出版社 : 早川書房
父の形見の老朽船で海運業を営むポールは、英国議会の議員から驚くべき事実を告げられた。コンビュータ技師である兄のチャーリーが、政府の極秘プログラムを持って失踪したというのだ。船の修理費が必要なポールは、絶縁していた兄の捜索を不本意ながらも請け負う。だが彼は、やがて自分が世界の行方を左右する熾烈な争奪戦を展開することになろうとは、知るよしもなかった。冒険サスペンスの名手が新境地に挑む野心作。
ヴェトナム戦争が泥沼の様相を呈していた1969年。ハンバーガー・ヒルにほど近いエヴァンス基地に、一人の若者が着任した。彼の名はローク准尉。ヒュイ輸送ヘリコプターのパイロットだった。戦意に燃えてヴェトナムにやってきた彼は、その翌日から戦場の苛酷な現実を見る。小さな機関銃二梃しかもたないヘリで敵の砲火のただなかに降り立つ危険な輸送任務。朝まだきの発進の胸の高鳴り。そして戦友の無意味な死。やがてロークは、前線の実情を理解しない軍上層部と、その意を体した副中隊長のクレーブル大尉の卑劣さに怒りを募らせていく。その怒りは、クレーブルが臆病さから仲間を見殺しにしたとき、ついに頂点に達した。脆弱なヘリコプターを駆り、自らの腕だけを頼りに危険な任務を遂行する一匹狼パイロットの冒険と成長を圧倒的な迫力で描破、出版前から大きな話題を呼んだ航空戦争小説の白眉。
ロークはふたたびヴェトナムに帰ってきた。今度はカイオワ偵察へリのパイロットとして、ヴェトコンや北ヴェトナム正規軍を駆りだすのが任務だ。一方、クレーブルも自分の軍歴を守るため、ヴェトナムに戻ってきていた。アメリカ軍の撤退が始まり、厭戦ムードの広まるなかで、ロークは戦場で失なったものを取れ戻すためにヘリを飛ばす。やがて、そんな彼の前に、北ヴェトナム軍の大規模な前進基地が現われた。「ヘリコプターの戦争」と呼ばれたヴェトナム戦争の様相を、自らパイロットとして従軍した著者が、手に汗握る飛行シーンをまじえて描く戦争巨篇。
精神科医のデイヴィッド・エイバハートと牧師の娘レイニーは、結婚してシカゴで新しい生活をスタートさせた。だが、三番目の子供ランドールが自閉症であることがわかったとき、エイバハート家の試練が始まった。デイヴィッドはランドールを施設に入れることが本人と家族のためと考えたが、レイニーは自分の手で育てることが母親の使命だと主張して譲らなかった。そして、レイニーはデイヴィッドの反対を押し切って、さらに三人の子供を生む。このことが原因で二人の間は気まずくなっていった。いっぽう子供たちは、ランドールの存在や両親の不和に揺れ動きながらもそれぞれ個性的に成長、やがて波乱の青春時代へと突入していく。家族の絆とは何のなか?1950年代から70年代終わりまで、ヴェトナム戦争を経て激しく変わっていくアメリカを背景に、生命と家族の意味をあらたに問い直す感動のベストセラー。
本書は、あらゆる女の物語、母を失ったあらゆる娘の物語、時とともに力が衰えていくあらゆる女家長の物語、がむしゃらに人生を突っ走ってきたが、ある時ふと手綱を緩めてしまうあらゆる寡婦の物語である。
年上のアメリカ人の愛人リタはヒップでドライ。退廃ムード漂うオージィ・パーティにマモルを誘ったりもする。そしてある日、リタの許に現われたティーン・エイジャーのエミル。詩を書き、自閉症ぎみのエミルは、リタにはない魅力でマモルを強く惹きつける。ふたりの、愛しいものの間で揺れ動くマモルの心。やがて、エミルの過去、リタの企みが表出して、複雑な人間関係を綴っていく-。セックスと、ドラッグと、ロックの中を漂うラブ・ストーリー。
『じゃじゃ馬ならし』は、妻が夫に隷属することを賛美した、男性上位主義者のための作品よ。-シェークスピアの授業で生徒のひとりから出された意見を思い出しながら、英語教師のアマンダは女性虐待について書かれた本を手にとった。手頃な値段の古本だから、あの生徒に買ってあげたら喜ぶかもしれない。だが、本をひらいた途端、そんな考えはどこかにふっとんでしまった。ベージの余白に、夫の家庭内暴力に悩む女性の書きこみがあったのだ。夫に殺されるかもしれないと訴える人妻は、いったい誰なのだろう?なんとか探しだして、救いの手をさしのべてあげたい。アマンダは人ちがいをくりかえしながら、ようやく被害者の身元をつきとめた。だが、時すでに遅く、被害者の家を訪ねたアマンダは、そこで死体を発見するはめに…。おっちょこちょいだけど人一倍正義感の強い美人英語教師が素人探偵に挑戦する、好評シリーズ第三弾。
イタリアの大富豪が建てた浜辺の別荘で、当の富豪を含む四人の男女が惨殺された。別荘には最新の警備システムが張りめぐらされ、敷地内は巨大な密室ともいえる状況だった。刑事警察のゼンは事件の調査を命ぜられるが、やがて彼自身の前に謎の殺人者の影が…。英国ミステリ界の次代を担うと期待される新鋭の英国推理作家協会賞、ヨーロッパ・ミステリ賞受賞作。
〈EX=3333〉の船長ヴィヴィアー・ボンテイナーは、結婚したてのアルサリとともに南太平洋で休暇を楽しんでいた。ふたりは、テラの富豪ノエル・ミント=キシランのパーティに招かれ、深海ヨット《ポセイドン》による海底探検にさそわれる。発見されたばかりの古レムール人の遺跡を調査しようというのだ。だが、深海に向かったボンテイナーたちを待ち受けていたのは、二次制約者とアコン人による地球破壊の陰謀だった。
君のことを愛してはいないー。男と女の間にはこうして始まる恋もある。練達の楽器職人ステファンが美貌の新進ヴァイオリニスト、カミーユと出会ったのは、ヴァイオリン工房の共同経営者マクシムを介してだった。ステファンはマクシムの恋人カミーユから目が離せなかった。カミーユはその強い視線に愛を感じた…。二人の男性の間で心がゆらぎはじめた彼女は、自分の気持ちに素直になってステファンに愛を告白するが。
〈会社戦争〉は〈艦隊〉側の敗北で終結した。ステーションで絶望の日々を送る、元〈艦隊〉の軍人ベット。彼女は宇宙に出たいー心で、正体不明の辺境航行船ーリムランナーーに整備工と身分を偽って乗りこむ。ところがその船は、よりによって〈艦隊〉の生き残りを狩るスパイ船だったのだ。くせ者ぞろいの乗組員にかこまれて、一触即発の苛酷な宇宙生活が始まった。ヒューゴー賞受賞作家が放つ現代のスペース・オペラ。
なんとか西の魔道師と北の魔女の手を逃れたラップは、透視能力を買われて、ヨッツンのガトモルガ指揮する交易船〈嵐の踊り子〉号に奴隷として乗り組み、フェアリー島をあとにすることになった。しかし、イノスを捜しに船出する望みを果たすまもなく、〈嵐の踊り子〉号の本拠地がガルクの領主カルコル麾下の海賊に襲われ、ラップとガトモルは捕虜にされてしまった。囚われの身となったラップを待ち受けていたものは…。
皇帝アザク、伯母ケイドと共に后妃ラシャのもとを逃げ出したイノスは、四人の魔道師に会って自らの王位継承権に対する支持をとりつけるべく、長老エルカラトの率いる隊商に混じって中央都市フブへと向かっていた。ところが、エルカラトはイノスたちの監視を命じられたラシャ后妃の手先だったのだ。イノスとケイドとアザクはエルカラトの隊商から離脱し、三人だけでフブを目指すが…。壮大なスケールのシリーズ第三弾。
2077年中央アジア・タリム盆地。かつてのシルクロードはその地下に眠る膨大な石油資源をめぐって熾烈な争いの舞台となっていた。アジア国家連合は、敵国がロプノール湖岸に建設した軍事基地を破壊すべく“タリム7”を送り込んだー。タリム7とは、特殊能力を持つ犯罪者で構成される傭兵部隊。この一癖も二癖もある男たちをひきいて、隊長の白龍は人工知能に守られたハイテク要塞に挑む。新鋭が描く書下ろし痛快冒険SF。
ベルファストのホテル支配人ディロンの家に、突如IRAのテロ・グループが乱入した。彼らはディロンの妻に銃を向け、ディロンに自分の車をホテルまで運転するよう強要する。折しもホテルでは要人による講演会があり、IRAが車に爆弾を仕掛けて会場の爆破を計画していることは明白。だがそこには大勢の宿泊客がいた。妻の命と多くの人命の間で板挾みになるディロン。絶体絶命の窮地に立たされた彼のとった最後の手段とは?
冷戦終結後の中東で、ソ連とアメリカの外交使節団が相ついで謎のテロ集団に拉致された。米ソは極秘協定により、ただちに合同の特殊作戦チームを編成、救出作戦の準備に移る。一方、英週刊誌記者のガーリングは、中東支局のスタンセルから、事件が〈審判の天使たち〉なるアラブ原理派組織の犯行であるとの情報を入手。だがその直後、スタンセルは何者かに誘拐され、消息を絶ってしまった。俊英が放つハイテク軍事冒険巨篇。
カイロへ飛んだガーリングは、残された情報を手掛りにスタンセルの行方を追う。イスラエル情報部やエジプト警察、そしてアラブ原理派組織の思惑が複雑に錯綜するなか、やがて彼は事件の背後に横たわる巨大な陰謀を知る。だがそのころすでに米ソ合同特殊作戦チームは、ソ連の情報をもとに、レバノンにあるテロ集団の本拠地にむけ、救出作戦を開始していた。最新の軍事情報をもとに特殊作戦の全貌を描き、絶賛された話題作。