出版社 : 講談社
湿原に浮かぶ檻、と密かに呼ばれていた全寮制の学園。ここでは特殊な事情を抱える生徒が、しばしば行方を晦ます。ヨハンの隠れた素顔、校長の悲しき回想、幼き日の理瀬、黎二と麗子の秘密、月夜に思いを馳せる聖、そして水野理瀬の現在。理瀬と理瀬を取り巻く人物たちによる、幻想的な世界へ誘う六編。
絵も歌も戯作もこなし、『尼子十勇士』を世に知らしめた栗杖亭鬼卵。寛政の改革で一度は天下人となった元老中・松平定信。身分も考えも正反対な二人の問答は、読み手の人生をも問いかける。自由と反骨で幕政の束縛に抗った文化人の生涯を描く!
ある事件以降、引きこもっていたしふみはテレビの中に「おねえちゃん」を見つけ動植物園へ向かう。言葉を機械学習させられた類人猿ボノボの“シネノ”と邂逅し、魂をシンクロさせ交歓していくー“わたしたちには、わたしたちだけに通じる最強のおまじないがある”。第170回芥川賞候補作。
情熱と深い専門知識で今日も窓口の患者を救う!成都調剤薬局に勤める薬師寺ロミは少しおせっかいで、ちょっぴり短気な薬剤師。地域医療に根ざした調剤薬局の役割を認識しつつも、難病治療に携わりたいと願っている。処方せんから患者をプロファイリングする薬剤師の活躍を描いた、新たなお仕事小説!
無情、ひたすら無情ー。「死んだ方がましのくせになぜ生きているのか不思議な底辺が、将来そうなるであろう若いだけの同じ底辺によって苦しめられている」と同じ団地の住民を見下す久野。自身の惨めさを糊塗するために、現状から抜け出せない人々を定点観測するだけに飽き足らず、土井という老人を弄ぶ手段を考え、実行することに生きがいを見出していた。ところがある日土井から相談を持ちかけられて…。表題作を含め、自らの毒に冒されたい人に向け描かれた短編集。
二つの月が浮かぶ、ソリディアス大陸。自分ではない“誰か”の記憶を持つ少年・アンガスは本に宿った謎の女性・“本の姫”と共に旅をする。旅の目的は大陸に散った邪悪な文字を探し、回収すること。人々は文字の魔力によって凶暴になり、各地では災厄が起きていた。荒野を貫く鉄道に乗り、不思議な力を持つ歌姫たちに出会い、滅びた天使の遺跡を巡るアンガスらを待ち受けるものとはー。
天才プロファイラーとゴールデン街のバーの店主は犬猿の仲!新宿・ゴールデン街のバー「オダケン」のマスターが請け負ったのは連続放火事件の現場に赴いての動画撮影。ところが雇い主の福岡県警の科学捜査官とは初対面から反りが合わない。文豪・永井荷風の街歩き随筆『日和下駄』の一節を犯行予告に使う犯人相手に捜査は迷走するばかり。一方、福岡・中洲のとんこつラーメン屋台「ゆげ福」の店主は知人の依頼で家出娘を追って東京へ。スピリチュアルの合宿所に籠もる娘に占い師が実家に帰るように告げたとき、事態は思わぬ方向に動き出す。二人の兼業探偵によるケミストリー!
成人の年を迎え、竜族の皇帝に謁見することになった妖精族の王女エフィニア。しかし皇帝グレンディルに出会った途端、なんとエフィニアが彼の「運命の番」だということが発覚する。驚くエフィニアだったが「あんな子供みたいなのが番だとは心外だ」という皇帝の心無い言葉を偶然聞いてしまい…。ならば結構です!傲慢な皇帝の溺愛なんて望みません!他の側室の嫌がらせにもめげず、エフィニアはのびのびと後宮ライフを満喫。やがて後宮に迷い込んだ小さな竜とも仲良くなるが、どうもこの竜には秘密があるようで…。竜族皇帝×妖精王女のすれ違い後宮ファンタジー!
魔物の跋扈する異世界に転移し、転生前に遊んでいたゲーム『カードマスター・ファンタジー』のカードを召喚する能力に目覚めた高校生・氷室彼方。その力を武器に次々と魔物を討伐していく彼方は、ある日シーフのレーネや獣人ハーフのミケといった仲間たちと共にダンジョン探索の依頼を受ける。中に宝物があるかもしれないと躍起になる、彼方を含む百人の冒険者たち。しかし依頼主の真の目的は、究極のモンスターの召喚のために冒険者たちを脱出不可能のダンジョンに閉じ込めて生贄にすることだった。ダンジョン脱出のために奮闘する彼方と仲間たち。そして見つけたのは、牢屋の中に捕らえられた同級生・七原香鈴の姿でー?コミカライズも大絶賛連載中の異世界カード無双ファンタジー第二弾!!
王女ルシラから、各地の迷宮攻略の依頼を受けたオルン。パーティを組んだフウカとハルトとともに、着実にミッションをこなしていく。そんな中、ソフィアが強制的に実家に連れ戻されてしまう。彼女の父親クローデル伯爵は、こともあろうに戦争中である帝国の貴族と、ソフィアをむりやり結婚させようとしているのだ。しかも、その陰謀の裏には、オルンたちの敵である、“シクラメン教団”の存在があるようでー!?「だからソフィー、お前の“本音”を聞かせてくれ」「小説家になろう」発の人気ファンタジー、待望の第六巻!
「あんた邪魔なのよ。消えてくれる?」アイリ・ガラントは親友・エミリアに裏切られた。彼女はアイリの婚約者であり第三王子であるリチャードを寝取ったのだ。婚約破棄され、失意に沈むアイリに、さらなる悲劇が襲いかかる。面会したリチャードは何者かに刃物で刺されており、アイリにリチャード襲撃の“冤罪”が降りかかった。しかし、すべてはエミリアとリチャードの陰謀だったー。真実を知るアイリを消すために、元親友は暗殺者を送り込むが…。「死んだことにして俺の婚約者として生きるといい」暗殺者の正体は、国内最高の宮廷魔術師と名高いシン・アッシュロード辺境伯。シンはアイリに手を差し伸べ、彼女は彼の“偽装妻”として生きていくことに。これは、優しすぎる令嬢が自分だけの居場所を作っていく物語。
病弱だった前世の記憶を持つグレンヴィル伯爵家のヴィオラ。不自由だった前世を取り戻すために今世では人生を楽しみ尽くすつもりだったが、父親同士が親友だったという、王国を代表する大貴族フィールディング公爵家の長男との結婚を決められてしまう。氷の薔薇と謳われる美貌の次期公爵・アルバートとの結婚は自由を求めるヴィオラとしてはうれしくないが、病に伏した公爵の頼みは断れない。盛大な結婚式を終え、ろくに食事もとれないまま初夜を旦那様ーアルバートと迎えるはずが、3時間以上も待たされ、現れて早々に言われたのは「…あなたに、ひとつだけ言っておきたいことがある」「はい」「私があなたを愛することはない」「は?」そちらがそのつもりなら私も自由にやらせてもらいます!マイペースで楽しそうに過ごすヴィオラに、暗い雰囲気だった公爵家、そしてアルバートも少しずつ変わっていくが、彼がそうなったことには理由があってー!
湖山賞をかけて千瑛と競った展覧会から2年ー。大学3年生の霜介は進路に悩んでいた。次の一歩が踏み出せず、新たな表現も見つからない日々。そんな折、亡き母が勤めていた小学校から水墨画教室の依頼を受ける。子供たちとの出会いを通じて向き合う自分の過去と未来。そして、師匠・篠田湖山から託された「あるもの」とはー。無限の色彩を映す水墨画を通して葛藤と成長を描く感動長編。『線は、僕を描く』待望の続編!
函館にある医療刑務所分院に勤める矯正医官・金子由衣は、不摂生の塊のような妊婦・敏江を受け持つことになった。難産の末、重い障害を抱えた女児を出産した敏江はその数日後に死亡する。リスクだらけの身体なので、何が起きてもおかしくはなく、司法検視の結果も問題はなかった。しかし、その2週間後、「死にたい」が口癖の緑内障の受刑者・明美が死亡した。死因が敏江と似ていることから、院内に緊張が走る。自殺か?敏江の死と関係はあるのか?子どもは救いであり希望。母でいることは罰。
新宿歌舞伎町のドラッグストアのごみ置き場で、切断された右手が見つかった。如月塔子と門脇仁志は捜査に乗り出す。手はホストクラブのナンバー2のものだった。客とのトラブルかとの推測はしかし、超高層ビルのレストラン街でホストとは別人の切断された左手が見つかったことで覆される。同一犯による事件なのか?なんのために?欲望渦巻く街で、少ない手がかりから犯人を、真相を突き止めることはできるのかー。
自然への、生命への、生きづらさを抱えた者への「眼差し」。人と動植物、水と土と空気、社会が影響し合って成り立つこの世界を生き、過ぎ行く時間をそのままに描き出す。自然のまま、言葉の流れるまま、音楽に身を任せるように、耽溺し没入する。芥川賞受賞から6年、待望の受賞後第一作。
「すまなかった」新米修道女になった公爵令嬢サーラの前で頭を下げている男性ーかつて彼女の婚約者であった、王太子カーティスだ。聖女の生まれ変わりを自称する男爵令嬢エリーに夢中になったカーティスは、サーラに、婚約を破棄すると言い放った。突き付けられた罪状は、すべて冤罪だったけれどー。疲れ果てていたサーラは、それを受け入れた。激怒した両親に修道院に送られるも、これでようやく静かに暮らせると安堵するサーラ。それなのに、なぜかカーティスが修道院に現れて謝罪する。いまさらそんなことを言われても、復縁なんて絶対にありえません。「わたしのために何かしたいのなら、もう放っておいてください」そしてサーラは、修道院を離れ、隣町にある孤児院の手伝いをすることになる。そこで彼女は、どことなく優美な雰囲気を持った不思議な男性・ルースと出会い…!?