出版社 : 集英社
この巻に収められた三つの長編は、ある種の逸脱と自己循環にあふれている。わたしは物語が逸脱し自己循環に陥る瞬間を憶えている。逸脱と自己循環は、無意識との回路とやりとりを調整するために必要なのだとわたしは思う。無意識の領域に眠っているのは言葉ではない。映像だ。言葉の組み合わせは映像を喚起させる。その映像が無意識下にあって、それを探っているときに逸脱への契機が生まれる。探り当てたとき、自己循環のきっかけが示される。
八世紀。陸奥は日高見川のほとりで、ひとりの男の子が産声を上げた。「アテルイ」と名付けられたその子が十八歳になったとき、金の産出と蝦夷征伐を目的に、大和朝廷の陸奥支配は本格化する。坂上田村麻呂を征夷大将軍にすえ、卓抜した戦力を誇る朝廷軍。一方、自然を愛し平穏に暮らす蝦夷の人々。民族の誇りと未来をかけて、今、アテルイが立ち上がる。
ある夏休みに私は、友人とあの山に登ることにした。私が幼い頃、あの山に一人入って消息を絶った母親の遺体を探すためだ。山には古い言い伝えがあった。曰く「石ノ目様にあったら、目を見てはいけない。見ると石になってしまう」と。そして、私たちは遭難した…。斬新な文体で新しいホラー界を切り開く乙一の短編集。書き下ろしを含め四編、ここに登場。
1298年、ジェノヴァの牢獄。マルコの口から奔出する「東方の記憶」。驚異にして脅威の話を“私”は書き写す。語られる物語は、やがて“私”の筆の中で、もう一つの物語へと胎動し始め…。
南仏の古代遺跡に眠る遺物の発掘。謎の宗教団体からの依頼を受けたレイハンター青山譲は、聖地レンヌ=ル=シャトーへと向かう。彼がかつて発掘に成功し、封印したその石棺をふたたび暴くために。遺物の正体とは、はたして何なのか。世界の王、レックス・ムンディの復活を預言するのは…。膨大な資料と想像力のもと、ヨーロッパ文明最大の謎とタブーに挑む、アドベンチャー・ホラー長編。
牛丼屋でアルバイトをするシュンペイにはフリーターのヨーノスケと、パチプロ並の腕を持つイッカクという同居人がいる。ヨーノスケはまだ開発途上だが超能力者である。その噂を聞きつけ、なぜか美女たちが次々と事件解決の相談に訪れる。ミステリ小説ファンのイッカクの論理的な推理をしり目に、ヨーノスケの能力は、鮮やかにしかも意外な真相を導き出す。
始まりと終わりの町、ローグタウン。海賊王G・ロジャーが生まれ、そして処刑された場所。そこに“悪魔の実”の能力者が集結した。強敵出現に、ルフィ、絶体絶命のピンチ!ゾロが斬る、ウソップが撃つ、ナミが走る、サンジが蹴る!海賊、海軍、賞金稼ぎが大乱戦!オリジナル・キャラクターも登場、原作コミックとはひと味ちがう、白熱のローグタウン編ノベライズ。
話題の個人文庫、堂々の完結巻はミステリ短編を集めた「謎の巻」。ファンおなじみの速水三兄妹の活躍や、自分自身の行動調査を探偵に依頼した男など傑作8編。……謎だらけです。(解説・末國善己)
新完訳「赤毛のアン」(集英社文庫)によって、原作にちりばめられた英米文学の引用を解き明かした著者が、さらに進める新次元の探究。19世紀末という時代背景、新興カナダという社会的要因、随所に描写されるおびただしい花々、草木。そして、作者モンゴメリの、知られざる人生。画期的解読に満ちたファン必読の書。一歩踏み込んだ、大人のための「赤毛のアン」読本。
短時間、正座しただけで骨折する「骨粗鬆症」。美人と言われてトイレにも立てなくなる「便秘」。恋人からの電話を待って夜も眠れない「睡眠障害」。月に一度、些細なことで苛々する女の「生理痛」。フードコーディネーターを突然、襲う「味覚異常」…。恋が、仕事が、家庭が、女たちの心と体を蝕んでゆく。現代女性をとりまくストレス・シンドロームと、それに立ち向かい、再生する姿を描く10話。
清朝末、中国は英国商人の持ちこむ莫大な量の阿片に蝕まれ、人心は荒廃、生活は破綻に瀕していた。国を憂い民族を守るため立ちあがった敏腕官吏、林則徐と豪商、連維材。近代中国黎明期の危機とうねりを初めて小説化した名作。
ヒカル、18歳。大学受験に失敗し、やり場のない鬱屈に日常は支配されている。親に内緒で初めて幻想加速器を手に入れた。黄色いオートバイ、CB400SF。ある日、有名作家である父の盗作事件が発覚。やがて鬱屈が臨界点を超えてしまう…。そしてヒカルは旅立った。一匹狼のヤクザ鉄男とともに愛車に跨がり、風に吹かれて転がって。-剥き出しの魂たちよ、何処を目指す!?新しきモラルの楽園か、明日なき倫理の煉獄か。芥川賞作家が放つ衝撃のエンタテインメント最新長編2000枚。
「踊りは私の中の何かを激しく揺さぶり、私が抱えている名状しがたい飢えを満たしてくれる」14歳でカナダへ単身バレエ留学、プロのダンサーとして活動を始めた陽子が、かつての家庭教師で東京に住むアメリカ人の僕に語る8年間の留学生活。故郷離脱者として暮らすことがもたらす心身の揺らぎ。異文化の中で知る自分の立つべき位置。そして変貌への渇き…。国境を越える語り手と聞き手の物語。