出版社 : 早川書房
英国地中海艦隊の本拠地マルタ島へ赴いたハーフハイドを、またもや過酷な任務が待ち受けていた。初の指揮艦を操り、ロシア海軍によって黒海へ連れさられた英国商船を奪回せよというのだ。ハーフハイドは黒海への入口を守るトルコ軍要塞からの激しい砲撃にさらされながらも侵入に成功する。だが、そこには彼に積年の恨みを抱くゴルジンスキー大公と彼の率いる強大なロシア艦隊が待ち構えていた。海洋冒険シリーズ第4巻。
アメリカの要人らを乗せた豪華客船ブラック・シーが、シンガポール出港直後ハイジャックされた。犯人は、イスラム王国建設を目指すカリスマ的指導者テンクと海の民たち。附近の海域を知りつくした彼らは、客船をいずこともなく連れさり、見返りに最新の武器を要求してきた。米海軍は捜索のためスチュアート中佐指揮のフリゲート艦デケーターを急派。かくして最新鋭の軍艦と海の民との知力を尽くした追跡線が開始される。
ハイジャッカーたちは、ハイテク兵器を嘲笑うかのように捜索の手をかわしながら、人質を一人ずつ殺害し続ける。デケーターは、彼らの攻撃で艦載ヘリを失い、さらには機関に損傷を受け、航行すら困難に。だがシンガポール当局が犯人グループの一人を逮捕し、しだいに彼らに近づきつつあった。はたして満身創痍のデケーターは人質が全員殺される前に客船を発見できるか?灼熱の多島海に展開する冒険サスペンスの一級品。
しまった、ついに正体を見抜かれたー。古本屋の主人におさまった私のもとにやってきた古書蒐集家は、私が泥棒だということを知っている様子だった。なにしろ世界に1冊しかないキプリングの詩集をなにがなんでも手に入れろというのだから。高額の報酬に釣られて安請け合いはしたものの、盗んだばかりの本を何者かに奪われ、おまけに殺人事件にまで巻き込まれるはめに。ネロ・ウルフ賞受賞の泥棒バーニイ・シリーズ第3作。
保安官助手になって五年も経つというのに、いまだマーティが任されるのは小さな事件ばかり。今度もそうだった。郊外の丘陵で男の惨殺体を発見したのはマーティだというのに、彼女が命じられたのは八年も前に家出した名家の娘を捜しだすことだった。が、やがてその娘の白骨死体が丘陵近くの洞窟で見つかり、二つの事件は意外な結びつきを見せはじめる。持ち前の勇気と正義感で事件に挑む保安官助手マーティ、颯爽と登場。
アニーは胸の高鳴りを抑えられなかった。自分の企画した〈クリスティー記念祭〉が、ついに開幕するのだ。人気のミステリ作家も参加してくれるし、催し物も盛りだくさん。誰もが楽しんでくれるにちがいない。が、その記念祭に本格ミステリ嫌いの冷酷な評論家が闖入してきて、おまけに連続殺人が…。ミステリの女王に捧げられた、とびっきりの本格ミステリ。
サン・ピエトロ寺院のドームで、ミサの最中に一人の男が墜死を遂げた。男の名はルスパンティ。若くして家督を継いだ公爵だった。自殺か、それとも他殺か?ヴァティカンの大司教に請われ、刑事警察のゼンは捜査を開始する。だが、その直後に事件の目撃者がまたもや謎の死を…。英国推理作家協会賞に二度輝き、英国ミステリの新旗手と謳われる著者の注目作。
イタリアの古都を訪れた英国人カップル、コリンとメアリは、道に迷った夜ロベルトという地元の男と知り合った。ロベルトの家に招かれ、体が不自由な妻キャロラインに紹介された二人は、自分たちが奇妙な罠にはまったことを知る。幻想と現実がとけあう街で異常な愛の迷宮に囚われた男と女。『イノセント』の鬼才がエレガントに描く文学ポルノグラフィー。
絶世の美男女で著名な病理学者のマイケル・ベッカーは、ヴェトナム戦争の時、サイゴンで売春婦を殺してから、人間は“死ぬ瞬間”に別の世界を垣間見ると考えるようになり、その瞬間に眼に何が現われるか、深い興味をいだくようになった。だが、その一方で、殺した売春婦の眼にうなされはじめ、その悪夢から逃避するため、薬物におぼれていた。そのベッカーが、顔に火傷の痕のある男ドルーズと出会い、不仲だった妻を殺すように依頼する。ドルーズは家に侵入し、彼女を殺害した。ベッカーに指示された通り、彼女の眼を潰して。だが、彼女との情事を終えたばかりの愛人が犯行を目撃、匿名で警察に通報した。ミネアポリス市警のダヴンポート警部輔補らは愛人の行方を追うとともに、夫のベッカーに嫌疑をかけた。しかし、彼には完璧なアリバイがあり、共犯者がいるとの想定のもとに捜査は進められる。やがて、第二、第三、そして第四の殺人が起きた。その被害者は、どれも鋭利な凶器で眼を潰されていた…。冷酷にして狡猾な連続殺人犯を、一匹狼の警部補ルーカス・ダヴンポートが追いつめる。強烈なサスペンスが貫くストーリーと衝撃的な結末。全米でベストセラーとなった人気シリーズ最新作。
私立探偵ジョン・カディは昔を思い出していた。最愛の妻が脳腫瘍にかかり、長いこと苦しみながら生死の境をさまよいつづけた日々。あのとき、安楽死という選択肢が頭に思い浮かばなかったといえば嘘になる。だが、ふたりでその件について話しあったことは一度もなかった…。今になってふたたび安楽死のことを考えるようになったのは、“死ぬ権利”を唱える法学教授メイジー・アンドラスの関係者から調査を依頼されたからだった。教授の死を予告する脅迫状が届いたので、差出人を突き止めてくれというのだ。教授は脳卒中で倒れた夫の自殺を幇助した過去があり、その体験をもとに始めた“死ぬ権利”を広める運動には、反対者が大勢いた。脅迫者はそのなかの一人なのか?それとも、内部事情に詳しいことからみて、教授の身辺の人間なのか?生と死のはざまで揺れ動く人間心理を繊細なタッチで描き、生きることの意味を問いかけた問題作。
失業中の俳優に、仕事の選り好みは許されない。というわけで、食品会社の会社案内ヴィデオに出演する話がきたとき、パリスは一も二もなく飛びついた。役柄は倉庫で働くフォークリフトの運転手。芸術とはほど遠い仕事だが、演技することに変わりはないし、実入りもまあまあ。いうことなしに思えたが…。フォークリフトの運転-、これが意外と難物だった。しかも、昼休みで目を離した隙に、そのフォークリフトが暴走して、女子社員の命を奪ってしまったのだ。エンジンが掛かりっぱなしのところへ、何かの拍子でギアが入ったためだという。だが、パリスは撮影現場を離れるとき、たしかにエンジンを切った。もしかして、これは殺人では?俄然興味をひかれたパリスは、素人探偵を気取って、死んだ女子社員にまつわる噂を集めはじめた。社内の勢力争いと複雑な人間関係に隠された真相にパリスが挑む、ユーモアと皮肉たっぷりの英国ミステリ。
街に核爆弾が落ちた朝。男やもめのクリフォードは一念発起、恋人マーシャの家を訪れた。家出中の子供たちを連れ戻し、彼女と共に新しい家庭を築くことが彼の夢なのだ。だがなぜかマーシャの母親はこの結婚に猛反対。おまけに子供たちは怪しげなドラッグの作用で宇宙の彼方に飛ばされているらしい…。深刻化する核戦争もなんのその、あくまで家庭問題にこだわるクリフォードの奮闘を描くSFスラップスティック・コメディ。
24世紀アメリカ。生物兵器で文明が壊滅したのちも、人間工学研究所では文明の残滓をもちいて倫理を超えた生体実験が行なわれていた。ここで育ったウェンディは実験対象とされた結果、電極を介して人の心に潜入し、精神を擬体験する能力をもっていた。その能力に目をつけ武器として利用しようとする権力の魔手をのがれ、ウェンディは逃亡の旅に出る。行く手に待ち受ける数奇な運命も知らずに…。テクノゴシックの話題作。
ザルク宮廷でイノスと再会を果たしたのもつかのま、ラップは、皇帝アザクに捕らえられて投獄されてしまった。いっぽうアザクは、イノスを妃に迎えたものの、前皇妃ラシャの呪いのせいで花嫁には指一本触れられぬありさま。そこでアザクは、魔道師四人衆に呪いを解いてもらおうと、イノスを連れてインプ王国の王都フブに赴くことにした。イノスは幽閉されているラップの身を案じながらも、アザクと共にフブに向かうが…。
仲間の助けで牢獄を脱出したラップは、イノスを追って一路フブをめざした。同じころ、クラスネガルの王座を狙う〈北の国〉の領主カルコルも、おのれの権利を魔道師四人衆に保証してもらうべくフブに向かっていた。さまざまな思惑が交錯する世界の中心フブー。そこで、クラスネガルの王座を賭けて、魔法の窓が予言したラップとカルコルの運命の死闘がくりひろげられようとしていた。壮大なスケールの四部作、堂々の完結。
産業廃棄物の不法投棄をめぐる裁判で勝訴を勝ちとるー。それがかつてない財政危機に瀕したSP&M法律事務所が生き残る最後の道だった。事務所初の女性パートナーを目指す若き弁護士のレイチェルは、この訴訟の原告側弁護団の一員に抜摺され、一躍出世の糸口をつかんだ。が、まだそのとき彼女は知らなかった、行く手に思わぬ陥穽が待ち構えていることを。全米に名弁護士として名を馳せた著者が放つ傑作法廷サスペンス。
訴訟の準備が進むなか、原告の一人が突如不審な死を遂げた。殺人の疑いがあると睨んだ警察は、捜査への協力をSP&M法律事務所に依頼する。だが事務所の上層部の反応はなぜか冷たく、非協力的だった。そんな折、彼女は訴訟から手を引くよう何者かから警告を受け、さらに原告の一人が殺害されてしまった。この訴訟に疑惑を抱いたレイチェルは意を決し、単独調査を始めるが…。法曹界に渦巻く陰謀を迫真の筆致で描く。