出版社 : 早川書房
なぜか男と別れた女性ばかりがやってきて住みつく町、フロリダ州ヴェリティー。この町では、猛烈な暑熱と湿気に襲われる五月になると何かが狂い出す。海亀たちは街灯の明かりを月光ととりちがえ、街路を横切り移動を始め、あげく車につぶされてしまう。人も頭がおかしくなってしまうのだ。ルーシーとジュリアンが出会い、すべてが一変したのも五月だった。ある日、ルーシーの12歳の息子キースが失踪した。おりしも、ひとりの若いシングルマザーが殺され、赤ん坊が消える事件が町を騒がせていた。いくら“ヴェリティーの町いちばんの悪ガキ”でも、キースがまさか殺人までするはずがない。愕然とするルーシーの前に現われたのは、近寄りがたい雰囲気の警察官、ジュリアンだった。やがて、反発しあう二人の心に奇妙な変化が…。空想と現実を巧みに織り合わせるストーリーテラーが、人生のマジカルな瞬間を紡ぐ感動のハメット賞受賞作。
ぼくが14歳の夏、父さんが発作を起こして死んだ。そのとき家族に残されたのは父さんが買った大量のセメントだった。だからその翌年、今度は母さんが病気で死んでしまうと、ぼくは姉さんのジュリーといっしょにその死体をコンクリート詰めにして地下室に隠すことを思いついた。そうしないと、大人たちがやってきて姉さんとぼく、幼い弟や妹は離れ離れなってしまうから。こうしてぼくたち四人の子供だけの生活、やりたい放題の自由な毎日が始まった。ぼくは好きなだけマスターベーションにふけり、ジュリーはボーイフレンドと遊びまわり、妹は部屋に閉じこもったきり出てこない。が、やがて最高に思えた生活にも翳りが見えはじめる。そしてぼくとジュリーの関係にも大きな変化が…両親の死をきっかけに、思春期の少年が見出した楽園とその崩壊。現代英国文壇でもっとも注目を浴びる作家が、死体遺棄、近親相姦をテーマに放つ傑作長篇。
サラとジャレッドはニューヨークに住む仲のいい夫婦。妻のサラは半年間の職探しののち、ようやく検事局に入ることができた。だが、検事補としての初出勤の日、大規模なリストラが行なわれることを知らされる。とにかく仕事の実績をつくろうと、サラは敏腕の上司が扱う事件を横取りしてしまう。が、被疑者はいわくつきの男で、彼の背後に何かがからんでいることがわかってくる。一流法律事務所に勤務するサラの夫ジャレッドも仕事で行き詰まっていたが、突然、押し込み強盗で逮捕された被疑者を弁護してほしいとの依頼が入る。彼は喜んで引き受けるが、やがてその事件は妻のサラが担当していることが判明、しかもこの裁判に勝たなければ妻の命はないと依頼者から脅迫される。妻に打ち明けることは許されなかった。一方、サラも謎の人物から脅迫を受ける-裁判に負ければ夫の命はないと…。一見単純そうに見えた押し込み強盗事件がしだいに複雑怪奇さを増していく。そして、愛し合うがゆえにだまし合いをしなければならなくなった二人に、思わぬ運命が!軽快なタッチで描く、策略に満ちたサスペンス。
刑務所帰りの元海兵隊員ファレルは、ドアマンの仕事をしていた時にホテルの金庫から現金を強奪することを思いついた。入念な計画は成功したかに見えたが、仲間の一人の裏切りが発覚し、ファレルはその男を始末する。だが男はIRAの一員だったことからIRAから追われる身に。さらに、故買屋の組織からも盗品を狙う追っ手が迫るー成りあがることを夢見ながらも、破滅への道を突き進む男たちを描く、力作ノワール小説。
今度はおまえたちの番だ!銀行強盗を働き、撃ち合いの末に射殺された女の夫ラシェズは、激しい憎悪を胸にミネアポリス市警副本部長ダヴンポートを始めとする刑事たちへの復讐を開始した。ラシェズの標的となった刑事たちとその家族が一人また一人と襲われていくなか、ダヴンポートは男の行方を必死に追う。が、やがてダヴンポートの身近にもラシェズの魔手が!真の恐怖に突き落とす衝撃のサスペンス。文庫オリジナル。
ロンドンのジャーナリストの家に、一人の男が訪ねてきた。その男は45年前に起きた痛ましい事件について、真相をおもむろに語り始めた…。1954年、ノーフォーク州の全寮制パブリック・スクール、カークストン・アベイ校。14歳の生徒ジョナサンは同級生ばかりか教師にもいじめられ、つらい日々を送っていた。だが、そんな彼に新しい友人ができた。友人の名はリチャード。勉強はできたが、一匹狼的な男だった。クラスを支配するグループのボス、ジェームズはリチャードを仲間にしたいと願っていたが、ジョナサンと親しくなったため、ジョナサンに対して残酷ないじめを開始する。そんなジョナサンをリチャードがかばい、二人の仲はより親密になっていく。が、それと時を同じくしてグループのメンバーが大怪我を負ったり、事故死する事件が立て続けに起き、教師たちも奇怪な事件の犠牲になっていく。そして、この事件の裏には、ジョナサンとリチャードの秘密の儀式が…!少年の歪んだ心が引き起こす恐怖と戦慄の事件。イギリスでベストセラーを記録したゴシック・スリラーの新たな傑作。
湾岸戦争での苛酷な体験により、帰還後悪夢に悩まされているSAS軍曹ジョーディ・シャープ。精神的な苦闘を続ける彼に突然、悲劇が襲った。IRAの爆弾テロに巻き込まれて彼の妻が死亡したのだ。怒りに燃える彼は、テロの首謀者を自らの手で処刑することを決意した!北アイルランドの荒野から南米の密林を舞台に展開する白熱の復讐戦。元SAS隊員の著者が豊富な経験と知識を駆使してリアルに描き出す冒険小説の話題作。
バークに接触してきた女はクリスタル・ベスと名乗った。ストーカーから女たちを守るための隠れ家を経営しているという。彼女に依頼され、バークはストーカーから一人の女を救いだした。腕前に満足したクリスタル・ベスは、彼女自身もある男から脅迫を受けていると告白する。男の正体を探るバークの前に狂信的なネオ・ナチ集団の影が!アウトロー探偵バークが身を挺して巨大な悪を討つ、シリーズ第10弾。
弟が麻薬取引のもつれで殺されたとの知らせに、おれは青い影が漂う夢から覚めた。葬儀で待っていたのは弟の元妻マリーだった。昔の恋人で、別れ際おれとの愛を取り戻すと誓った女だ。マリーに溺れていく一方、おれは弟が死の直前に大物実業家の過去を探っていたと知る。背後には、非情な事実が!運命の女と危険な深みに堕ちていく男。注目のノワール小説。
二十代のブロンドの女性が悲鳴を上げ、必死に何かから逃れようとしている。どこにも逃げ場がないと悟ったその女性は、体を丸め両手で目をおおった-会計事務所に勤めるリザが突然見た鮮明な幻影。だが彼女は、その幻影が、ロサンゼルスの街を揺るがす猟奇連続殺人と関係があるとは思いもよらなかった。執拗な幻影に苦しむリザは、著書を通して知った精神科医レニックのもとを訪れ、そこで警察の捜査に協力しているレニックから、初めて幻影の意味を教えられた。驚いた彼女は彼とともに警察を訪れ、担当捜査官のタロン刑事を紹介される。二人の見ている前で被害者の遺品に手を触れたリザは、とたんに犯行シーンの生々しい映像に襲われた。これを機に、彼女は幻影を事件との関連で捉えるようになった。犯行に使われたナイフやラテックス製の手袋の隠し場所を次々と突きとめていき、ついには殺人犯の新たな動きと次の犠牲者を予知できるまでになった。彼女の幻視の中であらわになった次なる犠牲者の顔は…!?ブロンドの若い女性ばかりを狙う狡猾な猟奇殺人鬼。透視力を自覚し、捜査に関わっていくリザ。驚愕の結末まで一気に突き進む、サイコ・スリラー大作。
ニューヨークは眠らない。だから救急救命士の俺も、静かな夜は過ごせない。心拍停止、呼吸困難、薬物中毒、銃撃事件、交通事故。大都会の夜は生と死のせめぎあいに満ちあふれ、救急車は夜を徹して、すさんだ街を走り回る。そんなある夜、心臓発作を起こした老人の家に呼ばれた俺は、不可解な体験をした。俺の面前に現われた人影は…自らも救急救命士であった著者が、その実体験をもとに描き出す、生死と愛憎のドラマ。
刑事たちは呆然と、眼の前で展開されている活人画を凝視した。床の上には、男の射殺死体が横たわっている。そしてベッドの上には、白いガウンを血しぶきに染め、射殺された夫の身体を抱き、片手に拳銃を握りしめた女性が、涙に濡れ、悲痛に顔を歪めて腰掛けていた。元警官で、州の上院議員をつとめるエレン・クリースを見舞った悲劇は、センセーショナルな話題を呼んだ。合衆国上院議員への熾烈な選挙戦をくりひろげている彼女が、自宅に侵入して夫を殺害した強盗を、逆に射殺したのだ。世間は悲劇のヒロインに強い同情を寄せ、支持率は上昇する。だが鑑識による現場の調査は意外なことを物語った。血痕の鑑定結果をもとに、警察はエレンを逮捕、殺人罪で起訴したのだ!思わぬ展開に、世間の注目は裁判に集まる。高潔な人柄で知られるクィン判事が、事件の審理を担当することになった。だがその矢先、判事は予想もしなかった事件に巻きこまれ、窮地に立つ。事件の背後には何者かの意志が動いているのか…。二転三転、予測不可能の展開。『黒い薔薇』の著者がはなつ、サスペンスの新たなる頂点。
クリスマス・イヴ-酷寒のモントリオールでなくとも張り込みには辛い日だ。エンジンを切った車の中で、エミール・センクマルス部長刑事は、若い相棒とともに、降り始めた雪を透かして街路に眼を凝らしていた。やがて、彼らが見張るアパートに奇妙な人影が入って行く。真っ赤な衣裳に白い髭、プレゼントの袋をかついだサンタクロースだ。いくら今日がクリスマス・イヴだといっても…サンタクロースの後を追いアパートの一室に踏み込んだセンクマルスは、そこで無残な光景に出くわした。クロゼットの中に、スチールのフックで吊り下げられたサンタクロースの死体だ。死体の顔を覗き込んだセンクマルスは、息を呑んだ。それは、彼に密かに情報を流していた、密告者の青年だったのだ。そのうえ青年の死体には、残酷な拷問の痕跡、さらにはセンクマルスへの挑戦状が!街ではバイク・ギャングの抗争に巻きこまれた子供が爆死する事件が起きていた。激化する一方の抗争には、ロシア・マフィアの影も落ち、不穏な空気が充満している。そんななかをサンタクロース殺人を追って奔走するセンクマルスだが、事件の背後には信じがたいほど巨大な謀略が潜んでいた-カナダ文壇の大物作家が匿名で放つ、傑作大型警察小説。
衰退しつつある銀河帝国を救う未来予測の理論、心理歴史学を完成させるべく、帝国の首都惑星トランターの大学で研究を続ける天才数学者ハリ・セルダン。首相エトー・デマーゼル(R・ダニール・オリヴォー)によって、皇帝クレオン1世に次期首相として推薦されたハリ・セルダンだったが、できることなら政治などにはかかわらず、大学で研究に専念したいというのが本音であった。一方、心理歴史学を利用して自らの治世の維持をはかろうとしていたクレオン1世も、議会の反対にあい、なかなかセルダンを首相にできずにいた。そんなおり、辺境惑星サークの遺跡から発掘された模造人格2体-ジャンヌ=ダルクとヴォルテールがセルダンの研究室にもちこまれた。2体は、帝都トランターの巨大コンピュータ内の仮想現実に再生されたが、よもやこれが、銀河帝国の根幹を揺るがす怖るべき危機につながろうとは…!?巨匠アイザック・アシモフの遺志をつぎ、現代SFを代表する三人の旗手-グレゴリイ・ベンフォード、グレッグ・ベア、デイヴィッド・ブリンが、見事に再構築した「新・銀河帝国興亡史三部作」、待望の第一部堂々登場。
エジンバラの町は不気味な緊張に包まれていた。新興ギャングが町の覇権を手にしようと、何事かを画策している。特捜班は連日監視を続け、リーバス警部も関心を抱いていた。そんなさなか、上司が彼に押しつけてきたのは奇妙な仕事だった。第二次大戦末期、フランスの村で起きたナチス親衛隊による大虐殺事件の指揮官が、ここエジンバラに名前を変えて潜伏しているというのだ。リーバスは、リンツと名乗る問題の老人の正体を探るが…その矢先、リーバスを思いもよらぬ悲劇が襲った。
IRA、CIAなど相手を問わず無差別に暗殺を繰り返す謎のテロ組織“一月三十日”。彼らの政治的信条ばかりか、テロの目的もいっさい不明であった。やがて、北アイルランド和平の鍵を握る要人警護の命が英国特別情報機関に下り、元国際テロリストのショーン・ディロンがその任務に就いた。一方、情報をつかんだ“一月三十日”は、ディロンの裏をかき凶弾を放つべく、密かに暗殺者を差し向けるが…痛快冒険サスペンス。
七年前の事故がデイヴィッド・ヴァンデマークを変えた。瀕死の重傷から回復したとき、物に触れただけで過去のできごとを知る特殊能力=サイコメトリーを身につけていたのだ。彼はその能力を駆使し、妻子を惨殺した連続殺人犯への復讐を手始めに、社会に潜み人々を捕食する、異常殺人者という怪物を見つけだし次々に抹殺してゆくのだが…恐るべきハイテンション、ハイスピードで描かれる超絶サイキック・サスペンス。
自殺した学生とのゲイ関係などまったくない-ロビンソン教授は断言した。教授はゲイ関係の噂を立てられ、終身在職権を否決されたので調査を依頼してきたのだ。恩人の息子だからよろしく、というホークの紹介とあれば断わるわけにはいかない。スペンサーは黙って自殺事件の調査をはじめる。自殺した学生は、他人のゲイ関係を暴露するミニコミ紙を発行していたいかがわしい男だった。さらに、彼の銀行口座には法外な金が残されていた。犯罪の臭いを嗅ぎつけたスペンサーは、自殺現場を見て不審の念をいっそう強めるが…。ホークのみか、前後してスーザンも事件を持ち込んできた。女友達のKC・ロスが正体不明のストーカーに悩まされているという。こちらも気軽に引き受けたスペンサーは、ロスの元夫や元恋人を中心に聞き込みを開始する。ところが、孤独な境遇のロスはスペンサーに急接近し、ついには彼女自身がスペンサーに対しストーカー行為を働いてきた!息もつかせぬ展開で魅了する、人気シリーズ最新作。
観光地として賑わう、古代遺跡のローマ浴場の地下室で、白骨化した人間の手が発見された。一報を聞きつけた警視ピーター・ダイヤモンドは、骨の身元を特定すべく捜査を開始する。だが、くだんの地下室の番地に、『フランケンシュタイン』の作者メアリ・シェリーの自宅がかつてあったという事実が浮上し、捜査は混乱に陥った。この偶然の一致にマスコミが飛びつき、「人骨は怪物の犠牲者なのか?」などとバースの町に流言飛語が飛びかう実態となってしまったのだ。時同じくして、女性の骨董商が他殺とおぼしき水死体となって発見された。事件担当の主任警部ウィグフルは、容疑者の尾行を単独で開始するが、何者かに殴打され、生死の境をさまよう意識不明の重体に!同僚に代わってこの事件の捜査も担うことになったダイヤモンドは骨董商の身辺を探り、幻想的な画風の絵画が殺人事件当夜に取り引きされていたことを突きとめる。しかも、その不気味な絵のモチーフは『フランケンシュタイン』の一場面を意味していた…。不可解な繋がりをみせる二つの事件から、ダイヤモンドが辿りついた犯人像とは?ゴシック的な香り漂う怪奇な事件に、ピーター・ダイヤモンド警視が熱き刑事魂で立ち向かうシリーズ第六弾。