出版社 : 白水社
家族のきずな、生きることの喜びと悲しみを心あたたまる筆致で描いて日本中に静かな感動を呼び起こした『豚の死なない日』に、待望の続編登場!父の死にめげず、家族をささえて健気に働くロバート。だが凶作とアメリカ全土に及ぶ恐慌の波がヴァーモントを襲い、一家は苦況に立たされる…。
永井荷風が『〓東綺譚』の続編として構想しながら、ついに完成しなかった幻の作品『冬扇記』を再現。明治・大正・昭和の吉原遊廓を舞台に、全盛を極めた花魁がおちぶれ、時代にとり残され乞食となってさまよう様を「わたくし」の青春の残骸として思い描く、荷風ファン必読の初めての試み。
愛妻への不可解な殺意に憑かれ、深夜の町を彷徨する男が絡みとられていく倒錯的なエロスの誘惑。三島由紀夫に捧げられた『一九三三年』ほか全六篇の短篇には、透明な鏡に不意に黒々とした欲望の暗渠が映じるかのような、マンディアルグ特有の異様な、しかし詩的で豊穣なイメージ群が横溢する。
厳格な母親と頼りない父親、管理と偽善が横行する学校を吹き飛ばせ。わたしは赤が好き。わたしは赤い夢を見る。夢や記憶をたどりながら、自分を発見するために『嵐が丘』へと旅立つ…。『血みどろ臓物ハイスクール』のポスト・パンク作家が世界に股を開いた、迸る出血ヒーリング小説。
サハラ砂漠で純朴に生きていた羊飼いの美少年が、パリでCM映画やマネキンのモデルに仕立てられていく…。移民労働者の現実を背景に、映像文化に翻弄された人間の自己回復を描く、巨匠の最高傑作。
精緻きわまりない究極の「私小説」は、父の遺骨探しの旅から始まる。過去・現在・未来が相互嵌入式に複雑に重なり合いながら言語は歴史をはらみ、アカシアの葉がそよぐとき、小説が生まれる。本書は、作家としての自分の「起源」にさかのぼる、クロード・シモン版『感情教育』。
第二次世界大戦のさなか、アーサー王と王妃グィネヴィア、円卓の騎士ラーンスロットらが疾駆し、ナチがパリを占領してヒトラーがナポレオンの墓を訪れ、エズラ・パウンドがローマから反ユダヤの宣伝放送する。アメリカ小説の鬼才が遺した、史実と英雄騎士伝説を超えた物語、待望の翻訳。
百三十九歳の詐欺師が語る法螺話が、そのまま広大なオーストラリアの歴史につながる。『百年の孤独』オーストラリア版とも評された、ブリリアントな俊英のおかしなおかしな大長編。
ペニスが生えた人妻。洗練された〈悪趣味〉に満ちた諧謔と皮肉が炸裂する感傷的恋愛小説&茶番劇。仰天、狂騒、欲情のセックス・コメディ・イン・ザ・U.K.。ヴァギナが出来たラガーマン。
ノアの箱船の密航者が語る航海の真実、中世フランスで実際にあった奇妙な「虫裁判」、ジェリコーの大作「メデューサ号の筏」制作の顛末、月面で啓示を受けてアララト山に箱船を探しに出かける元宇宙飛行士…滑稽にして崇高なる人類の歴史に挑む『フロベールの鸚鵡』の作家の知的で愉快な小説。
「でもあたし誰を愛したらよいのかしら」倦怠と不安の現代に生きる雪白姫とその7人の恋人たちが巻きおこす、スーパー前衛ファンタジー。アンダーグラウンド・ディズニーのポップな小説空間を縦横に行き交うユーモアあふれるイメージ。
『インド夜想曲』の作者タブッキが、魔術を駆使してオールディーズの世界をノスタルジックに描く。ものうい夏の午後、ドリス・デイの「ケ・セラ・セラ」の歌声が、「ヴォラーレ」のメロディーが聞こえてくる。
二十世紀初頭のアルバニアの高地。この地域の人々の生活は、復讐を核とする古い掟によってすみずみまで支配されている。七十年前から連綿と繰りかえされてきた復讐により死を宣告された男と、彼を思う人妻との出会いと別れ。荒涼たる高地を舞台に、錯綜する生と死のイメージが織りなされる。
ロゼッタ石に刻されたエジプト文字の研究に打ち込むシャンポリオンを主人公に、解読という行為に憑かれたひとりの人間の運命を描きだす。ボルヘスの短篇を思わせる不思議な筆致によって浮かび上がるのは、書物に埋もれたエジプト学者ではなく、いわば古代エジプト人の最後の生き残りなのである。