出版社 : 新潮社
門外不出の奇書『天鬼年代記』が秘めた山村の闇。奇怪な祭祀・鬼哭念仏に潜む巧緻なトリック。都市に隠された「記号」から浮上する意外な真相ー。単行本未収録作、幻のプロットに基づく書下ろしを含む、六つの事件。氷の美貌と怜悧な頭脳、蓮丈那智が帰ってきた!民俗学ミステリー。
小間物屋を営んでいた両親を永代橋の崩落事故で失ったお瑛。兄と二人、ようやく十六歳の細腕で店を開いたものの、能天気な兄が仕入れてくる困った品々に、てんてこまい。山ほどの数の算盤に、不気味な守り刀、恋歌が書かれた五枚の不思議な絵皿まで…。ふだんは健気で臆病なお瑛も、いざ舟を操れば男顔負けの腕前を発揮する。いわくありげな品々をめぐる謎が、思わぬ人間模様を浮かびあがらせ、いつしか亡き父の秘密まで明らかに。しっかり者の看板娘お瑛と若旦那気質の頼りない兄。凸凹コンビが活躍する下町よろず屋繁盛記。ちょっと切なくて、でも心が晴れやかになる時代小説。
「痛みの山」と呼ばれるアララト山で、ノアの方舟調査隊に降りかかる不可解な連続死ー。宗教学・科学・建築学の叡智を駆使し、壮大なスケールで人類の謎に挑む歴史ミステリ!!完璧なる記憶力と瞬時の計算力を持ち、語学堪能にして端正なマスク。「神は妄想でしかない」と断言し、「人間とは何なのか」をストイックに追究する男が、アララト山頂で到達した人類の真実とはー。
神奈川県警の嘱託・二村永爾は、1本の映画フィルムの行方を追って、香港へ飛んだ。それは、ある殺し屋がモデルとなった、封印された映画だった。幻の黒色影片(暗黒フィルム)を巡り、立て続けに巻き起こる射殺事件。二村の前に現われた気高き女優と、謎の映画プロデューサー、そしてゲルニカ拳銃の銃口。横浜、長春、香港ー複雑な過去と現在が交錯してゆく。
ワープロのディスプレイ上でカギ括弧同士が恋をした。威張り腐った●や■に他の記号たちが反乱を起こす「括弧の恋」。方言学の権威が、50年前自分を酷い目に遭わせた特高の元刑事を訛りから見破って復讐する「五十年ぶり」。ある日突然舌がもつれる青年駅員の悲劇を描く「言語生涯」など言葉の魔術師による奇想天外な七編に加え、抱腹絶倒の四編を新たに収録した著者最後の短編集。
小池文造が両国で目撃された、という。藤原道場で共に汗を流した仲ではあるが、もとより傲岸きわまりない男だった。私闘に敗れ逐電した後、どのように命を繋いできたのだろうか。やがて、定町廻り同心・朽木勘三郎は宿命の対決へ歩みを進めてゆく(表題作)。勘三郎とその配下朽木組の痛快無比な活躍を描く全四篇。「時代小説に野口卓あり」と高らかに告げる、捕物帳の新たなる定番。
離婚して1年、夫と暮らしていたマンションから引っ越した36歳の砂羽。昼は契約社員として働く砂羽は、夜毎、戦争や紛争のドキュメンタリーを見続ける。凄惨な映像の中で、怯え、逃げ惑う人々。何故そこにいるのが、わたしではなくて彼らなのか。サラエヴォで、大阪、広島、東京で、わたしは誰かが生きた場所を生きているーー。生の確かさと不可思議さを描き、世界の希望に到達する傑作。
総兵衛は大目付本庄義親邸で喜多川歌麿なる稀代の浮世絵師と出会い、その絵と人物に不思議な魅力を感じさせられた。一方、私財を投じて掛け替えることとなった橋普請が進む中、強大な野分によって江戸の町は大打撃を受ける。折しも復旧に奔走する総兵衛の元に、歌麿が極秘裏に徳川政権の禁令に触れる絵を描いているという報がもたらされた。総兵衛は手を尽くして歌麿を追うのだが。
長崎屋へ舞い込んだ謎の木札。『お願いです、助けて下さい』と書かれているが、誰が書いたか分からない。以来、若だんなの元には不思議な困りごとが次々と持ち込まれる。船箪笥に翻弄される商人、斬り殺されかけた噺家、売り物を盗まれた古着屋に、惚れ薬を所望する恋わずらいのお侍。さらに江戸一番の美女選びまで!? 一太郎は、みんなを助けることができるのか? シリーズ第11弾。
時は流れて江戸から明治へ。夜の銀座で、とんびを羽織った男が人捜しをしていた。男の名は、仁吉。今は京橋と名乗っている。そして捜しているのは、若だんな!? 手がかりを求めて訪ねた新聞社で鳴り響くピストルの音! 事件に巻き込まれた仁吉の運命はーー表題作「えどさがし」のほか、お馴染みの登場人物が大活躍する全五編。「しゃばけ」シリーズ初の外伝、文庫オリジナルで登場!
養護施設まほろばで育ったイクオとタツヤは、最愛の結子先生が殺されるのを目撃したが、その証言を警察にもみ消されてしまう。真相を握る「金時計の男」を探すためイクオは刑事、タツヤはヤクザとなり密かな協力関係を結んでいた。ある夜イクオが潜入調査中に遭遇した謎の少女。同じ現場で発見された男の刺殺体。彼女の正体は果たして何者なのか?二匹の龍が絡み合う事件、イクオ篇。
刑事イクオが追うある少女が起こした殺人事件でタツヤは犯人にされ、身内に追われる身となる。少年時代を過ごした養護施設まほろばで、最愛の先生を殺され、証言を警察にもみ消された二人は、事件の真相を握る「金時計の男」を探して警察とヤクザの秘密の協力関係を結んでいた。秘密と相棒を守りつつ、事件と少女の闇を暴くことはできるのかー?二匹の龍が絡み合う事件、タツヤ篇。
デラはおんぼろカウチに身を投げて泣いていた。明日はクリスマスというのに手元にはわずか1ドル87セント。これでは愛する夫ジムに何の贈りものもできない。デラは苦肉の策を思いつき実行するが、ジムもまた、妻のために一大決心をしていたー。若い夫婦のすれ違いが招いた奇跡を描く表題作ほか、ユーモラスな「赤い酋長の身代金」「千ドル」など、選り抜きの傑作を集めた新訳版。
まもなくクリスマス。街全体が温かな雰囲気に包まれるなか、寄宿学校の少年たちは、波瀾万丈のクリスマス劇「飛ぶ教室」の稽古に励む。ある日、マルティンに母親から手紙が届く。そこには、マルティンがクリスマスに帰省する旅費を工面できなかったと書かれていた……。たとえ運が悪くても、元気を出せ。打たれ強くあれーー温かなメッセージが込められた、少年たちの成長の物語。
話したかったことと、話せなかったこと。はじめての秘密。ゆれ惑う仄かなエロス。つないだ手の先の安堵と信頼。生と死のあわい。読み進めるにつれ、あざやかに呼び覚まされる記憶。静かに語られる物語に深く心を揺さぶられる、極上の傑作小説集。
アフリカの赤ちゃん工場、新宿のデリヘル、パリの蚤の市、インドの湖畔。地球上の様々な出来事が交錯し、飽くなき欲望の果て不老不死を実現した人類が、考えうるすべての経験をし尽くしたとき、太陽による錬金術が完成した。三島賞選考会を沸かせた新潮新人賞受賞作「太陽」と、対をなす衝撃作「惑星」からなるデビュー小説集!
図書館の地下のその奥深く、羊男と恐怖と美少女のはざまで、ぼくは新月の闇を待っていた。あの名短篇が、ドイツの気鋭画家によるミステリアスなイラストと響きあう。新感覚アートブック第三弾!
成仏などするものか。ああ、口惜しい、恨めしいー。妹のようにかわいがっていた娘の指図で、毒をもられた女の怨み。死してなお、毎夜、愛しい男の元を訪れる女の情念。八つの古典が、鮮やかに息を吹き返す。