出版社 : 早川書房
ニューオーリンズの街を熱くするカーニヴァルの興奮は、山車にのった〈王〉の登場で頂点に達した。そのとき、沿道のバルコニーにいたカウガール姿の人物が腰の拳銃を抜き、おどけた調子で〈王〉に狙いをつけると、引き金をひいた。次の瞬間、〈王〉は床にくずおれた。事件を目撃したスキップ・ラングドン巡査は、被害者を知っていた。学校時代の友人の父親、ニューオーリンズの政財界を牛耳るサンタマン家の主人チョンシー・サンタマンだ。市民権運動の熱心な活動家として人望も厚かった彼が、なぜ?サンタマン家の知りあいということで交通巡査から殺人事件の捜査に抜擢されたスキップは、初めての経験にとまどいと興奮を覚えながら捜査にあたった。だが、旧家の歪んだ人間関係の裏には、思いも寄らない衝撃的な秘密が…。猥雑なエネルギーに満ちた街を舞台に、旧家の悲劇を重厚な筆致で描く、アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作。
ルパートは、フォレスト王国の第二王子。父王にうとまれている彼は、ある日、ドラゴン退治に行くようにと命令を受けた。ドラゴンの住み処にたどりつくには、デモンどもが跳梁する危険なやみの木の森を通り抜けていかなければならない。邪魔な第二王子を厄介払いしようという父王の目論見は見えすいているが、命令とあってはしかたがない。ルパートは気のいいユニコーンを乗馬がわりに、ドラゴン退治の旅に出発したが…。
生きたドラゴンと生贄の王女を伴ってフォレスト王国にもどったルパートを待っていたのは、やみの木の森が突如拡大を始め、デモンどもが村や町を荒し回っているという知らせだった。デモンを統べる邪悪の領主が太古の闇からよみがえったのだ。邪悪の領主に対抗できるのは、森の奥に蟄居する大魔法使いただ一人。大魔法使いに協力を要請するためにふたたび旅立ったルパートの運命は。新鋭が贈る壮大な冒険ファンタジイ。
サイゴンの広報室に勤務する下士官ペインは、いま軍事法廷の裁きを待っていた。彼は、同僚の元特殊部隊員ウイリンガムを戦場で射殺した罪に問われていたのだ。ウイリンガムは、特殊部隊中佐が組織した私兵部隊の不正行為に関係した疑いをもたれていた。ペインはそのウイリンガムの調査を軍とCIAから要請されていたのだ。だが、いったいなぜ、ペインは同僚を射殺しなければならなかったのか?戦場の闇に潜む秘密とは?
心ならずも同僚の過去を探っていくうち、ペインは、罪もない住民を虐殺して私腹を肥やす軍人たちの陰謀を知る。私兵部隊の一員だったウイリンガムは、不正の証拠隠滅を図る上官から裏切られ、九死に一生を得ていたのだった。私兵部隊の所在をつかんだペインとウイリンガムは対決のためジャングルの村に向かう。だが、そこでは思いがけない展開が彼らを待ち受けていた。極限の戦場での友情と正義を描いて感動を呼ぶ力作。
賭博師のボーモンは、建設会社を経営する友人のマドヴィッグから大胆な計画を打ち明けられた。地元の上院議員の後ろ盾となって、市政の実権を握ろうというのだ。が、その矢先、議員の息子が殺され、関係者のもとにマドヴィッグを犯人とほのめかす匿名の手紙が届けられた。窮地に立たされた友のため、ボーモンは自ら事件の渦中に飛び込んでいく。非情な世界に生きる男たちを鮮烈に描くハードボイルドの雄篇。新訳決定版。
わたしは自分の目を疑った。これは二年前にイタリアで盗まれたルーベンスの名画だ。それがなぜこのアメリカの、複製画輸入会社の倉庫なんかに?事件解決の糸口をつかむため、わたしはイタリアへ飛んだ。が、そこにはとんでもない危険が待ちかまえていた…。謎解きの面白さ溢れる『偽りの名画』につづく、美術館学芸員クリス・ノーグレン・シリーズ第二弾。
2021年、全世界でなぜか子供が生まれなくなって四半世紀が過ぎた。出生率が低下していっても、自分の子供はおろか、文明を受け継ぐ人類の子孫さえ得られなくなるとは、当初は誰も予想だにしていなかった。だがいまや、どんなに素晴らしい文化遺産を残そうと、数十年後にはそれを見る人間は一人としていなくなるのだ…。それが明らかになったとき、社会はどうなるか?絶望と無気力が、世界中を覆った。イギリスでは国守ザンが絶対的な権力を握り、できるだけ最後まで国民の生活水準を維持すると約束していたが、老人の自殺があいつぎ、出産を夢見る女性は想像妊娠をした。ザンのいとこで大学教授のセオは、ある日ジュリアンという若い女性と知りあい、惹かれるものを覚えた。だが、彼女は反体制組織のリーダーの妻だった。組織のメンバーから、セオはザンの執政の恐ろしい裏側を知らされる。組織がザンに目をつけられ、ジュリアンが助けを求めてきたとき、セオは思いがけない逃亡生活に巻き込まれていった。イギリスのミステリ界の実力派が新境地を拓いた、話題の近未来サスペンス。
大西洋横断ヨット・レース優勝などで名を馳せ、いまは造船所を経営している英国の冒険家ブラックバーンは、愛する妻が殺されたことを知った。二人一緒に帆走に出かけるはずだった船が、偶然妻が一人で乗っているあいだに何者かによって爆破されたのだった。警察の推理を聞いて、ブラックバーンは耳を疑った。遺産相続を狙った、娘のニコルの仕業ではないかというのだ。そんなはずはない、と彼は激しく否定した。勇敢なヨット乗りだったニコルは、双子の弟が死んでから不安定になり、ある日過激な環境保護組織〈ジェネシス〉に身を投じると宣言して出奔したまま消息を絶っていた。そんな折、核実験への抗議運動を報じる新聞写真の中にニコルが写っているのをブラックバーンは発見した。いまや残されたただ一人の家族への思いに衝き動かされ、娘に会うため、彼は旅立ちを決意する。それが、神のつくった最後の土地、嵐吹きすさぶパタゴニアの海まで続く苛酷な闘いの旅になるとは知らずに…。英国冒険小説の新旗手が放つ、白熱の冒険サスペンス。
アリアドニは16歳。デンヴァー・スプリングズで母親とともに生物ロボットの軍事研究をしていたのに、対ケベックの戦局激化を理由に、中立地域の街に一人で疎開させられてしまった。疎開先で研究を続ける彼女だが、最近故郷からの手紙がとだえたのが気がかり。両親になにかあったのだろうか?意を決して疎開先を脱走、帰ってみると故郷はすっかり変貌していた…。戦時下をはつらつとして生きぬく少女科学者の青春冒険譚。
アメリカの片田舎で自動車整備工場を営む魔法使いトーキング・マン。ひとり娘のクリスタルと気ままな生活を送っている。ところがある日、見知らぬ女に殺されかけたトーキング・マンはお客の大学生ウィリアムズから車を奪い、謎の失踪を遂げてしまった。残された二人はおんぼろクライスラーを駆って、長い長い捜索の旅に出るのだが…。北米大陸から時の果てまで続く冒険旅行をポップなタッチで描いたSFロード・ノヴェル。
日本企業ナカモトがロサンジェルスに建てた超高層ビルで、美人モデルが殺された。緊急連絡をうけた渉外担当官のスミス警部補は、日本人絡みの事件に豊富な経験を持つコナー警部とともに現場へ急行する。しかし、ナカモトの現場責任者イシグロは、なぜか強硬に捜査を拒む。しかも、犯行時の現場が映っているはずの警備用ビデオテープは、何者かに持ち去られていたー。センセーショナルな反響を呼ぶ日米経済摩擦ミステリ。
「本当の楽園だったときのペポニにいたかった」ペポニにまつわる話を集めるブリーンに思い出を語る者は、一様にそういう。惑星ペポニースワヒリ語で楽園を意味する名前のこの星に、人々はなにを求めたのか?宝石の眼を持つ大型獣の狩猟に命を賭けた凄腕ハンターのハードウィク、独立を望む原住異星人と人類の闘争の時代を生きた女性作家アマンダ…。さまざまな時代の生き証人たちが語る、楽園という名の惑星の年代記。
少年王ケルソンの右腕、モルガンとダンカンは、デリニの血を引くことを理由にとうとう教会から破門されてしまった。それからというもの、グウィネド王国ではデリニに対する人々の憎悪が再燃し、反乱は拡大の一途をたどった。そしてついに事件は起きたー。ケルソンの叔父の率いる王国軍が反乱軍に襲撃されたのだ。さらに、内乱に乗じて王国を侵略しようと、デリニを王に戴く隣国が戦の狼煙をあげた…。シリーズ完結篇。