出版社 : 祥伝社
奇妙な首吊り死体だった。その男は口にティッシュを詰め、コマのように回転していた。新潟県警は不自然さは残るとしながらも、自殺として処理。が、ポケットから発見された〈ピタゴラスの時刻表〉と題された紙片に込められた殺人者の意図には気づかなかった。“新潟・東京・米原”の3点を結ぶ地名と時刻が記されたその紙片こそ、1年後に始まる惨劇の予告だった…。
〈大坂箱〉を譲りたいー。鎌倉で骨董屋を営む剣崎新は、亡父の知人・田村の思いがけない提案に驚いた。豊臣秀吉ゆかりの品といわれる大坂箱は、骨董蒐集家垂涎の的で、本物ならば大変な掘り出し物である。早速剣崎は、越前・武生にある田村の実家を訪ねたが、その直前、田村は何者かに殺され、箱は姿を消していた。嫌疑は剣崎に向けられ、やがて第2の殺人が…。
癌で余命いくばくもない老ヤクザ吉野から故郷淡路島への護衛を依頼された私立探偵碇田は、罠に落ちた。追突、脅迫、襲撃と事件は連続し、挙句に吉野が拉致されたのだ。追跡を開始した碇田は、シベリア抑留中に死亡した邦人のリストに吉野の名を発見、驚愕した。老人は何者だったのか?そして45年前大陸で起きた事件の真相は?男の信義と友情を賭けた旅路の果てに見たものは…。実力派大型新人が、空前のスケールで問う、渾身のハードボイルド。
10年ぶりに再会し一夜を共にした湯川が、別府湾で投身自殺した。二度と離れないと決意した美央に遺されたのは、真珠の指輪だった。なぜ彼は自殺を?指輪は誰の物なのか?美央は、湯川との別れの原因となった支店長夫人令子を訪ねたが…。一途に一人の男を愛しつづける女と、妖しく奔放な性を生きる女。安芸の宮島を舞台に、対照的な二人の女の生き方をサスペンス豊かに描く書下ろし野心作。
通信社のカメラマン長友卓也の眼前で、妹・静香が待つミュンヘンのカフェが一瞬にして吹き飛んだ。が、修羅場と化した現場から、妹は忽然と消えていた…。自ら撮影した爆破写真を手掛かりに捜索を開始した長友だったが、やがて彼の行く手に、妹が探し求めていた18世紀の宮延音楽家の、時価4億といわれる幻の楽譜「水晶コンチェルト」が浮かび上がった…。
おれの名は佐分利健。妾腹ながら服部半蔵の18代目の末裔だ。伊賀の里は油日岳の隠形谷から東京に来ていた忍法の師匠玄爺の、最愛の若妻が何者かに拉致された事件を追っていたおれの前に、インド魔術を思わせる全裸美女の空中浮遊死体が…。
暗闇の部屋のなかで裸で男を待つという興奮が、しとどに彼女を濡らしていたらしい。敏感な隆起を舌で捜し当てて愛撫してやると、ついにこらえきれなくなって来たらしく、みじかい声を発した。澄みとおったソプラノだ。(「甘い声」より)。漆黒の闇の中で、顔も名前も知らない女の“美しい声”に官能の極みを発見する表題作を始め、女性の深淵を探る著者初の官能傑作集。
東京湾に出現した魔窟・水上区で残虐な殺人が連続し、死体はなぜか無惨に喰い荒らされていた。折しも巷では正体不明の獣人の黒い噂が流れ、住民を恐怖のどん底に陥れていた。事件の拡大を恐れた当局は、腕利きの獣人ハンター竹辺弾十郎に事件解明を命じた…。大都会の闇を跋扈する獣人の驚くべき正体とは?激化する殺戮の真相は?また“獣使い”の異名をとる弾十郎の切り札とは?若手実力派の俊英が描く、白熱のバイオレンス傑作。
有栖川組の若頭砂田が、六本木でヒットマンに狙われた。跡目相続を巡り上部団体が分裂し、血で血を洗う抗争が勃発したのだ。一方、一度は極道世界から脱け出したものの、悪の魅力と甘い汁が忘れられず、組に舞い戻った瞳と涼は、またもや事件に巻き込まれた。だが仲間を眼前で殺られたとき、何かが弾けた…。熾烈な報復合戦と背筋も凍るリンチ。2人を待つ過酷な運命は?現代ヤクザ社会に生きる若者を描いて好評のシリーズ待望の第2弾。
東北の小京都・角館で、3年前に失踪したOL堀内美奈子の白骨死体が発見された。捜査線上には、元恋人のエリート商社マン小此木宏が浮かぶが、小此木には鉄壁のアリバイがあった。名探偵・浦上伸介は真相追及のため角館へ飛ぶが、彼を待っていたのは第2の殺人だった。なんと小此木が刺殺されたのだ。二つの殺人にはどのような関連が。そして新たに浮上する時間の壁…。本格謎解きの醍醐味を存分に堪能させる名手会心の推理傑作。
米国カジノの借金取立て人石黒友行が刺殺され、現金1億8000万円が消えた。有力容疑者は、唯一アリバイのない石黒の情婦愛染小夜子。かつて彼女と情を交わした特捜刑事香月功は、小夜子の潔白を信じて独自捜査を開始したが、直後、今度は、石黒から巨額の取立てを受けていた代議士の秘書が殺害され、事態はますます錯綜した…。はたして小夜子の運命は?連続殺人の真相は…。名手が贈る大人気“顔のない刑事”シリーズ待望の書下ろし第11弾。
蛇魔像を追って、アゴン一行はヒマラヤ山中にいた。だが、逃走するアガシャたちの策略と罠は熾烈を極めた。幻力使い夢龍が引き起こした雪崩によって、シッダールタ(後の仏陀)はザラ国跳人兵士の手に落ち、難を逃れたアゴンたちには、再び夢龍の待ち伏せが…。一方、アガシャによって35年ぶりに蛇魔像が戻ったザラ国は、混乱と緊張の度合を深めていた。国の支配権を握る三巴の暗闘が続いていたのである。果たして35年前に、蛇魔像を巡り何があったのか?話題騒然の〈巻の壱〉に続いて放つ人気巨編の第2弾!
不倫。愛しているから、別れなければならない。女優の彩木操は、別れの手紙を書き部屋を出た。何も知らず、いつものように合鍵を持って訪ねてくる男に宛てたものだ。そして、密かにスペインへと向かった。だが異国の地で待っていたのは、乱気流にも似た揺れ動く愛だった…。女優、ニュースキャスター、シナリオライター、主婦と、4人の女たちが真実の愛を求めてさまよう姿を描く長編恋愛小説。