出版社 : 早川書房
二十世紀初頭のパリ。一人の娼婦がナイフで刺し殺される事件が起き、精神科医ライスデンは警察の尋問を受けた。彼のもとには“モナ・リザの作者”と名乗る人物から謎めいた手紙も届いていた。身の潔白を証明するため、ライスデンは犯人探しに乗り出す。そんな折り、彼はいとこの女性から思わぬ依頼を受ける。それは、彼女の所有している印象派の大家マレの名画に贋作の疑いがあるので調べてほしいということだった。
問題の絵はマレの死後、未亡人が画商に持ち込んだものだった。果たしてその絵は本物なのか?偽物ならば、未亡人が画商へ贋作を渡したのか?画商が誰かの贋作を売りつけたのか?ピアニスト志望の恋人とともにライスデンは調査を続けるが、やがて次々と意外な事実が明らかになってくる。だがその頃、不気味な殺人犯が彼の恋人に迫っていた。華やかな時代のパリを舞台に、二転三転するプロットで描く芳醇なサスペンス。
信頼できる友人たちとともに、念願だった自分の財団を設立したわたしは、初めての大きなプロジェクト「オータム・フェスティヴァル」の準備に追われていた。そんな折り、一人の未亡人がわたしに助けを求めてきた。遊歩道と州道の交差路を歩いていた彼女の夫が車に撥ねられて死亡したため、その危険な遊歩道をわたしの財団に閉鎖してほしいというのだが…夢をかなえたジェニーが新たな道を歩みだす、人気シリーズ注目作。
連合赤軍が浅間山荘事件を起こし、日本国中を震撼させた1972年冬。当時学生だった矢野布美子は、大学助教授の片瀬信太郎と妻の雛子の優雅で奔放な魅力に心奪われ、彼ら二人との倒錯した恋にのめりこんでいた。だが幸福な三角関係も崩壊する時が訪れ、嫉妬と激情の果てに恐るべき事件が!?香りたつ官能、美しき異端、乾いた虚無感。比類なき美と官能に彩られた小池文学の最高峰!ジャンルを越えて絶賛された直木賞受賞作。
24歳の平凡な娘ホリーは、ある日突然、莫大な遺産の相続人となった。だが、彼女が訪れた壮大な屋敷には、叔父夫婦のほかに謎めいた老人や敷地内をさまよう女性がおり、不気味な雰囲気が漂っていた。やがて、ホリーが亡き生母の人となりを探るうち、恐るべき事実が明らかに…『崖の家』の実力派が放つ、二転三転の展開、衝撃の結末のゴシック・サスペンス。
刑務所を出たプロの犯罪者マクリンは、塀の中で面白い話を聞き込んでいた。パラダイス港に浮かぶ小島、スタイルズ島のことだ。島には金持ちの高級住宅と銀行があり、一本の橋で本土とつながっている。警備は民間の警備会社のみ。この島を襲い、すべての金品を丸ごと強奪してやろうというのだ。自信満々のマクリンは恋人のフェイに、こう言い放った。「世紀の強盗になるぞ」着々と準備を進めるマクリンは、資金を調達し、凄腕の仲間を揃える。殺し屋のクロウ、爆破屋のフラン、エレクトロニクスの専門家JD、水路に詳しい船主のコスタ。町へ下見に来たマクリンはパラダイス警察の署長ジェッシイ・ストーンを訪れる。たかが田舎町の警察と侮っていたマクリンだが、応対に出た相手にただならぬものを感じた。いっぽう百戦錬磨のストーンも、多忙な日常業務をこなしながら、密かにマクリンに探りをいれはじめる。平和な町に忍び寄る影-二人の対決の日は、目前に迫っていた。ニュー・ヒーロー、警察署長ジェッシイ・ストーンに、強敵が迫る。巨匠パーカーが贈る、男気満載のアクション巨篇。
ジェネヴィーヴは、老人ホーム「ミドルトン・ホール」のケア・アシスタント。彼女の受けもちのひとり、ステラは癌で余命いくばくもない老女である。ある日、ステラ宛てに彼女名義の家の権利書が届く。ステラはその家の存在を子供にまでひた隠しにしていたのだが、その理由を話すため、ジェネヴィーヴだけに自分の過去をうち明けるようになる。結婚に満足できなかったこと、不倫をしていたことなどなど。そしてその話は必ず秘密の家に収斂していく。その家でいったい何があったのか?ジェネヴィーヴは、やがて恐ろしい疑念に捕らわれていく…。
遙か深宇宙で進化した生命体グレックスーエンギという名の幼仔が冒険を求めて行方をくらました時、群れは大騒ぎとなった。ただちに2体の斥候が選ばれ、その跡を追った。だが怖るべき捕食生物「大食らい」もまた、その仔を狙っていたのだ。やがて未熟なエンギは、とある恒星の磁力流に捕えられ、地球という名の惑星に…感動の表題作ほか、ネビュラ賞受賞作「ラセンウジバエ解決法」など、全10篇を収録した傑作短篇集。
久しぶりに再会した昔の恋人ロビンの話を聞き、医学生のジェレミーは愕然とした。最近死亡した国防長官は実は彼女の父親で、死因に不審な点があるので検屍記録を調べてほしいというのだ。調査の結果、伝説の科学者が開設した最先端の遺伝子研究所が浮かび上がる。やがてジェレミーとロビンは何者かの襲撃を受けた。真相を究明すべく彼は研究所に潜入するが、そこでは驚くべき陰謀が…壮大なスケールの遺伝子サスペンス。
1699年、エジプト。カイロの街に住む風来坊の薬剤師ポンセは、路上で美しい女性と出会う。彼女はフランス領事の一人娘アリックス。互いに魅かれあう二人だが、あまりにも身分違いの恋だった…当時の北アフリカは、強大なオスマン・トルコ帝国の率いるイスラム教徒の支配下にあった。太陽王の異名をとるフランス国王ルイ14世は、そんな状況を打破すべく、途方もない計画を企てる。北アフリカ唯一のキリスト教国で、長らくの鎖国のため未知の国となっているアビシニアと同盟を結び、彼の地に楔を打ち込むのだ。だが、アビシニアへの道は遠く険しい。そのうえ強大なトルコや周囲のイスラム教国を刺激するような公式使節は送れない。太陽王の命を受けた領事は名案をひねりだした。カイロに住む民間人を密使として送ればよい。アビシニア皇帝は病に悩んでいると聞く。ならば医学知識を持つ者を送り込もう。かくして、白羽の矢はポンセに立った。アビシニアへの旅を首尾よく終えれば、報償として、アリックスにふさわしい身分を得られるのだ。前途に待ち受けるのは、危険な道中、未知の文化、野心と裏切りのはびこる権謀の都…愛する人への思いを胸に、大いなる旅が、今始まった。二つの大陸をまたいで展開される、波瀾万丈、絢瀾豪華の一大歴史冒険絵巻。ゴンクール賞最優秀処女長篇賞受賞。
言語を速習できる特殊な学習法の普及は、独自の言語を設計する言語デザイナーという職業を生みだすほどの人工言語ブームをまきおこしていた。言語デザイナーの主人公は、奇妙な偶然から、これまでのものとはまったく構造の異なる言語に遭遇する。欠陥品なのか、それとも…?言語理解と人間の認識能力、そしてその未来を描いて第17回「ハヤカワ・SFコンテスト」に入選した表題作「夢の樹が接げたなら」をはじめとして、緻密な世界観に裏づけられた、名品8篇を収録する作品集。
銀河系中枢部に貯蔵庫9万体が出現した。タケル侵攻軍を指揮するヴァスカロが最終ブロック回路を使って呼びよせたのだ。この大部隊が太陽系に到達すれば、テラが蹂躙されるのは明らか。太陽系帝国首脳は銀河諸種族に大団結を呼びかけることにする。さっそくエドモンド・ポントナクがガルブレイス・デイトンの命をうけ、三大星間帝国ー銀河連合ノルモン、中央銀河ユニオン、カルスアル同盟を説得するべく出発したが…。
“消耗品扱いの要員”という言葉をご存じだろうか。女だてらに未踏惑星探査を任とするわたしもその一員。この25世紀、任務遂行中に不慮の死を遂げやすい惑星探査要員には、身体的に瑕疵をもち、損失をさほど惜しまれない人員があてられるのだ。そのわたしが、帰還率ゼロの危険な惑星メラクィンの探査を命ぜられた。ついに年貢の納めどきが来たかと思いきや…期待の俊英が放つ、謎と波瀾横溢するアドヴェンチャーSF。
任務から還った者のない惑星メラクィンへ決死の探査行に赴いたわたしは、実際の星を見て驚いた。それは地軸の傾きから大気組成まで、あらゆる点で地球によく似た惑星だったのだ。なぜここがそんなに危険なのか。そもそも、地球の近接宙域にこういう惑星がどうして存在しうるのか?疑問と怖れをいだいて地表に降下したわたしの前に現われたのは、ガラスの体をもつヒューマノイドだった!ゲーム感覚あふれる傑作冒険SF。
遙かな未来、太古の殺し屋種族チェンジーム人が残した攻撃機械やナノマシンによって、人類は絶滅の危機においこまれていた。なんとか生き延びて委員会星団で暮らしていた人々は、強力な指導力を持つジュピター・アポリナリオに率いられ、宇宙船ネセレス号に乗り、人類の理想の地であるという陥穽星をめざしたが…ローカス賞受賞作『極微機械ボーア・メイカー』の著者が未来世界を舞台に壮大かつ華麗に描きだす冒険SF。
かつて陥穽星に入植した人類は、謎の疫病のために全滅してしまった。生き残った植民者たちは惑星を封鎖し、宇宙エレベータの途中にある絹市で暮らしている。だがこの陥穽星に降り立ち、無事に戻ってきたジュピターは、陥穽星こそ理想の世界であると主張し、ネセレス号の人々や息子のロトを強引に宇宙エレベータに突入させるが…10年後、さまざまな難関をくぐりぬけ、陥穽星をめざすロトを待つものは?話題の冒険SF。
最悪だースペルシンガーの命、魔法の楽器を壊してしまった。これを直せるのははるか南に住む職人ただ一人。ジョン・トムは、迷惑顔のカワウソをむりやり引き連れ旅立った。お気楽で安全な旅のはずだったのに、出会うのは危険な連中ばかり。なんと宿敵にまで遭遇し、命を狙われる始末。おまけにとんでもない事実が判明し、ジョン・トムはかつてない重大な決断を迫られることに…必笑ユーモア冒険シリーズ、遂に完結。
天性の政治家、南部小州の民主党知事ジャック・スタントンは、聡明な妻スーザンと抱いた夢を実現すべく、大統領選挙の予備選に出馬した。彼は有力候補として快進撃を始める。が、やがてヴェトナム反戦逮捕疑惑、徴兵忌避疑惑、さらに不倫疑惑と、次々とスキャンダルの嵐に襲われる…予備選を戦い抜く知事夫妻と選挙スタッフを、若きインテリ黒人の選挙参謀の眼を通して描く話題作。映画化名『パーフェクト・カップル』。