出版社 : 早川書房
憂鬱な歯医者での治療を終えてひと息ついたポアロの許に、当の歯医者が自殺したとの電話が入った。しかし、なんの悩みもなさそうな彼に、自殺に徴候などまったくなかった。これは巧妙に仕掛けられた殺人なのか?マザー・グースの調べに乗って起こる連続殺人の果てに、灰色の脳細胞ポアロが追い詰めたものとは。
大富豪ゴードン・クロードが戦時中に死亡し、莫大な財産は若き未亡人が相続した。戦後、後ろ盾としてのゴードンを失つた弁護士や医師らクロード家の人々は、まとまった金の必要に迫られ窮地に立たされていた。“あの未亡人さえいなければ”一族の思いが憎しみへと変わった時…戦争が生んだ心の闇をポアロが暴く。
6年間つきあってきた年若い恋人と別れることにしたのは、私のほうだった。彼とはその後もときどき会っていたが、3ヶ月後彼から新しい恋人と共に暮らすと宣告されて、私は激しい嫉妬に苛まれる。その女のことしか考えられなくなり、どこに住むどんな女なのか、インターネットや名簿、あらゆる手段を使って特定しようとする。次第に私は狂ったようになり、攻撃的になってきて…。妄執に取り憑かれた自己を冷徹に描く表題作。違法だった中絶の壮絶な経験を描く衝撃作「事件」を併録。
菊野脩、亀丸拓哉、河邑浩童の、小学五年生三人は、自分達が住む地域を流れる川を、夏休みの自由研究の課題に選んだ。そこにはそれまで三人が知らなかった数々の驚くべき発見が隠されていたのだ。少年たちの川をめぐる冒険がはじまった。身近な自然の中で川が指し示す「今ここ」と、見果てぬ「遠い未来」への夢を描いた、感動の傑作長篇。
大恐慌に見舞われた1930年代、テキサス東部の製材所のある小さな町キャンプ・ラプチャー。大竜巻が襲ったある日、入り日のような赤毛のサンセット・ジョーンズは、治安官をつとめる夫ピートの暴力に耐えきれず、彼を射殺した。町に衝撃が走るが、彼女は正当防衛を主張した。やがて新たな治安官を決める集会が開かれ、ピートの母で町の有力者マリリンの強力な推薦で、サンセットは治安官に就任する。ピートの業務日誌を読み始めたサンセットは、ひとつの事件に注意を引かれた。それは、ある黒人の畑から甕に入った胎児の死体が見つかったというものだった。そして重大な知らせが入った。胎児が埋められていた畑から、今度は女性の死体が発見されたのだ。その女性は腹部を大きく切り裂かれていた。彼女は妊娠していた形跡があり、先に発見された胎児は彼女の子供らしいことが判明する。サンセットは殺人の容疑が自分にもかけられる中、二人の助手とともに調査を続けるが、件の黒人の畑をめぐる邪悪な陰謀が浮かび上がってくる。その陰謀は、サンセットの運命を大きく変えるものになるが…。MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞最優秀長篇賞受賞作『ボトムズ』の鬼才が真骨頂を発揮したサスペンス最新作。
ピラミッドの謎に魅せられ、その生涯を“タイムマシン”の開発に費やした現代人ジェディは、紀元前2624年への時間跳躍に成功する。だが、クフ王の治世下にあるエジプトで彼が目にしたのは、建造途上にあるはずのピラミッドが発掘されている現場だった。なぜかジェディを崇拝する監督官のメトフェルもまた、その秘密については固く口を閉ざす。ピラミッドとは何か?その目的とは?-帰還期限が迫るなか煩悶するジェディは、ついにクフ王その人への謁見の機会を得るが…古代エジプト哲学とSF的奇想を融合させた、『アイオーン』の著者による新境地。
婚約中のロディーとエリノアの前に現われた薔薇のごときメアリイ。彼女の出現でロディーが心変わりをし、婚約は解消された。激しい憎悪がエリノアの心に湧き上がり、やがて彼女の作った食事を食べたメアリイが死んだ。犯人は私ではない!エリノアは否定するが…嫉妬に揺れる女心をポアロの調査が解き明かす。
残忍な殺人は平穏な海辺の館で起こった。殺されたのは金持ちの老婦人。金目的の犯行かと思われたが、それは恐るべき殺人計画の序章にすぎなかったー人の命を奪う魔の瞬間“ゼロ時間”に向けて、着々と進められてゆく綿密で用意周到な計画とは?ミステリの常識を覆したと評価の高い画期的な野心作を新訳で贈る。
「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃ…」エルサレムを訪れていたポアロが耳にした男女の囁きは闇を漂い、やがて死海の方へ消えていった。どうしてこうも犯罪を連想させるものにぶつかるのか?ポアロの思いが現実となったように殺人は起こった。謎に包まれた死海を舞台に、ポアロの並外れた慧眼が真実を暴く。
北イングランドに赴いたジャーナリストのアンドルーは、彼を呼び寄せた女性ケイトから思いがけない話を聞かされる。おたがいの祖先は、それぞれに“瞬間移動”を得意演目としていた、二十世紀初頭の天才奇術師。そして、生涯ライバル関係にあった二人の確執は子孫のアンドルーにまで影響を与えているというのだが…!?二人の奇術師がのこした手記によって、衝撃の事実が明らかとなる!世界幻想文学大賞受賞の幻想巨篇。
深夜の市を徘徊する不眠症の作家チャーリー・バクスターは犬を散歩中に友人ブラッドリーに出会う。離婚し落ちこんでいたブラッドリーに、周囲の人々の恋愛体験を基に小説を書くよう勧められたチャーリーは、よそに女をつくって家を出たブラッドリーの最初の妻、勝ち気な美人弁護士の次の妻、元ジャンキーに一目惚れした愛らしい娘、不良息子との折り合いに悩む哲学教授らに、それぞれの最もプライヴェートで、でも話さずにいられない愛の問題を語ってもらい、『愛の饗宴』という珠玉の物語にまとめてゆく-ありとあらゆる愛の形を織りこんだ、おかしくて哀しい究極の恋愛群像劇。全米図書賞最終候補作。
荒廃した地球を復興するため、彼は人間によって創られた。しかし、創造主がつけた傷は己れの生を彼に認識させる。それは世界観を懸けた闘い、そして、残酷な神へと至る道の始まりだった-存在の在り方、魂の所在-『あなたの魂に安らぎあれ』『帝王の殻』につづく三部作、十四年ぶりの完結篇。
傷痍軍人のバートンが療養のために妹とその村に居を構えてまもなく、悪意と中傷に満ちた匿名の手紙が住民に無差別に届けられた。陰口、噂話、疑心暗鬼が村全体を覆い、やがて名士の夫人が服毒自殺を遂げた。不気味な匿名の手紙の背後に隠された事件の真相とは?ミス・マープルが若い二人の探偵指南役を務める。
近頃、どうして階段が急にきつくなったのだろう?-中年男性の悲哀をユーモラスに描き、あまりにも身につまされる内容が大評判を呼び、盗作が相次いだという幻の名作「あなたの年齢当てます」。犬の立場から人間の上手な飼い方を綴った「愛人マニュアル」ほか、思わずチェシャ猫の笑いを浮かべさせる日常生活のスケッチ19篇。しゃれた笑いにごぶさたのあなたに、笑いの達人コーリィ・フォードが最高のプレゼントを贈ります。
冒険好きな若夫婦のトミーとタペンスが、国際探偵事務所を開設した。平和で退屈な日々は、続々と持ちこまれる事件でたちまち慌ただしい毎日へと一変する。だが、二人は持ち前の旺盛な好奇心と若さとで、猟犬のごとく事件を追いかける!おしどり探偵が繰りひろげるスリリングな冒険を描いた短篇集。新訳で登場。
優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバグダッドからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる…女の愛の迷いを冷たく見据え、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。
オックスフォード大学史学部の学生ネッド・ヘンリーは、第二次大戦中のロンドン大空襲で焼失したコヴェントリー大聖堂の再建計画の資料集めの毎日を送っていた。だが、計画の責任者レイディ・シュラプネルの命令で、20世紀と21世紀を時間旅行で行ったり来たりさせられたネッドは、疲労困憊、ついには過労で倒れてしまった。シュラプネルから、大聖堂にあったはずの「主教の鳥株」という花瓶をぜひとも探し出せと言われていたのだ。二週間の絶対安静を言い渡されたものの、シュラプネルのいる現代にいては、ゆっくり休めるはずもない。史学部のダンワージー教授は、ネッドをのんびりできるにちがいない、19世紀のヴィクトリア朝へ派遣する。ところが、時間旅行ぼけでぼんやりしていたせいで、まさか自分が時空連続体の存亡を賭けた重要な任務をさずかっているとは夢にも思っていなかった…。ジェローム・K・ジェロームのユーモア小説『ボートの三人男』にオマージュをささげつつ、SFと本格ミステリを絶妙に融合させ、ヒューゴー賞・ローカス賞のほか、クルト・ラスヴィッツ賞を受賞したタイムトラベル・ユーモア小説。
「ピッチ、このオヤジ、殺して」少女が叫ぶと、若い男は探偵の腹にナイフを突き立てた。入院した“俺”を見舞いにきた自称「霊能力者」のオバチャンの依頼で女子高生の家庭調査の依頼を受けることに。軽い気持ちで引き受けた調査と、自分を刺した犯人捜査とが交錯した時、“俺”は札幌の闇に渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていることに気づくのだった…“ススキノ探偵シリーズ”、待望の長篇書き下ろし。
パラダイスの住民を戦慄させる連続射殺事件が発生した。犠牲者には何のつながりも認められず、犯人は無作為にターゲットを選んでは犯行におよんでいるらしい。犯行に使用されたのは二挺の22口径。いったい誰が、何のために?町はパニック寸前となり、警察署長のジェッシイは窮地に立たされた。やがて捜査線上に一組の夫婦が浮かび上がる。だが、確たる証拠はない。ただ、ジェッシイの長年にわたる警察官としての勘が、その夫婦が犯人だと告げていた。だが、彼を嘲るかのように、深い仲にあったアビイがさらなる犠牲者となってしまう。そして、ジェッシイの周囲にも犯人たちの影が…。クールな正義漢、警察署長ジェッシイ・ストーンがパラダイスの町を恐怖に陥れた事件を追う!巨匠パーカーが贈るシリーズ最新作。
デズデモーナとレフティーは姉弟でありながら、深く愛し合っていた。1922年、ギリシャとトルコの戦争で村が壊滅し、二人はいとこ夫婦を頼りにアメリカ、デトロイトへ夫と妻として渡る。やがて、二組の夫婦の子供、ミルトンとテッシーが惹かれ合うようになる。1960年、そこに生まれた待望の女の子がわたし、カリオペだ。車産業が隆盛を誇る街デトロイトで、祖父が始めた食堂を父が繁盛させ、わたしは大事に育てられた。女子高に通うようになったわたしは、自分の体つきに悩み、ある同級生への熱い想いに苦しんでいた。そんなある日、自分がふつうの女の子ではないことを知ったわたしは、激しい衝撃を受け、家族のもとを飛び出すが…。あるギリシャ系一家で紡いできた稀有な歴史を壮大に描く、現代の神話。女と男、二つの性を授かった一人の人間の数奇な運命を描くピュリッツァー賞受賞作。