出版社 : 講談社
最愛の夫の癩治療のため、高橋お伝は名医ヘボン博士を頼って文明開化間もない横浜に移り住む。異国情緒と活気あふれる港街で、治療費捻出のために夜ごと男を求めるお伝。そして出合った運命の男。彼女は底知れぬ無間地獄の闇に、否応なく引きずりこまれていった…。お伝は悪女か、はたまた貞女か。美貌ゆえに人生を狂わされた一人の女の凄絶な宿命と真実の姿を追った、大衆文学史を飾る傑作長編。
女ーそれは男を迷わせるだけではない。会社組織をも狂わせる凶器だ。篭絡した四人の美女を武器に、高度成長の波に乗る電機業界の舞台裏に暗躍する産業スパイ・片桐七郎。俺こそが影の凶器だ、と豪語する非情の男は、アメリカ仕込みの凄腕で、着々と成果を挙げていく…。精力的な取材とダイナミックなストーリー展開で、わが国に企業スパイ小説というすぐれて現代的なジャンルを拓いた著者の代表作。
時は室町の末。木曽の領主・義明に愛妾として迎えられた遊女の鳰鳥には、秘めた大望があった。イスパニア司僧であった父を惨殺した義明への復讐である。兄の御岳冠者もまた御岳山中深く一党を率いて仇の隙をうかがっていた。兄妹の怨念が数多の妖士怪人を呼び集め、風雲まさに急を告げるとき、妖異壮大な物語の幕は開く。
潜水禁止地域の川で発見されたジャーナリストの変死体。溺死か、他殺か?ダイビングの目的は?男の背後を探るうちに浮かびあがってくる狂信的カルト教団の影。やがて、全米を震撼させる事件が勃発する。天才プログラマー・ルーシーの力を得て巨大な陰謀に立ちむかうスカーペッタ。
結婚しない人は恋をすればいいー。別れた男へ電話する予感をここちよく思う女。親友の恋の行方を静観する男。不倫と割り切る寂しさ、恋を恋する喜び。男と女の綾なす恋模様を、ますます円熟味あふれる筆致で描く大人のための十二編の小説集。それは昨日のあなたかもしれないし、明日のあなたかもしれない。
ブルゴーニュのシャトー・ホテルに、日本人の新婚カップルが到着した。豪華な結婚披露宴に招かれて、花嫁の友人たちも同行したが、新妻の香菜は青ざめて、何かに怯えている様子。そしてパーティの夜、ホテルの塔が燃え上り、若い女性の無惨な焼死体が…。暗い情熱のもたらした悲劇を華麗に描く、推理長編。
殺人鬼につけられたニックネームは、フラッシュ。実際、目を覆う殺人だった。二十二歳の青年がハンドルに手錠で繋がれて、ガソリンを浴びた体に火を点けられたのだ。捜査官ソアラが死ぬ間際の犠牲者から得た情報は、「犯人は若くて小柄な白人女性。ブロンドで目は茶色」。ゆきずりの犯行か、計画的殺人か?全米話題作。
下町のホテルでの人間模様。東京下町にアメリカ育ちの少年が帰ってきた!スポーツ&ギターVS.銭湯&おでんや…日米間の違いと老若男女の違い、傷つき悩みながらも伸びやかに生きる少年のグローイング・アップ・ストーリー。
昭和はじめの浅草を舞台にした川端康成の都市小説。不良集団「浅草紅団」の女首領・弓子に案内されつつ、“私”は浅草の路地に生きる人々の歓び哀感を探訪する。カジノ・フォウリイの出し物と踊子達。浮浪者と娼婦。関東大震災以降の変貌する都会風俗と、昭和恐慌の影さす終末的な不安と喧騒の世情をルポタージュ風に描出した昭和モダニズム文学の名篇。続篇「浅草祭」併録。
女だてらに丁半勝負に興じるお伝の美貌の陰には、夫・浪之助への新妻の如き愛が息づいていた。時は明治初年、薬も加持祈祷も効のない夫の業病治療のため、彼女は利根川の村から東京の名医へと人力車を走らせる。前途に凄惨な運命が待ちうけているとも知らずに…。希代の毒婦として処刑されることになる高橋お伝の生涯と女心の振幅を、戯作的雰囲気と濃密なエロティシズムの中に描いた情緒派の代表作。
山高帽に針のような口髭、鹿革の手袋に細身の杖、フランス好みの洋服に身を包み、突如登場する怪紳士は、元国際スパイと噂も高い外務省嘱託で探偵・右京慎策。変幻自在の行動と推理で、警視庁随一の腕利き吾来警部を相手に、時には挑発、時には助力、文明開化が惹き起こす難事件を次々に解く。単行本未収録二編を加えた「ハイカラ右京シリーズ」決定版。
平和な森でののびのびと暮らすセルマ、ロジャー、ジェームス、そしてハリエットの仲よし4兄弟。喧噪の街に残るお母さんが気になって飛んでいってみるとーー。こわされる直前のビルのかげに小さな翼をはやした影。それがジェーン、彼らの小さな妹だったなんて。『空飛び猫』につづいて、おたのしみください。
昼は弁護士として男社会の中で虐げられた女性の人権を擁護し、夜は講釈師として阿部定やモンローの凄絶な女の生涯を語るスーパーレディ・村崎紫子=大神田紫。彼女はシャブ漬けのヘルス嬢ミサを救い、暴力団に純潔を奪われそうな処女達を助けにいくが、敵も侮れない。紫水晶付の拳銃が火を吹くのはいつか。
衝撃のデビュー作「キューポラのある街」をはじめ「私が棄てた女」「青春の門」などの傑作をのこした映画監督・浦山桐郎。23年間で9本しか撮らなかった全作品に、若くして世を去った母と父への追慕の念、ふるさと相生への熱き想いが籠められている。54歳で逝った鬼才の壮絶な生涯を描く、渾身の長篇小説。
「余は諸葛孔明である。現代の魏、アメリカを討つため、我が知恵を貸す」ミッドウェー海戦で大敗北を喫した連合艦隊司令長官・山本五十六は、失意の底で幽鬼のごとき声を聞く。別人のごとく変化した長官は全艦反転を命じ、アメリカ太平洋艦隊を叩く!歴史の熱きロマンを描く究極のシミュレーション戦記。
華やかなりし19世紀初頭の英国。体面と名誉を重んじる名門貴族の館で身元不明の若く美しい娘が殺された。否応なく事件に巻き込まれた社交界の伊達男ジュリアンは犯人探しにのりだす。上流社会に渦巻く複雑な人間関係と秘密の中でジュリアンの推理が犯人を追いつめる!正統派ミステリーの醍醐味溢れる傑作。
小説家の日記には素顔の魅力が覗くと言う。『オレゴン夢十夜』は、一見、日本文学を講ずる為にオレゴン州に滞在した“私”の日記という形を装う。滞在中の瑣事を書き、あらゆる感懐を述べながら、これまでの外国体験が物語られて時に夢とうつつが交錯し、そして幼時、両親、先祖への懐古へと遡ってゆく。小説家、詩人大庭みな子の底深い精神の原風景の幻。