出版社 : 講談社
「私は怖れていたのだ。私などが絶対に踏み込んでは行けない場所を頑なに守っている生徒という他人が怖かったのだ」敗戦の色濃くなった昭和20年の初め、農村に学童疎開した34名の少年達の不安と飢えの日。最もおとなしいはずの生徒の脱走の波紋。没後見つかった引率教師の当時の日記に綴られた激しく揺れる文字。少年らの裡に生まれる孤独を見据えて描く鮮烈な秀作。
かつて殺人があった廃墟の塔で再び殺人が。発見者は高校生・烏兎、獅子丸、祐今。死体はその事件の犯人と目され、逃亡していた祐今の父親だった。現場には、塔にむかう雪上の足跡ひとつ。そして三たび殺人は起こった。繰り返される、犯人の足跡がない密室殺人の真相は。麻耶雄嵩、正面から雪の密室に挑戦。
ガンプからあなたへ贈る心にしみる人生のメッセージ。全世界で社会現象になった90年代のヒーロ、フォレスト・ガンプ。成長したリトル・フォレストを見つめる父の愛。忘れられないジェニーとの魂の交流。
異形異端の怪剣士・丹下左膳は、今宵も血刀を振るって大江戸の闇に哄笑する。二刀はふたたび仇敵同士の手に引き裂かれたのだ。左膳に与するは奥州中村六万石、栄三郎に力を貸すのは剣侠・蒲生泰軒。血腥い魔風を孕む刀争奪の死闘に、大岡越前の裁きや如何に。『新版大岡政談』として発表されるや、強烈な虚無的イメージで丹下左膳を一躍不滅のヒーローにした、大衆小説屈指の雄編、佳境へ。
文明開化の波は、日本武道にも押し寄せていた。理論に裏打ちされた近代柔道を模索する矢野正五郎の紘道館に身を寄せた若者・三四郎は、苛酷な稽古に耐え、紘道館を敵視する古式柔術、唐手、さらにはボクシングをも次々に打ち破っていく。興隆期に向かう明治の時代相を背景に、柔道草創期の苦難を生きた天才児の野望と成長の姿を雄渾に描き上げた、大衆文学史に輝やく入魂の青春物語。全三巻。
秘峰八ケ嶽を舞台に、姫をめぐる兄と弟の愛の確執と惨酷な結末が、果てもなく続く一族の血塗られた歴史の発端だった。憎悪は憎悪を呼び、復讐は復讐を生む。山窩族と水狐族に分れて争う末裔たちの呪詛と怨嗟の叫びは、時空を越え、いま大江戸の夜に凄然と谺する。近代劇作の手法もとりこんだ卓抜な構想力と無類の空想力で妖美幻想の世界を拓き、国枝三大伝奇長編の一つと評される豊饒な成果。
女性検屍局長ケイ・スカーペッタ難事件に挑む。バージニアの州都リッチモンドに荒れ狂う連続殺人。被害者の女性たちは残虐な姿で辱められ、締め殺されていた。被害者のあいだに関連はなく、捜査は難航、全市は震え上がっていた。美人検屍官スカーペッタは、最新の技術を駆使して捜査を続けるが…。ミステリー界の女王衝撃のデビュー作。超ベストセラー、検屍官シリーズ第1作。
愛すること、信ずることって何だ。ぎりぎりの死を見つめる“心”の作品集。隠れキリシタン、風葬の島、一妻多夫制、様々な精神のあり方を吉川英治新人賞作家が鋭く抉る。
仲よし4兄弟、セルマ、ロジャー、ジェームス、ハリエットは、お母さんもため息をついたくらい、翼をはやして生まれてきた猫たちです。荒れた街から森へ飛んでいった彼らはハンクとスーザンの心やさしい兄妹に出会うのですが。ル=グウィンの世界を村上春樹さんが美しい日本語に翻訳した素敵な童話です。
どこからか彼に囁く声がする。手を早く洗え、と。平凡な事務弁護士である男は、女の喉に触れた指に力をこめる。あの声を沈黙させるためにー深夜のフラットで独身女性が絞殺された。無惨にも屍肉の一部を切りとられて。ロンドン警視庁のブランチ女性警視と連続殺人鬼との壮絶な戦いを描くサイコ・サスペンス。
第二次世界大戦中のドイツ占領下のリヨンで、友人の神学生をナチの拷問にゆだねるサディスティックな青年に託して、西洋思想の原罪的宿命、善と悪の対立を追求した「白い人」(芥川賞)、汎神論的風土に生きる日本人にとっての、キリスト教の神の意味を問う「黄色い人」の他、「アデンまで」「学生」を収めた遠藤文学の全てのモチーフを包含する初期作品集。
『人狼城』は独仏の国境の峻嶮な渓谷の上に屹立する古城。城主を「人狼」に惨殺されたという言い伝えのある曰く付きの城だ。1970年西独の製薬会社が10名の客をこの城に招待した。長い間、人が近づくのを峻拒してきた城に滞在しはじめた人々の上に、伝説を地でいくような、身の毛もよだつ殺人事件が起きた-。
横浜での海外ツアーコンダクターの死。大阪・豊中でのハイソサエティーの若妻の死。東京・神田での元暴力団準構成員のバーテンの死。三つの射殺死体を結びつける短銃トカレフの謎と、国際線に仕掛けられた鉄壁堅陣のアリバイに、浦上・美保のコンビが挑む。
人を生かす、組織を動かす。日本人の忘れもの。明治維新という回天の大事業を支えたものは何か。-「義」であり「金」であった。幕末長州藩をリストラし、維新を成功に導く基を築いた男、感動の長編。村田清風は、長州藩の藩校明倫館の秀才として藩主側近に取立てられたが、彼の直言は老職には受け入れられず、不遇の時を過ごすことが多かった。しかし難題で起用されると必ず解決して実力を蓄え、遂に就任早々の若い藩主に、一代家老として改革の旗頭に任ぜられ、蛮勇をふるい、艱苦をのり越えて改革に成功する-バブル後の再建に懊悩する日本人必読の本である。