出版社 : 早川書房
映画脚本の基礎を確立した、ハリウッドの大物ゴードン・キャントウェルの邸宅で、月例パーティが催された。しかしその席上、脚本家志望の青年レイザー・ジャファーリが突然死してしまう。さっそく警察が呼ばれたが、彼がゲイであり、HIVに感染していたことが明らかになると、単純な病死として片づけようとした。たまたまパーティに出席していた元新聞記者ベンジャミン・ジャスティスは、その死因に疑問を抱き、調査を始めるのだが、その過程で殺人の疑いが…前作『夜の片隅で』で絶賛された甘くせつない世界が甦る、異色ハードボイルド。
プラハの街をぶらつき、観光客の娘を騙して弄ぶのを無上の楽しみとするアメリカ人青年ニックス。彼はある夜モニカという女に出会い、その魅力に取り憑かれた。ジプシーとチェコ王族の血を引きモニカへの想いはとめどなく膨れあがる。彼はモニカを執拗につけ回し、彼女の兄と称する男を殺してさらにある卑劣極まりない犯罪を企てた…“運命の女”のために転落の一途をたどる男を非情なタッチで描く、サスペンスの新収穫。
元捜査官ケイトのもとに、先住民協会の理事をしている祖母エカテリーナが訪れた。土地の開発をめぐって理事会が開かれるアンカレッジへ同行してほしいと頼みにきたのだ。祖母によれば、開発に反対する理事の一人が最近急死したうえに、他の理事たちも様子がおかしいという。だが、二人が到着して間もなく、反対派の理事がまた一人謎の死を遂げ…ケイトのねばり強い調査が、開発がらみの黒い陰謀を暴くシリーズ注目作。
夏のはじめから、すべてに意味がなくなるまで、ぼくたちは開いたままの大きな窓の前で絡みあった。自分ではどうすることもできず、ぼくは妄想の世界、あの怪物の住む世界に引きこまれていく…少年と少女のひと夏の恋を、エロティシズムと恐怖を交えて綴った表題作をはじめ、大人の仲間入りを果たすために10歳の妹を誘惑する14歳の兄の姿を描いた出世作「自家調達」など、英国文壇の旗手が、時には残酷に、時には優雅に紡ぎだした八篇を収録。官能、恐怖、風刺、叙情…ブッカー賞作家の独自の世界が堪能できるデビュー作品集。サマセット・モーム賞受賞作。
元英国情報部員クランマーのもとに突然警察が訪れた。旧友でかつての部下のラリーが、元KGB工作員と組んでロシア政府から大金を詐取し、失踪したという。しかも、クランマーの愛人エマも同行しているらしい。そのため、警察をはじめ情報部はクランマーが共犯ではないかと疑っていたのだ。苦境に立たされた彼は、自ら二人を追い、真相を探りだそうとするが…現代世界をさまようスパイの魂をサスペンスフルに描く傑作。
ちょっといいかい?あたしは顔も頭も良くない。だけど悪役女子プロレスラーとしてはうまくやってる。それなのにある夜、警察の手入れを受けたクラブから若い娘を救いだし、家に連れ帰ったときから不審な男たちに追い回されるようになってしまった。あの娘が原因らしいけど、だからって見捨てるなんてできない。あたしがカタをつけてやる!正義感と人情味溢れるヒロイン、エヴァの奮闘を描く英国推理作家協会賞受賞作。
マンハッタンは、その事件に戦慄した。NY随一の規模を誇る総合病院、ミッド-マンハッタン・メディカル・センターで、高名な女性医師が死体で発見されたのだ。全身を刺され、下半身の下着を剥ぎ取られた姿で…病人を癒す安息の場所であるはずの病院での惨劇に、マスコミは騒然となった。状況から見て、レイプ殺人の可能性が高い。マンハッタン検察庁の性犯罪訴追課を率いる女性検事補アレックスが、ただちに現場へ急行した。だが、状況を知った彼女は唖然とする。病院は警備が甘く、その構内には数多くのホームレスが住み着き、外部の人物も侵入可能な、きわめつきの危険地帯だったのだ。思わぬ事態に、容疑者は続出し、捜査は遅々として進まない。苦しい状況に追い込まれたアレックスだが、事件解決への手がかりは、意外なところからもたらされた…自らも性犯罪訴追のエキスパートである著者が、マンハッタンの犯罪と生活を余すところなく描き出した、一級品のサスペンス。
ウェールズ北部の鉄道トンネルのなかで、全裸の少年の他殺体が発見された。被害者は、14歳の美少年アーウェル・トマス。アーウェルは死の直前、発見現場にほど近い児童養護施設「ブロドウェル」から脱走していたことが判明したのだが、彼の身体には、暴行されたあとがあった!「ブロドウェル」では、子供たちが虐待されているのだろうか?施設側は、マイケル・マッケナ主任警部らの捜査を、地元有力者の強力なバックアップを盾に、かたくなに拒否するのだが…『シメオンの花嫁』の作者が、英国社会にひそむ病巣を鋭くえぐる、傑作本格大作。
宇宙船Uケナイ号の船長エリク・ボーンは、優秀なハッカーとして合法、違法を問わず仕事をこなしてきた。だが、そんなエリクにルドラント・ヴィタイ属の大使バスクが頼んできた仕事は、いつもとはまったく異なるものだった。大使が監禁している女性の通訳をつとめろというのだ。しかも、その女性アーラは、エリクが捨てた故郷の星「施界」の出身だった…広大な銀河を舞台に、超能力者や奇妙な異星人の冒険を描く話題作。ローカス賞受賞作。
ルドラント・ヴィタイ属に捕まっていた女性アーラは、とつぜん暴れだし、逃亡をはかった。なりゆきから、アーラの逃亡を助けたエリクは、やがてヴィタイ属の陰謀にいやおうなく巻きこまれていくが…宇宙から忘れさられていた星「施界」の住人であるアーラやエリクに、ヴィタイ属はどうして関心をもつのか?そして、ヴィタイの究極の目的とは?豊富なアイデアとさまざまな謎をちりばめ、壮大に描きあげた冒険SF!ローカス賞受賞作。
フィリピン新人民軍の指導者を五百万ドルで買収し、香港へ亡命させろーテロリズムの専門家ストーリングズのもとに大仕事がまいこんできた。彼は工作を手伝ってもらうため、中国人ウーとそのパートナー、デュラントら、海千山千のプロを極東に集結させる。それぞれの思惑が交錯するなか、五百万ドルをめぐる虚々実々のゲームが開始された!巨匠の代表作。
この仕事に、向いてないのかな?ハリウッドの芸能記者オコナーは記者魂では負けないが、控えめな性格が災いしてなかなかスクープをものにできない。そんな彼がアカデミー賞ノミネート発表でにぎわう晩、とある授賞式会場で映画監督の妻の死体を偶然発見した。遺書らしきもののコピーを入手した彼は、こんどこそスクープだ!と彼女の交友関係を洗うが…注目の新鋭が青年記者の奮闘を描くアメリカ探偵作家クラブ賞候補作。
組織の資金を横領した会計士が、ホテルで射殺された。殺したのは、ガンビーノ・ファミリーのボスにして、五大ファミリーをまとめる“ボスのなかのボス”ヴィンセント・ジェネロ。高級コールガールのニコール・バスは、折悪しく現場を目撃するが、会計士のブリーフケースを奪い、かろうじて脱出に成功した。そのブリーフケースの中には、会計士が横領した巨額の金を預けた口座を記すフロッピーも入っていた。ジェネロは即座に部下に指令を下し、その行方を追わせ始めた。冷酷非情な部下たちは、あらゆる手段を用いてバスに迫っていく。一方、ニューヨーク市警では、市警情報部組織犯罪監視班の辣腕刑事ジャック・カービイが捜査を開始した。自分の不注意から娘を死なせ、それがもとで離婚した過去を持つ彼は、以来ジェネロの逮補だけを生きがいにしてきた。懸命の捜査で事件を目撃した人物がいたことを突き止めた彼は、バスに接触、やがて彼女の護衛にあたることになる。だがその時、業を煮やしたジェネロは、第一級のスナイパーにバスの抹殺を依頼した!壮絶な闘いをサスペンスフルに描く待望のハード・アクション巨篇。
タケル族との交戦を終え、『マルコ・ポーロ』は故郷銀河への帰途についた。戦乱にまきこまれた大陽系の現状が気になり、テラナーらの心ははやる。だが帰還途上、四十万もの謎の宇宙航行物体群が忽然と出現、エネルギー・インパルスらしきものを『マルコ・ポーロ』に浴びせると、乗組員に異変が生じた。精神退行をきたし、艦内装備を片端から破壊しはじめたのだ…ローダンの新しい闘いのエピソードがここに幕を開ける。
第二次大戦前夜、スエズ運河爆破を目論むヒトラーの元に、シバの神殿が発見されたとの報がもたらされた。同じころ、失踪した夫を捜しているイギリス人女性の依頼を受け、アメリカ人考古学者ギャヴィンもまた、ローマ時代の古文書を手掛かりに幻の神殿を目指していた。だが、彼の行く手を阻むのは、砂漠の苛酷な自然環境だけではなかった…ナチスの恐るべき陰謀逆巻く南アラビアの熱砂に展開する、灼熱の冒険スリラー。
南極大陸に突如出現した超空間通路によって、地球への侵攻を開始した未知の異星体「ジャム」。地球防衛機構を設立した人類は、超空間通路の彼方に存在するフェアリイ星に、実戦組織「FAF」を派遣。その特殊戦第五飛行戦隊に所属する深井零中尉もまた、戦術戦闘電子偵察機「雪風」とともに、ジャムとの熾烈な戦闘の日々をおくっていた。やがてFAFは、膠着した戦況を打開するため、新型無人戦闘機の導入を決定するが、その矢先、作戦行動中に被弾した雪風は、まるでジャムとの戦いに人間は必要ないと判断したかのように、パイロットの零を機外へと射出、自己のデータを無人機へと転送した。-それから三カ月。昏睡状態の零を残して出撃した無人機・雪風は、みずからの意志により味方前線基地への攻撃を開始する。ジャムはそこにいる、という謎めいたメッセージとともに…。はたして、雪風の真意とは?未知の存在に対峙する人間と機械の関係を極限まで追究し、星雲賞に輝いた前作『戦闘妖精・雪風』から十五年、神林長平が満を持して放つSFファン待望のシリーズ第二弾。
広告会社の美人文案家ローラ・ハントが殺された。世間はこのセンセーショナルな事件に騒然となったが、捜査部長マーク・マックファーソンにしてみれば、それはこれまで解決してきた幾十もの類似の事件の繰り返しにすぎなかった。しかし、ひとたび彼女の私生活を調査しはじめた彼は、ローラの魅力に、いつしかとらわれてしまった自分を知ったのだった。死んだ女性に恋してしまったマックファーソンは、懸命に捜査をすすめるうちに、主人のいなくなった彼女のアパートで意外な事実に直面する-本書は発表された二年後に、オットー・プレミンガー監督によって映画化され、小説界のみならず、映画界からも絶大な喝采を博した。心理描写の巧みさ、意外性とサスペンス、本格的な謎、そして形式の面白さに満ちた、米国女流作家キャスパリが贈る第一級の探偵小説。
天衣無縫の隠れ蓑を持つ“疑われざる者”の正体は?無数の崇拝者を持つ元舞台監督のグランディスン。彼は秘やかだが恐るべき魔力で誰をも虜にしてしまう。だがこの男こそ、奸智にたけた冷酷きわまりない殺人鬼なのだ。男の邪悪な正体を知る者は二人だけだった。グランディスンに恋人を殺された青年フランシスと、青年に同情する少女と…復讐を誓うフランシスは、グランディスンの家に身を寄せる娘が行方不明と知り、娘の婚約者を装って殺人の証拠を集める。だが、当の娘は生きており、さらに殺人鬼は動揺したフランシスの命を狙ってきた!緊迫した追跡劇を繊細な筆致で綴る、サスペンス小説。
あれほど巧妙に組み立てられた計画が、それが最後にドア一つ-錆びた真鍮のノブが付いているペンキ塗りの木製ドア-のために粉砕されようとは。事件後すでに幾月も過ぎ、その間、無数の手がそのノブに触れた。ドアそのものも塗り直してあった。それなのに無心のそのドアが謎を解き、悪魔のような狡猾な殺人犯を破滅させたのだった…。ベル家の裏にある未開懇地を、青年を乗せた葦毛の馬が静かに進んでいく。と、だしぬけに、馬は猛然とあとずさりし何かに怯えている様子。脚もとの下水管には、数日前から行方不明になっていた看護婦セアラの死体が…。アメリカのクリスティーと評されるラインハートが、スイートでロマンチックな雰囲気のなかに神秘的なサスペンスを色濃く漂わせた堂々たる本格探偵小説。