出版社 : 早川書房
同じアパートに住む証券アナリストのサロメが、浮かない顔をしていた。シティで彼女の扱う情報が外部に洩れており、おまけにその犯人にもされかけていたのだ。しかし、疑惑を晴らすための調査に出かけた彼女は転落事故で瀕死の重傷を負う。ことここに至って、エンジエルとは名ばかりのわたしも、漏洩経路を突き止めるべく敵陣深く乗り込む決意をする。英国推理作家協会賞ユーモア賞を受賞したロンドン無責任男の第2弾。
ジョフリーはなにをやっても愚図でいじめられっ子の中学生。ある日彼は、走り去る輸送車の後部から血がしたたっているのを目撃した。仲間に懸命に訴えるが誰も取り合ってくれず、逆に嘘つきだと先生から大目玉をくらう始末。だが、ひとり不安に怯える少年の背後に奇想天外な強奪作戦を企む男たちの魔手が迫っていた。悪党どもに立ち向かう少年の奮闘ぶりを軽快に描く、英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞受賞作。
楽しみにしていたハネムーンもおあずけだった。ミステリ専門書店を経営するアニーとマックスの結婚式の当日、なんと町の嫌われ者が殺されたのだ。しかも、容疑者はアニーの親友イングリッド。アニーとマックスは新婚気分も返上で犯人探しに乗り出すが…。前作『舞台裏の殺人』に続き、二年連続でアンソニー賞を受賞した話題の本格ミステリ・シリーズ第二弾。
ポーランド系ユダヤ人のハリーはニュージャージーで実業家として成功しているが、実は第二次大戦中、ナチの強制収容所へ送られるところをイタリアへ逃げのび、米国へ亡命したという過去がある。そのとき彼を救ったのが、ブロードウェイの一流興行師ビリー・ローズが指揮する地下組織ベラローザ・コネクションだった。戦後ハリーは命の恩人を捜し求める…。奇妙な味わいの佳品。
フリーの記者の津田は、フィリピン・バーから救って同棲していたマイラが自ら姿を消したことを知った。どこか謎めいていた彼女の行方を追ううち、津田はフィリピン女性売春斡旋組織と松江で起きた火事を結ぶ、戦後から現在にいたる秘密の糸に辿り着く。だが、その糸をたぐることが、思いがけぬ人物を追いつめることになろうとは-。雄大な構想、迫力あふれるアクションの、ハードボイルド・サスペンス登場。
札幌の歓楽街ススキノで探偵まがいの仕事をしている〈俺〉は、今夜もバー〈ケラー〉の扉を開ける。待っていたのはいつもの酒と胃腸薬、そして…。酒場で拾った事件は、大学の後輩の失踪した恋人捜しだったが、それが思いがけずデートクラブ殺人の調査へと発展。〈俺〉は、アルバイト売春娘やチンピラ少年団をかきわけ、二日酔いと闘いながら真相に肉迫していく。北の街に、新しい軽快ハードボイルど誕生。
〈第三眼〉を持つカミス人は人工衛星カミスに設置した事象制御装置アスタートによって、惑星リンボスの世界を制御していた。アスタートの操作に携わる理論士イシスの恋人は、詩人である弟のアシリス。だが、カミスでは姉と弟の恋愛は禁じられている。そこでイシスは自分の理論士としての立場を利用し、カミス人の理論の実験場でありリンボス世界を改変することにより、カミス世界をも改変させ、弟との恋を成就しようとしたが…。言葉が世界を紡ぎ出す神林長平の魅力をあますところなく伝える本格SF。
ベルは死んだ、フラッドは行ってしまった。傷心の日々を送るバークのもとへ、かつてのムショ仲間ヴァージルの妻レベッカが訪ねてきた。いとこに頼まれて預っていた少年ロイドが連続狙撃事件犯人の容疑をかけられ、ヴァージルとともに逃亡したという。おれの問題の答えを出せるのはバークしかいない、というヴァージルのことづてを聞いたバークは、ニューヨークを離れインディアナへ向かう。そこでバークは狙撃事件で妹を殺され復讐を誓う金髪女ブロッサムに出会い、ヴァージル一家とともに真犯人に罠をかけるべく、計画に着手する…。家族の絆、少年の自立をモチーフに、住み慣れた街を離れ仲間と別れて狙撃犯を追うバークの行動を描く。新境地を拓くアウトロー探偵バーク・シリーズ最新作。
1892年8月11日、マサチューセッツ州フォール・リヴァーの名士の娘、リジー・ボーデンは父と継母を斧で斬殺した容疑で退捕された。しかし、彼女は裁判で無実を申し立て、結局その主張が陪審から認められて釈放された。事件が迷宮入りしてからほぼ30年後、家族と一緒に海辺の村に避暑にきていた少女アマンダは、自分の隣の家で暮らすのがあの悪名高いリジー・ボーデンであると知って、思わず胸をときめかした。あの人は本当にむごたらしいやり方で両親を殺したのだろうか?だが、村で偶然に出会ったリジー・ボーデンは、厳格ななかにも優しさを感じさせる年配の女性で、アマンダはすぐに好きになってしまった。そんなある日、昼寝からさめたアマンダは、大嫌いな継母が斧でめった切りにされているのを発見した。13歳の少女が体験したひと夏の恐怖を、禁酒法の時代を背景にきめ細かな心理描写で描く戦慄のサスペンス。
時速80マイルで走っていたトマス・ブレインは、突然の自動車事故のため、頭はガラスを突き破り、胸にはハンドルが突き刺さり、背骨が折れ、苦痛を感じる暇もなくあっさりと死んだ。だが、目を覚ますと、そこは100年以上も先の未来。しかも、死から生き返らされたブレインは、幽霊やゾンビイが跳梁跋扈する超未来世界で、恐るべきハンターに追いかけられるはめに…。話題のSFX映画『フリージャック』の原作ついに登場。
神が降臨してきたかのような姿だったー。真昼の太陽を浴びた黄金像そのままの青年。だが彼は、現人類をはるかにしのぐ能力をもつミュータントだった。スリリングな追跡ドラマの表題作をはじめ、雨の夜に妖精の訪問をうけた男の物語「妖精の王」、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の原型となった「小さな黒い箱」など歿後十年を経て、全世界でますます評価の高まる幻視者ディックの世界を満喫できる傑作集第三巻。
12歳以下の子どもたちが“生後堕胎”の名のもとに殺戮される戦慄の未来を描いた問題作「まだ人間じゃない」、異星人による奇妙な侵略をうけた地球の物語「フヌールとの戦い」、広告戦争が極限まで達した騒々して未来社会を描いた「CM地獄」などの秀作中短篇8篇をおさめたほか、詳細な自作解説や、孤高の天才ディックが心情を赤裸々につづり、作品世界への鍵となる貴重なエッセイも併録した決定版ディック傑作集第四巻。
魔法の源である〈力の言葉〉-。権力を求める者たちがそれを手に入れようと熾烈な闘争を繰り広げる世界、パンデミア。その北辺の小王国クラスネガルで、王女イノスは幼なじみの少年ラップとともに平隠な毎日を送っていた。そんなある日、イノスは南方の大国に花嫁修業にいくことになり、クラスネガルを旅立った。後に残されたラップは、王宮の厩番見習いとして働くうちに自分に透視能力が備わっていることに気づくが…。
クラスネガル王危篤。ラップは、遠国のイノスにそれを知らせるべく、アンドルという男と一緒にクラスネガルを出立した。ところが旅の途中でアンドルの姿が豹変した。まったくの別人に変身したのだ。しかもアンドルは、ゴブリン族の中にラップを置き去りにして単身イノスのもとに向かった。アンドルの狙いは何か?いっぽうイノスの周囲では、彼女の父が持つ〈力の言葉〉を狙う者たちが暗躍を始めた…。壮大な四部作開幕。
吟遊詩人マリウスは、最愛の妻オクタヴィアを連れて、彼の第二の故郷ともいうべきトーラスの居酒屋〈煙とパイプ〉亭を訪れた。そこに腰を落ち着け、新婚生活を送るつもりだったのだ。しかしそのマリウスに、居酒屋の息子のダンは、偶然知って胸を痛めていたイシュトヴァーン将軍の秘密を語り聞かせたー。イシュトヴァーンとマリウス、かつて幾多の冒険をともにしてきた二人の運命は、ふたたび深く交差していくのだった。
カリフォルニア州の風光明媚な町カーメルで、死体が続けて二体発見された。いずれも、自動車の中で排気ガス自殺をしたものと見なされたが、元鑑識捜査官のディウィット部長刑事は、他殺と判断していた。邪悪な妨害を受けながらも、執念の捜査を続けるディウィットは、遂に犯人を突きとめる。だが、彼は知らなかったー。この時から、本当の闘いが始まることを。意想外の展開で魅了する傑作サスペンス。全米ベストセラー。
遺伝子の組替え実験が生んだ伝染病ーキャムデン・ヤング病。複合企業SUEの取締役ストーンツリーは、恋人がこの死病に感染したことを知る。そんな折り、彼は一人の科学者から依頼を受けた。新たな伝染病の治療法を完成させるために、ある物質をSUEの製薬研究室から盗み出す手助けをしてほしいというのだ。ストーンツリーは協力を決意するが、背後には製薬業界に巣喰う黒い影が迫っていた。社会派医学サスペンス。