出版社 : 花乱社
「なぜ金は、俺のそばを擦り抜けるのか」 江戸北町同心・山根源重郎。この男、剣の達人でもなければ捕物名人でもない。 それどころか多額の礼金や袖の下を平然と受け取る。だからといって酒や女に溺れるわけでもない。 そんな男が有象無象の世間の中で、なぜ生き残ってこられたのか……。 風に吹かれる柳のように、源重郎の気持ちはいつも揺れ動いている。 江戸下町に生きる人々の人間模様 源重郎世事手控 (一)罠 源重郎世事手控 (二)蛇蝎 源重郎世事手控 (三)道中土産 源重郎世事手控 (四)富くじ 源重郎世事手控 (五)田毎の月 源重郎世事手控 (六)旧縁 源重郎世事手控 (七)変化 源重郎世事手控 (八)吝嗇の行方 源重郎世事手控 (九)武士の魂 源重郎世事手控 (十)袖の下 あとがき
「ラ・サール高をタテに出て,東大をヨコに出た。」 白砂青松の鹿児島ラ・サール高校から,大学紛争まっただ中の東京大学へ。安田講堂事件,三島由紀夫との公開討論会にも際会。 1963-70年,昭和のど真ん中を駆け抜けた詩人の自伝的青春小説。 桜島 胡座をかいて 松籟のもとで 白い聖火リレー 宿借りから海月へ 潮だまりの落とし穴 E♭mの裏声 水の盃 血の名残り から潮の夏 奥多摩のおくつき 漣と艀 時化日和 背水の乱 桜と風は南から 芽ぶきどき 氷の栞 夢路はるかに 母はいろいろと 桃から桜へ 縦書きのヨーソロー Mの変 冬の旅 あとがき
霊魂不滅への祈り 学生たちと民俗文化調査に訪れた南海の離島で,喪われた墓制の痕跡に触れ,シャーマニズム世界に分け入ることになる表題作他,市井に生きる人々の哀歓を描いた8編 ◉朝鮮通信使研究で知られる学者であり,韓国釜山を代表する文化人である著者の初の邦訳書 * * 草墳の中の遺体は数年が経過すると白骨だけが残る。数年後、吉日を選んで草墳を解体して骨を収拾し、棺の中に収める。この収拾した骨は本葬、つまりもう一度葬儀を行った後、永久墓に埋葬する。 村の年寄りたちは、人は死んでもあの世で新しく生まれ変わると固く信じている。新しく生まれ変わるためには、この世の穢れをすべて洗い落とし、綺麗にならなければならない。そのための最も重要な手順が、草墳葬だと信じられていた。─「草墳」より 「霊魂不滅」への思い──『草墳』の出版に寄せて[姜南周] * 風の島 キャプテン・パーカー 一人になった部屋 花札 鳥になる 風葬の夢 不在者の証言 草墳 付・なぜ書くのか * 訳者あとがき[森脇錦穂]
日本の「開国」は、あれでよかったのか。 昨夜まで攘夷、天誅を叫び、会津を始めとする忠義の臣民を非道に殺戮しながら、夜が明けるや卑しいまでの西洋崇拝。薩長中心の専制を冷ややかに見ながら、藩主黒田長溥は悔いる。あの乙丑の年の大粛清は一体、何だったのか。月形洗蔵、加藤司書らが在れば、新しき政治の中枢に加わり真っ当な国の礎となったのではないか──。 悲憤の歴史小説。 プロローグ 島津の血 お由羅騒動 蘭 癖 斉彬の死 筑前勤王党 加藤司書 勤王派と佐幕派の対立 犬鳴山別館築造事件 根を切り枝葉を枯らせ 長崎・イカルス号事件 革命前夜 二本松藩、会津藩の悲劇 太政官札贋造事件 エピローグ 参考・引用文献
郷土・美夜古が生んだ偉人の事蹟と交流。新発見の水哉園「席序」、義弟宛書簡など一次資料を駆使して郷土の偉人の事蹟と交流を辿り、併せて関係文献を総覧した、近代文学・教育史研究の成果。