出版社 : 早川書房
世界有数の暗殺者パヴァンの今回の標的ーそれはスペイン沖メノルカ島に暮らす平凡な実業家のチャリスだった。旅行客を装って島に潜入したパヴァンは、偶然チャリス一家と近づきになる。天涯孤独のパヴァンは、そこで生まれてはじめて家族の情愛に触れ、暗殺に疑問を抱きはじめた。だが、彼の逡巡を知った暗殺組織は、新たな暗殺者を送り込み、平和な島は殺戮の場に!暗殺者の孤独な生きざまを鮮烈に描いたサスペンス。
父親の経営する精神病院で働くビリーは、地元の有力者の娘との婚約も決まり、将来に何の不安もないはずだった。ある夏の昼下がり、病院の患者で、17歳の少女ヴァージニアと出会うまでは-。あまりに無防備な彼女のふるまいに翻弄されながらも、しだいに恋に落ちていくビリー。だが、彼女といっしょになる方法はただひとつ、彼女を病院から連れ去り、この町を永遠に出ていくことだった…。
内戦下のエルサルバドルでアメリカの秘密工作を遂行中、エド・パーテインは上官の罠にはめられて、陸軍少佐の地位を失った。そして今、ワイオミング州の銃砲店に勤める彼のもとにその上官の一人が現われ、秘密を洩らすなと忠告して、裏から手をまわして彼の職を奪ってしまった。失職したパーテインは、VOMIT(軍情報部の裏切りによる犠牲者たち)という組織の友人から、新たな雇い主を紹介され、ロサンジェルスへ飛ぶ。雇い主はミリセント・アルトフォードという婦人で、彼女は政治資金調達のエキスパートだった。最近、自宅に保管してあった政治資金百二十万ドルが何者かに盗まれ、犯人を突き止めたいのだが、ボディガードになってほしいという。パーテインは仕事を引き受けた。だが、かつての上官たちが、彼の口を封じるべく、今度は暗殺者を差し向けてきた!クールなタッチで描き出す、欺瞞と殺人の渦巻く危険な世界。絶大な人気を誇りながら、惜しくもこの世を去った巨匠のサスペンス溢れる最後の長篇。
もういちど宇宙を地球人の手に!-地球からの移民の子孫であるオーロラほか50の宇宙国家により宇宙への移民の道を絶たれた地球では、60億の人々が行き場を失い絶望の縁に追いつめられていた。陽電子ロボットも軍事力も持たぬ地球が、その覇権を宇宙国家から奪取すべく企てた秘策ーパシフィック計画とは…『鋼鉄都市』の原型となった表題作「母なる地球」など、SF黄金時代を創りあげた名品7篇を収録。
ワシントン大学で高温超伝導の研究に取り組むデイヴィッドは、実験中に不思議な現象を目撃した。回転場の内側に置かれた実験装置一式が、奇妙な音とともに、忽然と消え失せてしまったのだ!あとには、ガラスのようになめらかな木製の球が残されていたが、それは地球の植物ではなかった…現役の物理学者が、素粒子理論の最先端のひとつ“超ひも理論”と手に汗握るサスペンスを巧みに結合させた、興奮の本格ハードSF。
「狼」と呼ばれるダイヤモンドを手にした瞬間、美貌の青年ダニエルの運命は変わった。満月が昇るたびに狼に変身し、殺戮を繰り返すようになったのだ。人間たちを血祭にあげながら、ダニエルはダイヤに導かれるように故郷の村へと舞い戻る。懐かしい地で出会ったのは焔のごとく赤い髪の美しい女。ダニエルと女はダイヤの魔力の命ずるままに激しい恋に落ちた…ファンタジイ界の女王が贈る華麗なるロマンティック・ホラー。
快楽のために殺し、被害者の臓器を提供する謎の男、コレクター。完全犯罪に喜びを見出す彼にとって、巨額の報酬は二義的なものに過ぎなかった。シカゴ市警の精鋭捜査班を率いるトゥリオ刑事も、殺人者の鉄壁の仮面を剥ぐことができない。しかもコレクターは情報収集のため、トゥリオの恋人である弁護士メリアンの身辺に迫っていた。やがて彼女が知ったコレクターの意外な正体とは?謎の殺人者との対決を描くサスペンス。
何者かの罠に落ち、無実の罪で服役していた元最高裁判事のアデアは、釈放の日に獄中で命を狙われた。自分の首に二万ドルの賞金が懸かっていることを知った彼は、隠れ家を提供するビジネスを行なっているカリフォルニアの小さな町に元弁護士の男と共に逃れる。そして、姿なき敵に復讐する策を練り始めるが、彼の周囲で次々と殺人が…急逝した巨匠の代表作。
アイルランド系アメリカ人のヨット・ブローカー、ポール・シャナハンのもとに、四年もの間待ち続けた依頼が舞いこんだ。IRAのために、地中海からアメリカまで船を運ぶ仕事-彼はかつて、IRA暫定派とパレスティナ・ゲリラとの連絡役だった。ところが、四年前に彼がCIAの回し者だという噂が立ち、そのために組織から遠ざけられていたのだ。久しぶりの依頼は、IRAが53基のスティンガー・ミサイルを買うための500万ドルの金貨を、ヨットでアメリカまで運ぶというものだった。500万ドルの資金の出所には、イラクのサダム・フセインの影が見え隠れしていた。折りしも湾岸戦争が勃発しようとしており、フセインは西欧各地でテロを煽動しているらしい。IRAからの見張り役二人とともに金貨を積んだヨットで出港したシャナハンは、しかし意外な行動に出る…。
ナイフ会社のしがない営業マン、ギル・レナードは狂喜した。メジャーリーグのスーパースター、ボビー・レイバーンが彼の応援する地元チームに移籍してきたのだ。やがて、ボビーが泥沼のスランプに陥ったとき、ギルは悟った。すべてを犠牲にしても、彼をスランプから救いだすことは自分の使命なのだ。そのためには殺人を犯すことも辞さない、と…。超満員のファンに埋めつくされたスタジアムで、いま、運命のゲームが幕を開けようとしていた!ロバート・デ・ニーロ主演、トニー・スコット監督で映画化のサスペンス話題作。
数年前、偏執的な男チャールズから一方的に思いを寄せられ、命までも狙われた弁護士のサラ・フォーチュン。身も心もぼろぼろに傷ついた彼女を救ったのは、献身的な恋人マルコムだった。しかし、時が経つにつれてサラには、彼の愛がかえって重荷に感じられるようになっていた。そんな時、彼女はノーフォークの海辺の村で遺産問題を処理するように依頼される。地元の有力者パードウ氏が遺した巨額の遺産と奇妙な遺言をめぐって、未亡人と三人の子供が骨肉の争いを繰り広げているという。だが、その村はまた、かつて彼女をつけ狙ったチャールズが妻の後を追って入水自殺を遂げた因縁の土地でもあった。自らの過去を清算すべく、サラは進んで仕事を引き受けるが、そこには忌まわしい記憶をふたたび呼び覚ます、恐るべき事件が待ち受けていた。
ついにローダン一行は建造中の死の衛星に潜入し、六次元爆弾をしかけることに成功した!つぎの目標は宇宙港エクシロット。そこで脱出用の宇宙船をカピンから奪取しようというのだ。おりから宇宙港のあるコプタイト大陸でも、クロキソールをはじめとするツォイトの原住生物が冬眠から目覚めるや、エクシロットへの進撃を開始していた。かくてローダン一行と、ツォイトの野獣たちとの奇妙な共同作戦がはじまったが…。
若い女性は誰だって白馬の王子さまを夢に見るもの。でもわたし、アンネッタは結婚しているから、もうそんな夢は見ない。結婚した相手の男はニコラ。ホテルの雑用係だけど、家に帰れば暴君と化し、夫婦の営みはまるで暴力沙汰。“愛”なんて少しも感じられなくて、あるのは、ただ動物的な肉体関係のみ。それでも、結婚したというそれだけのことで、いつのまにやら奥様にまつりあげられてしまったわたし。いったい、“結婚”ってなに?“奥様”ってなんなの?わたしだって、おもてで働きたいのに!いまだに古い因習が生活を支配するシチリア島の港町で、真の自由を求めてはばたこうとする少女、アンネッタの心情をみずみずしく描き、ヨーロッパ各地で記録的ベストセラーとなった『ズボンがはきたかったのに』の続篇。
21世紀、偶発核戦争の勃発により人類文明は崩壊した。残されたのは地球上空を巡る三つのスペース・コロニーと月基地のみ。だがそのおのおのは補給を絶たれ、孤立無援の状況に陥っていた。ロシア人研究コロニーは他国との協力をこばみ、交信を絶った。アメリカの工業コロニーでは生存のため、合理性の権化のような指導者によって常軌を逸した非常手段が取られようとしていた。孤絶した各コロニーに生き残る途はあるのか。
唯一食糧を自給できるフィリピンのコロニーから使者として送りだされたラミス少年は、真空中を帆走する生物を操ってアメリカの工業コロニーに辿りついた。あとはロシア人のもとへ赴くだけだ。アメリカ人により開発された超強靱なハイテクワイアーの存在を知った彼は、大胆きわまりない策を実行に移すー軌道上のコロニーをひとつに結びつけるために。気鋭の科学者作家コンビがサスペンスフルに描く、傑作宇宙冒険SF。
本書は、70年代のもっともすばらしい私立探偵小説といわれる『さらば甘き口づけ』の続篇にあたり、国際推理作家協会が主催するハメット賞を受賞するなど高い評価を得た作品である。魅力的な登場人物たち、想像力豊かで奔放なプロット、詩情豊かな語り口など、クラムリー節は相変わらず健在だ。ハードボイルドの最高峰クラムリーの入魂の最新作。
「あのとき宇宙から地球へ逃亡してきたレプリカントは、六人いたのよ」サラ・タイレルの言葉に、デッカードは愕然とした。「タイレル社に侵入しようとしてまず一人が死んだ。そして、あなたが四人殺した。これで五人、でも、もう一人、六番めのレプリカントがいた。あなたにそいつを捜しだして欲しいの…」あのめくるめく事件から9カ月、オレゴン山中の山小屋でのささやかな安息の日日も、レイチェルそっくりの女性、いまやタイレル社の総帥となったサラ・タイレルのこの言葉によって終わりをとげた。拒絶すれば、死-レイチェルの死だ!かくして、2020年8月、荒廃したロサンジェルスを舞台に、デッカードの新たなる探索が開始された。なんとしても謎のレプリカント-六番目のネクサス6型レプリカントを捜しだすのだ、愛するレイチェルを、そして自分自身を救うために…。
“悪魔の子”ルークー自分の弟や里親の子どもを惨殺した九歳の少年は、自分が殺人を犯したことをまったく覚えていなかった。両親から受けた凄惨な性的虐待が原因で、多重人格者となっていたのだ。同じく虐待された経験をもつバークは、少年を救済し自らの過去に決着をつけるために、ルークを虐待した真の“悪魔”に罪を償わせるべく敢然と立ち上がった。自己の再生をかけたバークの熱き闘いを描くシリーズ第一期最終章。
呼び出しは深夜にきた。二人の刑事が、失業中の元警視ピーター・ダイヤモンドを、ロンドンのフラットのベッドから引っ張り出したのだ。連れて行かれた先は、ダイヤモンドのかつての職場、バースのエイヴォン・アンド・サマセット署だった。かつて彼を辞職に追い込んだ上司たちが、深刻な顔で迎えた。殺人犯マウントジョイが脱獄し、副署長の娘を誘拐して交渉相手にダイヤモンドを指名しているという。四年前、女性ジャーナリストが口に赤い薔薇を詰めこまれて刺殺された事件があり、彼がマウントジョイを逮捕していた。頼みこまれて、ダイヤモンドはしぶしぶ、しかし内心では大好きな捜査活動ができることにほくほくして、マウントジョイとの会見にのぞむ。そこで要求されたのは、四年前の事件の洗い直しだった。もしマウントジョイが無実だとすると、真犯人は誰だったのか。被害者のボーイフレンド、家主、取材していた不法居住者たち…。調べていくうちに、当時は埋もれていた事実が次々と明るみに出、ダイヤモンドの不屈の刑事魂が過去と現在を鮮やかに結びつけていく。巨匠会心の、英国推理作家協会シルヴァー・ダガー賞受賞作。