出版社 : 早川書房
ジェイスンとジェシカの探偵コンビは、ヴィデオ・テープを見て、わが目を疑った。ふだんはおかたい女性議員がすっ裸になり、ロバとウサギのお面をつけた裸の男女と絡みあっているのである。だが、女性議員には、そんな淫らな行為をした記憶がまったくなかった。薬を盛られて意識朦朧としているあいだに撮られたのか?だとしたら、誰が、いったい何の目的で?コンピューターはおまかせのジェイスンと格闘技の達人ジェシカが、丁々発止と軽口を叩きながらニューヨークの悪党ども相手に奪闘する、お酒落で過激なミステリ。
神話と伝承に彩られた惑星イマキュラータ。13歳の少女ペイシェンスは、幼いながらも有能な外交官兼暗殺者として、父とともに王家に仕える身だった。だが彼女には重大な秘密があったー。太古の予言はペイシェンスこそ人類の救世主であり、神を産む聖母になると告げていたのだ。父の死後、放浪の旅に出た彼女だが、その行く手には予言の成就をはばむべく恐るべき敵が待ちうけていた…。人気作家カードが描くSF冒険譚。
初代アリは複製の育成のために、公私にわたる莫大な記録をのこしていた。後見人である叔父との確執、仲間の子供たちとの駆引き、性のめざめー。多くの悩みを抱えるアリに、初代アリはコンピューターを通して語りかけ、アリは初代アリの人生をなぞるかのように成長していく。いっぽう防衛庁内部では、テープ製造を独占しているリシューンの国有化を主張する一派が台頭し、アリの立場を脅かしはじめるが。ヒューゴー賞に輝く傑作巨篇第三巻。
ケルソンは、デリニの貴族モルガンとダンカン神父の力を借りて、魔女チャリサとの果たし合いに勝利をおさめ、王位についた。だが王冠を手にしたケルソンを待ち受けていたのは新たな陰謀だった。デリニに反感を持つ司教たちが結託して、モルガンとダンカンを追い落とすべく画策していたのだ。おりしも王国辺境では、ケルソンの統治に不服を唱える者たちが反乱を起こそうとしていた…。少年王の活躍を描くシリーズ第2弾。
恒星間宇宙船。ここで過す者は宇宙空間ではなく、偽の風景を見て暮らす。だが、少女の部屋の窓はもう何年も前から雨の風景しか映し出さなくなったー。宇宙船に閉じ込められた少女の運命を描く表題作ほか、自ら創造したキャラクターが模型となって動き出すことになった少女の心の動きを描き、絶賛を浴びた「そばかすのフィギュア」、著者の原点ともいえるデビュー作「ブルー・フライト」など7篇を収録した新鋭の初作品集。
自暴自棄になっていたアダムは、リーとサミュエルの真摯な心に触れ、再び自己を取り戻した。双子にアロンとカレブ(キャル)と名をつけ、立派に育て上げると誓ったのだ。その間にも時はたゆみなく流れ、いつしかサミュエルも不帰の客となっていく。唯一変わらぬものは、アダムの胸中に宿るキャシーの美しい幻影だった…。やがて多感な思春期を迎えたアロンは、愛らしい少女アブラと出会い、ほのかな慕情を抱いてゆく。
アダムは子供たちに教育を受けさせるため、サリーナスの町なかへと居を移した。アロンとアブラの仲はいっそう深まり、弟キャルの胸には孤独感がつのってゆく。そんなある日、キャルは母の消息に接して驚愕する。だが、その秘密を知ったが故に、やがて自分が兄を悲惨な運命に追いやろうとは夢想だにしなかった…。『怒りの葡萄』で知られるノーベル賞作家が、原罪からの人間解放を旧約聖書の物語に託して描く畢生の大作。
真夏だというのに窓を閉めきった書斎で、飛行機の爆発事故の取材中の新聞記者が撲殺された。そばには、凶器と思われる真鍮の電気スタンドが落ちていたが、書斎は中から鍵を掛けられており、犯人が出入りできたはずはない。記者の死は、取材中の事故と何か関係が?休暇中に事件と出くわした統計コンサルタントのマギーは、犯人探しに乗りだすが…。好奇心あふれる人情家の素人探偵が、密室殺人の謎に挑む本格ミステリ。
夏の日の午後、私とレイシーは退屈な大学の研究室を出て、魔法瓶にジン・トニックをつめ、古いキャデラックに乗りこんでメキシコ国境へ向かう。国境の町の売春宿へ。妻とうまくいっていなかったレイシーは、そこで出会った美しい娼婦と恋に落ちるが-。表題作「娼婦たち」をはじめ、『さらば甘き口づけ』の続篇の冒頭部分「メキシコのリュウキュウガモ」、農夫だった祖父の葬式のためにテキサスへ帰郷する男を描く「石の墓標」、創作の秘密を語るインタビューなど、独自の男の世界がひろがる11篇。
麻薬密輸の取り締まりに命をかけるハードキャッスルとゲファー、ハマーヘッズの司令官となったエリオット将軍と副司令官マクラナハンたちが繰り広げる死闘。そして、大空に展開する迫力溢れる航空戦。全米でベストセラーとなった超大作軍事スリラー。
妻を殺そう。そう思いたってからというもの、ヘンリーの頭の中は、太った醜悪な妻をどうやったら始末できるかということで、いっぱいだった。絞め殺す。崖からつきおとす?それとも、自動車に細工して事故に見せかける。いや、毒殺がいい。毒殺こそ、わが大英帝国の伝統と誇りにつちかわれてきた、秘めやかで美的な殺人方法だ。これでいくしかない。手段が決まると、ヘンリーはさっそく下調べをはじめ、タリウムという無味無臭の毒薬があるのを知った。これを料理にふりかければ、健康食品しか食べない妻のエリナーも、なんの疑いももたずに口にするだろう。だが、ヘンリーの細やかな気配りと努力にもかかわらず、妻はそう簡単に毒殺させてはくれなかった。のどかな郊外住宅地を舞台に、さえない中年男が妻をこの世から抹殺すべく、あの手この手の大奮闘をくりひろげる、ブラック・ユーモアたっぷりの英国ミステリ。
わたしはけしてセンチメンタルな人間じゃない。けれど、精神を病んだ人たちのための施設を建設したいと訴えるボランティアの女性の言葉には、心を打つものがあった。市民財団の所長としてわたしは協力を約束するが、その矢先、建設に反対する住民が惨殺されてしまった。このままでは計画が頓挫してしまう。施設の実現のためにも、ぜひとも犯人を探さなければ。おてんばなブロンド娘ジェニーの活躍を描くシリーズ第4弾。
ジョージ王朝様式の家々が緑の丘のあいだに優美に波打つ伝統の町、バース。その近郊の湖に女の全裸死体が浮かんだ。昔気質のピーター・ダイヤモンド警視はこれこそおれの事件だと意気込んだが、有力な情報もなく、捜査は難航する。三週間後、妻の失踪を知ったというバース大学のグレゴリー・ジャックマン教授が名乗り出てきた。しかし、ダイヤモンド警視は、やがてその強引な捜査がもとで辞職に追いこまれてしまう。英国ミステリ界の鬼才が初めて現代のフーダニットに挑戦し、無骨な刑事の捜査ぶりを情趣豊かに綴る、ファン待望の大作。アンソニー賞最優秀長篇賞受賞。
「あたしのパパが作ったタイム・マシンを見てくださる?」-ぼくの決死のプロポーズに、彼女は笑ってそう答えた。だがそれは単なるタイム・マシンではなくー。多元宇宙を自在に往来できる連続体飛行機だった。この画期的発明を狙う謎の異星人に新婚早々殺されかけたぼくらは、この飛行機を駆って時空を超えた逃避行へと旅立ったのだが…。円熟期を迎えたハインラインの力作長篇、待望の文庫化第一弾。全三巻完結。
盗みの天才エイリアン〈どろぼう熊〉。着陸直後から宇宙船に侵入したこの奇怪な生物は、文字どおり“あらゆるもの”を盗みはじめた…。惑星調査隊が直面した血も凍る悪夢をブラックに描く表題作はじめ、世界を支配する秘密結社の苦悩をつづる「秘密の鰐について」、大空に浮かぶ巨大な島の物語「また、石灰岩の島々も」などなど、SF界のホラ吹きおじさんラファティの魅力をたっぷりと詰めこんだ日本版オリジナル傑作集。