出版社 : 早川書房
狂熱風雲王とアムネシアの王女のあいだに生まれた男、グレン。育ての親のもとを抜け出し、放浪の旅を続けるグレンは、ある時ザハシャラモドンの町で囚われの身になった。持ち前の運と力で町を乗っ取ったグレンだったが…。一方アクラ山の頂上火口では、存在するものすべてを敵とする、究極の破壊者〈タルカス〉の誕生が迫りつつあったー。SF界の奇才・中井紀夫が渾身の力をこめて描き出す、大人のための神話物語第4弾。
ついに〈タルカス〉が誕生した。存在するものすべてを敵とする、究極の破壊者が目指すのはアムネシアー。そこはいまや戦乱の地となっていた。長年のグユの圧政をはねのけ蜂起したアムネシアだったが、狂熱風雲王はあらゆる手段でこれを押し潰そうとする。そして戦いがクライマックスを迎えようとしたとき…。〈タルカス〉が姿を現わした。中井紀夫が渾身の力をこめて描き出す、大人のための神話物語、堂々の第1部完結。
アメリカは優れた航空技術と数を頼みに北ヴェトナムの空を制しようとしていた。ソ連は劣勢の北ヴェトナム空軍を支援するため、腕利きのミグ・パイロット、チェルノフ中佐を派遣。一方、アメリカで宇宙飛行士になる訓練を続けていたバニスター少佐は、横暴な将軍の策謀でふたたびヴェトナムへ戻ることに。激しさを加えるハノイ上空の戦場で、米ソの名パイロットが激突する。『ローリング・サンダー』に続く航空戦争小説。
陸軍特殊部隊のローカート中佐はヴェトナムで多くの特殊工作に従事していた。その彼に極秘命令が下る。敵の生命線であるホーチミン・ルートを叩くため、監視チームを率いて、必要な情報を収集せよというのだ。ローカートはチーム内に敵方の工作員がいるとも知らずにラオスに潜入する。そのころ上空では、バニスターとチェルノフの死力を尽くした闘いが繰り広げられていた…。本物の迫力を持つヴェトナム戦争小説の白眉。
元ニューヨーク市警警官のジャック・デヴリンは、兄のジョージが飲み歩いている間に何者かの暴行を受け、瀕死の重傷を負ったことを知った。兄の足跡をたどると、明け方から昼にかけて営業する違法深夜クラブの存在が浮かび上がってきた。自らの手による報復を決意したデヴリンは、犯罪の渦まく街の裏側を支配する魔窟、深夜クラブの只中へと踏み込んでいく。
シアトルを拠点に躍進するハイテク企業ディジコムは、四日後に控えた巨大コングロマリットとの合併を前に大きく揺れていた。革命的な新商品として売りだす予定の高速CD-ROMプレイヤーは不良品が続出、仮想現実シミュレータの開発も暗礁に乗り上げている。これらのトラブルが発覚すれば、合併契約が流れることは必至だ。そんな折り、製造部部長のサンダーズは突然の人事異動を知らされる。自分がおさまると思っていた統轄責任者のポストに、なんとかつての恋人だった女性が就任することになったのだ。しかも就任当日、彼女は自分のオフィスにサンダーズを呼びつけ、セックスを強要してきた。妻子あるサンダーズは拒否するが、翌日、反対に彼はセクシュアル・ハラスメントの加害者として告発されてしまう-。常に時代を先取りしてきた鬼才クライトンが、セクシュアル・ハラスメント問題をテーマに据え、社内で熾烈なパワーゲームが展開する企業を舞台に描く、注目の大型エンターテインメント。
あたしの名前はエヴァ・ワイリー。新米の女子プロレスラーだ。ブスで大女だからとうぜん悪役だけど、プロレスが大好きだから文句はない。ふだんは自動車置場の整備員や、ミスタ・チェンていうちょっとヤバそうな実業家の使い走りをしている。トラブルに巻きこまれたのは、ミスタ・チェンのお使い先のクラブでガードマンのアルバイトを引き受けたりしたからだ。新しいバンドの出演で客が大勢いるところへ、警察の手入れがあるわ、どこかの馬鹿が催涙ガスを投げこむわで、クラブは大混乱。騒ぎのなかからバックコーラスの若い娘を救いだしたのまではよかったけれど、それからというもの、変な奴らにつきまとわれたり生命を狙われたり。どうやらクラブで救った娘が原因らしいんだけど…。タフな外見の下にやさしさを隠しもつ女子プロレスラーが、つぎつぎ襲いくる悪党どもから若い娘を守ろうと、孤軍奮闘の大活躍。英国推理作家協会賞受賞作。
カリフォルニアの草原の古びた農家で、少年は四次元空間の視覚的イメージを研究する老科学者と出会った。四次元空間では立方体や球はどんなふうに見えると思う?そう問いかけられた少年には、実際に四次元空間が見えていた。もともと音楽好きの少年は、四次元空間へ音楽のメッセージを送るのだが…。ヒューゴー、ネビュラ両賞に輝く表題作など、人気作家ベアの多彩な魅力を伝える八篇を収録した日本版オリジナル短篇集。
紀元前のフェニキアで生まれたハンノは不老不死だった。だが、それを普通人に知られると、魔法使いと恐れられ、悪魔と取り引きしたと忌みきらわれる。そこで、やむなくその正体をひたかくしにして生きていく。世界各地でごくわずかな確率で生まれているはずの同じ不老不死の仲間にいつか出会えると信じて…。3000年以上の歴史を生きる不老不死の人々波瀾万丈の冒険を巨匠アンダースンが描く傑作、堂々の開幕。
日本中のサラリーマンが夢中になっているコンピュータ・ネットワーク・ゲームがある。新入社員としてスタートしてキャラクターになりきり、幾多の苦難を乗り越えて、出世の階段を昇っていくー、その名もカイシャ・クエスト。だがある日、プレイヤーの一人である平凡なサラリーマン・村田は奇妙な事に気づいた。自分がゲームの中で作った資料が、現実の会議で他人の資料となって提出されたのだ…。傑作書き下ろし長篇。
心理療法士アランの治療していた患者カレンが自殺した。ある日、彼は新聞を見て愕然とする。自分と彼女の性的関係を示唆する事実無根の記事が載っていたのだ。身の証を立てるにはカレンの診療記録が必要だが、医師の守秘義務のためそれは公開できない。そんな折、女性患者二人が次々と奇怪な死を遂げる。患者の中に犯人がいると考えたアランは調査を開始するが、危険は彼の身辺に迫っていた。新鋭の精神医学サスペンス。
上陸部隊を従えた日本の巡洋艦戦隊が、南大西洋の英領フォークランド諸島に向かった。同島を占領し、英国の補給線を脅かすのが目的だ。英国海軍は南米南端のビーグル海峡で日本艦隊を迎え撃つべく、キャメロン少佐指揮するコルベット艦ブライアを派遣する。初の指揮艦を得たキャメロンだが、たかだか千トンの小艦に対して日本艦隊はあまりに強大。海峡の狭隘部を爆破して敵を阻止せんとする捨て身の攻撃は成功するのか?
クラシックを断念し、ジャズ・ピアニストに転向したジョニーは、無気力な毎日を送っていた。だが昔の恋人が何者かに殺され、彼の生活は一変した。彼女を熱愛していた骨董商が、ジョニーこそ殺人犯だと信じ、復讐してやると脅してきたのだ。数日後、彼は暴漢に襲われ、ピアニストの命である左手を砕かれた。はたして骨董商の差し金か?胸に怒りを秘め、彼は姿なき敵に立ち向かうー。気鋭の女性作家が放つ傑作サスペンス。
動揺するな。涙を見せるな。これが殺人事件を取材する記者の鉄則だ。だがホームレスの救援所で起きた凄惨な殺人に、わたしは思わず言葉を失った。ボランティアの女性が、傘で串刺しにされて殺されたのだ。いったい誰がこんなむごいことを。わたしは救援所にボランティアとして潜入し、ひそかに調査を始めるが、やがて次なる殺人が…。大都会の異常な犯罪を追う女性記者ナンの姿を、緊迫感溢れるタッチで描くサスペンス。
誰もが悪戯だと思っていた。荒野の岩山にペンキを塗りつけることに、目的などあるはずがない。チー巡査も同じ考えだった。だからこそ、犯人を見つけたと同僚が無線連絡してきたときも、すぐに駆けつけなかったのだ。だが、現場で彼が見たものは、炎上するパトカーと同僚の射殺死体だったー。アメリカ・ミステリ界を代表する実力派が放つ人気シリーズ第五弾。
一枚のフロッピーディスクに、ある大学教授の生涯の記録が打ちこまれていく-。彼の名はレオポルド・スファックス。フランスに生まれ、第二次大戦中には反ナチ運動に参加、その後アメリカに移民し、文芸評論集『悪循環』を発表して、一躍、時代の寵児となった。だが、彼の研究室に「彼女」が現われた日から、スファックスの栄光に満ちていたはずの過去は、もろくも崩れはじめる。そして、ついに起こった忌まわしき殺人-。英国文壇の俊英が技巧の粋を凝らして「究極のフーダニット」に挑む問題作。
ドイツとフランス、父と母、現在と過去、音と光、友情と裏切り、男と女…。主人公シャルルは親友とその妻との三角関係に悩み、ひたすら17世紀の音楽に没頭していく。鬼才キニャールが現代に甦らせる絢爛たるバロック小説。
ベッドで隣に横たわる妻のめそめそした泣き声を聞きながら、ピップは怒りと苛立ちを必死に抑え、寝たふりをつづけた。なぜこの女はセックスで愛を繋ぎとめようとするのだろう。透けたネグリジェを着ても、こちらの嫌悪感を掻きたてるだけなのに。彼が心を寄せる人は別にいた。魅力的な肢体をもつ、天使のような娘。だが、妻がいるかぎり、彼はその娘の愛を知らずに終わるだろう。殺意は一瞬のうちに形をとり、鮮明な光景となって脳裡に広がった。やるならいまだ…。弁護士ヘレン・ウェストは事件の報告書に腑に落ちないものを感じた。健康な中年女性が、原因もなしにある日突然就眠中に死ぬだろうか?検死では毒物は発見されず、死体を発見した夫ピップにも不審な点はなかった。だが、ヘレンの与り知らぬところでピップは若い娘への異常な愛を募らせ、自らの欲望を満たそうとしていた。英国女流の鬼才が放つ英国推理作家協会賞受賞作。