出版社 : 水声社
一九三九年ドイツのポーランド侵攻により第二次世界大戦開戦。ラドムに暮らすユダヤ人一家は、徴兵され、家を追われ、シベリアの強制収容所へ送られ散り散りになるが、それぞれユーラシア、アフリカ、北米、南米での迫害を乗り越え、再会を果たすまでの逃避行を描く迫真のノンフィクション・ノベル。
世界には二種類の人間がいる。-甚大な汚染事故、消費社会の猛威、情報メディアの氾濫、オカルトの蔓延、謎の新薬の魔手、いびつな家族関係、愛の失墜、そして、来るべき“死”に対する底なしの恐怖…。日常を引き裂くこの混沌を、不安を、哀切を、はたして人々は乗り越えられるのか?現代アメリカ文学の鬼才ドン・デリーロの代表作にして問題作、そして今なお人間の実存を穿つポストモダン文学随一の傑作が、より深く胸を打つ魅力的な“新訳”として装いも新たに登場!!
現代のアフロブラジル作家が描きだす“傷跡”の物語。言語の喪失、奴隷制の負の遺産、血に塗れたナイフ、すべてを知る精霊…20世紀後半、奴隷制が色濃く残るバイーア州奥地のアグア・ネグラ農場、この地で暮らすふたりの幼い姉妹は、祖母が隠しているナイフを見つけ、舌にあてがって…
20世紀フランス文壇の中心人物のひとり、ジャン・ポーラン。その知られざる初期短篇小説集。内向的な性格を矯正するために三人の女性と愛を試みる男が登場する表題作、戦場で負傷することに世界との繋がりを見出す主人公を描く「ひたむきな戦士」をはじめ、マダガスカル滞在と第一次世界大戦の経験を色濃く残す全五作品を収録。
小説、エッセイ、手記、詩歌、アフォリズム、パロディ、宣伝文…“読むこと”をゆさぶる先鋭なエンターテインメント小説。奇想か妄想か、さまよえる断章群の残映と余熱。誰が書いているのか?誰が読んでいるのか?
1908年6月18日、ブラジルのサントス港に、781人の労働移民を乗せた一隻の船「笠戸丸」が到着するー。後に世界最大の日系人コミュニティが形成されることになるかの地で、希望に胸を膨らませたヒデオ・イナバタは、いつか故郷に帰る日を夢見ながら、農場オウロ・ヴェルジで身を粉にして働くことになるのだが…。日本人移民の歴史を、ある家族の歩みに重ね合わせる、日系人作家によるジャブチ賞受賞作。
1995年、プラハで奇妙な噂が流れたーあの世で作曲を続けているショパンの声を聞き、楽譜に書き起こしている女がいる。メディアは連日インタビューに押しかけ、レコード会社は音源化を熱望する。事の真相を究明するべく取材を始めたルドヴィーク・スラニーは、思いもかけない出来事に次々と遭遇する…。日常と非日常の境界を巧みにゆるがすストーリーテラーの最新作!
故国キューバから追い出された文学研究者のフェルナンド・テリーは、19世紀の詩人ホセ・マリア・エレディアの「回想録」にまつわる情報を得る。一時帰国したハバナで「回想録」の手がかりを探すフェルナンドは旧友たちと再会し、自分を亡命に追い込んだ裏切り者の存在を見つけようとするだが…。キューバ独立運動にまつわる事件をミステリー仕立てに描き出す傑作長編。
1965年のブエノスアイレス郊外、命知らずの4人の若者たちが現金輸送車を襲撃するという無謀な計画を立てた。まんまと大金の“現ナマ”をせしめた強盗団は警察からの逃走をはかり、アパートの一室に立てこもる。籠城作戦のすえに彼らが取った行動とは…?幼年時代の思い出、娼婦たちとの出会い、獄中生活、セックスとドラッグへの耽溺など、強盗団のメンバーたちそれぞれの過去をフラッシュバックの手法で描き出し、“社会を震撼させた衝撃的事件”をフィクションの力で描き出した傑作。
資本主義の発展からとり残され、文明から遠く離れたブラジル北東部の奥地。搾取に喘ぐ牛飼いとその一家は、干魃により土地を追われ、焼けつくような太陽のもと、荒野へと歩みを進めるのだが…。沈黙の世界に住まう登場人物たちの孤独と渇きを巧みに描きだす、ブラジル・モデルニズモを代表する作家の心理小説。
かつてフランスのリヨン郊外にあったスラム街“シャアバ”。幼少時にマグレブから移住してきた少年は、貧しい家庭から勉学によって立身出世し、大臣にまで登りつめ作家となった…。作家自身が体験した青春時代を描きだした代表作。
冷戦時代、ソ連の全住民を瞬時に天国の救済へと送る“音響麻酔兵器”がアメリカで開発され…。平和な最終兵器をめぐる応酬をコミカルに描く表題作ほか、モスクワ・コンセプチュアリズムのアーティストにして小説家による、性愛の快楽と宇宙の虚無を讃え、忙しない資本主義社会を忘れて心地よい赤子の眠りに還る、優しいロシア・ポストモダン短編小説七編。
フランコ政権下の一九六九年、左翼思想を持った大学院生で作家志望のミナヤは、二七年世代の幻の詩人、ハシント・ソラナの散逸した作品の調査を行い、博士論文にすることを思いつくのだが…。過去・現在・未来の物語が反射し合い、ひとつの殺人事件の真実が浮かびあがる、実験的推理小説。
飲んだくれで無職の父親、仕事に疲れきった母親、たくさんの幼い子供たち…。ソ連崩壊から間もない90年代ロシア、荒廃した郊外の村で暮らす人びとの姿を、自然に親しみ、森と水辺の妖怪に憧れる少女カマローヴァを中心に、郷愁をこめて描き出す2篇の現代ロシア小説。
サトウキビ畑で生まれ育ち、人妻と恋におち、殺人未遂事件をおこすが、ヴードゥー教と繋がった秘密結社に入り、結社間の抗争にまきこまれてゆく青年メネヒルドの運命。どんな出来事も魔術的な性格をおびているキューバの黒人社会を躍動的に描いたデビュー作。