出版社 : 行舟文化
森深い田舎の小さな村・クレヴァレイはパニックに陥っていた。夜ごと目撃される謎のマントの怪人と、幽霊騒動。甦ったと噂される女の棺を検めるために納骨堂が暴かれた時、恐慌は頂点に達した。一年半前に死んだはずの女の亡骸は、最近まで生きていたように瑞々しかったのだ。一方、ロンドンでは名探偵オーウェン・バーンズのもとに、ある老人の変死事件が持ち込まれる。彼は五年前の迷宮入り事件に関わっており、口封じに殺された可能性があるというのだ。それは、降霊術に熱中していた資産家の老女が密室で殺害された怪事件だった。ふたつの事件はやがてひとりの男、クレヴァレイの住民たちから吸血鬼だと噂されるロシアからやって来た伯爵に収束しー因習の村の謎めいた犯罪を美学探偵が解き明かす、シリーズ邦訳第5作!
計画停電の夜、県検察院のトップが殺害された。唯一の目撃証言が指し示した容疑者は、地域の人々から愛されるベテラン警官・葉援朝。葉には娘を有力政治家の息子に殺されながら、示談に甘んじ隠蔽に協力させられた過去があり、被害者も事件の関係者だった。数日後、今度は人民法院の裁判長が死亡する。事故死と思われたが、捜査責任者の高棟は力学の知識に長けた人物による計画犯罪を疑う。葉援朝には、彼を慕う物理教師の甥がいたー。
牛車で女を攫う吸血鬼、人を呑み込む路地、霞の中から現れる神出鬼没の切り裂き魔…一休宗純とその盲目の侍女・森のもとに持ち込まれる奇妙な怪事件の数々。応仁の乱前夜の京都を舞台に、風狂の僧・一休が魑魅魍魎の正体を暴き打ち祓う、痛快時代伝奇ロマン!
大唐帝国、二代皇帝李世民の世。僧の玄奘は、師を殺め出奔した兄・長捷の行方を捜す旅をしている。兄が先の霍邑県県令・崔〓が自殺した事件に関わっていたらしいと聞いた玄奘は、従者の波羅葉とともに当地を訪れる。崔〓は名君の誉れ高く、霍邑の民は彼が死後、地獄の判官となったと噂し、廟を立てて信仰していた。現県令の郭宰の屋敷に逗留した玄奘は、何者かによって二度にわたって命を狙われる。やがて玄奘は、自身が朝廷における仏教・道教両勢力の対立に端を発した陰謀の渦中にいることを知るー。衝撃の真相が明らかになったとき、読者は中国古典名著『西遊記』とのつながりを理解する!
正宗が通う小学校で開催される、十歳を記念して家族へ感謝を伝える「二分の一成人式」。破綻した片親家庭に育つ正宗には偽善としか思えなかった。だが、正宗は知っていた。殺人事件が起きて式典が中止になることをー(「半分オトナ」)。子が親を、親が子を愛するのは「当たり前」ですか?家族を巡る十歳たちの犯罪の物語。「親ガチャ」なんて言葉の流行る時代へ気鋭が贈る、キッズ・ノワール短篇集。
壱岐沖の孤島に、隠れ切支丹の末裔である富豪が築いた異形の館「淆亂“バベル”館」。心理学専攻の学生・夷戸ら三人は、観光のつもりが館の使用人を名乗る男たちに囚われる。館に集っていたのは、人気劇団の役者たちとゴシップ記者。この館の主は、彼らにとって因縁深い、失踪した伝説の俳優だと言うのだがー。
友人の探偵オーウェン・バーンズから、依頼人の婚約者に成りすまし名門マンスフィールド家に「呪い」の調査に行って欲しいと頼まれたアキレス・ストック。長女の婚約を巡り愛憎渦巻く屋敷に集まった面々は、みな「混沌の王」と呼ばれる存在に怯えていた。一族を呪い、聖夜のたびに一人ずつ命を奪っていく白面の怪人…それはいにしえの伝承ではなく、三年前にも当主の息子が完全な密室の中で殺されたのだという。そして「混沌の王」を呼び出し鎮めるための交霊会の夜、新たな事件が発生しーオーウェン・バーンズシリーズ第一作が待望の邦訳!
ごく普通の小学生だったはずの片瀬瑠奈。ところが五年生に進級したばかりの春、彼女は老女に扮した謎の人物に連れ去られ、暗い部屋に監禁されてしまう。果たして犯人の正体とその目的は何か。そして、監禁場所はいったいどこなのか。瑠奈が連絡を取れる外部の人間は、携帯ゲームのすれ違い通信で出会った顔も知らない「フレンド」たちだけ。しかし、彼女はゲーム内でも何者かによって閉じ込められ…(第一話 少女探偵の脱出劇)。春夏秋冬、季節が巡るごとに巻き起こる事件を通じて、少女は一歩ずつ成長していくー。
空飛ぶ鳥人、衆人環視下で消えた落語家、一角獣のツノに貫かれた死体…「行き過ぎた技巧派」芦辺拓が生み出した綺羅星の如き名探偵たちが、読むものを奇想とケレンに満ちた「探偵小説」の世界に誘なう。渾身の自撰傑作集!
「探偵のなかの探偵オーウェン・バーンズが、お力添えにまいりました」密室で生きたまま焼かれた灯台守。衆人環視下で、虚空から現れた矢で体を射抜かれた貴族。-「世界七不思議」になぞらえた予告殺人の捜査に乗り出したオーウェン・バーンズは、「犯人を知っている」との報せを受ける。ある令嬢を巡る恋敵であった二人の青年が、互いに相手こそが犯人だと名指ししたのだ。令嬢は彼らにこう言ったという。「わたしを愛しているなら人を殺してみせて。美しい連続殺人を」。不可能犯罪の巨匠が贈る、荘厳なる“殺人芸術”!
一九一一年の冬、雪に閉ざされた森の中で、実業家ヴィクトリア・サンダースの死体が発見された。容疑者は、ヴィクトリアの招きで山荘「レヴン・ロッジ」に集まっていた面々。動機はいくらでも考えられたが、一つ大きな謎があった。現場は完全な「雪の密室」だったのだ。一九九一年の初夏、スランプに陥った劇作家アンドレは、自身の創作の原点といえるほどの影響を受けながら、タイトルすら忘れてしまったホラー映画をもう一度観たいと欲していた。映画を巡る記憶を蘇らせるべく、アンドレは映画マニアの哲学者モローを訪ね、彼の精神分析を通じて少年時代に立ち返っていく…。魅惑的な小道具を通じて、八十年の時を隔てた「過去」と「現在」が奇妙に呼応する!アルテ・ミステリの新境地!
「十五人の局長を殺し、足りなければ課長も殺す」-殺された公安局副局長の死体の傍らには、そんな“予告状”が残されていた。捜査が進むにつれて指揮官の高棟は、警察の人海戦術の弱点や科学捜査の限界を熟知した犯人の計画に慄然とする。そして予告通り起こる、第二、第三の殺人。捜査を立て直すべく、高棟は学生時代の旧友で、数理論理学の天才と呼ばれた徐策に協力を乞う。だが、高棟は知らなかった。徐策こそが、一連の事件の真犯人であることを。そして高棟は、現代中国社会そのものを嘲笑うかのような、恐るべき「殺人トリック」に直面することとなる…。官僚連続殺人事件をリアルかつスリリングに描く、「官僚謀殺」シリーズ第一弾!
ロンドンのどこかに、霧の中から不意に現れ、そしてまた忽然と消えてしまう「あやかしの裏通り」があるという。そこでは時空が歪み、迷い込んだ者は過去や未来の幻影を目の当たりにし、時にそのまま裏通りに呑み込まれ、行方知らずとなるー単なる噂話ではない。その晩、オーウェン・バーンズのもとに駆け込んできた旧友の外交官ラルフ・ティアニーは、まさにたった今、自分は「あやかしの裏通り」から逃げ帰ってきたと主張したのだ!しかもラルフはそこで「奇妙な殺人」を目撃したと言い…。謎が謎を呼ぶ怪事件に、名探偵オーウェンが挑む!