出版社 : 早川書房
熱波が襲うサンフランシスコの空地で、一人の娘が殺された。美しい顔を歪ませた死体は背中で両の親指を縛られ、近くの地面には牛の絵が刻まれていた。これは中米ゲリラの復讐の印か?捜査を始めた刑事クルスは、事件に絡む密入国組織の存在を知るが…。戦火の中米から密入国したゲリラが潜む都会のジャングルを舞台に、中年刑事の心死の捜査を描く力作。
失敗した遠征から帰国した登山家滝沢は、得体の知れない男からマナスル登頂を目指す登山隊の隊長になってほしいと依頼を受けた。素性の判らない人間と組む気はない、と断わる滝沢をその男は脅迫し、彼に無理矢理隊長を引き受けさせてしまう。やがてカトマンドゥを出発した登山隊だったが、その一隊はどこか不自然だった。じつは彼らは登山隊に偽装したチベット・ゲリラの一部隊だったのだ。しかも荷物の中には銃まで隠し持っていた。彼らの目的地がマナスルでないことは明らかだった。彼らの目的とは。
アメリカの軍人と家族を乗せた旅客機がアラブ・ゲリラにハイジャックされた。旅客機はリビアの航空基地に着陸、人質となった乗員と乗客は管制ビルの中に閉じ込められた。やがてゲリラたちは、イタリアとクウェートで拘留されているリーダーと仲間の釈放を要求。だが、イタリアは応じたものの、クウェートは釈放を拒否、ゲリラたちは乗客の処刑を開始した。この事態にアメリカ政府は急遽強硬策を採り、人質を救出するため、ついにファイア・アロー作戦を発動する。かくて、海軍特殊部隊SEALが人質の確保に赴き、つづいて基地を防衛するリビア軍を抑えるため、陸海空軍と海兵隊の部隊が出動した。だが、その時、背後でソ連が不隠な動きを見せていた…。
夜明け前のフィレンツェは,森閑と闇に沈んでいた。通報をうけて現場に急行する見習い将校のバッチ憲兵は、不安を抑え、面倒な事件ではありませんようにと祈った。だがその願いもむなしく、呼びだされた先のアパートメントの部屋には中年男の死体が転がっていた…。殺人事件だった。被害者の部屋にあった身分不相応とも思える高価な美術品はどこからきたのか。そして事件当夜に被害者が待っていた訪問客とは。はじめての大事件で戸惑うばかりのバッチ憲兵は、風邪で寝込んでいる上司のグアルナッチャ准尉に相談するが、なんら手がかりも得られぬまま、第二の事件が起きた。メグレ・シリーズの巨匠シムノンが絶賛した英国女流推理作家のデビュー作、遂に登場。CWA新人賞候補作。
悠久の時を経て、廃墟となりはてながらも、なお神話の息づくマヤの遺跡。この神域にのみ生える“聖なるキノコ”には人間に過去を再体験させる不思議な力があるらしい。その遺跡をめざして消息を絶った夫のエディーを捜して、リンジーは内乱に揺れるメキシコへやってきた。エディーはかつてロックのスーパースターだったが、ドラッグで身をもち崩して入院中、その病院を脱走したのだ。エディーの兄で、マヤ文明崩壊の謎を解明に挑むトーマスとともに、メキシコ山中に旅だったリンジーを待つものは…?ファン待望の新鋭の問題作、ついに登場。
アメリカの軍事介入や、政府軍と反政府ゲリラの血みどろの抗争で政情不安におちいったメキシコ。銃火と硝煙をくぐり抜けて、リンジーとトーマスは一路〈ナ・チャン〉をめざす。果てしない時の輪廻を凝視しているような石像や、神秘の世界への扉を秘めた神殿の建ちならぶこの古代マヤの都市遺跡は、エディーになにを見せたのか?時を超えてよみがえる叡知に満ちたマヤの終末の予言とは?ギブスン、スターリングらと並んでSFの地平を果散に切り開く気鋭が、卓抜したストーリーテリングで現代SFと神話的世界を見事に融合させた衝撃の傑作。
はるかな未来、有機生命の抹殺をもくろむ機械生命メカの仮借ない攻撃に、惑星スノーグレイドの人類は滅亡寸前にまで追いつめられていた。ビショップ族のキリーンとその仲間は、メカの襲撃に窮地に立たされながら、古代地球人の遺産である宇宙船〈アルゴ〉を発見し、スノーグレイド脱出に成功、新たな故郷を求めて旅立った。そしていま、彼らの前に居住の可能性を示す惑星が現われた。メカのものらしいステーションを避けて惑星に着陸しようとしたキリーンたちだったが、突如〈アルゴ〉が制御不能におちいりステーションに向かいはじめた…。
ステーションはやはり、メカのものだった。メカの統御するシステムによる攻撃を受けたキリーンたちは反撃に転じ、ステーションからの脱出に成功した。しかし、それもつかのま、惑星をめざさんと意気上がる一行の前に、おどろくべき報告が入った。どこからともなく現われた巨大な光のリングが、惑星を切り裂きはじめたのだ!人類の知識と想像力をはるかに超かた謎にキリーンたちは立ち向かうことになるが…。現代ハードSFの旗手が最新科学知識をもとに宇宙の未知なる驚異を鮮烈に描き上げる、ファン待望の『大いなる天上の河』続篇登場。
かつてこの世が平らかなりし頃、妖魔の王アズュラーンは一時の気晴らしに人間の娘と交わって女児をもうけた。この妖魔の一人娘アズュリアズは長じてアズュラーンの宿敵、惑乱の公子チャズと恋に落ちた。もちろん、これを許すアズュラーンではない。妖魔の王の怒りを逃れて幾世紀も人界をさまよう恋する二人。時には離れ離れになり、また時には姿形を変え、人間として生きるすべを求めながら…。アズュリアズとチャズの狂乱の恋、および妖魔の眷属の魔法にふれた人間の愛と死の戯れを語った、傑作『熱夢の女王』外伝とも称すべき連作短篇集。
イシュトヴァーンの鬼神の如き戦いぶりに加えて軍師アリの策略、人々の蔑みに耐えつつ機をうかがっていた忠臣メンティウスの活躍、またモンゴール復活を願う市井の人々の身を挺しての働きによってトーラスはクムの桎梏から解き放たれた。辛酸のはてについに念願のトーラス入城を果し、またあらたな恋を得て幸福の絶頂にあるかに見えるアムネリス。だが、しょせんは成り上がりの者のイシュトヴァーンにとって、情勢は必ずしも楽観できるものではなかった。しかも、アリの謀略はさらにおそるべき運命へと、この野性児を導いていくのだった。
エジプトの収容所で服役中の元傭兵ワイアットは、半死半生のところを昔の戦友たちに救出された。だが、かつての上官バークから新たな仕事を持ちかけられたとき、ワイアットの心は揺れる。山賊に誘拐された大富豪の娘をシチリアの山中から救い出すというのだ。シチリアはワイアットがかつて捨てた島、彼の祖父がマフィアの首領として君臨する場所だった。宿命に引き寄せられるように島に赴いたワイアットは、峻険な山中にパラシュート降下を試みるが、そこで待っていたものは非情な裏切りの罠だった。復讐の地に展開するヒギンズの冒険ロマン。
CIAの長老ジョン、その息子でソヴィエト部門の長アレン、サイゴン支局長を務めた孫のジェシーー3代にわたり、ダンサー家はCIA内で絶大な力を誇ってきた。だが、その権力を揺るがす事件が本部内で起きた。初めは単なる書類の盗難事件と思えた。が、CIAのベテラン局員ノルズの調査の結果、事件の意外な首謀者が浮かび上がったのだ。そして、ダンサー家の権力の秘密がついに暴かれていく。ロシア革命勃発時から第二次大戦を経て現代まで。-壮大な時の流れを背景に、三代の親子が繰り広げる愛と野望と憎悪のドラマ。絢爛たる大河スパイ小説。
これこそ望んでいた家だわ!とグエンダは思った。ディルマスで見つけた小さなヴィクトリア朝風の売家。ニュージーランドから来たばかりの若妻はその別荘をすでに隅から隅まで知っているような気がした。そして、家の中の階段をおりかけたとき、いい知れぬ恐怖が体をかすめた。家には幽霊が出るのでは、あるいは誰か亡くなった人がいるのでは?部屋の戸棚の中から現われた古い壁紙を見て、彼女はさらに動揺した。この古い壁紙の模様をなぜわたしは頭に想い描くことができたのか…。回想の中の殺人を今に甦らせるミス・マーブル最後の事件。
逃げてきたの。車から飛びおりたのよ。それから暗くなるまで隠れて、うちまで走ってきたのー女教師リンダ・ハモンドの娘の話は明らかに誘拐末遂事件を示していた。犯人は、同じ学校の生徒の父親という。少女の証言に基づき、警察はその父親を容疑者として逮補した。しかし、容疑者はどんな手を使ったのか、拘置所の中からダナのもとへ、不気味な脅迫まがいの電話をかけてきた。しかも、証拠不充分により減額された保釈金を払い、大胆にも被害者の家へやってきたのだ。現実の悪夢に襲われた母子の姿を強烈なサスペンスとともに描く問題作。
無線機ががなりたてる。「三号車へ。殺人の通報があった。現場へ急行せよ」保安官助手のギルは辟易しながらパトカーを駆った。どうせ酔っ払いか、いたずら電話に決まっている。しかし現場に到着したギルは呆然とした。無残な姿で横たわっているのは自分の妻だったのだ…。警察を嘲笑うかのように、警官の妻惨殺事件は続いた。そして、捜査に乗り出した地方検事事務所の特別捜査官、ホイット・ピンチョンの身辺にも、犯人はその魔手をのばしてきた。東部の田舎町を舞台に、タフで頑固な捜査官の執念の捜査を詩情豊かに描き出す新警察小説登場。
四十年前に殺人を犯し、ネヴァダ砂漠に消えた祖父を捜してー私立探偵ロスの許を訪れた美しい娼婦の依頼は、雲を掴むような話だった。友人の老人からも乞われ、ロスは過去の事件を洗い直しはじめた。が、その直後に老人が何者かに殺され、娼婦も謎の失踪を!静寂と諦念が支配する砂漠の町を舞台に、現在と過去の殺人を結ぶ悲劇を描く正統派ハードボイルド。
1990年夏、シリア人パイロット、モハメド・アスリが偽造パスポートでニューヨークに潜入した。ある大きな陰謀に参加するためだった-アメリカ大統領に関わる、かつてない大胆不敵な陰謀に。1986年のアメリカのカダフィ襲撃に対する報復に何度か挫折したリビアは、ひそかにある計画を進めていた。ブッシュ大統領を誘拐して人質にとり、アメリカ側の非を世界の前に認めさせようというのだ。実行者に選ばれた男は、なんとアメリカ人だった。ジー・ハーディ-元海兵隊の凄腕パイロット、元傭兵、現在は麻薬密輸業者。『偉大なるギャッビー』にちなんで″ジー″とニックネームをつけられた魅力的なこの男は、自らのヴェトナム体験と息子の非劇的な死によって、アメリカ政府に深い憎しみを抱いていた。5千万ドルでブッシュ大統領誘拐を請負ったハーディは、周致な準備工作にかかった。
秋の議会選挙の大統領遊説に照準を絞ったハーディは、リビア側にも計画の詳細を知らせずに着々と準備を進めた。大統領専用機エアフォース・ワンが彼の狙いだった。いかにして空飛ぶホワイトハウスを襲うつもりなのか?ボーイング707を手に入れ、アスリに戦闘機訓練を課し、亡命キューバ人グループと接触し、サンフランシスコにマンションを借り-こういった下工作がどう結びつくのか?意表をつく鮮やかなプロット、スリリンぐな航空シーン、追う側と追われる側の男たちの不屈の闘志。すぐれたストーリーテリングと該博な知識を持つ作家と、元エアフォース・ワン機長の、みごとなパートナーシップが生んだ航空冒険巨篇。