出版社 : 水声社
最高傑作との呼び声高い原作小説はもちろん、イギリスでの映画化作品、綾瀬はるか主演のテレビドラマ版、蜷川幸雄演出の舞台版まで、『わたしを離さないで』だけを徹底的に読み尽くす画期的作品論集! 未刊行の草稿ノート類への渉猟も踏まえ、カズオ・イシグロの稀有なる創造力の核心へ一挙に斬り込む!
古くから伝わる“少女と魚の悲恋”の逸話をなぞるように絶世の美女の叔母に惹かれゆく少年を捉えた表題作をはじめ、規範や差別、偏見に苦悶するなかで邂逅するエロスを晴れやかに描く、現代ハイチ文学の傑作短編集。
「ストラスブールの誓い」に立ち会った年代記作者ニタール、見知らぬ女の顔を探し求め彷徨するアルトニッド。反復する誕生、鏡像のような双子。カロリング朝を舞台に、史実と虚構を断章形式で織り交ぜ、フランス語の起源に肉薄する謎めいた小説。
5月に神奈川近代文学館で開催される「詩人大使ポール・クローデルと日本」展に合わせて刊行する図録アルバム。 大正時代に仏国大使として来日して以来、日本の虜となった類いまれな詩人・劇作家の肖像を貴重な資料から明らかにする。 渡邊守章氏をはじめとしたエッセイも多数収録。
1958年、ペルー山間部でごく小規模な反乱があった。首謀者はトロツキー派の組合運動家、名前はマイタ。その20年後、とある作家はこの事件を小説で再現しようと、事件の証言者たちを辿ってインタビューを試みる。しかし、証言者たちの語りは食い違い、反乱の全貌は窺えないまま最後の証言者マイタの居場所を突き止めることになる……。 史実とフィクションを意図的に交錯させる大胆な手法を試みた、ノーベル賞作家によるメタ・フィクション。
「喪失」の陰に覆われた近未来の都会で、「進歩」し続けることに疑いを抱かない世界を憂う“わたし”。人間の原初的なことばや身振りが生き生きと現前する精霊の島から、いのちの根源をたどり直すために旅立つ少年“ノア”。「ない」ことと「ある」ことのはざまで、二人の異なった時空間の物語がパラレルに展開しつつ、いつしか一つの大きな物語として重なり合い、昇華していくー。批評と創作の境界線上で生まれた、父と母と子供たちのための、少し哀しく、希望あふれる未来の寓話。
小さな大学でマキァヴェリを教える新任の助教が、腐敗した学内政治の闇に直面する『助教横田弘道』と、若きミケランジェロによるダヴィデ像の彫刻で、フィレンツェの新時代を拓こうとするマキァヴェリの奮闘を描く『ダヴィデ像』、二編の書き下ろし短編小説を収録。
魔術的リアリズムともいうべき虚実をないまぜにした巧みな文体をあやつり、神秘的で怪しげなバイーアの下町を、ボヘミアンや娼婦らの強烈な個性とともに描いた「キンカス・ベーホ・ダグアの二度の死」他一篇を含む。
舞台は20世紀前半のアマゾンの中流地域「エルドラード」。文明化されているとはいえ、人々は神話が色濃く残る世界に生きている。アルミント・コルドヴィウは、急死した父親の事業を継ぐが労働することに意識は向かず、一夜をともにしたきり姿を消した、あるインディオの女を忘れることができずにいた……。現代のブラジル文学を代表する作家が描く、文明と神話的世界が交錯した愛の物語。
自分の手が自分の身体の一部ではなく、獣にも共通する一般的な肉と見えたり思えたりするとき、「わたし」はなにものであり、どこにあるのであろうか。 〈言葉〉と〈肉体〉の相剋を鍵に、ジョイスやベケット、そして画家フランシス・ベーコンなど、アイルランドに縁の深い作家たちの創造力の原点に肉迫する。斬新な方法によってアイルランド芸術論に新たな地平を開く迫真の評論。
銀鉱で成り上がったメキシコ生まれの主人と従者の出立から始まる物語はやがて、黒人の奏でるギター、街頭を轟かす謝肉祭の喧噪、ヴィヴァルディのオペラ、ルイ・アームストロングのトランペットへと、変幻するテンポのうちに秩序は多元的に錯綜していく“幻想交響曲”で幕を下ろす。擬古的な文体で周密な作品空間を描き出し、響きわたる雑多な楽音で読者を圧倒する傑作。
アランソンで一大サロンを築くコルモン嬢をめぐり、水面下で婿の座争いが起こる。老嬢を射止めるのは文なしの老騎士か、中産階級の商人か、貧しく純情な青年か? コミカルな表題作ほか、「ボエームの王」「コルネリュス卿」「二つの夢」の四篇。
一面に広がる鳥の屍体を踏み分けて入水する美女、人間をセメント詰めにする男、大男の初恋を馬鹿にする小人…奇々怪々な登場人物たちが織りなす、白昼夢の世界。人間の邪悪さと卑小さ、哀しみと悪徳を“人間”への絶望と愛によって、そして辛辣な皮肉とユーモアをこめて描き出す、ゴンクール賞を二度受賞した、謎多き作家の16篇の物語。
アメリカ南部で葬儀屋を営む父のもと思春期を生きるフィッシュベリー。父子の葛藤、白人による友人の殺害、売春宿の火事での恋人の死、そして、白人警察署長による父の謀殺…現代アメリカ社会に通底する人種差別問題を“事実と真実”で描いた長編小説。
「妻殺しの容疑者が取調中に窓から身を投げた…」自殺の瞬間に偶然立ち会った若き新聞記者アンヘルと、自堕落な生活を続けるその母。容疑者の旧友で賭博に入れこむ元弁護士セルヒオと、神秘的な女中デリシア。取り憑かれたようにオスカー・ワイルドの翻訳に没頭する判事エルネストと、謎の男トマティス…“出口なし”の政治状況を背景に、“傷”を抱えた登場人物たちの複数の視点からひとつの事件を浮かび上がらせた初期の傑作長編。
スペイン王家のフェリペ2世や狂女フアナなどの実在の人物たちと、ドン・キホーテやドン・フアンなどの架空の登場人物たちを斬新な手法で錯綜させ、イベロアメリカ全体に影響を及ぼす征服者の悲劇を、旧世界・新世界・別世界の3部構成で物語る世紀の叙事詩!メキシコを代表する作家が残した畢生の大作、待望の完訳!