出版社 : 早川書房
大富豪だった伯父が、わたしを遺産相続人に指名していた?売れないクラブ歌手のジェインには願ってもない話だった。これで貧乏暮らしともさよならできる。だが話はそう甘くなかった。遺産を受け取るためには、解決の見込みのない難事件を探し出し、独力で解決しなければならないというのだ…。史上初のボランティア世直し探偵登場の、新シリーズ第一弾。
老後を送る裕福な人々が住むフロリダ。ここにはその金持ちたちを狙って、さまざまな詐欺師が集まっていた。それを取り締まるため、新たな捜査機関が創設され、警察や財務省などからメンバーが派遣されてきた。その一人、女性警官のリタ・サリヴァンは、不思議な魅力をもつ天才的な詐欺師デイヴィッド・ラスボーンの調査をする囮捜査官になった。もぐりの証券業者、密輸関係者など、ひと癖もふた癖もあるラスボーンの仲間たちにも、捜査官が割り当てられた。やがてラスボーンは、仲間と共に、ふたつの大仕事に取りかかる。捜査官たちは彼らをぴったりとマークしていたが、ここで思わぬ事態が起きた。リタがラスボーンに心を奪われてゆき、捜査に支障が生じてきたのだ…。ありとあらゆる手を使って繰りひろげる巧妙な詐欺。そして、リタとラスボーンの危険な大人の恋。人気作家がしゃれたタッチで描くサスペンス長篇。
1948年、ロサンゼルス。飛行機工場を馘になった黒人労働者イージー・ローリンズは、家のローンを返すため、どんな仕事でも引き受ける気でいた。とはいえ、自分が探偵の真似事をして人さがしをすることになろうとは、思ってもいなかった。さがす相手は、黒人のもぐり酒場に出入りする美貌の白人女ダフネ・モネ。なにやら厄介ごとの匂いがぷんぷんした。だが、仕事の選り好みをしている余裕はない。イージーは手はじめにジャズ関係者が集う非合法のナイトクラブ〈ジョンの店〉を訪れ、そこでダフネを知っている黒人女を見つけだした。ところが、ダフネの居場所を聞き出すまえにその女が無残な撲殺体となって発見されたことから、事件は思わぬ方向へ。アメリカ私立探偵作家クラブ賞、英国推理作家協会賞の処女長篇賞をダブル受賞し、クリントン大統領からも絶賛された衝撃のデビュー作、ついに登場。
爆発性血液ペストをまぬがれたロワ・ダントンと「フランシス・ドレーク」の乗員たちは、惑星プリズン2で必死に生き延びようとしていた。この危地を脱出できるかどうかは、獅子人間グラドに化けている謎の敵の動向にかかっている。だが、にせグラドの真の計画は依然として判明していない。しかも、病気に対抗するため使った血漿共生体に拒絶反応を示す乗員が続出。絶望的な状況で戦いつづけるダントンたちの運命は…!?
人類居住宙域と銀河系深部を結ぶゲイトウエイの開通から90年。人類は意欲的に銀河へ進出し、多くの船が新世界めざしてこの天空の水路を下っていったー。少女クローディの乗る〈チャリティ〉もそんな植民船の一つだった。だが航行中の同船は、空間を思いのままに破壊する獰猛な異星人スロッグに襲われる。逃げ場のない水路の中で、一行は生き延びることができるのか…。未知の試練に直面した少女の冒険を描く力作宇宙SF。
発見当初、惑星エピメテウスは自転していないとみなされ、人々は大量の放射線を浴びる昼側を避けて夜側にナイトサイド・シティを築いた。が、その後の調査で惑星の自転が判明。シティは遠からず昼側に移動し、居住不能となる運命だ。シティの片隅で探偵稼業をいとなむカーライルは、ある日依頼人からシティ買い占めの動きがあることを聞く。“夜明け”を間近にしていったいなぜ…。タフな女探偵が活躍するミステリSF。
フォークランド紛争の英雄でヨットマンのニックは、海運王カソーリから恐るべき依頼をもちかけられた。外洋レースに出場するニュースキャスター、バニスターの艇に乗り、彼を誤った海域に導けというのだ。バニスターはカソーリの娘を殺害したと噂されており、洋上で何かが起きることは間違いない。依頼を断わったニックは、陰謀を阻止すべく愛艇で激浪の海域に急行する。英国冒険小説の新旗手が放つ傑作冒険サスペンス。
現場に残された血まみれのナイフと、胴体を切り裂かれた人形ー。リンダの脳裏には、三年前の忌まわしい光景が焼きついていた。娘のエイミーが何者かに惨殺されたのだ。容疑はリンダ自身にかけられ、裁判で無罪が証明されたものの、以来、彼女は人目を避けてひっそりと暮らしてきた。が、彼女の身辺でふたたび殺人事件が起こり、現場にはまたもや切り裂かれた人形が…。繊細な筆致と豊かな感性で紡ぎだす出色のサスペンス。
わたしは夢に破れた男だ。念願だった司祭にもなれず、今は友人の法律事務所で調査員をしている。今度の仕事は、四十年前の自家用飛行機墜落の事故状況を探ることだった。事故で兄を失った大実業家の依頼だ。調べるうち、何者かが飛行機に細工していたらしいことが判明した。そして背後に潜む複雑な人間関係も…。過去の深い謎を追う調査員オーエンが見た意外な真実とは?期待の新人が描く、自己再生を賭けた男の物語。
のっぽでニキビだらけの高校生アンディは、近視で運動音痴の醜い男の子。ひと目惚れした同級生プレストンも、少しは興味を示してくれたハンサムな転校生ライアンも、アンディのニキビ・コンプレックスを増長させるばかり。でも、醜い自分が美しいもの(とくに美少年!)に惹かれてしまう性癖はどうしようもなく、たまに女の子とうまく行きかけても彼の心は今一つはずまない…。70年代の地方都市を舞台に、ゲイのみならず誰もが持つ思春期のコンプレックス、疎外感をユーモア溢れるポップな文体で描く。
休暇でしばし仕事を忘れていたモース主任警部は、〈タイムズ〉紙の見出しに思わず目を奪われた。記事によると、迷宮入りした一年前の失踪事件を解く鍵となりそうな詩が匿名で警察に送られてきたというのだ。モースは去年の夏に起きたその事件を憶えていた。休暇でイギリスを旅行していたスウェーデン娘が、ヒッチハイクでオックスフォードまできたあと、ぷっつりと消息を絶ったのである。詩が暗示するように、娘は森の中にいるのか?だとすると、すでに死体となって森の奥深くに埋められているということなのか?一篇の詩から万華鏡のごとく華麗な推理がつぎつぎ展開される、英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー受賞作。
テレビ・コマーシャルは、たしかに効き目があった。暇をもてあましていた私立探偵アルバート・サムスンのもとに、依頼の電話が急にひっきりなしにかかってくるようになったのだ。しかし、そういいことばかりはつづかなかった。警察が血眼で追っているテロリスト・グループからも、仕事を依頼されたのである。環境保護を訴えるこのグループは、爆発しないようにセットした爆弾を公共の場に仕掛け、それを自ら警察に通報するという手口で、マスコミの注目をあつめていた。ところが、仕掛けた爆弾のひとつが何者かに盗まれてしまったという。死傷者がでるまえに爆弾を回収してほしいと依頼されたサムスンは、警察に届けるよう勧めるわけにもいかず、仕方なく調査をひきうけた。やがて警察の追及の手はサムスンにまで…。追いつめられたサムスンが男の意地をみせる話題作。
永遠の生命を持つ美しき魔女クンドリーは、世界制覇の野望を抱く魔法使いクリンゾールに仕えていた。今度の使命は、聖杯の守護者アムフォルタス王を篭絡し魔力の源である聖杯を手に入れることだった。だが、あろうことかクンドリーはアムフォルタスを愛してしまった。愛を貫くためにクリンゾールに逆らおうとするクンドリーを待ち受けていた運命は。ワーグナーのオペラ『パルジファル』に材を取った歴史ファンタジイ。
ぼくが命を狙われはじめたのは、あの夜の記憶を取り戻してからだった。三十年前、空襲激しいベルリンで、ぼくは母が殺される現場を目撃していたのだ。が、犯人の顔がどうしても思い出せない。命を狙われるのは、あの夜の出来事が原因なのか?精神分析医の催眠療法で十歳の自分に戻ったぼくは、悪夢の渦巻く記憶の中へと踏み出すー。異色の心理サスペンス。
シチリアの因習的な田舎町に住むアンネッタは十六歳の少女。いつも両親のきびしい監視があって自由に行動することもできない環境のなかで、神様にあこがれ修道尼になりたいぐらい。はては神父が僧衣の下にはいているズボンにまであこがれる。だが、ズボンは男か淫売がはくものと母親に教えられ、男にはなれないアンネッタは淫売になりたいと思う。淫売といっても、この地方の用語では「奔放な女」という程度の意味。そして、その典型みたいな同級生アンジェリーナと親しくなり、裕福な彼女の家に出入りするようなになって、ニコラというボーイフレンドができたものだから、家族は大騒ぎ。ついには無理矢理、叔父のところへ追放を決められる…。シチリア島南西部の港町リカータを舞台に、昔ながらの因習に翻弄されながらも自由にはばたこうとする思春期の女の子の普通の生活感覚をみずみずしくユーモラスに描く。ヨーロッパで記脇的ベストセラーをつづける、十九歳の著者のデビュー作。
「マミイィ!」助けを求める叫びが、惑星アルタイル中に響きわたった。これほどの思念を送れるとは、たいへんな超常能力の持ち主に違いない。惑星政府は発信者の捜索に全力をあげた。そうして救出されたのは、大規模な地滑りで壊滅した鉱山基地でただひとり生き残った少女ローワンだった。卓抜した才能に恵まれた彼女が、超常能力者として、女性として成長してゆくさまを、人気女性作家が情熱あふれる筆致で描く意欲作。