出版社 : 早川書房
ヴェネツィアで消えた富豪の生死を確かめてほしいー刑事警察のゼンは、昔の恋人から思わぬ仕事を頼まれた。行方不明の男は、彼女の夫が勤める法律事務所の顧客だという。多額の報酬を約束された彼は、口実をつくり生まれ故郷のヴェネツィアに赴く。が、そこで複雑怪奇な事件に巻き込まれることに…英国推理作家協会賞を二度受賞した名シリーズの最新作。
女性作家ベネットが愛児を急病で失い、ショックで倒れてから何日過ぎただろう。葬儀の手配などに煩わされずにすんだのは、母モプサがいてくれたおかげだった。だが、心を病むモプサは、ベネットのために他人の子ジェイを誘拐してしまった。罪悪感のかけらもない母への憤り、虐待されてきたらしいジェイへの愛…心の揺れるベネットが選んだ道は…。英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞に輝く、傑作心理サスペンス。
頑固一徹の強引な捜査ぶりがたたって、警察を辞職した元警視ピーター・ダイヤモンド。ロンドンのハロッズ・デパートに警備員として雇われたが、閉店後に鳴った警報ベルが、ふたたび彼を失職させることになった。夜の家具売場で発見された日本人の少女は自閉症らしく、まったく口をきかなかった。少女がもぐりこんでいるのを見逃したためにクビになったダイヤモンドは、誰ひとり身内が名乗り出ない少女の境遇に同情して、親捜しに乗り出す。ところが、ダイヤモンドに少し心を開したかに見えた矢先、少女は母親と名乗る女性によって、預けられていた施設から誘拐されてしまった。怒り狂ったダイヤモンドは、ロンドン巡業中にこの話を聞いて助力を申し出た力士、山形をスポンサーとして、誘拐者を追いニューヨークへ飛ぶ-。
ロンドンのシティで活躍する美貌の外国為替ディーラー、セーラ・ジェンセン。彼女はある日突然、イングランド銀行総裁から呼び出され、インサイダー取引の極秘調査を依頼される。シティ内の不正を内密に処理したいというのだ。疑惑の対象は大手アメリカ系マーチャント・バンク、ICBの外為部門。新しいチーフ・ディーラーが着任して以来、収益が異常に伸びているという。好奇心をかきたてられたセーラは任務を引き受け、外為ディーラーとしてICBに潜入する。だが、じつは、総裁は裏でMI6の麻薬犯罪局局長と密約をかわしていた。彼らの真の目的は、インサイダー取引に関与していると思われるイタリアン・マフィアのトップ、フィエリの尻尾を捕まえることだったのだ。そうとは知らないセーラは、ディーリング・ルームなどに盗聴器を仕掛け真相を探っていくが、疑惑の渦中にいるチーフ・ディーラー、ダンテ・スカルピラートとはからずも恋に落ちてしまう…。元敏腕女性ディーラーが、虚々実々の金融界を背景に描いた、英米で話題沸騰のサスペンス。
極寒の惑星「氷瀑」に育ったマロリーは、正式にパイロットに任命されるやいなや“エンティティ”と呼ばれる宇宙のバイオ=コンピュータとの接触に成功した。その結果、人類を救う鍵“古エッダの秘密”は最古のDNAにしるされていると判明。マロリーは、ネアンデルタール人のDNAを自らの遺伝子に組みこんだアラロイ人を求めて新たな探索行へ旅立つが。生命の究極の謎を追うマロリーの活躍を描く傑作長篇。
太陽系が5分間の未来に移行したローリン・デイから3年、太陽系帝国の植民世界には不穏な空気が満ちていたー惑星プレクールの総統制官エシボン・ヘリヘットがローダンにかわって大執政官の地位につき、帝国の最高権力を奪取すべく画策をはじめたのだ。さらにヘリヘットに加担するティーパ・リオルダンによりアトランが誘拐されるにいたって、ついにローダンは、みずから太陽系艦隊5万隻を率いプレクールに赴くが…。
きょうはアプロの666歳の誕生日。ラテルはいやな予感がした。あんのじょうチーフからアプロともども苦情処理係勤務を命じられた。「しっかり矢面に立って、海賊課を守れ」とチーフはいう。そんなことをしたら体じゅう穴だらけだ。ところが苦情映話を受信しはじめたディスプレイの上に、時を超えたラテルの叔父が現われた。ラテルの家族の宇宙キャラバンを襲撃した真犯人を捜してほしいというのだが…人気シリーズ第5弾。
1917年4月、ロシア革明の動乱下、幽閉された元皇帝ニコライ二世一家を救出すべく、日英共同の秘密作戦が立案された。英国情報部は臨時政府との交渉役に作家サマセット・モームを派遣。一方、日本陸軍は、救出隊隊長にロシア語に堪能なはみだし中尉志摩薩之介を任命。中尉と不良兵卒ばかりからなる“陸軍懲治隊”の選抜兵7名の決死隊は、極寒のシベリアへと潜入した。歴史冒険小説の雄、典厩五郎の代表作、加筆決定版。
レーニンの率いるボルシェビキが政権を奪取し、内戦状態にあるロシア。志摩中尉率いる救出隊は、皇帝一家が幽閉されているトボリスクにようやく辿りつく。同じ頃、怪僧ラスプーチンが秘匿したというロマノフ王朝の厖大な財宝を狙う元秘密警察のイワノフも、手がかりを追って同地へ。皇帝救出は成るか。秘宝は誰の手に。皇女マリーヤと志摩中尉のロマンスと必死の脱出行。多彩な人物が描き出す波瀾万丈の歴史冒険ロマン。
ヴェトナム戦争に陸軍の看護婦としておもむき、第21後送病院で働くメアリー・ダミーコ中尉は、戦争の悲惨な実態に直面した。母親や恋人の名を呼ぶ、重傷の兵士たち。傷のため、手や足や顔をなくした兵士。顔はあっても胸から下がなくなっている兵士。そして数えきれない死体。やがてメアリーは奇妙な夢を見るようになった。次の日に見る兵士の傷を前もって夢に見るのだ。しかも、その兵士の死まで夢で予知するのだが…。
不思議な能力を使えるようになったのはダミーコ中尉だけではなかった。危地に陥ると、すべてが青く染まり時間がゆっくりと流れはじめ、敵の銃弾にあたらずにすんでしまうバルサム中尉。軍用犬とテレパシーで交信できるクーパー伍長。他人の心を読めるケリー大尉ーこうした「才能者」を集めて、ヴェトナム戦争のさなか秘密裡に行なわれた「オランウータン作戦」とは…極限状態におかれた兵士たちを描く話題の戦争小説。
フレッド・フィッチは詐欺師に騙されてばかりいる不運な男。そんな彼に、顔も知らない叔父の遺産がころがり込んできた。だが叔父は詐欺の名人で、誰かに殺されたことがわかった。やがて怪しげな人々が現われ、彼は命まで狙われるはめに、このとんでもない事態をいったいどうるのか。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞した酒落た笑いのミステリ・
謎の知性体によって建造された巨大宇宙船ラーマ3が、火星軌道上で2000人の人類を収容するやただちに太陽系を離れ、恒星タウ・セティめざして旅立ってからすでに3年の歳月がながれていた。このあいだに、ニュー・エデンと呼ばれるようになったラーマ内部の人類コロニーでは、独裁者ナカムラが権力を掌握しすべての反対派を容赦なく弾圧した。ラーマ2探査隊の時からのメンバーであったニコルは反逆罪で投獄され、一方彼女の夫リチャードはニュー・エデンを脱出、やがて隣りあった封鎖居住区に住む共生異星種族と接触し、その助けをかりてニューヨークへと逃れた。ニコルの処刑の日が刻々と近づくなか、リチャードは2体の小ロボットをニュー・エデンに潜入させ、必死のニコル救出作戦を開始したが…。
無事にニュー・エデン脱出に成功したニコルとリチャードは、つぎに友人たちと子供たちの救出を計画し、見事成功させた。だが、独裁者ナカムラは追及の手をやすめず、ついにニューヨークにまで捜索隊を派遣してきた。からくもニューヨークを離れることができたニコルたち一行は、やがて、これまで敵対的と考えられてきた異星種族クモダコの驚異の都市-エメラルドの都に迎え入れられた。驚嘆すべき生物工学を発展させてきたクモダコたち…だが、ナカムラに率いられた人類戦闘部隊は、シリンダー海をこえてクモダコの領土に侵入、エメラルドの都へと近づきつつあった。
新型麻薬の流通ルートを追い、女刑事レノアは捜査を開始した。そんな折り、郵便局の使用されていない私書箱9号宛てに不気味な小包が届けられるが…。独創性に満ちた衝撃の長篇。第1回ミステリアス・プレス・コンテスト最優秀作。
私立探偵のジョン・タナーは、大学の同窓会で二十五年ぶりに再会した親友のセス・ハートマンから一通の手紙を渡された。それは〈南部の誇り〉同盟と名乗る白人極右集団が、セスに宛てた死刑宣告状だった。現在チャールストンで弁護士をしているセスは、大学時代に公民権運動に参加したことを除けば、脅迫を受ける心当たりはまったくないという。なぜ彼らはセスを標的にするのか。背後関係を探りはじめたタナーは、セスの依頼人たちも同様の脅迫を受けていることを知る。やがて、狂信的な極右集団は、十字架を燃やすなどその脅迫手段をますますエスカレートさせてきた。
スーパー・ミュータントは、ついにローダンの旗艦『インターソラー』にその魔手をのばした。太陽系艦隊将校ホイブライン少佐を捕らえるや、その体内に必殺の罠をしかけ、ローダンのもとへと送り帰したのだ。胸さわぎをおぼえたローダンたちは、ホイブラインを惑星シシュターに降ろした。だが追尾していたコレッロの宇宙船も同星域に出現、ここに『インターソラー』とスーパー・ミュータントとの壮絶な死闘が開始された。
あらゆるものを螺旋として捉え、それを集め求める螺旋蒐集家は、新宿のとあるビルに、現実には存在しない螺旋階段を幻視した。肺を病む岩手の詩人は、北上高地の斜面に、彼にしか見えない巨大なオウム貝の幻を見た。それぞれの螺旋にひきこまれたふたりは、混沌の中でおのれの修羅と対峙する…ベストセラー作家、夢枕獏が仏教の宇宙観をもとに進化と宇宙の謎を解き明かした空前絶後の物語。第10回日本SF大賞受賞作。
人は、幸福せになれるのですか。野に咲く花は幸福せであろうか。-螺旋蒐集家と岩手の詩人、ふたつの孤独な魂から成る人間、アシュヴィンは、いくつもの問を胸に、果てしなく高い山を登りつづけていた。長い修羅の旅を経て、彼がその答にたどりついたとき、世界を驚嘆させるなにかが起きる…進化とは。宇宙とは。人間とは。究極の問に対する答を破天荒な構成と筆致で描きあげた、これは、天についての物語である。