出版社 : 春陽堂書店
ルポライターの村瀬浩一が六本木のラブ・ホテルで殺害された。隣室にいた親友のTVディレクター伊沢亮は、けたたましくドアを開けて飛び出した全裸の女と剃髪頭の男を目撃した。村瀬はなぜ殺されたのか…?伊沢はその謎の犯人を追う。だが、何者かに襲われ、気がついたときには彼の横に女の絞殺死体が横たわっていた。村瀬殺害の犯人を追いながら、自らも殺人犯として追われる身となってはもはや警察の助けは求められない。伊沢は、ついに恐るべき事実に突き当たった。暴力団幹部二人を自由に操る組長情婦とその裏で糸を引く利権屋、そして、その陰には悪徳代議士が…。-金と女に狂奔する残忍なサディストたち、単身挑戦する伊沢の前に意外な結末が。
出羽三山といえば羽黒山・月山・湯殿山を指すが、その昔は山伏修行の聖地の一角を葉山が占め、長恵院では奪れた葉山修験道の復興を悲願としていた…(出羽即身仏伝奇)。会津の数ある名産品のひとつに「絵蝋燭」がある。蝋の生産は、藩の貴重な収入源として専売制の下に急伸したものだが、絵蝋燭の開発のうらに…(「会津絵蝋燭奇談」)。-その他、浮世絵師歌麿の「幻の名作」異聞、日本酒造りの「杜氏」秘史、そして木曽の「娘宿」哀話という5話構成になる本編は、著者の曽祖父の弟にあたる竹邑亭雀子と号する文人趣味の人物が遺した草稿を現代文に書き直し、いささかの潤色を施して再話したものというが、1話1話が丁寧な細工物を見るような感興をそそる情趣深い佳編である。
伊予松前5千7百石の城主加藤嘉明は、慶長5年9月15日、いわゆる天下分け目の合戦“関が原の役”で徳川家康に味方し、一躍20万石の大名にのし上がって新城を構築せんと画策し、勝山の地に三層の天守閣をもつ城下町を建設することになった。普請奉行足立右衛門重信は、主君の意を受け、この地の土質や降雨量、さらには樹木の種類に至るまで調べるという充分な考究を重ねて築城に当たっていたが、小天守の石積みで意見の食い違いをきたしていた。亡き母に代わって父の世話に務めるひとり娘の千波は、そんな父の疲労を肌に感じ取っていた。とある日、せっかくの土塁を何者かに爆破されるという事件が出来した!-“金亀城”構築をめぐっての普請奉行父娘の剣と恋の物語。
六郷の渡しの河原で、女にも見まがう若衆が屈強の浪人輩に取り囲まれていた。危ういところを救ってくれたのは、空腹に困ってその場に寝転んでいた若侍倉間勝太郎であった。助けられた若衆は川路鮎之介と名のったが、その正体は女と勝太郎は見抜いていた。事実、川路鮎之介こと鮎姫は遠州掛川5万石は太田備中守盛澄の孫娘であったが、江戸へ向かう道中で、家重代の秘宝“群れ千鳥の懐中鏡”を何者かのために奪われてしまった。それは、ばてれん忍者甲羅弾三郎の仕業であった。忍者を操る恐るべき黒幕とは…。婚儀にまつわるもめごとに反発する鮎姫を助けて、「お鮎ちゃん」、「鮎の字」とまるで長屋の小娘でも呼ぶような気安さで接する倉間勝太郎なる若侍の正体とははたして…。
遠州掛川からぶらりと江戸へ出てきた次男坊ざむらい砂子銀作は、浅草奥山の矢場で奇怪な浪人に連れ去られようとした美女、お雪を救ってやったことから…。幕府転覆の陰謀をたくらむ軍略家愛州若狭守を首魁にいただく怪盗団「迅風連」の跳梁!その逮捕を目指すは幕府御目付鳥居耀蔵に率いられる隠密組と北町奉行遠山金四郎の隠密党であった。お雪の手引きで、銀作は隠密組の配下に属して活躍することになった。小柄の名手銀作であったが、迅風連の怪浪人相手の死闘で危地に陥ったとき救ってくれた宗十郎頭巾の若侍は、“若狭守の討幕の陰謀は偽り”という不思議なことばを残して去った!-乾坤二帳の秘巻をひめた花嫁人形の謎とは!?銀作が突き止めた事件の真相は…。
世界10カ国の首脳が集まる大規模サミット警備の間〓@68D2をぬって異常な事件が頻発する。新宿高層ホテルでの外国人襲撃!二度、三度にわたる竜崎軍団襲撃!そして…。彼ら命知らずの殺人集団は、竜崎軍団の壊滅こそ、日本に麻薬密輸の橋頭堡を築く唯一の手段と信じているのだ。従って、どんなに無茶な攻撃でも平気で仕掛けてくるのだった。折しもアメリカから大統領諮問委員会(PSB)の腕利き美人捜査官リタ・グレイが来日。が、ついに竜崎・壇両警視の防弾車にロケット弾がぶち込まれた。小型甲装車なみの装備とはいえ、その威力の前にはひとたまりもない。辛うじて脱出した両警視の恐りの拳銃が火を吐く!-警察庁最強部隊“鬼の竜崎軍団”は総力をあげて対決に立ち上がった。
隅田川につり糸をたれていた二人は、平賀源内と桜兵之介であった。川岸へ視線を向けた源内と兵之介が見たものは、無頼の男どもに追われているひとりの娘であった。兵之介は娘を救ってやった。その可憐な娘は、烏山の浪士泉川作太郎の娘多喜であった。多喜は芝愛宕山寂光院門前の茶屋の主忠兵衛を訪ねたが、まもなく、上州館林六万一千石松平藩の重職菅沼右兵衛の命をうけた紋次の手で、いずことなもなく連れ去られた。菅沼右兵衛と老女蔦枝に無理に薬をのまされた多喜は、そのまま麻布清徳寺墓地に埋葬された。奇怪なことに墓に記された名は楓であった。楓というナゾの女の身代わりに葬られた多喜の運命とは?兵之介・源内の活躍は。興趣満点、角田喜久雄時代長編大作。
バラバラ事件発生ー!男の切断された片腕が、九州宮崎の西都原古墳公園の土中から発見された。血液型と指紋照合の結果、この腕は鎌倉の古美術商『悠雅堂』の主人伊良子為三のものと判明したが、鎌倉の人間の片腕がなぜ九州の地に…?生前、その指には、“男女交合図”の彫り込まれた奇怪な指輪がはめられていたという。悠雅堂の捜索をその息子から依頼されていた『週刊スクープ』の事件記者岬大助と美人と評判の易者ギャル桃花堂桃花の前に、古美術ブローカー、新興宗教の美人教祖など怪しげな人物が浮かび上がってきた。なにやら、悠雅堂が九州のどこかに隠されていることを突き止めた古代インド王朝の莫大な秘宝をめぐって…。シャンドラの秘宝は実在するのか?青春ミステリー。
悪党どもから裏金を奪い、その首領をひそかに屠る、-それが“闇狩り軍団”だ。ある夜、闇狩り軍団行動隊長の影丸慎也は2人の部下とともに、世間を騒がせ黒い巨富を蓄えた実業家の隠し金を強奪した。そこへ、強奪金を狙う謎の黒覆面集団が出現した。この一味はその後、財界の重鎮を誘拐し、五大都市で軽機関銃を無差別に乱射するという狂気の事件を惹起した。その凶器は、ソ連製と思われた。敵は特殊部隊か…?影丸たち“処刑戦士”は、60億の身代金をせしめた犯人グループに迫った。その途端に襲いかかる外人武装団、謎のクーデターと、一連の事件には複雑なからくりが…!-これは今日の劇画か、明日の現実か?大型新人が贈る衝撃の“超活劇”の決定版。
江戸は両国の料亭で、年に1度の刺青競艶会が開かれていた。手長猿の刺青を妖しげに白い裸身に彫った蓬莱橋のお源が1番に選ばれようとしたとき、花川戸のゆき路が現れた。ゆき路の刺青は白粉彫りの緋牡丹絵図であった。その見事さにゆき路が1番に選ばれ、賞金百両を獲得した。ゆき路の供の北八が百両を持っての帰り道、突如出現した怪浪人は恐るべき左腕殺法の剣鬼、“名なしの権兵衛”こと海江田前鬼であった。絶体絶命、危機一髪のゆき路と北八の2人を、危うく救ってくれた白羽二重に朱鞘の若侍は“気まぐれ俊太郎”と名のった。そして、下総香取1万石、菊の間詰めの内田伊勢守正容の屋敷に誘い込まれたゆき路の運命は…?
東南アジア歴訪の帰途、非公式訪日中のフラリア共和国大統領夫人が何者かに銃撃された。そして、日本を東西に二分する暴力組織ー尾藤組・北関総業、それに第三勢力の極西連合に所属する下部組織が次々に撃われる事件が頻発していた。折しも、アメリカはマンハッタンの盛場で白昼、マフィアのボスを刺殺した日本人らしき殺し屋を追ってきたPLB(大統領諮問委員会)の2人も、警察庁の玄関先で襲撃された。その裏には、ますますエスカレートする暴力組織の国際化という深刻な問題があった。そして、ついにはこれら暴力組織の跳梁に敢然として立ちはだかる警察庁特命部隊“鬼の竜崎軍団”その人、竜崎三四郎までが刺された!悪辣なる陰謀に軍団の怒りが爆発する。
天正10年(1582)6月、京都本能寺で、織田信長を倒した丹波国の領主明智光秀は、たちまち羽柴秀吉軍に敗れ、光秀は小栗栖村で落人狩りに襲われ落命した。光秀の重臣であった斎藤利三も捕えられ、京六条河原で処刑され、その首は晒首になった。利三の妻あんと4歳の娘ふくは、宗我部村の弥助とその甥の弥九郎に助けられ四国土佐へと逃れた。肥後24万石の大名に出世した小西行長の世話で13歳のふくは京の三条西実条の元へ預けられ、18歳に成長して稲葉正成の後添いの妻となった。ふくの波瀾に富む運命は好転し、二代将軍秀忠の嫡男竹千代の乳母に任命された。大奥髄一の権力者春日局の65年の生涯を描く話題の歴史時代長編作。
浅草寺境内で易を立てる評判の美人易者ギャル桃花堂桃花と『週刊スクープ』の事件記者岬大助の二人が湘南へドライブに出かけ、暴走族のバイクに囲まれ、乱闘となった。その暴走族はブラックスターと名乗り、占星術星命教教祖のお告げによって動いているという。暴走族と易者、彼らは一体どこでつながるのか?桃花の好奇心が頭をもたげた。事件から1週間ほど過ぎて、教祖の公文黒星が江ノ島の岸壁から海に突っ込んで死んだ。桃花と大助は黒星の妹と称する麗花の星命教2代目襲名披露パーティーに、信者を装ってまぎれ込んだ。2人がそこで目にしたものは…!?(運命星の女)-事件記者と女易者探偵のコンビが殺人事件の謎に挑む青春ミステリー連作全6話!
“善意”から生じた悲劇は、“悪意”から生じたそれよりも、よりいっそう恐ろしいものだ。天才探偵神津恭介は、ある日、美しい婦人の訪問を受けた。愁い顔の彼女が語るのは、2年前の恐ろしい殺人事件だった。犯人はすでに死刑の宣告を受け、刑の執行される日を無実を絶叫しながら待っている。神津は女の話から真犯人を推理した。しかし、何らの証拠もない。彼は婦人に、真犯人へ“決闘”を申し込ませるーという大時代奇想天外な策をさずけたのだった…!?(「私は殺される」)-表題作のほか、伝説の女魔術師松菊斎天章が住んだという屋敷で起こった怪奇殺人事件(「鏡の部屋」)など、戦後の不安定な世相を舞台にしてくりひろげられる鬼才神津恭介の、快刀乱麻を断つ名推理のかずかず!
世はあげて財テクブーム。警視庁捜査一課を5年前に定年退職した祖父の元警部矢車彦之進と2人暮らしのユカは、ちょっとおっちょこちょいだが明るく活発な京北女子大の英文科2年に席をおく美人女子大生だ。ユカのクラスでもいま財テクが大流行、なかでも、親友の庄子と奈緒は夢中。2人は庄子が帰省のおり知り合った証券会社の新入社員西野の紹介で買った株で大儲けし、すっかり味をしめてユカにまで財テクをうるさく押しつける。が、間もなく大暴落。なけなしの資金を無にした2人は西野を責め立てた。その庄子が何者かに殺され、解剖の結果、意外や庄子は妊娠2ヵ月、そしてまた殺人が追っかける。-財テクとセックス、清純なお嬢さん探偵ユカは完全な“迷路”にはまり込んだ。
くたびれた黒羽二重の着流しに雪駄ばき、はげた朱鞘を落とし差しにしたどこから見ても尾羽打ち枯らした浪人者は、人呼んで白柄朱膳。元高遠藩士で、その剣法は一刀微塵流。たったの一刀で、四方八方の敵を粉砕するという“あばれ剣法”であった。北町奉行遠山金四郎を友とする白柄朱膳が立ち向かう大江戸の怪事件とは…?稀代の絵師瀬川春草が呼び売りのかわら版に描いた“大江戸小町づくし28美人”が身を投げるやら斬り殺されるやら、はたまた心中やらとつぎつぎに惨事に見舞われるという奇怪な事件がひきつづいていた。つぎは御蔵小町、春草の娘(黒い水面)。-大江戸の闇に出没する怪人変化のからくりを斬る破邪の剣。白柄朱膳事件帖。
慶長17年(1812)夏、船島において佐々木小次郎と試合した宮本武蔵は、みごとに強敵小次郎を倒した。その後、因州鳥取6万5千石の池田家中の士に円明二刀流を指南していた武蔵に、19年春、新当唯一流岩井唯一赤山なる剣客が試合を挑む高札を立てた。が、この剣客をも苦もなく打ち倒したのち、武蔵は京へと向かった。その武蔵を追う者に、一族の長宍戸梅軒の仇討ちを名目とする手裏剣の名手天郷一郎太・小三郎の兄弟がいた。大坂夏の陣の直前、豊臣方につこうとして真田幸村らの反対に遭った武蔵は大坂城を去った。そして、不敵な少年三木之助を養子にしたのち、下野国小山の本多上野介正純のすすめで江戸へと向かった。-剣豪宮本武蔵の生涯を描く傑作長編。
一見何の関係もなさそうな2人の女が相次いで生命を奪われ、その左腕を切り取られた。1人は映画のスクリーン上で濃艶な美貌と甘い歌声をうたわれた女優吉野小夜子、もう1人はこれも凄艶な美貌の持ち主、“白蛇のお菊”の異名を持つ女スリ。いつものくせで、居酒屋でしたたかに酔ったわたし(駆け出しの探偵小説家松下研三氏)のカバンの中に、いつの間にかまぎれ込んでいたコルトの拳銃。あやめもわかぬ暗黒の中に、青白い燐光を放って浮き上がった人間の片腕。-わたしを震えあがらせたこの二つの事実から、神津恭介はみごとに犯人を推理した。残るは決め手となる証拠だけだ。(「女の手」)-ほかに表題作「血ぬられた薔薇」をはじめ6編を収録。
警察庁最強部隊ー竜崎三四郎を長とする“鬼の軍団”の隊員たちが次々と襲撃される、という事態が生起していた。日本を二分する暴力組織と、その間をぬって東南アジアの麻薬王をバックにのし上がった第三勢力、そのことごとくは潰えたはずだがはたして何者か?いつもならまっさきに飛び出す竜崎警視が、今回ばかりは副団長の壇警視やナンバー3の長島警部、婦警軍団の長部隊にまかせて、妙に落ち着いている。三四郎の胸中は…?おりしも、ヤクザが次々とアメリカ本土に乗り込んでいるとの情報が入ってきた。ヤ印と米軍MPを顎で使う謎の美女と妖しげなホテルチェーン、これを結ぶと麻薬と武器と売春の組織として一本のものにつながってくる。三四郎を先頭に竜崎軍団出撃のときが来た。