出版社 : 早川書房
病院の駐車場で倒れているところを発見された若い女は、記憶をすっかり失っていた。身元もわからぬまま、とりあえず無料宿泊所へ収容された彼女は、そこで大女のホームレスと知り合い、彼女の励ましと協力を得て、自らの失われた過去を捜しはじめる。わずかな手がかりを追い、自分が記憶を失った経緯を辿るうち、二人の身辺に怪しげな人物がうろつきはじめた…。「花の街」バースは平和だった。殺人捜査班を率いるダイヤモンド警視も、あまりの退屈さに体調を崩す始末。見かねた上司は、本来は管轄外の自殺事件の調査をダイヤモンドに割り振った。自分の農場で、ショットガンで頭を吹き飛ばした老農夫の事件。市内の由緒あるアパートから身を投げた、身元不明の女の事件。どちらも平凡な仕事に見えたが、百戦錬磨のダイヤモンドの目は、ある事実に引きつけられた。これは、ひょっとすると…。ダイヤモンド警視の刑事魂をくすぐる怪事件続々発生!快刀乱麻の名推理が解き明かす、驚天動地の真相とは。
バーニイが経営する「バーネガット書店」でのある日。カウンターのバーニイが目をあげるとハンフリー・ボガートに関する本を差しだしている絶世の美女が立っていた。一目惚れしたバーニイとその美女イローナは、ボガートの話題で意気投合し、その夜から十五夜連続でボガート主演映画を上映する映画館に通うことになった。ポップコーンを分かちあいスクリーンに魅せられるふたり-でも、もちろんバーニイは泥棒稼業を忘れてやいません。キャンドルマスという変な名前の男に依頼されある高級アパートメントに書類鞄を盗みに忍びこみますが…。
第二次大戦中、毛沢東とチャーチルの間で、香港租借期限の百年延長を記した密約書が調印されようとしていた。がだ書類をのせた飛行機が墜落、密約書は行方不明に。時は流れ1993年、密約書の存在を知ったマフィアは、利益を守るために香港返還を阻止せんと書類を探し始める。その企てを阻むため英情報機関の長ファーガスンは元テロリストのショーン・ディロンとともに、密約書が眠るというスコットランドの城にのりこんだ。
赤道直下の島の入江には黒々とした不思議な生物が棲んでいた。現地では山椒魚に似た姿から、魔物と怖れられていたかれらだったが、じつは高い知能をそなえていたのだ。自然の中で生きる無垢な山椒魚が現代文明と出会ったとき、その内面に生じた重大な変化とは?チェコが生んだ偉大な文学者カレル・チャペックが、人間社会と山椒魚の出会いを通じて人類の本質的な愚かさを鋭く描き、現代SFの礎となった名作。改訳決定版。
授業料免除を掲げ、優秀な学生を集める全寮制の人気医科大学イングラム。新入生のクイン・クリアリーは、ある日妙なことに気づく。医療は受ける人の社会的価値で差をつけるべきだ、とクラスメイトがみな同じ考えをもち始めたのだ。そして、彼女と同じように疑問を抱いたボーイフレンドが、突然姿を消してしまう。いったい何がこの大学に起きているのか?理想的なキャンパスに隠された、恐怖の真実。戦慄の医学サスペンス。
アメリカ最大の陸軍基地フォート・ベニング。法務課のカーラ・ギドリー少佐とその恋人ヌカネン軍曹は、ある嵐の夜、基地内で女性の少尉の死体を発見した。その女性は当初、溺死と思われたが、首にナイフで刺された小さな痕があったことから、憲兵隊が殺人事件として捜査を開始する。そんな折り、カーラは捜査の協力を命じられ、彼女は基地の暗部に踏み込んでいく…。ひねりの効いたプロットで描き出す力作サスペンス。
憲兵隊の捜査の結果、ヌカネン軍曹の上官と、軍司令官の副官という二人の容疑者が浮かんできた。だが、カーラは独自の捜査でもう一人の有力な容疑者を探り出していた。その人物は彼女と浅からぬ因縁のある男で、彼は軍規違反にあたるカーラとメースの関係を知り、圧力をかけてきた。やがてカーラの友人の女性将校が殺される事件が発生、果敢に真相の究明を続けるカーラは驚くべき事実を暴き出す。映画化が決定した話題作。
ある事件が、酒に溺れたニューヨーク市警の刑事ホッカデイの目を覚ました。広告代理店に勤める妻の上司が惨殺死体で発見されたのだ。現場の状況から彼の密かな趣味が判明し、ホッカデイは街で続発している殺人事件との関係を探りだす。が、手掛かりがつかめぬうちにさらなる殺人が!不屈の刑事魂で醜悪な事件に挑む男の姿を情感豊かに描くシリーズ第四弾。
ニューヨーク州の片隅の小さな町、オーリリアスは、奇怪な事件の連続に悩まされていた。娼婦のように町中の男と付き合っていた女性が殺され、その左手が切り取られていた。町の大学に過激な社会主義者が赴任、数人の学生がシンパとなり、内紛や外部とのいざこざを繰り返す。町の学校に、連続して爆弾が仕掛けられ、警官隊が出動する。そして…一人の少女が行方不明になるという事件が勃発した。行方不明の少女の服と、卑猥な言葉を書きつらねたメモ、そしてマネキン人形の左手が警察へ送りつけられ、住人たちの不安は、頂点に達したかに見えた。だが、二人目の少女が消えた。事件は、まだ始まったばかりだったのだ!ミステリ作家としてばかりでなく、詩人としても知られる著者が、満を持して放った自信作。英国推理作家協会賞、ブラム・ストーカー賞にノミネートされた、異色サスペンス。
1985年、熾烈を極める北アイルランド紛争のさなか、王党派の闘士マイケル・ライアンは、軍資金獲得のため、大胆不敵な計画を立案した。アイルランド海をはさんで対岸のイングランド湖水地方で、五千万ポンドの金塊を運ぶ輸送車を襲撃し、海峡を越えて北アイルランドへ持ち帰ろうというのだ。マイケルは、姪のキャサリンとともに、腕の立つ船員キーオーを仲間に引き入れ、着々と計画を進める。だが、キーオーは、じつは対立するIRAのスパイだったのだ。さらに、海峡を越えるために雇った船員たちも金塊の横取りを狙い、味方のはずの王党派も横槍を入れようとする。四面楚歌の状況で、しかしマイケルの作戦は、見事成功したかに見えた…。そして10年後、行方不明になっていた金塊が、ふとしたきっかけで表舞台に再浮上した。現在では一億ポンドの価値を持つ金塊をめぐって、10年ぶりに帰国したマイケル、王党派、IRA、さらにはアメリカのマフィアまでが争奪戦に乗り出してくる。事態を憂慮した英国は、グループ・フォアのファーガスン准将に、金塊回収を命じた。だが、指令を受けたトラブル解決要員ショーン・ディロンには、誰も予想もしていなかった秘密があったのだ!冒険小説の王者ヒギンズが描く、裏切りと謀略の応酬。息つく間もない騙し合いのすえ、最後に笑うのは誰か。
「大戦」後、過去の歴史がほとんど失われてしまった遙かな未来、人々は「シリンダー」と呼ばれる巨大なビルディングの内側の水平な床や外側の壁で暮らしていた。上下にどこまでも続く外側の垂直世界では、いくつかの軍事部族が活動している。部族同士で略奪や戦争をして金儲けをするのだ。そうした軍事部族に戦士の飾りや軍用アイコンを提供する意匠師アクセクターの波瀾に満ちた冒険をいきいきと描きだす活題の長篇SF。
ベルファストの郊外で、自動車に轢かれた男の死体が発見された。その死体の両手首には奇妙な穴があけられ、コートのポケットには不可解な言葉が記された新聞広告の切れ端が入っていた。北アイルランド警察のクロス警部と女性刑事ウェスタビーが捜査を開始するが、その死体が冷凍されて路上に置かれていたことが判明、やがて特別保安部も介入してきた。そしてついに第二、第三の殺人が…大型新人が放つ壮絶なサスペンス。
懸命の捜査でクロスとウェスタビーは、被害者に一つの法則が当てはまることを発見した。さらに殺人の前に、新聞広告に旧約聖書の詩篇の一節が載せられていたことも突き止めた。そして、一連の事件が北アイルランド紛争と密接に関わっていることも探り出し、二人は犯人を追いつめていくが…思いもよらぬ展開と、やがて訪れる懸愕のクライマックス。エスピオナージュとサイコ・サスペンスを見事に融合させた空前の大作。
猛スピードでの真夜中のドライヴ中、少年を轢き殺してしまった弁護士のわたし。しかし逮捕されたのはまったく別の男だった!生活を守るためとはいえ、自首に踏みきれないわたしは苦悩する。やがて良心の呵責に耐えきれなくなったとき、わたしがとった行動とは?崩壊していく倫理と、罪をおかした男の苦渋にみちた贖罪の日々を描く、現代人必読の問題作。
惑星エリスガンの軍事司令官テトマン・タリノを味方に引き入れ、ペルダシスト=ファルログ=テラナー連合はペドパイロットの野望を頓挫させた。しかしオヴァロンが真のガンヨの座につくには“原母”に帰還を認証されることが不可欠。かくして、オヴァロンは原母の司令ステーションを擁する惑星アリバヌムへ急行する。一方、混乱のなかで本来の人格をとりもどしたにせガンヨは、ペドパイロットへの復讐を決意していた…。
コンピュータとロボット群が相互接続した巨大ネットワーク『フィズウィズ』が世界を支配している未来。みんなは仕事をコンピュータとロボットまかせにして、あらゆる人生を3Dフルカラーの映像ホローで体験するだけ。でも、直接フィズウィズと脳を接続するエンジェルのヴァーナーは、そんな退屈な世界では我慢できない。クルトフスキ教授の発明した仮想場発生機を使って、ミクロとマクロの宇宙をめぐる冒険に出発した。
巨大都市の片隅にひっそりとたたずむ街ーデッドタウン。昼は浮浪者や麻薬常習者がたむろする汚れた街にすぎないが、その名前の本当の由来は別にあった。夜になるとそこは、怖るべき吸血鬼の支配する文字どおり「死の街」と化すのだ。だがこの街に一人のよそ者がやってきたとき、すべてが変わった…吸血鬼にとっては最悪のものに。美貌の吸血鬼ハンターが、強大な闇の勢力に対し敢然と闘いを挑む傑作痛快冒険ホラー。