出版社 : 水声社
交差する過去と現在、キューバ独立にまつわる物語ーー 故国キューバから追い出された文学研究者のフェルナンド・テリーは、19世紀の詩人ホセ・マリア・エレディアの「回想録」にまつわる情報を得る。一時帰国したハバナで「回想録」の手がかりを探すフェルナンドは旧友たちと再会し、自分を亡命に追い込んだ裏切り者の存在を見つけようとするだが……。キューバ独立運動にまつわる事件をミステリー仕立てに描き出す傑作長編。
1965年のブエノスアイレス郊外、命知らずの4人の若者たちが現金輸送車を襲撃するという無謀な計画を立てた。まんまと大金の“現ナマ”をせしめた強盗団は警察からの逃走をはかり、アパートの一室に立てこもる。籠城作戦のすえに彼らが取った行動とは…?幼年時代の思い出、娼婦たちとの出会い、獄中生活、セックスとドラッグへの耽溺など、強盗団のメンバーたちそれぞれの過去をフラッシュバックの手法で描き出し、“社会を震撼させた衝撃的事件”をフィクションの力で描き出した傑作。
資本主義の発展からとり残され、文明から遠く離れたブラジル北東部の奥地。搾取に喘ぐ牛飼いとその一家は、干魃により土地を追われ、焼けつくような太陽のもと、荒野へと歩みを進めるのだが…。沈黙の世界に住まう登場人物たちの孤独と渇きを巧みに描きだす、ブラジル・モデルニズモを代表する作家の心理小説。
かつてフランスのリヨン郊外にあったスラム街“シャアバ”。幼少時にマグレブから移住してきた少年は、貧しい家庭から勉学によって立身出世し、大臣にまで登りつめ作家となった…。作家自身が体験した青春時代を描きだした代表作。
冷戦時代、ソ連の全住民を瞬時に天国の救済へと送る“音響麻酔兵器”がアメリカで開発され…。平和な最終兵器をめぐる応酬をコミカルに描く表題作ほか、モスクワ・コンセプチュアリズムのアーティストにして小説家による、性愛の快楽と宇宙の虚無を讃え、忙しない資本主義社会を忘れて心地よい赤子の眠りに還る、優しいロシア・ポストモダン短編小説七編。
フランコ政権下の一九六九年、左翼思想を持った大学院生で作家志望のミナヤは、二七年世代の幻の詩人、ハシント・ソラナの散逸した作品の調査を行い、博士論文にすることを思いつくのだが…。過去・現在・未来の物語が反射し合い、ひとつの殺人事件の真実が浮かびあがる、実験的推理小説。
飲んだくれで無職の父親、仕事に疲れきった母親、たくさんの幼い子供たち…。ソ連崩壊から間もない90年代ロシア、荒廃した郊外の村で暮らす人びとの姿を、自然に親しみ、森と水辺の妖怪に憧れる少女カマローヴァを中心に、郷愁をこめて描き出す2篇の現代ロシア小説。
キューバ黒人の日常に浸透する呪術的な信仰 サトウキビ畑で生まれ育ち、人妻と恋におち、殺人未遂をおこすが、ヴードゥー教と繋がった秘密結社に入り、結社間の抗争にまきこまれてゆく青年メネヒルドの運命。 どんな出来事も魔術的な性格をおびているキューバの黒人社会を躍動的に描いたデビュー作。 【目次】 1 幼少年期 1 風景(a) 2 風景(b) 3 降誕 4 加入儀礼(a) 5 治療(a) 6 牛ども 7 リズム 8 暴風雨(a) 9 暴風雨(b) 10 暴風雨(c) 11 暴風雨(d) 2 思春期 12 精霊 13 風景(c) 14 祭り(a) 15 祭り(b) 16 出会い 17 抒情性 18 発見 19 魔術 20 加入儀礼(b) 21 フアン・マンディンガ 22 火事(a) 23 火事(b) 24 治療(b) 25 神話学 26 黒いアントニオ 27 政治学 28 男らしい男 3 都市 29 線路 30 旅 31 鉄格子(a) 32 鉄格子(b) 33 鉄格子(c) 34 娑婆 35 エクエ・ヤンバ・オー! 36 イレーメよ 37 加入儀礼(c) 38 子供たち 39 洗礼者ヨハネの斬首 40 悪魔 41 降誕祭の前夜 42 死んじまった 43 メネヒルド 訳者あとがき
2020年春、ひそやかに迫り来る新型コロナウイルスの脅威。変容する世界の中で、美術史研究者の真希は乳がんと診断される。病の意味を問い、乳房を失うことの意味を問いながら、真希は自らの生のあり方を見出していく……。 かつて受けた予言や、美術作品の「美」に翻弄されながらも、真摯に生と向き合う夫婦を描いた、著者渾身の一冊。
ディストピアに希望を探れ。文学という枠を越え出て、政治や社会のあり方、あるいは日常生活の襞にいたるまで、今やあらゆる領域へと越境し増殖を続ける『一九八四年』の世界。動物、ジェンダー、情動、“ポスト真実”やポピュリズムといった多様な観点からの精読や、受容史やアダプテーションなど関連作品の分析を通してこの文学的事件の真価を問う。今と未来を生き延びるための『一九八四年』読解。
第二次世界大戦勃発間近の一九三九年八月二日、ヴァルガスの独裁政権が支配し不穏な空気が漂うブラジルの奥地で、ルース・ベネディクトに師事していた若き人類学者は、二人のインディオとともにカロリーナへと戻っていくのだが…。なぜ彼は自ら死を選んだのか?現実とフィクションの裂け目から、ある人類学者の死の真相を「あなた」に突き付ける、現代ブラジルの傑作ミステリー!
「わたしは馬、わたしは牝馬なの」イギリスの大富豪の一族に生まれ、“深窓の令嬢”として育てられたレオノーラは、幼い頃から動物と会話し、精霊が見える不思議なヴィジョンの持ち主。彼女の運命は、シュルレアリストの画家マックス・エルンストとの出会いによってめくるめき冒険へと投げ出される…不世出の画家レオノーラ・キャリントン(1917-2011)の生涯を現実とフィクションのあいだに描きだした傑作長篇。二〇一一年に出版社セイス・バラルが主催する未発表の長編小説を対象とした文学賞、ビブリオテカ・ブレベ賞を受けた。
記憶と結びついたマドレーヌ菓子、芸術創造のごときブッフ・モード、舌平目の変身譚、アスパラガスの官能性…さまざまな材料を時をかけて風味豊かにまとめあげられた『失われた時を求めて』において、「文学」と「料理」はいかなる位置をとりうるのか?食をめぐる文化史を踏まえ、世紀末に溢れた美食言説に逆らす作家の小説美学が託されたテクストを味読していく、プルーストをめぐる美味しい文学論。
ニャンニャン理論、 わがアヒル=友バガディーヌ(とその赤ちゃん(月、火、水、木、金、土、日)たち)、 代々伝わる神聖なる手づかみ漁儀式(自惚れ屋のマスをのぞく!) 一つの樹木がその枝を伸ばすかのように、数々の枝に分かれた幼少期のエピソード群。物語・挿入・分岐と、ウリポメンバーならではの複雑な構成からなる、規格外の自伝的フィクション。 写真家だった妻の早逝、その空虚を埋めるべく書かれた<ロンドンの大火>シリーズ。全六巻からなる大著の一巻であり、著者の代表作!
祖国エルサルバドルへの圧倒的な罵詈雑言と呪詛ゆえに作者の亡命さえ招いた問題作『吐き気ーサンサルバドルのトーマス・ベルンハルト』に加え、ひとつの事件をめぐって無数の異説や幻覚をもてあそぶ虚無的な生を描き出す「フランシスコ・オルメド殺害をめぐる変奏」、歴史の淀みにはまり込んだ罪なき市民が暴力の渦に巻き込まれる「過ぎし嵐の苦痛ゆえに」計3篇の「暴力小説」を収めた、現代ラテンアメリカ文学の鬼才カステジャーノス・モヤの広大な物語世界を凝縮した作品集。