出版社 : 早川書房
一年半前、ペンバートン大学の裕福な白人女子学生が殺害された事件で、凶暴な黒人少年エリスに容疑が掛けられた。州警察のミラー刑事が事件を担当し、当時次席検事だったリタ・フィオーレが新米弁護士マーシイ・ヴァンスに充分な弁護をさせず、エリスを有罪にした。そしていま、大手弁護士事務所に転職したリタが、スペンサーの事務所を訪れ、事件を調べ直してくれという。エリスの弁護人だったマーシイがいまもなお彼の無実を主張しているらしい。再調査のため現地へ赴いたスペンサーは、被害者の両親からも大学の関係者からも、もう解決した事件だからと冷たい対応を受ける。しかし調べていくうちに、被害者のボーイフレンドだった男がタフト大学テニス部主将で、両親が大金持ち、しかも初めは被害者のことを知らぬ振りをしたことから、スペンサーは疑念を抱きはじめる。どうもこの事件には複雑な背景があるようだ。一方、スペンサーは事件から手を引くよう再三脅迫を受ける。いったい誰の差し金か?そして、愛するスーザンにも自分にも警護をつけ、用心していたにもかかわらず、スペンサーはジョギング中に何者かの射撃を受け、瀕死の重傷を負ってしまう。
イェール大学を卒業したばかりのベンは、合衆国最高裁判所の正面に立ち、大きく息を吸った。今日からここで、最高裁裁判官付きの調査官として、新たな人生の一歩を踏み出すことになるのだ。調査官の職務は、激務につぐ激務と考えて間違いなかった。莫大な量の判例を調べ上げ、裁判官が提出する意見書の草稿を執筆しなければならない。だが、不眠不休で仕事をこなす見返りは大きい。最高裁調査官になれる者はエリート中のエリートだけであり、任期を終えれば、輝かしい未来が開けるのだ。しかし世間知らずのベンは、ふとしたことから詐欺師に騙され、極秘情報を漏らしてしまう。詐欺師はその情報を利用し、巨万の富を手に入れることに成功。もしその件が発覚すれば、ベンの人生は破滅だ。詐欺師はそれをいいことに、さらなる情報を要求してくる。ベンは同僚のリサと三人の親友の力を借り、正体不明の詐欺師に反撃を試みるが-?弱冠26歳の大型新人が、溢れる才気と無条件の面白さで全米を熱狂させた、新世代リーガル・サスペンス。
「きみが鍵なのだ、デッカード」ブリーフケースのなかから声が囁いた。きみがレプリカント反乱成功の鍵を握っているのだと…21世紀、地球を巡る巨大な軌道スタジオ、アウター・ハリウッド。忠実に再現されたLAのセットのなか、デッカードは自分の伝記映画の撮影に雇われていた。かつてブレードランナーとして逃亡レプリカントと演じた数々の死闘は、いまや都市伝説と化していたのだ。が、撮影現場に謎の刺客が放った銃声が鳴り響き、凶弾に倒れたかつての僚友からひとつのブリーフケースを手渡されたとき、デッカードは再び巨大な陰謀の渦中へと巻き込まれていった。時を同じくして、火星移民居留地でデッカードの帰りを待ち続けるサラのもとを、二人組みの謎の密使「親衛隊」が訪れていた。そして、いまだ彼女から造り出されたレプリカント、死せるレイチェルに思いを馳せ続けるデッカードへの愛憎を胸に、サラもまた一路、陰謀渦巻く地球へと向かっていった。
血液学を研究する医師エリオットは、吸血鬼伝説が囁かれるインド国境で、身の毛もよだつ体験をしたあと帰英した。ロンドンで診療所を開いたが、悪夢は故国までも追ってきた。親友の一人が血を抜かれてテムズ川に浮かび、もう一人が失踪したのだ。友の行方を追うエリオットは劇場支配人ブラム・ストーカーと知りあい、二人はヴィクトリア朝ロンドンを跳梁する吸血鬼の正体をさぐっていく。注目のヴァンパイア奇譚第二弾。
謎めいた美女ガブリエラが住む家が放火された事件は、小さな村を騒然とさせた。さらに中から発見されたのは有名なクリケット選手フレミングの死体だった。しかもガブリエラは事件の直前に失踪したきりで捜査は難航する。やがて彼女はフレミングが所属するチームのスポンサーと別居中の妻である事実が判明した。二人は愛人関係だったのか?州警察の要請を受け、リンリー警部はハヴァーズ部長刑事と共に現地へ赴くが…。
放火事件には不審な点が多く、リンリーはフレミングが殺害されたと確信して捜査を続ける。彼の身辺を探るリンリーは、やがて新たな事実に突きあたった。フレミングは数年前に家族と別れ、恩師の女性とともに暮らしていたのだ。行方不明の美女、別居中の妻、彼を溺愛する元教師…リンリーは事件の鍵を握る三人の女性に焦点を当て、奥深い人間関係へと分けいる。ミステリ界の新女王が円熟の筆致で贈る、華麗なる本格大作。
ただ一人の親族である伯父が死の床についている。今を逃したら亡き父のことは二度と聞けない。ニューヨーク市警の刑事ホッカデイは、急ぎダブリンへ飛んだ。だがその時から、父と関係のあった人物が謎の死を遂げ、さらに不穏な事件が続発する。やがて、父の驚くべき過去が明らかに。
窮屈なしきたりなんて、まっぴらーわたしは女ひとり、タイピング・サーヴィス業で身を立てることにした。だがやがて、わたしの依頼人たちに次々と恐ろしい事件が!オフィスにやってきた中国人が、数日後何者かに殺され、作家志望の青年は、原稿を預けたきり消息を絶ってしまった。好奇心を抑えきれず、わたしは調査にのりだすが…ガス灯時代のサンフランシスコに勝ち気なアマチュア探偵登場。マカヴィティ賞受賞作。
夏の終わりの午後おそく、新学期の始まる日の父母会をおえてアンディ・マネットと二人の娘が外へ出ると、荒れ模様の空から雨が激しく降っていた。そのとき、学校の駐車場では赤いヴァンに乗った大男が獲物を狙って待機していた。その男ジョン・メイルは彼女たちが車に乗ろうとしたとき、背後から無理やり自分のヴァンに引きずりこみ、母娘ともども連れ去った。誘拐された女の別れた夫が大金持ちの共和党支持者、父親が民主党の実力者という複雑な背景を考慮して、この事件を担当することになったのはミネアポリス市警副本部長のルーカス・ダヴンポート。しばらくして連絡を入れてきた犯人は、どうもゲーム・マニアらしく、コンピュータ・ゲーム・メイカーでもあるダヴンポートと直接話したがる。はたしてダヴンポートは、挑戦的な犯人の居所をつきとめ、生きたまま母娘たちを救うことができるのか。
フレッチャー一家は、インディアナのヴィゴアからノースカロライナのストゥベンへと、新天地を求めて引っ越してきた。フレッチャー家の三人の子供のなかで、長男のスティーヴィはこの引っ越しにいちばんショックを受けていた。もともとひとりで遊ぶのが好きな子供だったが、その孤独癖はだんだんひどくなっていく。やがて、そんなスティーヴィに何人かの友達ができたようだ。だが、彼の話には腑に落ちないところがあった。だれそれと遊んだといって帰ってくるのだが、家の外で見かけるスティーヴィはいつもひとりだったのだ。その繊細さゆえに、学校でも友達ができず、空想の友達をつくったのか?そのころから、フレッチャー一家のまわりでは、奇妙な出来事がつぎつぎにおこりはじめた…。連続少年失踪事件にゆれる南部の小さな町を舞台に、家族の愛とは、親子の絆とは、思いやりの心とはなんなのかなどを読む者に問いかける感動の書。ファンタジイ&サイエンス・フィクション誌1989年10月号にまず短篇の形で掲載され、89年度のローカス賞を受賞。1992年に長篇化された。
いつもまずいときにまずい場所に居合わせ、金にならない厄介な事件ばかりを抱え込んでしまう私立探偵のシックススミス。例によって今夜も、合唱団の練習をこっそり抜け出した途端に死体が入った段ボール箱に蹴つまずき、犬猿の仲の警官からは犯人扱いされ、口うるさい伯母からは大目玉を食らう始末。おまけにナチの戦犯容疑をかけられた老人にまつわる騒動や、女性教師のセクハラ疑惑にまで巻き込まれ…怪事件、難事件の連続に自慢の強運ももはやこれまで。
アラブ人テロリスト、IRAのメンバー、KGB部員、CIAのエージェントと、次々に無差別な暗殺を重ねる謎のテロ・グループ「1月30日」-政治的信条ばかりかテロの目的もいっさい不明であり、唯一わかっているのは、暗殺の凶器に同一のベレッタを使用していることのみ。対応に苦慮した英国首相は、ファーガスン准将率いる英国特別情報機関「グループ・フォア」に指令を下した。同じころ、ファーガスンの右腕である元国際テロリストのショーン・ディロンは、アイルランドのプロテスタント系過激派組織を壊滅すべく、ベルファストに潜入していた。だが、罠を承知で乗りこんだ敵地で、思いもかけぬ反撃を受けてしまう。それを救ったのが、突然オートバイに乗って現われた謎のライダーだった。しかも驚くべきことに、そのライダーは「1月30日」のメンバーであることが判明する。いったい、彼らは何の目的でディロンを救ったのか?やがて、「1月30日」の次なる標的がアメリカ合衆国上院議員であるとの情報が入り、ディロンたちはホワイトハウスへと赴くが…。
デイヴィーはガールフレンドもいない、読書好きのごく平凡な高校生。でも、彼にはひとには真似のできない能力がそなわっていた。それは、ジャンプできることだったー何百マイルも離れた場所へと一瞬のうちに移動できるテレポーテイションの能力である。ふとしたことから、自分のテレポーテイション能力に気がついたデイヴィーは、乱暴者の父の財布から金を盗みだし、ニューヨークへと向かったが…痛快無比な冒険SF。
ニューヨークで心機一転して、デイヴィーは自分のテレポーテイション能力をいかし、ジャンパーとして新たな人生を歩みだした。ある日、ブロードウェイでミュージカルを見ていて、オクラホマ州立大の学生ミリィと出会い、彼女とつきあいはじめる。だが、楽しい日々は長くは続かなかった。ある事件をきっかけに、デイヴィーはテロリストたちと戦いはじめた。しかも、国家安全保障局からも追われるはめに!心躍る冒険SF。
大河の神が唯一神として君臨し、その力を授かった王が絶対的権力をもって統治するノール王国。この国の王女ヘジも12歳となり、大河の神の力を発現しつつあった。一方はるか北の大地では、あらゆるものに神々が宿っていた。美しい小川の女神を恋する族長の息子ペルカルは、重大な使命を帯びて「森の主」に会うべく旅立ったが…南国の王女ヘジと北の部族の族長の息子ペルカルの数奇な運命を描く傑作異世界ファンタジイ。
北の部族の族長の息子ペルカルは「森の主」の洞窟でついに神の剣を手に入れることに成功した。この“ハルカ”と呼ばれる剣には、七本ある心臓の糸が一本でも残っているかぎり、その使い手を再生することができる怖るべき力が秘められていた!大河の神の力を秘めた南の王国の王女ヘジの呼び声に応えるかのように、ペルカルは大いなる大河を下り、ノール王国へと導かれていくが…期待の俊英が描く傑作ファンタジイ巨篇。
フラニーは、ニューヨークの大学で創作講座を教える講師。近所では喉を切り四肢を解体する猟奇的な女性連続殺人が起こっていた。聞きこみにきたマロイ刑事の話から、先週バーで偶然見かけた男が殺人犯らしいとわかる。だが、見たのは男の手首にあったスペードの刺青だけ。しかも、マロイの手首にも同じ刺青が!マロイが犯人かもしれないと思いながらも、フラニーは彼に惹かれていく…話題のエロティック・サスペンス。
九十キロを越す巨体、無作法、口の悪さは超一級ーそんな型破りの“アンチ・ヒーロー”、ダルジール警視は、その桁外れの魅力でミステリ・ファンの圧倒的な支持を受けてきた。本書では、彼が部下のパスコー警部とともに四つの難事件の謎に挑戦する。ダルジールとパスコーの出会いを描いたものや、2010年の近未来を舞台に、月面で初めて起きた殺人事件の顛末など、英国ミステリ界きっての実力派が贈る魅力あふれる中篇集。
驚愕の陰謀、迫るタイムリミット!アメリカ政府を襲う、史上最悪のシナリオ。国防総省で密かに進行するクーデター計画を阻止すべく、元特殊部隊兵がただひとり死力をつくす。元ノンフィクション作家が国防次官も驚嘆させた情報力を駆使して描く、大型スケールのポリティカル・サスペンス。
カリフォルニア北部の森のなかで、少女ネルは両親とバレリーナをめざす一歳上の姉に囲まれて暮らしていた。自然に抱かれ、のびのびとした生活を送る一家。しかし、そんな暮らしにも突然暗い影がさしはじめた。優しかった母が癌で亡くなり、しかも、その頃から電気も電話も使えなくなってしまったのだ。町へ行っても食料やガソリンが手に入らなくなった。大きな戦争や災害が起きたためだという噂が流れていたが、本当のことは誰にもわからなかった。電気製品が使えず、食料や日用品を節約する生活は苦しかった。ネルたちは木を切って薪にしたり、保存食を作ったりして乗り切ろうとするが、今度は父が大怪我をして死んでしまった。森のなかで二人きりになってしまったネルと姉は、自分たちの力だけをたよりに、野菜を育てたり、力仕事もして生きのびていく。しかし、やがて二人の運命を大きく変える恐ろしいことが起きて…。