出版社 : 春陽堂書店
“善意”から生じた悲劇は、“悪意”から生じたそれよりも、よりいっそう恐ろしいものだ。天才探偵神津恭介は、ある日、美しい婦人の訪問を受けた。愁い顔の彼女が語るのは、2年前の恐ろしい殺人事件だった。犯人はすでに死刑の宣告を受け、刑の執行される日を無実を絶叫しながら待っている。神津は女の話から真犯人を推理した。しかし、何らの証拠もない。彼は婦人に、真犯人へ“決闘”を申し込ませるーという大時代奇想天外な策をさずけたのだった…!?(「私は殺される」)-表題作のほか、伝説の女魔術師松菊斎天章が住んだという屋敷で起こった怪奇殺人事件(「鏡の部屋」)など、戦後の不安定な世相を舞台にしてくりひろげられる鬼才神津恭介の、快刀乱麻を断つ名推理のかずかず!
世はあげて財テクブーム。警視庁捜査一課を5年前に定年退職した祖父の元警部矢車彦之進と2人暮らしのユカは、ちょっとおっちょこちょいだが明るく活発な京北女子大の英文科2年に席をおく美人女子大生だ。ユカのクラスでもいま財テクが大流行、なかでも、親友の庄子と奈緒は夢中。2人は庄子が帰省のおり知り合った証券会社の新入社員西野の紹介で買った株で大儲けし、すっかり味をしめてユカにまで財テクをうるさく押しつける。が、間もなく大暴落。なけなしの資金を無にした2人は西野を責め立てた。その庄子が何者かに殺され、解剖の結果、意外や庄子は妊娠2ヵ月、そしてまた殺人が追っかける。-財テクとセックス、清純なお嬢さん探偵ユカは完全な“迷路”にはまり込んだ。
くたびれた黒羽二重の着流しに雪駄ばき、はげた朱鞘を落とし差しにしたどこから見ても尾羽打ち枯らした浪人者は、人呼んで白柄朱膳。元高遠藩士で、その剣法は一刀微塵流。たったの一刀で、四方八方の敵を粉砕するという“あばれ剣法”であった。北町奉行遠山金四郎を友とする白柄朱膳が立ち向かう大江戸の怪事件とは…?稀代の絵師瀬川春草が呼び売りのかわら版に描いた“大江戸小町づくし28美人”が身を投げるやら斬り殺されるやら、はたまた心中やらとつぎつぎに惨事に見舞われるという奇怪な事件がひきつづいていた。つぎは御蔵小町、春草の娘(黒い水面)。-大江戸の闇に出没する怪人変化のからくりを斬る破邪の剣。白柄朱膳事件帖。
慶長17年(1812)夏、船島において佐々木小次郎と試合した宮本武蔵は、みごとに強敵小次郎を倒した。その後、因州鳥取6万5千石の池田家中の士に円明二刀流を指南していた武蔵に、19年春、新当唯一流岩井唯一赤山なる剣客が試合を挑む高札を立てた。が、この剣客をも苦もなく打ち倒したのち、武蔵は京へと向かった。その武蔵を追う者に、一族の長宍戸梅軒の仇討ちを名目とする手裏剣の名手天郷一郎太・小三郎の兄弟がいた。大坂夏の陣の直前、豊臣方につこうとして真田幸村らの反対に遭った武蔵は大坂城を去った。そして、不敵な少年三木之助を養子にしたのち、下野国小山の本多上野介正純のすすめで江戸へと向かった。-剣豪宮本武蔵の生涯を描く傑作長編。
一見何の関係もなさそうな2人の女が相次いで生命を奪われ、その左腕を切り取られた。1人は映画のスクリーン上で濃艶な美貌と甘い歌声をうたわれた女優吉野小夜子、もう1人はこれも凄艶な美貌の持ち主、“白蛇のお菊”の異名を持つ女スリ。いつものくせで、居酒屋でしたたかに酔ったわたし(駆け出しの探偵小説家松下研三氏)のカバンの中に、いつの間にかまぎれ込んでいたコルトの拳銃。あやめもわかぬ暗黒の中に、青白い燐光を放って浮き上がった人間の片腕。-わたしを震えあがらせたこの二つの事実から、神津恭介はみごとに犯人を推理した。残るは決め手となる証拠だけだ。(「女の手」)-ほかに表題作「血ぬられた薔薇」をはじめ6編を収録。
警察庁最強部隊ー竜崎三四郎を長とする“鬼の軍団”の隊員たちが次々と襲撃される、という事態が生起していた。日本を二分する暴力組織と、その間をぬって東南アジアの麻薬王をバックにのし上がった第三勢力、そのことごとくは潰えたはずだがはたして何者か?いつもならまっさきに飛び出す竜崎警視が、今回ばかりは副団長の壇警視やナンバー3の長島警部、婦警軍団の長部隊にまかせて、妙に落ち着いている。三四郎の胸中は…?おりしも、ヤクザが次々とアメリカ本土に乗り込んでいるとの情報が入ってきた。ヤ印と米軍MPを顎で使う謎の美女と妖しげなホテルチェーン、これを結ぶと麻薬と武器と売春の組織として一本のものにつながってくる。三四郎を先頭に竜崎軍団出撃のときが来た。
三ツ葉葵の紋所の黒羽二重の着流し姿、眉目秀麗の貴公子はご存じー松平長七郎。亡き駿河大納言忠長卿の御曹子で、現三代将軍家光の甥君である長七郎はいま、僧坊に佗住まいの身の上であった。主家一族の輝姫君の行方を必死に探索する越後の喜久周防守利明の遺臣香月囲伊馬之介の妹年重を自幻党の襲撃から救ってやったことから、長七郎は奇々怪々な事件の渦中にまき込まれていった。輝姫君が持参している犬張り子が秘める謎とは何か…?-怪人物に率いられる自幻党、幕府の陰謀を向こうにまわして閃く長七郎正義の剣。
東京浅草一帯のテキ屋の大元締笠松源蔵の跡取り鉄平は、テキ屋渡世を嫌うでもなく、といって松源一家の名跡を継ごうともせぬ、時勢に背を向けた一匹狼のインテリやくざだ。背中一面に散らした朱彫りの桜、人呼んで“朱桜”の鉄平の生まれついてのやくざな血は、一切の非道を許せない。やくざ渡世は“仁義”の2文字が守り本尊!定法破れば血で血を洗う、侠気血潮が煮え滾る。
江戸は浜町の常磐津の師匠お妻の娘お光は、“浜町小町”と噂の色白の顔に大きな目が鈴を張ったような愛くるしくも幸せな十八娘に成長していた。が、お光は16年の昔、金四郎(遠山景元)によって深川の木場で拾われた奇しき運命にしばられた哀れな赤子であった。その肌身につけていたお守り袋の中の“18歳の4月10日の夜、本郷湯島天神境内の一本杉の根元に参集せよ”との書付けに従って出向いていったお光は、青白い顔にまるでざくろのような赤い唇の女と影法師の二人連れによって、いずくともなく連れ去られてしまった。もう一人、お光とまったく同じ運命に逢着していたのが20歳の美女、大奥中〓@62E4のお浦であった。-奇怪な桔梗屋敷の地下牢に捕らえられた2人の美女が秘めた謎とは…?
矢車ユカ、北沢亜紀、野川朝子の3人は京北女子大英文科の2年生、花の美人トリオ。ユカは元警視庁捜査一課警部の祖父彦之進との2人暮らしで、亜紀と朝子は共に地方出身でアパートでひとり住まい。そんな3人組みが思いがけず殺人事件にまき込まれた。殺されたのはスナックでバイトをしていた先輩で、その死体のわきには「拒絶」の花言葉をもつガーベラの赤い花弁が意味ありげに置かれていた。3人組みが捜査を開始したが、疑えばだれもが怪しい。そんな時ユカに奇妙な脅迫電話が。そして朝子が、続いて亜紀が殺された。死体にはどちらにも赤いガーベラが!?お嬢さん探偵ユカが危ない!-花の女子大生ユカの迷探偵ぶりは?お嬢さんシリーズ“復活”の青春ミステリー。
日本の暴力組織を東西に二分する尾藤組と北関総業、その間隙に台頭してきた麻薬王ル・チンミンの第3勢力、いずれも警察庁特命部隊竜崎軍団との数次にわたる壮絶な銃撃戦の末、いまや完全に葬り去られた、かと見えたが、いつまでも静かにしているはずがない。折しも、愛車マゼラッティに乗った竜崎三四郎が2台のショベルカーと1台の大型コンテナー車とで前後から挾撃され、壇竜四郎は自宅マンションで正体不明の女に麻酔弾を撃ち込まれて倒れた。2人とも間一髪で危地を脱したが、こともあろうに軍団のナンバー1とナンバー2を同時に撃うとはいかにも大胆不敵な挑戦であった。はたして挑戦者は何者か?-竜崎三四郎・壇竜四郎の大型拳銃が再度火を吐く。敢然と悪に挑む激闘最強軍団。
謀反の挙に出て敗死した由井正雪は、死の間隙に庶子雪之介を逃がし、これに1万両の黄金の隠し場所を秘めた絵図面を持たせてやっていた。絵図面は雪之介から娘お万の手に、そのお万が大番頭も務めた水野左衛門尉の側室となって絵図面の秘密を告白したことから、左衛門尉がそれをかつての上司で寺社奉行などの重職をも務めた青山頼母に告げて絵図面を預けたのだが、左衛門尉は頼母によって放たれた刺客によって殺害されてしまったのだ。左衛門尉とお万の間に生まれた早苗・主馬之介の姉弟はいま頼母の手から絵図面をとり戻すべく苦心するが、老獪な青山一党の凶刀が2人の身に迫る。その早苗姉弟を助けるのは春之介と名のる虚無僧であった。-はたして黄金の謎を秘めた絵図面の行方は…!
足利幕府勘定台所目付の貝塚源太夫と木戸鹿九郎の両人に野狩りの混乱のうちに討たれた郷士重右衛門の子藤次は、いまだ14歳の少年であったが、父の仇を討つべく独り剣を学ぶ。彼の師となった老僧こそ、鬼一流6代室行雲為家であった。5年後、鬼一流の秘太刀“乱剣”の極意をさずけられ、7代祇園源宗春に成長した藤次は、いよいよ京の都へと上った。伊賀の兵法者伊賀崎幻雲の娘春海と知り合った藤次は、卑怯な神山左近らの手槍の襲撃も伊賀兵法“畳返し”の妙技でこれをしりぞけ、幻雲に会うべく春海を同道して伊賀国へ。痛快な面白さを発揮する著者得意の剣豪小説。
老中田沼主殿頭意次の右腕と目されて、今を時めく勘定奉行松本伊豆守の屋敷へ姿を現した恐ろしき般若の面をつけたる剣士ひとり。伊豆守の屋敷に同居する綾姫は、お家を断絶された美濃郡上八幡金森家の遺児であった!美しい綾姫に白面鬼は顔を合わせた。綾姫の臣、加納和泉の用心棒を努めるは三日月神妙剣の無類の遣い手、鮫鞘組の怪剣士三日月桂馬であった。深まる謎の渦中にきらめく桂鮎太郎の絶妙剣の舞。-面白さ抜群、伝奇時代の雄編。
おれ、岬大助、28歳、独身!のぞき見好きの一部読者に偏愛的な人気を博す週刊誌『週刊スクープ』の事件ライター!ガールフレンドは“桃ちゃん”こと白井桃枝、24歳!色恋の占いより血なまぐさい事件の謎を占うのが好きで、警視庁捜査課のベテラン刑事をファンにもって、“名探偵”との噂もひろまってる!-マイルドなタッチで描く青春探偵ミステリー!
越後新発田藩士の加納喬四郎は、父代わりだった兄主膳が青柳伊織に斬られて死んだため、藩を逐電した伊織を追って仇討ちの旅に出た。だが、江戸での浪人暮らしをつづけるうちいつしか仇討ちの気持ちを失っていた喬四郎が遭遇した一つの怪事件とは?それは謎の怪人物“将監”にひきいられる黒頭巾の一党を相手にまわす不思議な事件であった。喬四郎が捜す仇敵の青柳伊織は高田玄蕃と名を変え、18歳の娘小夜と深川の長屋で暮らしていたが、将監一党につけねらわれて市之介という侍とともに殺され、小夜も黒頭巾の手で捕われ、石牢の中に入れられてしまった。玄蕃に恩をうけた怪盗速足の小吉が小夜を助け、また喬四郎も小夜のため将監を追った。-将監の正体ははたして何者であったか!