出版社 : 集英社
時は7世紀。唐の皇帝・李世民の姪である翠蘭は、訳あって商家で育てられていた。だが突然の皇帝の命により、唐の公主として吐蕃(チベット)王に嫁ぐことになる。戸惑いながらもその命を受け入れ、翠蘭は吐蕃へと旅立つ。しかし、道中を何者かに奇襲され、翠蘭はリジムと名乗る吐蕃の男とともに降嫁の隊列からはぐれてしまい…。遙かなる大地で、彼女を待ち受けていた運命とは。大河歴史ロマン。
気さくな性格で暢気な高等遊民生活をおくる長野家の次男・二郎。対照的に兄で学者の一郎は常に張りつめた神経を持ち、妻・直と二郎の仲を邪推するまでに精神が追い詰められていた。あるとき彼は二郎に、直の貞操を試すため一夜を共にしてくれないかと言い出す。人を信じ、伸びやかに生きたいと願いながら、出口のない迷宮を巡り続けるひとりの知識人の心理状況を克明に描いた、『こころ』へとつながる「後期3部作」第2弾!写真で見る漱石・用語の注釈・年表・解説文・鑑賞文付き。
大晦日、ロンドンの飛び降り自殺の名所、トッパーズ・ハウスの屋上で、人生に別れを告げようとして上った失意の男女4人が鉢合わせをする。互いの身の上を語り合ううちに、期間を決めて、もう少し生きてみようかという話になり…。全く違うタイプの男女4人が次第に奇妙な友情をはぐくみ、もう一度人生と向き合おうとする姿を、個性豊かな各々の独白でユーモアたっぷりに描く。
神保町の古書店「泪亭」二階に住む謎の美女・白井沙漠。学生時代に同じ部屋に下宿していたことから彼女と知り合った翻訳家の解は、訝しく思いながらも何度も身体を重ねる。二人が共通して抱える「借金」という恐怖。破滅へのカウントダウンの中、彼らが辿り着いた場所とはー。「消費者金融」全盛の時代を生きる登場人物四人の視点から、お金に翻弄される人々の姿を緻密に描いたサスペンス。
個性的なホストたちが人気を集める渋谷のホストクラブ「club indigo」。常連客の真千子が殺され、指名されていたホスト・DJ本気が疑われる。オーナーの晶とホストたちが事件を追ううち、ネット上に「もう一つのindigo」が存在し、真千子がそこを運営していたことが分かる。ネットとリアルの両方から犯人探しを進める晶たちだが…。大人気シリーズ最新作が文庫オリジナルで登場!
転入したての5年生、みなと。父の仕事の都合で各地を転々、病的に潔癖な継母との毎日に、何かを待ち続けていた。同級生・悟は物知り博士。父が鳩レースにのめり込み、母と離婚していた。そんな二人が鳩を拾う。持ち主のオランダ人に届けにいき、同い年の娘ユリカと出会った。居場所のない者同士、響き合った三人は、自分たちだけで鳩を飛ばしに遠く稚内を目指す。少年たちの冒険と成長を描く傑作長編。
五年前に夫を亡くし、更紗染にすがって生きてきた紀代。初の展示会は著名人が集い盛況だったが、新聞記者の丸尾に「更紗は道楽か」と問われ、紀代は自分の甘さや未熟さに気づく。年下だが頼れる丸尾に、紀代は好意を抱き始める。亡夫の友人、岩永も、彼女の作品をまとめ買いするなど陰で支えていたが、ある日ー。ふたりの男性の間で揺れ惑う女心。切なく交錯する想いを描く、至高の恋愛小説。
15世紀末、ルネッサンス華やかな中世ローマに、徒花のように権勢を誇った一族・ボルジア家。謀略と潤沢な資金で、その長ロドリーゴは枢機卿から教皇の座を狙うまで昇りつめるが、その最大の武器は“毒”だった。一族には“毒殺師”と呼ばれる仕事人がいて、次々と迫り来る強大な敵に秘薬を調合、闘い、抹殺する。本書は何者かに殺害された父の跡を継いだ女主人公の数奇な物語。全米で話題の大人気シリーズ!
ディスレクシア(読み書き困難)のため生きづらさを抱える翔。息子のハンディキャップを受け止めきれずにいる両親。家族関係に悩みを抱えるクラスメイトの山上と中島。人生のはじまりの時間を生きる少年少女たちと、人生のとまどいの時間を生きる大人たち。それぞれの思いが交差した先に灯る、小さな光を描く連作短編集。
昼下がりの保健室。そこは教室に居場所のないサエとナツのささやかな楽園だった。けれどサエが突然“自分のクラスに戻る”と言い出してー(『ねぇ,卵の殻が付いている』より)。“お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください”。早朝の教室で毎日手帳に書いていた架空の遺書。その手帳を偶然にも人気者の同級生が拾ってしまうー(『死にたいノート』より)。揺れ動く6人の中学生の心を綴る6つのストーリー。
中華の外の地域で変化が起きていた。西遼では耶律大石が死に、南方では秦容が街を拡大した。同じく南方に来て、基盤作りを始めた岳飛を南宋の軍が狙う。また梁山泊水軍を韓世忠軍が襲った。
“嫁”の介護に不満を持つ老人(「寝たきりの殺意」)。豊胸手術に失敗した、不運続きの女(「シリコン」)。患者の甘えを一切許さない天才的外科医(「至高の名医」)。頭蓋骨の形で、人の美醜を判断する男(「愛ドクロ」)。ストレスを全て抱え込む、循環器内科医(「名医の微笑」)。相手の嘘やごまかしを見抜く内科医(「嘘はキライ」)。本当のことなんて、言えるわけない。真の病名、患者への不満、手術の失敗。現役医師による、可笑しくて怖いミステリー。
舞台は終戦前後の北方四島のひとつ色丹島。寛太と純平の幼い兄弟が戦争によって引き離された父に会うため、100キロ離れた収容所を目指す。親子の絆、兄弟愛、命の尊さを問いかける物語。
ダムができて湖に沈んだ村ーのはずが、5年後に雨不足で村は再びその姿を現した。「それ」は墓の下からよみがえり、血を必要としていた…。そして、若い女が失血死したのだった。一方、ひょんなことからこの事件に遭遇したエリカとクロロックは同じ吸血鬼一族の存在を感じていた。そんなとき常田加奈子という少女が現れ、やがて第二の殺人が起こってー!?『吸血鬼はお年ごろ』シリーズ第10弾!!
怪異大好きの変人中将・宣能に気に入られてしまった青年貴族の宗孝。「泣く石」の噂を確かめに二人で向かった都の外れで出会ったのは、妖怪ではなく何やら訳ありらしい赤子。成り行きで預かる事になった宗孝だが、その子は中将の隠し子かもしれず…。しかも姉たちの追及に対して苦し紛れに自分の子だと答えてしまったため、事態は更にややこしい方向に!?平安怪奇冒険譚、第2弾!
卒業を間近に控えた女子大生仲良しグループ。珠美は秘書、文代は教師、トモ子は編集者など、七人それぞれの進路へ巣立とうとしている。恋愛に憧れつつも、まだ見合い結婚が主流の終戦直後、彼女達が常に盛り上がるのは、唯一婚約者のいる祐子の話だ。卒業後、婚約者の誕生日に全員が祐子の家に招待されるがー。若い女性の心の葛藤を、瑞々しく描く。有吉文学の原点となった、初の長編小説。
大学を出たが職のあてのない敬太郎は友人須永の叔父、田口を頼る。「探偵」の仕事を請け負った彼はある人物の尾行を命じられる。その男、松本は田口の義弟で、須永と同様、高等遊民の暮らしをほしいままにしていた。都会の知識階級の自我をめぐる苦悩を、漱石自身に重ね合わせながら丹念に描き出す。生死の境を彷徨った「修善寺の大患」後の作品で、亡き娘、ひな子と親友、池辺三山の霊に捧げられた。
フィンランドはユダヤ人虐殺に加担したかー歴史の極秘調査ともみ消しの指令を受けたカリ・ヴァーラ警部。ヘルシンキで起きたロシア人富豪妻の拷問死事件の捜査においても警察上層部から圧力がかかる。さらにカリを襲うのは原因不明の頭痛。妻のケイトは彼を心配するが、臨月を迎えた妻をこれ以上不安にさせることはできない…。激痛に耐えながら挑んだその結末とは?好評極寒ミステリ第2弾!