出版社 : 春陽堂書店
三ツ葉葵の紋所の黒羽二重の着流し姿、眉目秀麗の貴公子はご存じー松平長七郎。亡き駿河大納言忠長卿の御曹子で、現三代将軍家光の甥君である長七郎はいま、僧坊に佗住まいの身の上であった。主家一族の輝姫君の行方を必死に探索する越後の喜久周防守利明の遺臣香月囲伊馬之介の妹年重を自幻党の襲撃から救ってやったことから、長七郎は奇々怪々な事件の渦中にまき込まれていった。輝姫君が持参している犬張り子が秘める謎とは何か…?-怪人物に率いられる自幻党、幕府の陰謀を向こうにまわして閃く長七郎正義の剣。
神田川沿いの夜更けの寂しい道を小道具屋の喜三郎が刀箱の包みを背に歩いてきたところへ、山岡頭巾に面を包んだ怪しの浪人が出現した。峰打ちに斬られて刀を奪われたこの男を救ったのは、柳橋の芸妓お恵と白羽二重の着流しに朱鞘を落とし差しにした若侍であった。“気まぐれ峻太郎”と名のった若侍は、実は北町奉行白木左京の一子であった。若さま峻太郎がまき込まれた宝剣粟田口国綱をめぐる怪事件とは?直参4千石の大身駒木根大内記の用人仙石修理と愛妾おいくノ方とがたくらむ陰謀とは?黒羽二重を着流しにした殺し屋、剣客土門戒九郎と気まぐれ若殿峻太郎の対決は…。
東京浅草一帯のテキ屋の大元締笠松源蔵の跡取り鉄平は、テキ屋渡世を嫌うでもなく、といって松源一家の名跡を継ごうともせぬ、時勢に背を向けた一匹狼のインテリやくざだ。背中一面に散らした朱彫りの桜、人呼んで“朱桜”の鉄平の生まれついてのやくざな血は、一切の非道を許せない。やくざ渡世は“仁義”の2文字が守り本尊!定法破れば血で血を洗う、侠気血潮が煮え滾る。
江戸は浜町の常磐津の師匠お妻の娘お光は、“浜町小町”と噂の色白の顔に大きな目が鈴を張ったような愛くるしくも幸せな十八娘に成長していた。が、お光は16年の昔、金四郎(遠山景元)によって深川の木場で拾われた奇しき運命にしばられた哀れな赤子であった。その肌身につけていたお守り袋の中の“18歳の4月10日の夜、本郷湯島天神境内の一本杉の根元に参集せよ”との書付けに従って出向いていったお光は、青白い顔にまるでざくろのような赤い唇の女と影法師の二人連れによって、いずくともなく連れ去られてしまった。もう一人、お光とまったく同じ運命に逢着していたのが20歳の美女、大奥中〓@62E4のお浦であった。-奇怪な桔梗屋敷の地下牢に捕らえられた2人の美女が秘めた謎とは…?
矢車ユカ、北沢亜紀、野川朝子の3人は京北女子大英文科の2年生、花の美人トリオ。ユカは元警視庁捜査一課警部の祖父彦之進との2人暮らしで、亜紀と朝子は共に地方出身でアパートでひとり住まい。そんな3人組みが思いがけず殺人事件にまき込まれた。殺されたのはスナックでバイトをしていた先輩で、その死体のわきには「拒絶」の花言葉をもつガーベラの赤い花弁が意味ありげに置かれていた。3人組みが捜査を開始したが、疑えばだれもが怪しい。そんな時ユカに奇妙な脅迫電話が。そして朝子が、続いて亜紀が殺された。死体にはどちらにも赤いガーベラが!?お嬢さん探偵ユカが危ない!-花の女子大生ユカの迷探偵ぶりは?お嬢さんシリーズ“復活”の青春ミステリー。
日本の暴力組織を東西に二分する尾藤組と北関総業、その間隙に台頭してきた麻薬王ル・チンミンの第3勢力、いずれも警察庁特命部隊竜崎軍団との数次にわたる壮絶な銃撃戦の末、いまや完全に葬り去られた、かと見えたが、いつまでも静かにしているはずがない。折しも、愛車マゼラッティに乗った竜崎三四郎が2台のショベルカーと1台の大型コンテナー車とで前後から挾撃され、壇竜四郎は自宅マンションで正体不明の女に麻酔弾を撃ち込まれて倒れた。2人とも間一髪で危地を脱したが、こともあろうに軍団のナンバー1とナンバー2を同時に撃うとはいかにも大胆不敵な挑戦であった。はたして挑戦者は何者か?-竜崎三四郎・壇竜四郎の大型拳銃が再度火を吐く。敢然と悪に挑む激闘最強軍団。
文久2年(1862)初秋、京三本木辺の河原を血に染めて2人の武士が縡切れていた。その死体の腕には小刀で傷つけたものか“卍”の紋様の刺青が浮き出ていた…!?死んでいた2人は長州浪人の菅沼伊織と太田平七であった。菅沼と太田、それに土佐の脱藩人片岡一馬は一緒に住まっていたが、片岡が連れてきた美女お千花に3人が心を奪われ、ついに菅沼と太田は決闘におよび生命を落としたのだった。妖しの美女お千花とは…!?-幕末、幕臣・志士らとも深く係わるおんな刺客お千花の波乱の運命を描く時代大作。
謀反の挙に出て敗死した由井正雪は、死の間隙に庶子雪之介を逃がし、これに1万両の黄金の隠し場所を秘めた絵図面を持たせてやっていた。絵図面は雪之介から娘お万の手に、そのお万が大番頭も務めた水野左衛門尉の側室となって絵図面の秘密を告白したことから、左衛門尉がそれをかつての上司で寺社奉行などの重職をも務めた青山頼母に告げて絵図面を預けたのだが、左衛門尉は頼母によって放たれた刺客によって殺害されてしまったのだ。左衛門尉とお万の間に生まれた早苗・主馬之介の姉弟はいま頼母の手から絵図面をとり戻すべく苦心するが、老獪な青山一党の凶刀が2人の身に迫る。その早苗姉弟を助けるのは春之介と名のる虚無僧であった。-はたして黄金の謎を秘めた絵図面の行方は…!
足利幕府勘定台所目付の貝塚源太夫と木戸鹿九郎の両人に野狩りの混乱のうちに討たれた郷士重右衛門の子藤次は、いまだ14歳の少年であったが、父の仇を討つべく独り剣を学ぶ。彼の師となった老僧こそ、鬼一流6代室行雲為家であった。5年後、鬼一流の秘太刀“乱剣”の極意をさずけられ、7代祇園源宗春に成長した藤次は、いよいよ京の都へと上った。伊賀の兵法者伊賀崎幻雲の娘春海と知り合った藤次は、卑怯な神山左近らの手槍の襲撃も伊賀兵法“畳返し”の妙技でこれをしりぞけ、幻雲に会うべく春海を同道して伊賀国へ。痛快な面白さを発揮する著者得意の剣豪小説。
老中田沼主殿頭意次の右腕と目されて、今を時めく勘定奉行松本伊豆守の屋敷へ姿を現した恐ろしき般若の面をつけたる剣士ひとり。伊豆守の屋敷に同居する綾姫は、お家を断絶された美濃郡上八幡金森家の遺児であった!美しい綾姫に白面鬼は顔を合わせた。綾姫の臣、加納和泉の用心棒を努めるは三日月神妙剣の無類の遣い手、鮫鞘組の怪剣士三日月桂馬であった。深まる謎の渦中にきらめく桂鮎太郎の絶妙剣の舞。-面白さ抜群、伝奇時代の雄編。
おれ、岬大助、28歳、独身!のぞき見好きの一部読者に偏愛的な人気を博す週刊誌『週刊スクープ』の事件ライター!ガールフレンドは“桃ちゃん”こと白井桃枝、24歳!色恋の占いより血なまぐさい事件の謎を占うのが好きで、警視庁捜査課のベテラン刑事をファンにもって、“名探偵”との噂もひろまってる!-マイルドなタッチで描く青春探偵ミステリー!
越後新発田藩士の加納喬四郎は、父代わりだった兄主膳が青柳伊織に斬られて死んだため、藩を逐電した伊織を追って仇討ちの旅に出た。だが、江戸での浪人暮らしをつづけるうちいつしか仇討ちの気持ちを失っていた喬四郎が遭遇した一つの怪事件とは?それは謎の怪人物“将監”にひきいられる黒頭巾の一党を相手にまわす不思議な事件であった。喬四郎が捜す仇敵の青柳伊織は高田玄蕃と名を変え、18歳の娘小夜と深川の長屋で暮らしていたが、将監一党につけねらわれて市之介という侍とともに殺され、小夜も黒頭巾の手で捕われ、石牢の中に入れられてしまった。玄蕃に恩をうけた怪盗速足の小吉が小夜を助け、また喬四郎も小夜のため将監を追った。-将監の正体ははたして何者であったか!
“迷路の町”と呼ばれる一角の居酒屋に、浪人者が屯していた。その中に、鷹羽十四郎がいた!十四郎は将来を約束されている前途有為な青年武士であったが、なぜか無頼浪人の群れに身を投じていた。新妻とも別れた十四郎の身体に秘められている謎とは…。追っ手に後をつけられ逃走中のさよを救ってくれたのは、居酒屋の浪人たちであった。彼らの中にいた十四郎の姿がさよの胸に強く残った。執拗にさよを追う黒装束の忍者群を逃がれる火炎の中で、さよは帛紗包みを十四郎の手に預けた。それは、わが国土の一部をロシア国に売り渡さんとたくらむ陰謀者の面々の連判状であった。松前藩内の騒動にまき込まれた鷹羽十四郎の活躍やいかに…遠山金四郎も登場する伝奇時代長編の野心作!
時代小説のおもしろさを十二分に満喫させる佐竹申伍会心の娯楽時代長編作。時の権力者ー老中田沼主殿頭意次は、出羽国は羽黒山の別当と何事かを画策していた!それは、出羽羽黒山山中にひそかにねむっているという莫大な埋蔵金をねらっての陰謀か?それとも、出羽の豪族最上家を再興せんとするたくらみか…?最上家の血筋をひく二人の美姫、時姫、月姫がひそかにいだく悲願とは…?下谷三味線堀に住む旗本の三男坊、剣をとっては神道無念流戸ガ崎道場の小天狗といわれるいい男ー桧大四郎は、はからずもこの天下の怪事件の渦中へとまき込まれていった!
大江戸の夜更け、谷中の教文字の新墓をあばいて取り出した白い裸身の美女の死体を前に怪しい40男が情欲を火と燃えたたせていた。と、いつの間にかその場に現れた幽鬼のような浪人の手練の一刀が40男を刺殺し、女の死体から首を切り取っていた。変わりはてた首なし死体を見て姉の志乃は失心した!寺に来あわせていた若侍が志乃を背負って家まで送ることになったが、2人の行く手を黒熊の彦三一家が取り囲んでいた。“大江戸無宿、姓は足柄、名は金太郎!”と颯爽と名のった若侍は、美女の死体の首を奪い去るという奇怪な墓あばき事件の真相を探るべく藤堂家の秘事に挑戦していく。あるときは桃太郎、あるときは金太郎となって天下の泰平のために働く隠密素浪人!
上州浅間山麓中居村の名主の子に生まれ、幼時からその天才の名をほしいままにしてきた重兵衛は、20歳で江戸に出た。母方の遠縁に当たる日本橋の書籍商に寄宿していた縁で佐久間象山・勝海舟らと親交を結ぶかたわら剣を練兵館に学び、火薬の製法にも手を染め、当時の最先端をゆく『集約砲薬新書』まで著述していつしか開国思想に目覚めていったが、ペリー艦隊の来航を見るや外国との交易に目をつけ、自ら開港の先駆として未開の横浜へ!攘夷派浪士からは奸商と暗殺の機をねらわれ、井伊大老暗殺では使われた拳銃の出所に絡んで鬼与力の魔手に追われながら、江戸の豪商の圧力に敢然として反旗を翻した反骨の漢!-横浜を日本一の貿易都市に育てあげた一代の侠商“絢爛の生涯”を描く伝記ロマン!
牛込七軒寺町にある正栄山仏性寺は寺格も高く、また歴史も古い法華宗の寺であったが、その寺内の一室では住職日啓の娘お美代と、その恋人の中野清茂の2人が甘美なひとときを過ごしていた。16歳のお美代と19歳の清茂の情熱は尽きることがなかった。また、住職日啓も奇跡を現出する僧として大奥にも人気があったが、仏性寺内陣の闇の世界では色道羅刹と化して、大奥女中を相手に性の技巧を発揮し、女たちを随喜させていた。筆頭お年寄常の井はお美代を将軍家斉に献上すべく策動し、恋人中野清茂に同意させた。大奥に上がったお美代と清茂(後に石翁と改名)の野望ははてしなくふくらんでいく!-徳川11代将軍家斉の治世、将軍愛妾お美代の方をめぐる豪華絢爛たる“色道絵図”!