出版社 : 早川書房
冷戦下のベルリン。英国人の青年技師レナードは、英米情報部の秘密共同作戦のためにこの街に派遣されてきた。着いたばかりのある夜、レナードはナイトクラブで美しいドイツ女性マリアに声をかけられ、たちまち恋に落ちる。東側のソ連基地の通信を傍受するためにトンネルを掘るという秘密作戦に従事するかたわら、レナードの情熱は激しく燃えさかるが…。注目の英国作家が愛の悲劇をエスピオナージュ仕立てで描く話題作。
ついに刑事弁護士となったホープに、殺人事件の弁護の依頼が飛びこんできた。依頼人は、映画監督である妻を殺害した容疑で起訴された男だった。凶器のナイフと血痕がついた彼の服が、自宅の庭に埋められているのが発見されたのだ。不利な状況のなか、ホープは被害者の映画監督が極秘撮影していたフィルムが、何者かに持ち去られていることを知るが…。現代ミステリ界最高のストーリーテラーが新展開で描くシリーズ第7作。
マギーは詐欺師。ホテルのバーに一人座り、下心を覗かせて近づいてくる男から金品を失敬するのが仕事だ。ところがある日、網にかけた男シャンクスから逆に仕事を持ちかけられてしまう。ある男をカモにしてフロッピーを盗めば、一万ドル出すというのだ。話に乗ったマギーは、ジャマイカに飛ぶが…。二転三転する展開で一気に読ませる洒落た大人のサスペンス。
旅行作家のジェインは、不審な事故死をとげた有名女優セオの夫だった大学教授ロバートと結婚した。しかし、ある晩ナイトクラブでセオのものまねショーを見て以来、ロバートの様子がおかしくなった。セオそっくりのその〈演技者〉に心を奪われてしまったのだ。〈演技者〉は実は美貌の青年だった。ロバートとの関係がばれて、養ってもらっていたウェイトレスの部屋を追い出された彼は、次のパトロンとして女性カメラマンに接近していく。一方、夫の浮気を知ったジェインは離婚し、旅先で新たな恋人と知り合う。バレットという魅力的な男だった。ところが、思いもよらない罠がここにも待ち受けていた。〈演技者〉をめぐる男と女の間に張りめぐらされた運命の糸は、やがて女優セオの死の真相へと繋がっていく。エレガントで恐ろしいサスペンス。
「サダム・フセインの力を世界に示せ」イラクのフセイン大統領の命を受けた大富豪アルーンは、湾岸戦争のさなか、パリで一人の男に接触した。男の名はショーン・ディロン。元IRAのメンバーで、変装を得意とする名うての国際テロリストである。多額の報酬と引き換えにディロンは仕事を受諾、標的を訪仏中のサッチャーに定めるが、密告により暗殺は失敗した。密告者の情報から、暗殺を図った犯人がIRA関係者であることを知ったフランス情報部DGSEのエルニュ大佐と、イギリス国防情報部のファーガスン准将は、元IRAの闘士マーティン・ブロスナンに協力を要請する。ブロスナンは犯人がディロンだと断言するが、自ら行動することは拒否した。ディロンとの間には浅からぬ因縁があったが、今は硝煙の世界と訣別していたからだ。だが、やがて痛ましい事件が起き、彼は銃をとりディロンの行方を追い始める。一方、ディロンは新たな計画を進めていた。標的は英国首相官邸。戦時閣議が開かれているその官邸を迫撃砲で攻撃し、メージャー首相と閣僚を抹殺しようというのだ。だが、彼の背後には、ブロスナンの追跡の手が確実に迫っていた…。『テロリストに薔薇を』で鮮烈な印象を残したマーティン・ブロスナンが再び登場、冷酷なテロリストと宿命の対決を繰りひろげる。湾岸戦争中に実際に起きた英国首相官邸砲撃事件を題材に描く、白熱の冒険アクション。
無法者たちのパラダイス、フリーゾーンへようこそ。ここではドラッグは使い放題、税金はなし、他人に迷惑さえかけなければ何をやってもかまわない。ところが、お調子者のハッカーがタキオン発生機を作ってしまったために時空が大混乱。巨大カタツムリ、未来のロボット、ナチの突撃隊などが入り乱れ、ただでさえハチャメチャなこの街を史上最大最悪の大戦動に巻き込んでしまう…。ファン必読、大爆笑の痛快SFコメディ。
ケイス国王デュレクの手に落ちたジェイレンは、火刑に処せられる瀬戸ぎわでアサーヤに救いだされた。ところが、混乱のなかで今度はアサーヤが捕らえられ、いずことも知れぬところへ連れ去られて幽閉されてしまったー。それも、密封の呪文で魔力を封じられたまま。一刻も早くアサーヤを捜しだして呪文を解かねば、呪文の影響で彼女は廃人になってしまう。ジェイレンはアサーヤ捜索に全力を注ぐが…。シリーズ第3弾。
地中海で連合軍の反撃が開始された1943年。英国海軍特殊作戦部隊は枢軸国に対する進攻のつねに先鋒にあった。クレスピン少佐のコルベット艦シスル号もまた、ユーゴスラビアのパルチザン支援のためアドリア海に派遣される。この地のドイツ軍は巨艦を擁し、人民を支配していた。クレスピンは、巨艦の出港中に根拠地を攻撃、敵を行動不能に陥れようとするが…。人知れず影の任務に従事する男たちの苦闘を描く海洋冒険小説。
もう何年もまえのことだ。警察を辞め、妻子も捨てて、酒場に入りびたっていた私は、飲み友だちの依頼を引き受けることになった。妻殺しの嫌疑をかけられているので、真犯人を探し出してくれというのだが…。アル中探偵マット・スカダーの回想を通して、大都会の感傷を謳い上げたアメリカ探偵作家クラブ賞受賞の表題作をはじめ、当代随一のストーリーテラーが絶妙な筆さばきでつづる逸品20篇を収録した待望の傑作集第三弾。
困難な医療過誤裁判に勝利をおさめた弁護士のギャルヴィンは、その手腕を買われてボストンの一流法律事務所のパートナーになり、多忙な毎日を送っていた。そんなある日、彼のもとに一人の女性弁護士ティナが訪れてきた。動脈硬化や心臓病の特効薬ライオシンの副作用として先天異常の子供が生まれることが判明し、訴訟を起こしたいという。だが、ライオシンを販売しているアメリカのガーメット社と、製造元のイギリスの会社は共に巨大で、手に負えないので代わって起訴してほしいというのだ。ギャルヴィンはいったんは断わるが、薬害にあったという子供を見て心を動かされ、その依頼を引き受けた。そして法律事務所の幹部たちにこの件を語るが、意外にも却下されてしまう。ガーメット社は事務所の顧客だったのだ。ティナは一人で訴訟を起こした。そしてギャルヴィンは恩師の老弁護士モウ・カッツに、彼女を助けてもらえるよう頼んだ。だが、運命の皮肉か、ギャルヴィンの事務所がガーメット社の弁護をすることになってしまった。心ならずも恩師と対決する羽目に陥ったギャルヴィン。しかも、やがて訴訟の関係者が相次いで不審な死を遂げ、事態は奇怪な様相を呈してきた…。迫力と感動の第一級の法廷サスペンス。
3000年以上を生きてきたハンノはさまざまな偽名を駆使して世界的な企業を経営し、その情報網を使って各地に隠れひそむ不老不死の仲間を集めようとしていた。さらには不老不死の秘密を解明するために研究所を設立する。だが、ハンノの正体に不審をいだいたアメリカの上院議員モリアーティが、ハンノの身元調査を始めていた。新たなる世界を探し求める不老不死の人々の波乱にみちた冒険を、巨匠が雄大に描く傑作、堂々完結。
ルイスバーグ・スクェアに豪邸を構えるボストンの名家の女主人が通り魔に殴り殺された。犯人を挙げられない警察に業を煮やした当主のラウドン・トリップは、私立探偵スペンサーを選んだ。殺された妻オリヴィアを心から愛していたラウドンの苦悩は深く、なんとしても殺人犯を捕らえ、厳罰を下したかった。だが、依頼を受けたスペンサーはしっくりしないものを感じていた。いくら家庭を大事にしていたといっても、彼らの息子や娘はなにか問題を抱え、殺された妻には夫の知らぬ秘密がありそうだった。一見非の打ちどころのない幸せな家族-、それは大いなる幻影だったのではないのか?この事件の担当刑事は恋人をエイズで失ったゲイの青年リー・ファレルだったが、スペンサーは彼の協力を得て次第に事件の背後にあるものを嗅ぎとっていく。そして、被害者オリヴィアの出身地サウス・カロライナへ赴くが、そこには彼女の出生にまつわる意外な事実と、調査を妨げようとする巨大な圧力が待ち受けていた…。シリーズ中もっともプロットに凝り、高く評価された第20作。
重力定数が10億倍の宇宙に迷いこんだ宇宙船乗組員の末裔たちは、呼吸可能な大気に満たされた〈星雲〉で生き延びていた。彼らは宇宙船の残骸である円盤状の筏〈ラフト〉を中心にして社会を形成し過酷な環境に耐えてきたのだが、〈星雲〉の寿命が残り少なくなったいま、人々の命運も尽きようとしている…。この危機を打開すべく、勇気と好奇心にあふれる少年リースの冒険が始まった。ハードSFの気鋭が放つ、長篇第1作。
鎌倉時代の平安京に住む女官オクラ、明朝の中国の農村で村人から師と仰がれるトゥ・シャン、開拓期のアメリカで呪術師をしているペレグリーノ、第二次大戦下のロシアで戦うカーチャー。世界各地でごくわずかな確率で生まれている不老不死の人々は、さまざまな事件や災厄にもかかわらず、たくましく生きているが…。3000年以上の歴史を生きる不老不死の人々の波爛万丈の冒険を巨匠アンダースンが描く傑作長篇。