出版社 : 春陽堂書店
大江戸の夜更け、谷中の教文字の新墓をあばいて取り出した白い裸身の美女の死体を前に怪しい40男が情欲を火と燃えたたせていた。と、いつの間にかその場に現れた幽鬼のような浪人の手練の一刀が40男を刺殺し、女の死体から首を切り取っていた。変わりはてた首なし死体を見て姉の志乃は失心した!寺に来あわせていた若侍が志乃を背負って家まで送ることになったが、2人の行く手を黒熊の彦三一家が取り囲んでいた。“大江戸無宿、姓は足柄、名は金太郎!”と颯爽と名のった若侍は、美女の死体の首を奪い去るという奇怪な墓あばき事件の真相を探るべく藤堂家の秘事に挑戦していく。あるときは桃太郎、あるときは金太郎となって天下の泰平のために働く隠密素浪人!
上州浅間山麓中居村の名主の子に生まれ、幼時からその天才の名をほしいままにしてきた重兵衛は、20歳で江戸に出た。母方の遠縁に当たる日本橋の書籍商に寄宿していた縁で佐久間象山・勝海舟らと親交を結ぶかたわら剣を練兵館に学び、火薬の製法にも手を染め、当時の最先端をゆく『集約砲薬新書』まで著述していつしか開国思想に目覚めていったが、ペリー艦隊の来航を見るや外国との交易に目をつけ、自ら開港の先駆として未開の横浜へ!攘夷派浪士からは奸商と暗殺の機をねらわれ、井伊大老暗殺では使われた拳銃の出所に絡んで鬼与力の魔手に追われながら、江戸の豪商の圧力に敢然として反旗を翻した反骨の漢!-横浜を日本一の貿易都市に育てあげた一代の侠商“絢爛の生涯”を描く伝記ロマン!
牛込七軒寺町にある正栄山仏性寺は寺格も高く、また歴史も古い法華宗の寺であったが、その寺内の一室では住職日啓の娘お美代と、その恋人の中野清茂の2人が甘美なひとときを過ごしていた。16歳のお美代と19歳の清茂の情熱は尽きることがなかった。また、住職日啓も奇跡を現出する僧として大奥にも人気があったが、仏性寺内陣の闇の世界では色道羅刹と化して、大奥女中を相手に性の技巧を発揮し、女たちを随喜させていた。筆頭お年寄常の井はお美代を将軍家斉に献上すべく策動し、恋人中野清茂に同意させた。大奥に上がったお美代と清茂(後に石翁と改名)の野望ははてしなくふくらんでいく!-徳川11代将軍家斉の治世、将軍愛妾お美代の方をめぐる豪華絢爛たる“色道絵図”!
250石を拝領する直参旗本牧野主馬介は、本所一ツ目河岸をひどく酒に酔って歩いていた。その場に通りかかった24、5歳の着流しの浪人に鞘当てをいいたて、ついには斬ってかかったが、あえなくその浪人の剣に斬り倒されてしまった。浪人は神道無念流岡田十松道場で代稽古を勤める使い手秋山要介であった。師岡田十松はこの剣の天才を惜しんで、当座の費用を与えて旅に出すことにした。突然の変事で父を失い、小花と名のって芸者に出た主馬介のむすめ小夜が黒頭巾の一党に襲われたとき、その急場を救ってくれたのは上州から江戸に戻った秋山要介と旅烏の赤尾林蔵であった!-謎の一寸仏の急奪をめぐり、悪と対決する秋山要介の活躍が始まる!