の長篇!!「しゃばけ」シリーズ第二十二弾。
「俺はここにいると言ってるんだ。いないことになんかできねえよ」。恋人の百合子が失踪した。彼女が住むアパートを訪れた私は、“隣人”を名乗る男と遭遇する。そこで語られる、奇妙な話の数々。果たして、男が目撃した秘技“耳もぐり”と、一体(「耳もぐり」)。「壊れかけた人生」を生きてきた女は、10万円の報酬金に目が眩み、とある宗教団体が執りおこなう“髪譲りの儀”にサクラとして参加する。身の毛もよだつ悪夢が待っているとも知らず(「髪禍」)。ほか、小説という名の七の熱塊
「おまえはいったい、おまえの人生をどうしたいんだ」易きに流れて人生に行き詰まり、闇バイトに手を染めた若者。押し入った不動産業者の家で老婆を縛り上げ、まんまと金を奪ったのだがー目が覚めると彼を誘った男は金と共に姿を消していた。しかも覆面は外され、老婆に目撃される。俺だけ損するだろこの展開!不遇な過去を振り切るように、若者は包丁を手に老婆に近づくー表題作の他、訳も分からず妻に去られた夫や、海に消えた父を待つ娘など、様々な「隣の人生」を収める作品集。
保険営業所に勤める藤原は、通勤電車で見かける少女に「元気」をもらっていた。ある日、同じ少女を盗撮していた男との奇妙な交流が始まり…。-「狭間の者たちへ」介護士として過酷な労働をこなす興毅は、老人「89」の発言をきっかけに、戦時下の兵士たちの蛮行をとらえた写真に魅了され、依存していく。戦争と介護の闇が交差する勇猛果敢なデビュー作。-「尾を喰う蛇」忌まわしい世界から目を背けたいのに一文字ごとに飲み込まれる、弩級の小説体験。
夫の言動に耐えられなくなった聡美は、子供を連れ実家のある北鎌倉に逃げ帰る。そこで出会ったのは、縁切りで名高い「東衛寺」の娘で弁護士の松岡紬。勢い込んで紬に離婚相談をした聡美だったが、思いがけないことを言われ…。モラハラ、浮気、熟年離婚、同性カップルの離婚、養育費の不払い。パートナーと離婚したいと思ったらまずは何から?財産分与や親権の争い方は?個性豊かなキャラクターたちが織りなす、リーガル・エンターテインメント!
もうすぐ子供を産めなくなる私は、恋人と深刻な喧嘩をした翌日、かつて暮らした歓楽街へと赴く。その地に近づくにつれ、デリヘル開業を目指す若者たちと過ごした「十一階の部屋」の記憶が、強烈な匂いを伴って私の脳内に蘇るー。セックス・ドラッグ・バイオレンス+フェミニズムを描いた新境地!
ルネサンス期に実在したメディチ家の娘ルクレツィア・ディ・コジモ・デ・メディチ。わずかな記録のみが残る彼女の「生」を、『ハムネット』の著者が力強く羽ばたかせる。イギリス文学史に残る傑作長篇。
くり返し現れる夢の風景を求めて旅立つ少年、奪われた恋人を追って故郷を出奔する男、一度は愛した男に裏切られた女、政争と権謀術数の渦に巻き込まれる人々…不条理な運命に抗う先に、救いはあるのか。
ウソと誤魔化しの連鎖、調停室に響く怒号、やがてこぼれ出る「家庭の秘密」。モラハラ夫、我が子を見捨てる母親、身寄りのない記憶喪失の男…横浜家裁川崎中央支部にやってくる家事事件の当事者たちは、“モンスター”ばかり。だが、かのんはどんな時も解決の道を探ることを諦めない。社会から零れ落ちそうな人たちに寄り添うのが調査官だからー。
インターネットですべてが変わる。だから今のうちに体験しておくべきなんだ。1995年、宇都宮。高校2年の達也は東京に憧れ、広告業の父は自宅の「スタジオ」で取引先のためのアンプ製作に腐心する。父の指示で、黎明期のインターネットにいち早く接続した達也は、ゲイのコミュニティの存在を知り、おずおずと接触を試みるー。バブル崩壊後の20世紀末を疾走する、父と息子の冒険譚!
「おとなになっても苦しいままだったら、どうする?」喘息の一息一息の、生と死のあわいのような苦しさ。その時間をともに生きた幼い姉と弟ー。弟の春彦が若くして死を選んでから十年、姉の環も、父と母も、悔いと悲しみを胸に抱きながら、たがいに語ることなく生きてきた。環の十五年ぶりの喘息発作をきっかけに、喪失を抱えたこの家族のあいだをあたらしい風が流れはじめる…。
嘉永六年(一八五三)元日、異例の暖冬に加賀藩は弱りきっていた。この夏の重要行事である将軍への「氷献上」に不可欠な氷が全く作れないのだ。ひと月後、信州の旅籠の氷室で見つけた氷には、八十名以上もの先約が。事態を打開するため御用飛脚宿「浅田屋」の面々が立ち上がる!氷の確保、献上日の調整、他藩の説得、新しい氷室の普請、運搬中のアクシデントー怒涛の展開があなたを待つノンストップ時代小説!
小4男児が自宅を出たまま姿を消した。時効目前の15年後、子供の骨を持ち運んでいた元ホステスの女が殺人容疑で逮捕される。女は苛烈な取り調べにも、法廷での被告人質問にも沈黙を貫き、判決は無罪。-やがて別の失踪事件との間に奇妙な共通点が浮上する。実在の未解明事件をベースに、あの福田和子にも擬された「沈黙の魔性」の“真実”を描き出す!
高校入学を一週間後に控えたある日、これまでセックスワークで生計を立て、ひとりで僕を育ててきてくれた母が、突然「結婚したい」と言い出した。僕は思わず、中学で「元風俗嬢」と噂されていた先生のもとへ向かうが…。「しがみついたり、手放したりしながら、たくさんの折り合いをつけて生きている」大人たちに贈る、共感必至のR-18小説。
本好きの中年男ヘンクは、離婚して老犬スフルク(ならず者)と暮らすICUのベテラン看護師。ある朝、運河沿いを散歩中、へばってしまった老犬をすばやく介抱してくれた女性がいた。この日は、かわいい姪の17歳の誕生日。元妻の情事の現場に出くわして以来、恋なんていうものとは無縁に生きてきたヘンクだが、けさ出会った同世代の女性にときめいている自分を発見する。戸惑う彼の背中を、姪のローザがどんと押す。離婚、不遇だった兄の死、やり手の弟との不仲、忍び寄る老い…人生の辛苦をさまざまに経験してきた男が、生きるよろこびを取りもどしていくさまをつぶさに描く。2020年、コロナに見舞われたオランダで、多くの人たちを慰め、励ましたベストセラー小説。リブリス文学賞受賞。