出版社 : 祥伝社
「早く乗せて!」非番の刑事天城憂の車に、女性が乗り込んで来た。真幌市在住の有名なミステリー作家闇雲A子だった。この春から十一件も連続して殺人事件が発生している。その「真幌キラー」をA子は追っていたのだ。死体の耳が焼かれ、傍には必ず何かが置かれている。犬のぬいぐるみ、闘牛の置物、角材…。真幌市を恐怖のどん底に陥れる殺人鬼の正体とは。
あらゆる小説を読んではいるが作品を書いたことがない大作家・大文豪と、小説を読んだことはないが無限に文章が浮かぶ弟子のミユキ。彼らに試練が訪れた。霊界の“文章魔界道”に棲む文章魔王が、この世のすべての小説を消滅させようとしているのだ。ミユキは魔界道に飛び込み、大作家たちを倒した魔王に立ち向かう!気鋭が挑むパラレル日本語ミステリー。
湖畔の樹海に、新たな伝説が生まれようとしていた。奥深いその森に棲む一家の主が、家族を斧で惨殺し失踪。数年後、事件を究明するため、若者が一人で森に分け入り遭難。そして今、若者が遺した克明な手記『遭難記ー魔の森の調査報告書』を片手に、男女二人の大学生が樹海に足を踏み入れ、さらに…。過去と現在が恐怖に共鳴し錯綜する、驚愕のミステリー。
“稲妻の竜”こと影月竜四郎は、よろずやの娘・由香里が袱紗を掏摸取られるところを救った。直後、掏摸は何者かに吹矢で射殺された。不審に思い、他人から預かったという袱紗を調べると、夜叉の絵が描かれた歌留多と白い散薬…白面が!錦繍の袱紗に隠された巨大な密謀とは!一方、竜四郎に一目惚れした由香里は、愛欲の海に溺れていく…。決定版、官能時代活劇。
新興国市場として急成長を続けるアジア市場。90年代半ば、邦銀でアジアを担当していた真理戸潤は、ドイモイ政策で外国投資ブームに沸くベトナムの事務所開設を託されハノイに赴任した。一方、アジア市場で急成長を遂げ、勇名を轟かせる香港の新興証券会社があった。その名は「ペレグリン(隼)」。同社の債券部長アンドレ・リーは、アジアの王座への野心を胸に、インドネシアのスハルト・ファミリーに近づいて行く。賄賂が横行する共産主義体制下で、事務所開設に四苦八苦を続ける真理戸は、邂逅した日系商社マンから、ベトナムの巨大発電所建設のファイナンスを持ちかけられた。約6億ドルのビッグ・ディール落札を目指し、熾烈な闘いを繰り広げる各国の企業連合。真理戸と日系商社の前に、アジア・ビジネスの暗部を渡り歩く大手米銀のシンが立ちはだかった…。やがて迫り来るタイ・バーツ暴落と通貨危機。その時市場では何が起こったのか?そして三人の東洋人のディールの行方は。
「粗大ゴミのように私を放りだそうとしたのはあなたじゃないか」大下は常務に怒りをぶつけた。組織改革によって“社内失業者”と化していた三矢不動産部次長・大下の許に届いた、突然の「解雇通知」。自分を引き抜いた常務に対し、裏切りの気持ちを抱いた大下は、「日本管理職組合」に復職を訴えるが…(表題作より)バブル崩壊後の苛烈な企業の実態を描く、傑作七編。
“アレキサンダー大王の黄金の冠、シーザーの剣、チベットのラマの錫杖を手にした者は、無敵の力を得る”世界制覇の野望に燃えるヒトラーは、錬金術師の残した言葉に導かれて冠を入手、密かに「ラマの錫杖」奪取を命じた…。一方、陸軍スパイ竜造寺大介は、大戦前夜のインドで反英派煽動工作の後、日本民族チベット起源説を唱えて首都ラサに住む老学者斎藤五郎の下に身を寄せた。チベットでは、錫杖を持つダライ・ラマ一四世が幼少なため、列強諸外国の思惑を受けた貴族たちが対立していた。竜造寺はドイツの学術探検隊に出会うが、彼らはやがて不審な動きを見せ始めた!探検隊の正体と謀略とは?そして「錫杖」の行方は?10年の歳月をかけ、歴史の謎を追う白熱の冒険ロマン誕生。
2人めの女が寝室にやって来た。ブラジャーとショートパンツという恰好である。「今度はこの女を陶酔させる」と思った直後、矢車は心臓が凍りつくようなショックを受けた。女の手に拳銃が握られていた…。フリーライター矢車敬介のもう1つの顔は、特別秘密捜査官、つまり“隠れ刑事”である。多発する愛欲がらみの犯罪を、危険を顧みず敢然と捜査する…。
箱根山中で白人女性の白骨死体が発見された。その直後、お寺の副住職で警視庁特命警部でもある鳥居快海のもとに、「手掛かりはヤマナシ。カゲキに聞け」というタレ込み電話があった。カゲキとは、男とも女ともつかない過激な衣装を纒った作家の志茂田景樹だろうか?快海は早速、テレビに出演中の作家に会うべくスタジオ入りしたが、そこで意外な手掛かりが。
文久三年十月、奇兵隊総管(隊長)に長州藩士・赤根武人が就任した。彼には密かな野望があった。百姓や町人すら兵にする奇兵隊の実力中心主義を押し進め、“だれもが同じ地位に横に並ぶ”組織を実現しようというのである。しかし、理想に向けて武人が邁進するにつれ、隊の創設者・高杉晋作との溝が深まり、連合艦隊砲撃の日、決定的な対立を迎えた…。
知将・越中富山城主佐々成政は、国の東西を羽柴秀吉の軍勢に挾まれ、絶体絶命の危機に陥った。徳川家康の版図・信濃に援軍を求めるには、厳冬の飛騨山脈を越えねばならない。成政は重臣たちの反対を押し切り、雪と氷の地獄に挑んだが、自然の猛威の前に兵たちは次々に倒れた。が、この無謀とも言える飛騨雪中行の背後には、驚天動地の陰謀が隠されていた…。長編歴史推理小説。
三十五万石彦根藩主の子ではあるが、十四番目の末子だった井伊直弼は、わが身を埋木に擬し、住まいも「埋木舎」と称していた。「政治嫌い」を標榜しつつも、一代の才子長野主膳との親交を通して、曇りのない目で時代を見据えていた。しかし、絶世の美女たか女との出会い、それに思いがけず井伊家を継ぎ、幕府の要職に就くや、直弼の運命は急転していった…。
なぜ、広い世界に目を向けようとしないのか?-米国総領事ハリスの嘆きは、同時に井伊直弼の嘆きでもあった。もはや世界の趨勢を止めることはできない。徒らに攘夷を叫ぶことは、日本国自体を滅亡させることだった…。腹臣長野主膳、それに直弼の密偵として、また生涯を賭して愛を捧げたたか女を配し、維新前夜に生きた直弼の波瀾の生涯を描く、不朽の名作。
「天下の英雄」か「侵略の鬼か」-。加藤清正は、日韓両国の間で、まったく正反対の評価を下され、さまざまな伝説が生まれた。ところが清正は、合理主義者で理財家、秀吉周辺の人々にまで付け届けを欠かしたことのない気配りの人で、世渡り上手であった。つまり彼は、〈虎退治の豪傑〉ではなかった…。日・中・韓の資料を駆使し、清正伝説の虚実を抉る歴史大作。
ロンドンのビッグベンを象った大時計の完成式典で、針が十二時を指した時、仕掛け人形のかわりに死体が飛び出した。死んでいたのは奇矯な行動で知られる時計作家弥武大人。出馬を要請された作家探偵霞田志郎の苦悩を嘲笑うかのように、さらに殺人は続いた。地元有力者高野の屋敷で、大人作の巨大な砂時計の中から孫娘あずみの死体が発見されたのだ。やがて事件の背後に横たわる巨大な悪意に気づいた志郎は…。『上海香炉の謎』に続く人気本格推理シリーズ待望の第二弾。
箱根空間美術館の庭園に、黄金色に輝く巨大な円筒が屹立していた。美術館15周年記念として創られた立体芸術作品〈ニュートンの密室〉-。高さ15メートル、直径8メートルの円筒で、内部から上を仰ぐと円形の青空が見える。その披露パーティ当日、女性芸術家が円筒内部で惨殺された。それは万有引力に逆らわなければ到底不可能な殺人と思われた…。
東南アジア駐留米軍に巣食って、武器横流しと依頼殺人をほしいままにするガルシアという男が沖縄に潜入した。極秘摘発指令を受けたシングレタリィ少佐が追跡するが、折しも米軍基地内で発生した連続殺人の現場には少佐の名が残されていた。捜査陣を嘲笑うガルシアの挑発である。事件はさらに拡大し、一般市民をも巻き込む事態に…。そして焦慮の果て少佐は、元殺し屋の日本人我威に協力を要請した…。実力派の気鋭が憎悪と暴力の極限を描くニュー・バイオレンス傑作。