出版社 : 祥伝社
須崎槇之輔は、元は信州須崎藩の世継ぎだったが、父の起こした刃傷沙汰の咎により、大和鴻上藩に「預」となってしまった。不遇をかこつこと五年。槇之輔は冷水を買う銭も惜しみ、趣味の狩猟と料理で無聊を慰めていた。そんな折、父の仇・城島家に再興の目が出ると、須崎家旧臣の一部が「城島、討つべし」と息巻き始めた!悩める若様に、御家再興の途はあるのか?
お園が、江戸に帰ってきた。だがその矢先、お園を待っていたのは、店の危機だった。近所にできた京料理屋“山源”に、留守にしている間に客を根こそぎとられてしまったのだ。しかも“山源”の板長・勘市は、「お客の心を癒すための料理」というお園の考えを強く否定した。だが、信念を曲げないお園は、お客と自らをも救う一品を作り出す。優しさ溢れる人情料理帖。
島原の乱の生き残りで、天草四郎の力を継いだ“聖騎士”寅太郎たち。切支丹の世を目指す中、弾圧の首魁天海を打ち倒したが、それでも幕府の磐石な体制は揺るがなかった。そんな中で出会った、軍学者由井正雪。正雪は世の中から零れた浪人を纏め、新しい世を作るというのだがー。力なき弱者は、強者に消されゆくしかないのか。あくなき希望を繋ぐ、大河歴史伝奇。
秋から春の間、近在より江戸に出稼ぎにくるものを“椋鳥”と呼ぶ。そんな出稼ぎ人足喜助の娘ふみが口入屋『萬屋』を訪ねてきた。父親が郷里の常陸に帰ってこないのだという。素浪人矢吹平八郎は、健気なふみに胸を打たれ、父親捜しを引き受ける。道中を尋ね歩くと、馬に頭を蹴られ傷を負った男の噂を聞く。やっと見つけた喜助は記憶を失い、別の所帯を持っていたー(「冬椋鳥」)
武田小春は、十五年ぶりに再会したかつての親友・碓氷優佳とともに、予備校時代の仲良しグループが催した祝賀会に参加した。仲間の一人・湯村勝治が、ロボット開発事業で名誉ある賞を受賞したことを祝うためだった。出席者は恩師の真鍋宏典を筆頭に、主賓の湯村、湯村の妻の桜子を始め教え子が九名、総勢十名で宴は和やかに進行する。そんな中、出席者の一人・神山裕樹が突如ワインボトルで真鍋を殴り殺してしまう。旧友の蛮行に皆が動揺する中、優佳は神山の行動に“ある人物”の意志を感じ取る。小春が見守る中、優佳とその人物との息詰まる心理戦が始まった…。
脳疾患で入院中の老人・糸島末彦が失踪した。彼の年若い恋人・大谷深美から捜索を依頼された旅行作家・茶屋次郎は、糸島の訛を手掛かりに福岡に飛んだ。糸島は元警官で、定年目前に退職、その後地縁もない山口の岩国や京都を経て上京したことが判明する。なぜ彼は定年を待たず退職し、居を転々と移したのか?横槍を入れてくる県警を尻目に、やがて茶屋がその陰に、一人娘の痴漢被害があり、それが揉み消されたことを掴んだ時、博多で警官殺しが続発した!九州一の繁華街・中洲に消された謎を追う、傑作旅情推理。
出っ歯の透きっ歯で極端な縮れ毛ー。上杉家当主・景勝の前に現れた真田家の人質・弁丸(後の幸村)は大変な醜男であった。その上、美男の兄・源三郎(後の信之)では気に入らないだろうと言い放つ。景勝と跡目を争った義兄弟・三郎景虎が美男で名高かったからだ。手討ちになるかと思いきや、その明るい人柄で気難しい景勝に気に入られる。秀吉の出陣命令にも、時勢を読んだ的確な助言をし、武将としての厚い信頼も得る。上杉家中での存在感を増していく中、弁丸は父の名代として秀吉に謁見することになるが…。真田幸村を描いた「ぶさいく弁丸」他、自ら作った薬で家臣団との絆を強めた徳川家康、高貴な身分と偽った豊臣秀吉、北条早雲、武田信玄、上杉謙信、織田信長ら、天下に名を轟かせた七武将の知られざる“初陣”を鮮やかに描く!
大学の物理学研究室で発生した爆破事件の現場に急行していた警視庁捜査一課の入間祐希は、同じ管内で発生した大手電気通信企業の超高層ビル立て籠もり現場に行き先を変更した。犯人は元傭兵の斉東克也、手製の武器で武装し五名を惨殺していた。イルマも斉東の攻撃に遭い負傷するが、身柄確保に成功。しかし、イルマは同時に発生した二つの事件の関連を疑う。直後、科学系出版社の編集部で第二の爆発が。犯人に繋がる唯一の手掛かりは、爆発物の送り状の末尾に記された“ex”という文字のみ。“狼のような”イルマだけが犯人の足跡を嗅ぎ取り、追走を開始するが…。
戦争に翻弄されつつも、数奇な運命に導かれ、鮮やかに輝いた青春があったー。東京大空襲からわずか三週間後の昭和二十年四月一日。上京した十四歳の美代子は、新宿の看護婦養成所に入学した。「お国のために働きたい」と勉学に励む美代子だったが、激化する空襲に、現場はたちまち野戦病院と化していく。同じ頃、二十三歳の隆作は、通信兵として大陸を転戦していた。だが、壮絶な行軍の末、体調に異変を来してしまう…。
彼女は重力を無視するかのように、ふわりと僕の前に降り立ったー「屋上へ何をしに来たの?」それが白兎のマスクを被った君との、初めての出逢いだった…。ひりつく痛みと愛おしさが沁み渡る青春恋愛ミステリー。
“神戸発釜山行き、豪華客船レインボー号で行く魅惑のショートクルーズ”-五日間の休暇がとれた銀座第一消防署の消防士・神谷夏美と柳雅代は、贅沢な船旅を張り込んだ。全長三百メートル、十一階建ての威容に圧倒されるも、非常設備の不備や通路の狭さなどに不安を覚える。一方、船長の山野辺は、経営難の会社から、種子島にカジノを誘致する計画の第一人者・民自党の石倉代議士を接待し、新航路を獲得するよう厳命されていた。山野辺は、支援者のために洋上で花火を打ち上げたいという石倉の希望に添うべく種子島沖へ航路を変更。だが、数時間後、異音と共に排水が逆流し船が傾斜。その上、南洋にあった巨大台風が大きく進路を変え、後方に迫り始めていた…。21世紀の『ポセイドン・アドベンチャー』、ここに誕生!
雪中から西洋柩に入った刺殺体が発見された。長野県警の城取警部補らはライターの布山を逮捕した。彼は親族優先提供制度を不正利用した心臓移植の疑惑を追っている。だが、意図的に脳死となり、ドナーになるなど可能なのか?殺人との関係は?調べを進める城取らは昭和最後の日に殺人を犯した男の存在に行き当たる。乱歩賞作家が描く、慟哭の社会派ミステリー!
若い外国人女性を狙った連続バラバラ殺人事件が発生。所轄刑事の白木直哉は警察通訳人の幾田アサとともに捜査にあたることに。幸せな家庭に憧れて婚活に励むも空気が読めずにフラれ続けている直哉と、ズケズケものを言うバツ2でシングルマザーのアサ。噛み合わない二人の相性は最悪だったが…!?凸凹バディが凶悪事件の真相を追う、警察&通訳ミステリ誕生!
“鬼隼人”許すまじー怨嗟渦巻く豊後・羽根藩。新参の多聞隼人が“覚悟”を秘し、藩主・三浦兼清を名君と成すため、苛烈な改革を断行していた。そんな中、一揆を招きかねない黒菱沼干拓の命を、家老就任を条件に隼人は受諾。大庄屋の“人食い”七右衛門、学者の“大蛇”臥雲を招集、難工事に着手する。だが城中では、反隼人派の策謀が…。著者畢生の羽根藩シリーズ第三弾!
伽羅に似た香りの鬢付け油が大人気の『錦屋』。その主・卯三郎は、何でも金の力で他人のものを奪い取ると評判だ。ある日、腹を真一文字に斬られた男の死体が見つかった。青柳剣一郎は、男が錦屋を探っていたと知り、卯三郎が本物の伽羅をつかっているのではと疑う。さらに、錦屋の用心棒が相次いで襲われ、大盗賊が伽羅を狙っていた話を耳にする。欲望渦巻く争いの行方は!?
老中田沼意次の窮地を救った与力葛篭桃之進は、なぜか左遷され道中手形を扱う閑職、西ノ丸留守居役へ。ある朝、骨壺を抱えた旗本の妻女八重が実家の大垣までの手形を求めてきた。手続きの不備を理由に追い返すと、なんと八重は桃之進との不義密通を夫に告白し、姿をくらました!濡れ衣を訴えつつ八重の突飛な行動を探る桃之進だが、狂犬の如き夫に命を狙われ…。
浪人の子市松が父の死後、瀬戸物商身延屋の小僧となって一月余り。ある日、人のいい身延屋の主夫婦は、見世の前で行き倒れた物乞い夫婦を手厚く保護した。その夜、何者かの影が番頭、手代を刺し殺し、いよいよ市松ら小僧の眠る部屋の障子に手をかける。慌てて押入に隠れた市松は、信じられない惨劇を目撃したー。人が“鬼”と化す不穏な江戸で、激闘が幕を開ける!
貧乏旗本の次男坊ながら「浮かれ鳶」と綽名される本多控次郎は、すこぶる男前の情に厚い剣客である。その控次郎がごろつきに絡まれた馬喰兄妹らを救い出す。兄妹は控次郎とも因縁ある旗本へ早駆けの駿馬を届ける途中だった。だが、その旗本が襲われ、代わって控次郎が出走。背後に賭け金を巡る、どす黒い陰謀が蠢いていた。控次郎の正義の剣が、巨大な悪を成敗す!