出版社 : 新潮社
1993年秋、全日本テレビの「薬害エイズ問題」取材班に、恐れを知らぬ戦場ルポで鳴らす男が投入された。強奪、脅迫、色仕掛け…。取材の為なら手段を選ばぬディレクターの西悟は、罪なきエイズ患者の無念を晴らすため、厚生官僚・医学部教授・製薬会社がひた隠す秘密を暴いてゆく。壮絶なバトルの末に、驚愕の真相にたどり着いた西悟を待ち受けていた非情の運命とはー。取材の悪魔が巨悪を撃つ迫真の報道サスペンス。
幼馴染が殺された。伊賀を知らぬ伊賀者だった。大金を手に死んだ友に、何があったのか。探るほどに見えてくる裏の隠密御用、伊賀衆再興の企て、謎の軽業師、匂いたつ女。そしてまた一人、旧友が斬殺された…。夏の風に危険な火縄の臭いが漂うとき、一刀流「浮き木」の極意を身に秘めた老練の武士が、江戸の闇に鯉口を切る!成熟した時代にあってなお、懸命にもがき生きる人々を描く傑作時代小説。
1973年、葉月貴夫は5歳にして性器を切り取られた。しかしなお美しく健やかに成長した貴夫は、周囲の人びとのさまざまな欲望を惹き起こしていくー。彼は、果たして我らの煩悩を救済し給うのか?巨匠筒井康隆が、古今のありとある日本語の贅と、頽廃的なまでの小説的技術の粋を尽して、現代を語り、未来を断固予言する、数奇極まる“聖人伝”。
安重根による伊藤博文暗殺。夏目漱石の「韓満所感」。大逆事件で処刑された幸徳秋水、管野須賀子、そして生きのびた者。二〇世紀初頭、動乱とテロルの世界を、人びとのリアルな姿として語りなおす。一〇〇%の知られざる史実から生みだされた長篇小説。
島から出られないリゾート客。スラム街の少女と修道女。第三次世界大戦に携わる宇宙飛行士。娘たちのテレビ出演を塀の中から見守る囚人。大地震の余震に脅える音楽教師ー。様々な現実を生きるアメリカ人たちの姿が、私たちの生の形をも浮き彫りにする。四人の訳者によるみずみずしく鮮明な9篇。1979年から2011年まで。現代アメリカ文学の巨匠、初の短篇集。
火計は見事成功!天下分け目の決戦は、周瑜の呉軍が勝利を収めた。しかし劉備と孫呉は荊州をめぐる対立関係に。争いは諸葛亮の鮮やかな一計により劉備が先んじる。勢いを恐れた孫権は、妹を劉備に嫁がせ、婚儀にて彼を誅殺しようと画策。そのころ曹操は、赤壁の大敗を払拭すべく西涼に進出。三者の覇権争いが激化する中、蜀で劉備を迎えようという動きが起こるー。逆転と義勇の第七巻。
富士の前に、人間は小さい。ならば小さいなりに立派に生きたい! 吉岡一門との大死闘を切り抜けた武蔵。起死回生の勝利の酔いから醒め、敵将とは言え年若い少年を斬り捨てた記憶に胸を痛める。いっそ修行などやめ、愛する女と暮らせたら……とさえ思う。だが猛る恋心をぶつけたお通には、逃げられてしまう。剣の道と人の道との相剋に身を削る武蔵が、飽くなき自問の果てに捉えた閃きとはーー。願いは交錯し、隘路へ誘う。邂逅と別離めくるめく第五巻。
恋をしたとき、女の準備は千差万別。海の穴に住む女は、男をすりつぶす丈夫な奥歯を磨き、OLの誠子さんは、コロボックルの山口さんを隠すせんべいの空き箱を用意する。おかまの修三ちゃんに叱られ通しのだめなアン子は、不実な男の誘いの電話にうっかり喜ばない強い心を忘れぬように。掌小説集『ざらざら』からさらに。女たちが足をとられた恋の深みの居心地を描く22の情景。
総監へのレクチャー中、部下の拳銃自殺を知った。柴崎令司は三十代ながら警部であり、警視庁総務部で係長を務めつつ、さらなる出世を望んでいた。だが不祥事の責任を負い、綾瀬署に左遷される。捜査経験のない彼の眼前に現れる様々な事件。泥にまみれながらも柴崎は本庁への復帰を虎視眈々と狙っていた。日本推理作家協会賞受賞作「随監」収録、あなたの胸を揺さぶる警察小説集。
魚彦。僕の変な名前は、お母さんの初恋にちなんでつけられた。写生大会で行った臨死の森で、転校生・海子の秘密を見てしまう。二人だけの秘密。夏の海の水の音。色ガラスの破片。車椅子の今田は魔法使いに会ったという。そんなの嘘だ、嘘であって欲しいと思う。出処の知れない怒り、苛立ち、素晴らしい遊び、僕はこの楽園を飛び出したいのかもわからない。あの神話のような時代を。
貧乏侍が用人兼留守居役補佐に大抜擢されてはや半年。諫早藩士・沢村涼之進は、藩主・政直の密命を受け、京に旅立った。政直の結婚相手・房江の実家である八坂中納言家には、幕府を揺るがす、大きな秘密があるらしい。到着早々、黒覆面の侍たちに襲われた涼之進。彼を救ったのは、諫早藩改易を狙う老中の懐刀・仙石誠之助だった…。風雲急を告げる、シリーズ第三弾。
保育園は予測不能のことばかり。保育士になって五年の小川美南と定時退社しやすい部署に異動し、子育てに奮闘する志賀隆平。園内の事件や行事を通して美南と隆平は気づき、育んでゆく、本当に大切にしたいものを。家族と恋の物語。
生家だった洋館を買い戻したいー初クライアントの依頼物件は、あろうことか白骨死体を呑んで、持ち主不明のまま佇んでいた。還暦を機に始めた探偵稼業は初日から暴風雨、気づけば尾行までつく波乱の門出。所有者の転々とする屋敷から亡霊をつつき出し、筋者との修羅場も乗切った二人だったが…。クライマックス三度、三重底の探偵小説。
矢島家はおめでたつづきだった。お鳥見役の務めで遠国の密偵に出た嫡男は命からがら戻り、嫁は懐妊、長女も初子に恵まれた。が、来る者は拒まずで誰でも受け容れる珠世のもとには、難題が持ち込まれる…。めぐりあえた喜び、好評シリーズ第七弾。
孫権のもとで発展を遂げた呉に目をつけた曹操。しかし呉の周瑜は曹操の求めに従わず、天下三分の計を持論とする孔明に煽られ、開戦へと突き進む。互いに策謀を巡らせながら、赤壁において両軍はついに激突。そして孔明の能力が次の脅威となるを恐れた周瑜は、彼の命を狙うーー。物語最大の山場を迎える、野望と決戦の第六巻。
蓮華王院三十三間堂。兄の仇と一門の汚名返上に奮い立つ伝七郎に対峙した武蔵は、一太刀であたりの雪を赤く染め上げた。これにより吉岡方の恨みは頂点に! 次なる舞台は、総勢七十余名の待ち受ける一乗寺下り松。圧倒的不利の状況で次々と挑みくる敵を無心に斬り続け、武蔵の肉体が限界を迎えたその時、遂に二刀流が生まれたーー。
両親を亡くし、筑前黒田藩で権勢を振るう立花重根に引き取られた卯乃は、父の自害に重根が関与したと聞かされ、懊悩のあまり失明してしまう。前藩主が没し、粛清が始まった。減封、閉門、配流。立花一族は従容と苦境を受け入れるが、追及は苛烈を極め、重根と弟・峯均の身に隻腕の剣士・津田天馬の凶刃が迫る。己の信ずる道を貫く男、そして一途に生きる女。清新清冽な本格時代小説。