出版社 : 角川春樹事務所
富沢町の呉服織物問屋『大黒屋』に押し入った鳶沢の文吉らは、千五百両の大金を盗み逃走した。その一味である初老の盗賊・半助は、追っ手から逃れ、かつての恩人の息子を尋ねて三浦郡へやってきた。そこには、かつての自分の仇討ちの為に命を落とした、友三に瓜二つの息子・常吉の姿があった。半助は、自らの素性を打ち明け、常吉に盗賊の仕事を手伝うよう勧めるが、常吉が選んだ職は意外にも貸本屋稼業だったー。やがて、半助の身に危機が迫っているのを知った常吉は…。著者渾身の書き下ろし時代長篇。
十一歳でありながら、実父から性的虐待を受け続けていた坂本綾香は、ある日とうとう父を殺してしまう…。公園で呆然とする綾香の前に現れたのは、民俗学に詳しい大学生シンジだった。父の死体を日本書紀に登場する死の女神ー菊理姫ーに捧げたシンジに連れられて、連続殺人と頻出するUFOに彩られた、綾香の旅がはじまる…。果たして綾香は、おぞましき旅路から生還することができるのだろうか。日常から逸脱する岐路に立った少女の恐怖を、鮮やかな筆致で描くロードムービーホラー。
今川家の目付・深瀬勘左衛門は、重臣の一家皆殺し事件を必死に追いかけたが、なかなか犯人を挙げられなかった。一方、深瀬の幼なじみの多賀宗十郎も度々命をねらわれる。そんな中、義元は浅間大社でお花見の宴を開催した。宗十郎も警固に当たったのだが…。「今川家の家中という歴史設定を馴染ませ、さらに人物に感情移入をさせる手腕はたいしたものだ」と選考委員の福田和也氏に絶賛された、第一回角川春樹小説賞特別賞受賞作、遂に文庫化。
宇宙都市『オデッサ』の太陽が爆発する!?この事態によって、オデッサ代官華表はオデッサを占領下に置いていた宇宙犯罪組織龍党と手を結び、10万人の市民を脱出させるべく行動を開始する。残された時間は1ヶ月しかない。だが龍党と手を結ぶのを良しとしない筆頭内与力コーデリアはこの情報を秘密裏に那国へ送信する。那国防衛軍は艦隊を派遣するが、不可解なことにこの脱出船団を撃破する作戦を発令した!オデッサに未来はあるのか。
天平九年、奈良の都は、飢饉の上に、顔や体に潰瘍が出来、崩れ落ちてしまう恐るべき疫病が流行していた。そんなある日、権勢を誇っていた藤原一門の房前が鬼病で急逝した。しかし、彼は病ではなく、青摺りの衣を着た童子に暗殺されたらしいとの噂が…。数ヶ月後、今度は藤原麻呂が命を落とした。これは藤原一門に対する呪いなのか?はたまた連続殺人なのか?森真沙子が奈良の深い闇を描き切る古代ホラーシリーズ、待望の書き下ろし第二弾。
桐島尚紀は、恋人玲美との結婚を翌月に控えたある日、交通事故に遭い、右腕右脚骨折の重傷を負って渋谷ホスピタルに入院した。病室番号は109。ある夜更け、尚紀はベッドの傍らに忽然と現れた謎の原色ナースに驚かされる。その名は「あじゃ」。彼女は人よりも三十日先を生きていると語り、たったいま尚紀が死ぬのを見てきたところ、と言う。つまり、彼の命は残り三十日。突然のカウントダウンに混乱する尚紀が迎える結末に、あなたは泣いてしまうかもしれない…。
一九七四年。地方都市で暮らす十五歳の少年、山県龍二は、剣道部のキャプテンであり、全国大会ベスト4の実力者だった。ところが、卒業を間近にむかえたころ、クラスメートの重松正人が、いじめの対象になっていたことに気づいたことから、龍二の人生は狂い始めてしまう。正人の自殺、そして親友川辺の謎の死。腐敗した街の権力抗争に巻き込まれ、龍二は殺人犯の汚名を着せられることになり、故郷を捨てる決意をするのだが…。
故郷を捨て東京へ逃れた龍二は、そこで己の運命を変える、様々な人々と出会い、そして死とともに別れていった。如月やさち、朴たちの復讐を誓った龍二は、横浜黒龍会の周辺を調べまわる。そして龍二に心酔する木村たちによって「龍の会」が結成された。殺されたもの、殺したものの怨念や慟哭の中で、龍二は自分の背中に墓標となる龍の入れ墨をほり、やくざになることを決意する。龍二の運命の行方は果たして…。
会社社長の一人娘・仙道千紘は、ある日、見知らぬ女性から、父の会社が出したという奇妙な秘書募集広告を手渡された。まるで誰かを捜しているかのような文面に、父への不信感を募らせる千紘。だがその矢先、父が何者かによって殺害されてしまう。さらに、莫大な遺産を巡り、父の再婚相手と名乗る女性が現れて…。警察庁広域捜査官・宮之原警部が難事件に挑む、長篇旅情ミステリー。
福岡県甘木市の公園で、男が殺されているとの通報が入った。現場に駆け付けた捜査員たちが目にしたものは、男の胸に置かれた梅の枝と、胸元に狭まれていた短冊だった。その短冊には、謎めいた和歌が書かれていた。所持品から、被害者は暮れに倒産した月丘建設の常務であることが判明。警察庁広域捜査官の宮之原警部は、この事件の解決に乗り出すが…。傑作長篇ミステリー。
服飾デザイナーとして、女帝とも言われる鳥飼多佳子の家の前で、生後間もない乳児が捨てられる事件が起きた。その一週間後、熱海の錦ヶ浦で女性の絞殺死体が発見され、新宿のホステス・村瀬美奈であることが判明。彼女が捨て子の母親であったのだ。多佳子と美奈に何の繋がりがあるのか?警察庁広域捜査官の宮之原警部は、二人の関係を探るうち、美奈の出生に秘密があることを掴むが…。傑作旅情ミステリー。
旧知の新聞記者・今西の依頼により、“神隠し”と騒がれる女子大生蒸発事件を追って、警察庁の宮之原警部は、横浜を訪れた。今西の情報に従い、かつて世話になった広告会社の近野を訪問すると、そこの女子社員が、例の女子大生の友人だと判明。さらに宮之原は、近野から事件の鍵と思われる、最近地元で起きたトラブルを聞き出す。だがその晩、近野が急死し、事件は意外な方向へ…。宮之原が思い出の地で活躍する傑作ミステリー。
平凡な日々を送っていた女子高生「結城音緒」は、ある才能を持っていた。彼女は高い確率で『予知』ができるのだ。ある日、親友の関根杏子が失踪した。音緒はこのことが予知できなかった。その頃街では謎の失踪事件や、正体不明の焼死体が発見される事件が頻発していた。事件に巻き込まれたことを予知した音緒は、『才能』を使って杏子を探し、彼女を見つけることに成功する。だが、その場には杏子が大ファンだといつも語っていた、あの失踪した伝説のバトルホイールレーサー「サムライ・ジョウ」が現れ、『何か』に変貌してしまった杏子を撃ったのだ…大歓声を持って迎えられたスーパーアクションヒーロー伝、疾風怒濤の第二弾。
「-の音を聞くと、何かがおこるんだって」恋人もいなければ、親友と呼べる人間もいない“私”の耳に偶然届いた言葉。たわいのない噂話を耳にしたその日、私は“彼”の声を聴いた。私が待ち望んでいた“彼”。誰にも聞こえない、私だけに聴こえる“彼”の声。彼の声だけを聴きたい、その一心から、私はあらゆる音を排除していくー(「ベルの音が」)。新鋭女流作家が綴る、切なく心を凍らす書き下ろし連作ホラー。
怪異から産み落とされた言葉は文字になり本になり、読んだ人々の心の中に植え付けられていく。やがて本は再び言葉になり口から口へ伝えられていく。ここに記したささやかな怪異たちが、たとえ姿形を変えても生き続けることを願ってやまない(「怪の標本」)。処女作『幻日』で怪談文学の新しい書き手として注目を集めた著者がおくる、待望の書き下ろし作品集。
小説家詠子には秀美と徹という恋人がいたが、徹にプロポーズされたことが元で、二人とも失ってしまう。失意の日々を送っていた詠子だが、ある日自宅の前に徹が現れ口論となる。徹に暴力を振るわれそうになった時、通りすがりの女性、絵里花が救った。彼女は美しく気品のあるお嬢様だった。だが、それは彼女の本性を覆い隠すものでしかなかった…傑作ルナティックホラー、待望の文庫化。
老朽ビルの一室にあるテレビに映し出されたのは、“血だらけの平台の上で断裁される女たち”だったー。その残虐シーンを観てしまった美沙が、現実と幻想の境界を漂う「オーバーヒート」。暗闇の中、車を走らせるなつみを襲ってきたのはーなつみたちだった。そこから先の地獄絵図を素描した「入れかわり立ちかわり」など、書き下ろし八篇をふくむ、全二十篇を収録した恐怖と幻想の傑作集。
流れてくる汗に髪を濡らし、少女は暗い森の中を走っていた。文字通り命を賭けて…。不倫のひとときを終えた刈原篤志と後藤美也子が乗る車の前に飛び出してきた少女は、不可解なメッセージを残して消失する。「つかまらないで、やくそくをまもって」と。その時から二人は恐るべき「何か」に追われはじめる。これは呪いなのか?二人の過去に何があったのか、未来に何が待っているのか?俊英が描くホラー長篇。