出版社 : 集英社
高校教師の安優海は、臨月を迎え産休中。大学研究職の夫が寝言で女性の名前をつぶやき、浮気を疑い始める。研究室の女性ではと疑心暗鬼になり、定期健診の後、夫の職場に向かおうとするが…。同僚教師の傷害事件を知らされたり、卒業生と偶然再会したり、予測不可能な事態が次々に起こり…。東日本大震災からの再生と家族の希望を描く感涙ミステリー。心揺さぶる衝撃の問題作。書き下ろし。
アイルランド中流階級の長男として生まれた主人公スティーヴン・ディーダラス。藝術家に憧れた彼の幼年時代からアイルランドを離れるまでの魂の軌跡を、彼の言語意識に沿って描いたモダニズムの代表的傑作。1、イエズス会系学校での寄宿生活。2、一家の没落、転学、娼婦…。3、犯した罪の意識と懺悔。4、贖罪、聖職を選ぶ葛藤。5、藝術家として飛翔の決意。
中学生ばかりが暮らす札幌の小さな児童養護施設・魴〓(ほうぼう)舎に存続の危機が!生きる力、信じる力をまっすぐに見つめ続ける感動の青春小説!坪田譲治文学賞受賞作『おれのおばさん』シリーズ・第一部完結編。
「夫は、仕事ができないらしい」。会社のこと、実家のこと、ご近所づきあい……どんな家庭にもある、ささやかだけれど悩ましい「問題」の数々をリアルかつ温かく描く短編集。(解説/吉田伸子)
恋をしてから、小説が書けなくなった「私」。自分を甘やかしたい。横になる寝台が欲しいのだ。そう言った私に、男友達はバリ島行きの航空券を手配してくれた。暑い国で休んでおいで。行っておいで、あの熱帯の安楽椅子に。そこで出会った男たちと愛しあううち、私の中にバリ島の熱が染み込んでゆく。豊潤で濃密な愛の物語。巻末に、綿矢りさ・村田沙耶香両氏による特別対談を収録。
大阪のデザイン事務所で働く傍ら、副業でライターの仕事をこなす奈加子。ある日、上司の代理の打ち合わせ先で、東京の建設会社に勤める重信と出会う。共に人間関係や仕事の理不尽に振り回され、肉体にも精神にも災難がふりかかる32歳。たった一度会ったきり、しかし偶然にも名字と生年月日が同じだったことから、二人はふとした瞬間に互いを思い出す。男女のささやかな繋がりを描くお仕事小説。
独身なのに、14歳から6歳までの孤児9人を同居させているかわり者、江戸町奉行所の町方同心、大和川喜八郎・32歳。めっぽう腕は立つが、情には弱い。同僚の妻をはじめ美女が次々失踪する謎を追う「南蛮船」。巾着切が浪人者からすりとった小判には秘密があり…「埋蔵金十万両」。ほか2編の連作短編を収録。喜八郎を居候の子どもたちが助け、事件解決に大活躍する痛快大江戸人情捕物帳!
町に初雪が降った日、廃墟の塔で男が殺害された。雪の上に残された足跡は、塔に向かう一筋だけ。殺されたのは、発見者の高校生・祐今の父親だった。8年前に同じ塔で、離婚した妻を殺した疑いを持たれ、失踪していた。母も父も失った祐今を案じ、親友の烏兎と獅子丸は犯人を探し始める。そんな彼らをあざ笑うように、町では次の悲劇が起こりー。衝撃の真相が待ち受ける、青春本格ミステリ。
神奈川県警港みらい署の若手女性刑事・菱川海月。署内で「女の子」扱いされ捜査の蚊帳の外に置かれることを不満に思っていたところ、後輩とコンビを組むことに。その後輩・亘善は頭脳明晰なイケメンだが、気の短い海月に叱り飛ばされたり殴られるたびに悦ぶ、とんでもないドM。海月は、嫌々ながら彼と捜査をすることになり…。横浜で起きるいっぷう変わった事件にSMコンビが挑む!
京から大宰府に左遷され泣き暮らす道真だが、美術品の目利きの才が認められる。大宰大弐・小野の窮地を救う為、奇策に乗り出すが……。朝廷への意趣返しなるか! 書き下ろし歴史小説。(解説/縄田一男)
小雨降るある日、健三は勤め帰りに思いがけない人物を見かける。それはかつての養父・島田で、海外留学から戻り大学教師となった健三から、何がしかの援助を得ようと十数年の時を経て近づいてきたのだ。島田、島田の先妻・お常、姉・お夏、妻・お住の父。困窮する係累にあてにされ、神経症気味の妻とも気持ちがすれ違う。永遠に「片付かない」日常の苦悩を描いた自伝小説ともいえる家族の物語。
ロシアからの“帰国移民”である“探偵”ヴィクトル・カルッパのもとに、失踪した妻を捜してほしい、という夫からの依頼が舞い込む。それは国境をまたいでめぐらされたある陰謀の、ほんの入口に過ぎなかった…。魅力的な新ヒーローを引っさげ、フィンランド初の快挙である「ガラスの鍵賞」に輝く大人気シリーズの一作目がついに登場!北欧ミステリに新たな旋風を巻き起こす衝撃の傑作!
恋を謳歌し、気ままなシングルライフを満喫する山崎ミチル・45歳。ところが生まれて初めて男に裏切られ、おまけに仕事まで失った。残されたものは元夫が譲ってくれたマンションと僅かな貯金だけ。やむなく始めた地味なアルバイト。そこで出会ったのは、個性豊かな愛すべき老若男女たち。彼らとの交流で、どん底バブリー女が手に入れた希望の切符とはー。
このノートに名前を書かれた人間は死ぬー死神が落としたノートによって引き起こされた“キラ事件”を、大きな代償を支払い解決に導いた名担偵L。だがその後、Lの前に更なる難事件が立ちはだかった。残された時間は23日間。事件の鍵を握る少女を守るため、Lは再び動き出す。孤高にして至高の名探偵は、世界を変えることができるのか。人気コミック『DEATH NOTE』のもうひとつの結末がここに!
両親の離婚以降、月に一度祖父と会うようになった彗子。母の再婚を機に会うことをやめる二人だったが……。表題作ほか、5つの物語からなる短編集。世の中は色々なデートで溢れている。(解説/吉田伸子)
師の坪内逍遙たちと、日本に新劇の運動を起こした早稲田大学教授・島村抱月。彼らがはじめた演劇学校の一期生に合格した松井須磨子。彼によって内に秘めた非凡な才能を見出された彼女は、カチューシャを演じ、ノラを演じるごとに見紛うほど美しい女優へと化身していく。二人の間には愛が芽生え…。近代演劇の夜明け、スキャンダルな愛に一途に燃えた抱月と須磨子を描いた著者入魂の長編小説。
大坂庶民の夏の楽しみといえば、天神祭と鱧料理。だがこのところ、刀ばかりを狙う賊徒が横行し、東西町奉行所の与力や同心たちは祭どころではない。能天気なのは食い道楽の奉行・大邉久右衛門のみで、騒ぎをよそに料理方の源治郎に鱧の骨切り修業を言い渡す始末。その目的が噴飯ものでー(「地車囃子鱧の皮」)。他、極上の献立が彩る2編を収録。鍋奉行の名裁きが魅せる食いだおれ時代小説第3弾。
29歳で急死したキャリアウーマンの多絵子。自由奔放に男性と関わり、相手によって態度を変えたが、誰も彼女の本当の顔を知るものはいなかった。何が彼女をそうさせたのか? 傑作長編。(解説/谷村志穂)
2011年3月11日。日本から遠く離れた南太平洋のバヌアツにも、地震による津波警報が出されていた。旅行ガイドや通訳をしながらこの島に暮らす伊都部彩実は、そのしばらく後、実父の訃報を受けて一時帰国する。放射線被害について海外メディアが報じる危機感に反比例するかのような日本の実像、また、相変わらず保守的な家族たちの思考と言動に噛み合わない思いを抱きながら日々を送るうち、「アオイロコ」という奇妙な風土病の噂を耳にする。父の遺言で、母が亡くなった後に父が交際していた女性に、代々の土地家屋を明け渡すことになり、思いのほか動揺する彩実。国に縛られない自由な生き方を望んで海外に飛び出したはずなのに、戻る場所を求めている自分に気づく。そんな折、口中の腫瘍が悪性と診断され、即刻入院となり、期せずして日本に留まることになるのだったー。