小説むすび | 出版社 : 白水社

出版社 : 白水社

俺の歯の話俺の歯の話

さて、最初の値をつけるのはどなたかな?  「ハイウェイ」ことグスタボ・サンチェス・サンチェスは、自称「世界一の競売人」。爪や髪など取るに足りないものを集めるのが好きな目立たない子どもとして育つ。メキシコ市近郊の町エカテペックにあるフメックス社のジュース工場で警備員の仕事に就き、思わぬ事件に巻き込まれるが、事なきを得る。昇進を告げられたハイウェイは、危機管理のためのさまざまなセミナーを受け始めるが、ある講座で出会った妻の意向で、警備員の仕事を辞めてしまい、ひょんなことから競売人(オークショニア)への道を目指すことになる。  アメリカに渡り、オクラホマ師匠のもとで競売術の修業を積んだあと、ハイウェイはメキシコに戻る。だがオークションの仕事にはなかなか恵まれない。そんなとき、聖アポロニア教会の神父から慈善オークションの開催を打診され、自らの秘蔵コレクションからとっておきの品々を競売にかけることを決意する……。  現実のフメックス社の工場労働者との共同制作でもある本書は、現実とフィクション、現代アートと文学を融合させ、読者を煙に巻き、思わぬ結末へと導く仕掛けに満ちている。世界15か国で刊行、メキシコ出身の新鋭による斬新なコラボレーション小説。

房思キ(ファンスーチー)の初恋の楽園房思キ(ファンスーチー)の初恋の楽園

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白水社

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2019年10月25日 発売

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台湾社会を震撼させた、実話にもとづく傑作  著者は1991年生まれの女性作家。デビュー作である本書に「実話を基にした小説である」と記したことから、著者の実体験なのではと大騒ぎとなった。刊行2か月後に著者が自殺。台湾社会を激震させた。  文学好きな房思キと劉怡婷は高雄の高級マンションに暮らす幼なじみ。美しい房思キは、13歳のとき、下の階に住む憧れの50代の国語教師に作文を見てあげると誘われ、部屋に行くと強姦される。そして異常な愛を強いられる関係が続くことになってしまう。房思キの心身はしだいに壊れていく。劉怡婷は、房思キが記した日記を見つけ、5年に及ぶ愛と苦しみの日々の全貌を知る……。  一方、同じマンションの最上階の裕福な家庭に嫁いだ20代の女性・伊紋の物語も同時に描かれる。伊紋は少女2人によく本を読んであげていた。だが実は夫からのDVに悩み、少女らに文学を語ることが救いとなっていたのだ。  人も羨む高級マンションの住民たちの実情を少女の純粋で繊細な感性によって捉えることで、社会全体の構造的な問題が浮かび上がってくる。過度な学歴社会、格差社会、権力主義の背後にある大人の偽善、隠蔽体質……。なぜ少女の心の声を大人が気づけなかったのか。文学の力とは何か。多くの問いを投げかける。

モンスーンモンスーン

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2019年8月2日 発売

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韓国現代文学の到達点  ピョン・へヨンは、韓国で最も権威ある文学賞・李箱文学賞を2014年に「モンスーン」で受賞し、以後も数々の文学賞を受賞、男女問わず多くの読者に支持される女性作家である。  派遣社員、工場長、支社長、上司、部下、管理人……都市という森に取り囲まれ、いつのまにか脱出不可能になる日常の闇を彷徨う人たち。「モンスーン」から最新作「少年易老」まで、都市生活者の抑圧された生の姿を韓国の異才が鋭く捉えた九篇。著者のこの10年の充実の作品群を収めた、日本語版オリジナル短篇集。  「モンスーン」:郊外の団地。ユジンとテオの夫婦関係は冷めきって、会話が成り立たない。きっかけは、生まれて間もないわが子の死だった。子どもを家に置いたまま、二人が別々に外出した時に起きた出来事だった。テオは妻に対する疑念を打ち消すことができない。テオは駅近くのバーで、妻の勤める科学館の館長に偶然出会い……。  「ウサギの墓」:派遣社員の彼は、6か月間だけこの都市に暮らす予定だが、公園に捨てられていたウサギを抱いて家に帰る。仕事は簡単だった。資料を集め、書類を作り、担当者に提出する。前任者は彼に仕事を引き継いだ後に行方不明となるが……。

私たち異者は私たち異者は

平凡なものが奇怪になる瞬間  職人的に精緻な筆致で、名匠が切り拓く新たな地平。蠱惑的な魔法に満ちた7篇を収録した、最新の傑作短篇集。  翻訳者の柴田元幸氏は、「ミルハウザーといえば『驚異』がトレードマークとなってきたが、この短篇集では(中略)驚異性はむしろ抑制され、ごく平凡な日常生活に小さな異物を(あるいは異者を)挿入することで、日常自体に蠱惑的な魔法を息づかせ、と同時に日常自体の奇怪さを浮かび上がらせている」と、本書の魅力を指摘する。  通りすがりの男がいきなり平手打ちを食わせてくる事件が続発する町の動揺を描く「平手打ち」。放課後も週末もいつも一緒にいる仲の彼女が決して話したがらず、だからこそ僕は気になって仕方ない「白い手袋」。いつのまにか町に現われ、急速に拡大していく大型店舗の侵食ぶりを描く「The Next Thing」。ある日目覚めると、ベッドに横たわり動かぬ自分を見下ろしていた私は、事態を呑み込めないままさまよいだす。やがて出会ったある女性との奇妙な交流とその行方を描く表題作など、どの作品も筆が冴えわたっている。  本書は、優れた短篇集に授与される《The Story Prize》を受賞している。

回復する人間回復する人間

痛みがあってこそ回復がある  『菜食主義者』でアジア人初のマン・ブッカー国際賞を受賞し、『すべての、白いものたちの』も同賞の最終候補になった韓国の作家ハン・ガン。本書は、作家が32歳から42歳という脂の乗った時期に発表された7篇を収録した、日本では初の短篇集。  「明るくなる前に」:かつて職場の先輩だったウニ姉さんは弟の死をきっかけに放浪の人になる。そんな彼女を案じていた私に3年前、思わぬ病が見つかる。1年ぶりに再会した彼女が、インドで見たというある光景を話してくれたとき、小説家の私の心は揺さぶられるーーウニ姉さんみたいな女性を書きたい、と。  「回復する人間」:あなたの左右の踝の骨の下には穴があいている。お灸で負った火傷が細菌感染を起こしたのだ。そもそもの発端は姉の葬儀で足をくじいたことだった。ずっと疎遠だった姉は1週間前に死んだ。あなたは自分に問いかける。どこで何を間違えたんだろう。2人のうちどちらが冷たい人間だったのか。  大切な人の死や自らの病気、家族との不和など、痛みを抱え絶望の淵でうずくまる人間が一筋の光を見出し、再び静かに歩み出す姿を描く。現代韓国屈指の作家による、魂を震わす7つの物語。

海の乙女の惜しみなさ海の乙女の惜しみなさ

広告代理店に長年勤務した初老の男ビル・ウィットマン。彼の人生の瞬間の数々を自虐的ユーモアを交えて語る断章形式の物語。(「海の乙女の惜しみなさ」)。もとはモーテルだったアルコール依存症治療センター“スターライト”。そこに入所中のマーク・キャサンドラが、ありとあらゆる知り合いに宛てて書いた(または脳内で書いた)一連の手紙という体裁の短篇。(「アイダホのスターライト」)。1967年、ささいな罪で刑務所に収監されることになった語り手。そこで無秩序の寸前で保たれる監房の秩序を目の当たりにし、それぞれの受刑者が語る虚構すれすれの体験談を聞く。(「首絞めボブ」)。かつてテキサス大学で創作を教えていた語り手は、あるとき学生たちを連れて老作家ダーシー・ミラーの牧場を訪ねる。その後、作家仲間から彼の安否を気遣う連絡を受け、ふたたび訪問すると、そこには、すでに死んだはずの兄夫婦と暮らしていると錯覚するミラーの姿があった。(「墓に対する勝利」)。詩人である大学教師ケヴィンが、才能豊かな教え子マークのエルヴィス・プレスリーに対する強迫観念を振り返る。マークは、エルヴィスの生涯に関する陰謀説を証明しようとしていた。(「ドッペルゲンガー、ポルターガイスト」)。

郝景芳短篇集郝景芳短篇集

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白水社

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2019年3月21日 発売

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ケン・リュウも注目の中国SF作家、初の短篇小説集! 「北京 折りたたみの都市」でヒューゴー賞を受賞し、いま最も注目されているSF作家の初の短篇小説集。社会格差や高齢化、エネルギー資源、医療問題、都市生活者のストレスなど、現代の中国社会が抱える様々な問題が反映された全7篇。 「北京 折りたたみの都市」 物語の舞台は、産業の自動化が進んだ北京。人間の労働力が不要になった都市で、人口増加と失業問題を解決するために折りたたみ式の都市が建設され、人々はそこで生活している。都市は三つの空間に分割され、第一空間では富裕層のみが地表で24時間を過ごし、折りたたまれた残りの第二空間、第三空間の人間は24時間を分けあう。互いの行き来は厳しく制限されている。第三空間のゴミ処理場で働く48歳の老刀(ラオダオ)は娘を幼稚園に入れるお金を工面するために、第一空間に忍び込もうとするが……。 「弦の調べ」「繁華を慕って」 宇宙からやってきた「鋼鉄人」が地球を侵略する。ヴァイオリニストの斉躍(チー・ユエ)は、師に従って鋼鉄人が拠点としている月を爆破する計画を手伝うことに。共振を起こして弦に見立てた宇宙エレベーターを震動させ、音楽によって爆破するという計画だったが……。バイオリニストの夫の視点からの「弦の調べ」と、作曲を志してイギリスに留学する妻の側から語られる「繁華を慕って」は対になり、夫婦の心の弦が響き合う。 北京 折りたたみの都市 弦の調べ 繁華を慕って 生死のはざま 山奥の療養院 孤独な病室 先延ばし症候群

ヒョンナムオッパへヒョンナムオッパへ

『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者による表題作を収録! 「ヒョンナムオッパへ」の主人公は、ヒョンナムに恋をし、精神的に支配されながら、それが暴力であるということにも気づいていない。あとからそれに気づくという小説を書きたかった。 ーーチョ・ナムジュ 嫁だからという理由で、妻だからという理由で、母だからという理由で、娘だからという理由で受けてよい苦痛はない。ただ女だからという理由だけで苦しめられてよい理由などない。 流さなくていい涙を流さなくてすむ世の中を夢見ている。 ーーチェ・ウニョン #Me Too運動の火付け役ともなった『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著)が韓国で100万部以上の売り上げを突破し、大きな話題を呼んでいる。本書は韓国でその人気を受けて刊行された、若手実力派女性作家たちによる、初の書き下ろしフェミニズム小説集の邦訳である。 チョ・ナムジュによる表題作「ヒョンナムオッパへ」の主人公は、地方出身の女子。ソウルの大学に進学して、先輩のヒョンナムに恋をし、彼に守られて10年以上青春期を過ごすが、実際には何もかも彼に操作されていたと気づき……。『82年生まれ、キム・ジヨン』では、女性として生きる上で直面する様々な困難や疑問が提示されたが、本作では実際に行動を起こすところまで踏み込んでいる。 ほかに、母親との葛藤を抱えた女性の主人公が、弟の結婚を契機に母との関係、女性としての生き方に思いを巡らす「あなたの平和」、受験を控えた中学生の息子と小学生の娘の問題に悩む専業主婦の複雑な感情に光を当てた「更年」など、各篇に描かれている事例は、日本の各世代の女性たちの共感を呼ぶ。 また、韓国の男性社会の暴力性への違和感を、都市空間への違和感として象徴的に描いた「すべてを元の位置へ」や、ハードボイルドの男女の役割を入れ替えたサスペンス仕立ての「異邦人」、宇宙空間での出産をテーマに、女性のクローン人間と雌犬とロボットの心温まる交流を描いた「火星の子」など、フェミニズムへの多彩なアプローチを楽しめる。 「ヒョンナムオッパへ」チョ・ナムジュ 「あなたの平和」チェ・ウニョン 「更年」キム・イソル 「すべてを元の位置へ」チェ・ジョンファ 「異邦人」ソン・ボミ 「ハルピュイアと祭りの夜」ク・ビョンモ 「火星の子」キム・ソンジュン 解説:斎藤真理子

反復(新装版)反復(新装版)

没後10年記念復刊、ヌーヴォー・ロマンの到達点!  というわけで、ここで私はまた反復し、要約する。アイゼナッハから廃墟だらけのチューリンゲンやザクセンを経てベルリンへと向かう果てしなくながい列車旅行の最中に、私はずいぶん久しぶりに、話を簡単にするために私の分身、あるいはそっくりさん、あるいはさらにもっと演劇的でない言い方で《旅人》と呼ぶ男を見かけた──。  〈第二次世界大戦直後の混乱したベルリンへの特殊工作員の潜入あり、謎の殺人事件あり、煽情的なうら若い少女売春あり、網をはりめぐらした秘密組織や警察と風俗業者の癒着があり、サドマゾ的な拷問があり、裏切りや処刑があり、最後も連鎖的な殺人と偽装で終わる。(中略)『反復』はB級エンターテインメント的な軽快さとばかばかしさが充満していて、アメリカ文学で言う《パルプ・フィクション》と受け取る読者もいるかもしれない〉(本書「訳者あとがき」より)。  ベルリンへと向かう列車、窓から殺人現場の見えるホテル、SMプレイに魅せられた少女のいる人形店……華麗なる迷宮を、秘密の使命を帯びた〈私〉がさまよう5日間。  没後10年記念復刊、著者渾身の最高傑作。ヌーヴォー・ロマンの到達点!

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