出版社 : 新潮社
若き日のヘミングウェイと、彼を物心両面で支えながら共にパリに渡った最初の妻ハドリー。1920年代のパリ、ふたりは貧しくとも愛に溢れた日々を送っていた。だがフィッツジェラルド夫妻らをはじめ、裕福で奔放な友人との交遊の中で、ふたりの絆はやがて葛藤と裏切りに塗れてゆく…。運命の出会い、出産、そして背信…。史実と大胆な想像力をもって描かれたスリリングな恋愛長編。
貴子(きこ)と永遠子(とわこ)。葉山の別荘で、同じ時間を過ごしたふたりの少女。最後に会ったのは、夏だった……。25年後、別荘の解体をきっかけに、ふたりは再会する。ときにかみ合い、ときに食い違う、思い出。境がゆらぐ現在、過去、夢。記憶は縺れ、時間は混ざり、言葉は解けていくーー。やわらかな文章で紡がれる、曖昧で、しかし強かな世界のかたち。小説の愉悦に満ちた、芥川賞受賞作。
見知らぬ赤ん坊を連れてきた父親が、まさかの突然死。母亡き後ひきこもり歴4年の雅祥が、いきなり育児を任されることに。この時から地獄の二人暮らしが始まった。ミルクを飲ませても、おむつを替えてもタカヤは泣き止まない。母親はいったい誰…迎えが来る日まで、あと1日。だが、まあくんとタカヤと母親の人生は驚愕の真実へと急転直下する!胸に染みる、痛快青春ミステリー。
“雑司ヶ谷の妖怪”こと、泰幸会教祖・大河内泰が死んだ。享年102。葬儀に参列するため中国から帰国した俺を待っていたのは、ババアが書き残した謎の遺書。教祖のイスと莫大な財産は俺の父親に譲るというが、親父ならとっくに死んでいる。ババアの魂胆は何か?初代教祖の戦前戦後の過去と、二代目就任をめぐる抗争劇の現代が交錯する、衝撃の問題作「雑司ヶ谷」シリーズ第二弾。
江戸下町の若い表具職人、栄二は、器用で俊敏、将来を嘱望されていた。だが、ある日突然、無実の罪を着せられ、人足寄場へ送られる。陥れた者たちを呪い、自暴自棄になる栄二だったが、同じ職人仲間で何をやっても愚鈍なさぶの、ひたすらな友情に励まされ、少しずつ生きる勇気を取り戻していく。しかしそこにも、たちの悪い男が現れて…。厳しい試練に、必死で立ち向う若い男女の友情と愛を、切々と描いた逸品。
止まらない鮮血、鳴り響くアラーム、飛び交う怒号。手術室は悪夢の戦場と化した!簡単な腹腔鏡手術を受けていた准教授が、ありえない死を遂げた。医学部教授選をめぐる疑惑、連続するドクターの怪死、異様な血液の闇。「missキシ」「1/2ダンス」の言葉は何を暗示するのか。若き外科医がたどり着いた慟哭の「完全犯罪」とは。現役医師によるミステリー。
この俺が、江戸という神輿を担ぐ男になる。そう思っていた。昨日まではー憧れの町で、闇にはじき出された若者が一人。僅かな手がかりを追い、悪の道から救えるか、慶次郎。惜しくも急逝した著者が遺した最高傑作シリーズ最新作。
秘伝の継承を目前にして親方に死なれ、弟弟子には先を越され、鬱屈した日々を過ごす看板職人・武市のもとへ大店から依頼が舞い込んだ。「目新しい趣向を」との注文に途方に暮れる武市。が、不意に閃いた前代未聞の看板思案に、職人の血が沸き返る。依頼主は猛反対、協力を仰いだ棟梁には激怒され、それでもー江戸っ子の度肝を抜く仕事、やるのは俺だ!痛快無比の時代長編。
きっと、また会える。あの頃、団地は、未来と過去を繋ぐ道だったから。三億円事件の時効が迫り、「8時だョ!全員集合」に笑い転げていたあの頃。ひとつの町のような巨大な団地は、未来への希望と帰らない過去の繋ぎ目だった。失われた誰かを強く思う時、そこでは見えないものがよみがえる。ノスタルジックで少し怖い、悲しくて不思議な七つの物語。ベストセラー『かたみ歌』に続く感涙ホラー。
アフリカ南部の国、ジンバブエ(旧ローデシア)。1980年、悲願の独立を果たしたものの、大統領はその後30年も居座りつづけ、解放の夢は天文学的ハイパーインフレ(1000億ドル札=5米ドル)と物不足、エイズの蔓延という悪夢に変わった。-女ったらしの夫を国葬で送るはめになった英国人妻の諦観と覚悟。ブランチ、ランチ、お茶にディナー、リッチな銀行家の妻の淡く深い寂寥。赤ん坊を熱望する女と困惑する夫、人知れず身ごもった流れ者の女。三人の人生が劇的に交錯するある一夜。ゲリラの村からやってきた明るく溌刺としたメイドの思い出、その苦い幕切れ…。はるかな国の、さまざまな階層の人びとの日々の暮らしを、恬淡としたユーモアと繊細な情感をまじえて描きだす、類いまれなデビュー短篇集。フランク・オコナー国際短篇賞最終候補作。ガーディアンファーストブック賞受賞。
「絶望」から「希望」を信じた男がいた。慶国に新王が登極した。即位の礼で行われる「たいしや大射」とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。陶工である丕緒(ひしょ)は、国の理想を表す任の重さに苦慮する。希望を託した「鳥」は、果たして大空に羽ばたくのだろうか──表題作「丕緒の鳥」ほか、己の役割を全うすべく、走り煩悶する、名も無き男たちの清廉なる生き様を描く短編4編を収録。
一人息子に四人の父親!? 由紀夫を守る四銃士は、ギャンブル好きに女好き、博学卓識、スポーツ万能。個性溢れる父×4に囲まれて、高校生が遭遇するは、事件、事件、事件ーー。知事選挙、不登校の野球部員、盗まれた鞄と心中の遺体。多声的な会話、思想、行動が一つの像を結ぶとき、思いもよらぬ物語が、あなたの眼前に姿を現す。伊坂ワールド第一期を締め括る、面白さ400%の長篇小説。
ごく一般的な工科大学である成南電気工科大学のサークル「機械制御研究部」、略称「キケン」。部長・上野、副部長・大神の二人に率いられたこの集団は、日々繰り広げられる、人間の所行とは思えない事件、犯罪スレスレの実験や破壊的行為から、キケン=危険として周囲から忌み畏れられていた。これは、理系男子たちの爆発的熱量と共に駆け抜けた、その黄金時代を描く青春物語である。
オーシティ。かつて「大阪」と呼ばれたこの場所は、今や世界一のギャンブルシティに変貌し、欲望に覆われた街と化していた。絵本探偵・羽田誠は、優しい目の極悪刑事・愛染から謎のターゲット“耳”を追うよう強要される。リミット3日、人質は…キン●マ!?しゃべくり続ける殺し屋夫婦、超人的な聴覚を持つ盲目の娘ー最後に笑うのは誰なのか?超高速クライムサスペンス!
「ついに証明した! 俺にはやはり恋人がいた!」。二年間の悪戦苦闘の末、数学氏はそう叫んだ。果たして運命の女性の実在を数式で導き出せるのか(「大日本凡人會」)。水玉ブリーフ、モザイク先輩、マンドリン辻説法、見渡すかぎり阿呆ばっかり。そして、クリスマスイブ、鴨川で奇跡が起きるーー。森見登美彦の真骨頂、京都を舞台に描く、笑いと妄想の連作短編集。
予知夢を見る美少女・志乃が感知した人の死。未来を変えるため真田は奔走するが、運命の改変が悲劇を招くー。何のための正義か。運命に抗う意味はあるのか。響き渡る真田の慟哭。だが、探偵チームを嘲笑うかのように、首都東京を標的にしたテロが実行に移される…。シリーズ最大のスケールで贈るノンストップ・クライム・ミステリー。「天命探偵」シーズン1、クライマックス!