出版社 : 新潮社
小さな道場を開く浪人が、ふとしたことで介抱することになった行き倒れの痩せ侍。その侍が申し出た奇妙な頼み事と劇的な顛末を描く「三筋界隈」。果し合いの装束のまま、なぜか独りで腹を切った侍の謎を追う「約定」。他、武家としての生き方に縛られながらも、己れの居場所を掴もうともがき続ける武士の姿を浮き彫りにした本格時代小説。
放火によって奪われたのは、元恋人の妻とまだ1歳の双子の命。確定死刑囚、田中幸乃の人生は、「不運」と「悪意」が支配していた。「暴力」と「裏切り」も加勢する。だから、なのか?ひとりの男だけが、味方であり続ける。なぜ彼は、彼女を最後まで信じようとしたのか?「整形シンデレラ」とよばれた鬼女。彼女が犯した「罪」、その死刑囚が犯した最大の罪とは?衝撃指数極大値。先入観を紛砕する圧倒的長編。
社会の暗部を暴き続ける、カリスマ・ドキュメンタリー作家の「心中事件」。相手は、有名女優の妻ではなく、不倫中の女だった。そして、女だけが生き残る。本当は、誰かに殺されたのではないか?「心中」の一部始終を記録したビデオが存在する。不穏な噂があったが、女は一切の取材に応じなかった。7年が経った。ひとりのルポライターが彼女のインタビューに成功し、記事を書き上げる。月刊誌での掲載予告。タイトルは「カミュの刺客」。しかし、そのルポは封印されたー。いったい、なぜ?伝説のカルト番組「放送禁止」創造者が書いた小説。
俺の指先が、いつ機械仕掛けの人形に魂を吹き込んだのだろう。或いはあの瞬間、生身の女とすり替わったとでも!?ともかくこの色香、ただごとではない!-十三層の大楼閣に君臨するという噂の遊女・伊武。カラクリ千年の秘術を求めて彼女を追う、幕府配下の機巧師・久蔵。遷宮と幕府転覆計画が絡み合う中、魂の歯車たちが狂乱する!異形の本格ミステリー。
78万年ぶりに地磁気が急減衰、地球は強烈な宇宙放射線にさらされ始める。深刻な通信障害が発生、巨大ネズミの目撃が相次ぎ、異様な寒冷化が進行、6月の東京に雪が降る。激しい磁気嵐、太陽フレアの恐怖、街に鳴り響く緊急警報。そして奇妙な噂が囁かれる。都内各所の病院から、妊婦たちが忽然と姿を消しているというのだ…。理系ミステリーの新鋭が放つ前代未聞の巨編。未曾有の大変異と驚愕の犯罪が交錯するミステリー大作!
中卒で家出しその日暮らしをしていた北町貫多は、十九歳にして心機一転を図ろうとした。横浜で新しい仕事を得、片恋する相手も見つけ、人生の軌道修正も図れるかと思いきや、ほどなく激しい失意が訪れる。そのとき彼の心の援軍となったのは、或る私小説家の本だったー。暗い青春の軌道を描く長篇私小説。
完全に奴隷の状態にならなければ見えてこない世界を見たいークラブの女王様とのプレイを重ねるうちに、究極の快楽を求めるようになった証券マンが見たものとは?表題作のほか、アナウンススクールの講師と生徒、奴隷と女王様、ふたつの世界が織りなす奇妙な交錯を描く「トーキョーの調教」を収録。
「予定日まで来たいうのは、お祝い事や」。にぎやかな錦市場のアーケードを、慎二と園子は、お祝いの夕食にと、はもを探して歩いた。五年前には、五ヶ月でお腹の赤ちゃんの心音が聞こえなくなったことがある。今回は、十ヶ月をかけて隆起する火山のようにふくらんでいった園子の腹。慎二と迎えたその瞬間、園子に大波が打ち寄せたー。新たな「いのち」の誕生。その奇蹟を描く物語。織田作之助賞受賞作。
明治半ば、播州(兵庫県南部)小野藩最後の藩主の娘として生まれた一柳満喜子。封建的な家で育った満喜子だが、平民の通う女学校に進んで、アメリカ人教師から英語やキリスト教の精神を教えられ、神戸女学院では音楽を学ぶ。乳兄弟の佑之進との恋は実らず、傷心の彼女はアメリカに留学することに……。運命に翻弄されながらも、自らの人生を切り開いていった女の姿を描く感動の大作。
キリスト教伝道のため来日し、近江兄弟社を設立したW・メレル・ヴォーリーズは、関西学院、軽井沢ユニオン教会などを手掛けた建築家としても知られる。留学から帰国した満喜子は、メレルと出会い、周囲の猛反対を押し切って、結婚する。近江八幡に居を構え、幼児教育に邁進する彼女と日本に帰化した夫の前に、様々な逆境が襲い掛かるーー。二人の愛に満ちた生涯を描く感動の長編。
時代のうねりは、杉浦透と水谷郷臣に関わる女たちをも容赦なく巻き込んでいく。透が人知れず将来を誓ったなほ。親の取り決めで結婚したつじ。昌平黌の学友の妹で、旗本の娘ふく。郷臣が秘かに思いを交わす“黒子の人”。元芸妓のせん…。透や郷臣のみならず、彼女たちにもまた、苛酷な運命が待ち構えていた。杉浦透曰く、「単に生きて食ってゆくというだけでも、どんなにむずかしいか」混乱の時代に、何を為し、いかに生きるべきかを模索しつづける若者たちの姿を描く感動作!
「きみの世界の終わりを、見ててあげる」自殺を決意した戸野宮毬は、飛び降り直前に天使のような青年・人百合と出会う。彼との出会いが彼女の世界を変えていくが、世間では通り魔事件、食品への薬物混入事件、意味不明のフラッシュモブなど不穏な事件が頻発し始める。それは、積み重なった人々の悲しみと怒りが爆発する前兆だったー。切なさと高揚感でページを捲る手が止まらない、青春「暴動」小説。
日本一の騎手の二番手。僕の父さん。負けても笑って、また来週も馬に乗る。大嫌いだった。そんな父さんが、12年前。レース中の落馬で死んだ。でもあれは、本当に事故だったのか?真実を探るために、息子は騎手の道を選ぶ。ある競馬関係者に疑念を抱いたままー。
伝説のかもめが帰ってきた! 幻の最終章、ついに世界公開。全世界で四千万部を売ったベストセラーへ新たに加えられた奇蹟の最終章ーー。「飛ぶ歓び」「生きる歓び」を追い求め、やがて精神世界の重要さに気づいたジョナサンだが、彼が消えた後、弟子のかもめたちはジョナサンの神格化を始める。教えの形骸化、自由の圧殺、やがて……。いま開かれる、自由と意志と救いの扉。五木寛之渾身の〈創訳〉が、あなたを変える。