出版社 : 水声社
ニグロの老人が振るう杖の一振りにより、崩壊した館がたちまち元の姿へと戻り、亡くなったはずの館主の生涯をその死から誕生へと遡る傑作「種への旅」をはじめ、「夜の如くに」「聖ヤコブの道」を含む旧版に加え、時間の枠組みを大きく逸脱させるユーモアとアイロニーが散りばめられた「選ばれた人びと」「闇夜の祈祷」「逃亡者たち」「庇護権」の四編をあらたに加えた決定版カルペンティエール短編集。
登場人物全員狂人説!?主従一行のみならず、脇役にいたるまで漏れなく正気とも狂気とも定かでない登場人物たちの行動の分析、狂気の萌芽となる理想と現実の鋭い対立をはらんだセルバンテスの苦難の生涯の解説、さらには『贋作ドン・キホーテ』や様々な世界文学との比較を通じ、作品の内外にひしめく狂気を総覧する、狂的『ドン・キホーテ』体験への導きの書。
時は西暦26××年。ヨーロッパ最終戦争において圧倒的な勝利を収めたナチス・ドイツは“神聖ドイツ帝国”を樹立、同じく戦勝国である日本帝国と拮抗しながら世界の覇権を争い続けてきた。厳格な自民族男性中心主義を掲げ、ヒトラーを軍神として崇める国家宗教“ヒトラー教”の守護者たる“騎士”たちの統率のもと、建国以前の記録はことごとく破壊され、キリスト教徒は徹底的な迫害を被り、そして女性たちもまた、男児の出産を除くあらゆる価値を剥奪された家畜に等しい存在として、ゲットーでの隔離生活を強いられていた。そんな中、従属民族であるイギリス人の技術者アルフレッドは、一人の騎士から帝国開闢の真相を物語る禁断の書物を託されるのだった…。
少女に対する偏愛!強迫的なまでにサディスティックな性癖!!常軌を逸した過激で暴力的な描写によって、少女たちの監禁や虐待の場面をはじめ、露骨なまでに作家に取り憑いた妄想を描き出す。遺作となった“大人のためのファンタジー”。
思いがけず暗闇で目が光る能力を手にした語り手が、密かな愉しみに興じる表題作「案内係」をはじめ、「嘘泣き」することで驚異的な売上を叩き出す営業マンを描く「ワニ」、水を張った豪邸でひとり孤独に水と会話する夫人を幻想的な筆致で描く“忘れがたい短篇”(コルタサル)「水に沈む家」、シュペルヴィエルに絶賛された自伝的作品「クレメンテ・コリングのころ」など、ガルシア・マルケスはじめ“ブーム”の作家たちに多大な影響を与えたウルグアイの奇才による日本語版オリジナル傑作短篇集。
キリスト教の聖地サンティアゴを目指す「私」。 度重なる回り道と彷徨の果てに彼は、スペインの歴史・風土・宗教・物語の坩堝、茫漠たる時空間の襞へと絡めとられていく……。 ノーベル文学賞の呼び声も高いオランダ人作家の幻想的旅行記。
“このなすがままの態度に誘発された情熱の波が彼女を陶酔させた。”家庭を捨てた自責の念にかられるリリアン、その前に現れる生き生きとしたジューナ、そして破滅的なサビーナ、ヘレン。画家ジェイを間にお互いに響きあい、共感の愛を見つけ自己を探求していく女性たちー作家ニンが経験したモダニズムのパリを舞台に描く愛の遍歴。
総理官邸に大型トレーラーが突入、爆発した。残骸のコンテナから発見された男女12人の死体はすべて被曝していたー福島原発事故や共謀罪の制定を背景に、巨大利権に戦いを挑む男たちの運命を描く“原発サスペンス”!!
世界革命を夢見るレフ・ダヴィドヴィチ(トロツキー)の亡命、暗殺者ジャック・モルナルに成り代わるスペイン人民戦線の闘士ラモン・メルカデール、そして舞台はメキシコへと至る。イデオロギーの欺瞞とユートピア革命が打ち砕かれる歴史=物語を力強い筆致で描く、現代キューバ文学の金字塔。
フランスの作家でありながら、ヴェネツィアとパリを往復する生活を送り、『大理石』『海百合』といったイタリアを舞台にした長編小説を書いたマンディアルグ。「わが故郷」と呼ぶほどイタリアに魅了・触発され、いかにしてその「異端」の幻想美学を作り上げたのか?谷崎潤一郎と三島由紀夫を愛する、孤高の耽美作家マンディアルグの本邦初のモノグラフィー!
カミュの『異邦人』を反転させ、ムルソーによって殺害されたアラブ人の弟が紡ぐ“もうひとつの物語”とはなにか!?世界でもっとも読まれたフランス小説を、アラブ人の視点から創造=想像的に捉え返す衝撃作。
ニューヨークの暗闇の中、超低速で映し出されるヒッチコックの映画『サイコ』。読者を幻惑する謎の空間から、舞台は荒涼たる砂漠が広がるサンディエゴへ。 戦争、記憶、意識、宇宙をめぐって続けられる対話。砂の彼方に消える声。意味を失ってゆく時間。暗闇に閃く欲望。そして、少女は消えた…… 泥濘化する戦場から遠く離れ、虚空を領する絶対の静寂が、アメリカの野蛮、人間精神の孤独を穿つ。
人生は“樹”、家族は“林”。教育者と文筆家の夢を追い志半ばで没した「父」、家事から解放された後画家として頭角を表した「母」、妻の死後愛人と同棲を始めた「兄」…93歳が編んだ家族の物語。戦前から戦後にいたる一族の、それぞれの人生の一幕を活写し、迷い、もがきながらも生きる「人間」の姿を浮かび上がらせる短篇小説集。
《88年に及ぶ英雄的独立戦争の末、1898年にアレパは独立国となった。独立戦争最後の生き残りで、《独立戦争の英雄少年》として名高い陸軍元帥ドン・マヌエル・ベラウンサランが大統領を務め、憲法上最後となる四期目を全うしつつある。》 恐怖政治で権力を掌握する独裁者が治める国アレパの《真の独立》は成し遂げられるのか? 陰謀、クーデター、暗殺計画…… さまざまな思惑が入り乱れるハードボイルド小説さながらの「政治喜劇」
怠慢な犯罪者たちが感情のままに貶めてきた「殺人」を救え! 完全犯罪という大いなる使命を抱いた主人公によって『失われた時を求めて』の登場人物たちが、ある一定のルールに基づいて、1人、また1人と殺されていく、実験文学集団ウリポ(潜在文学工房)の数少ない女性会員による、奇想天外な犯罪小説。