出版社 : PHP研究所
国境を挟み、宋遼二国は一触即発の状態に。伝説の英雄・楊業と息子たちの前に、遼の名将・耶律休哥が立ちはだかる。白い毛をたなびかせて北の土漠を疾駆するこの男は、「白き狼」と恐れられていた。宋軍生え抜きの将軍たちも、楊一族に次々と難問を突きつける。決戦の秋!運命に導かれるようにして戦場に向かう男たち。滅びゆく者たちの叫びが戦場に谺する。北方『楊家将』、慟哭の終章。
戦国乱世の時代、戦場を駆けた男だけでなく、女たちもまたそれぞれに「闘いの日々」を送っていた。異例の出世を遂げた豊臣秀吉の妻・北ノ政所、夫の異常なまでの嫉妬にさらされ続けた細川忠興の妻・伽羅奢(ガラシャ)から、戦上手で変わり者の侍大将に思いを寄せる人妻の由紀、夫を徹底して働かせた遊び好きの小梅まで、有名無名六人の女性が戦乱の中で咲かせた「花」を描いた珠玉の短篇集。
豊臣秀吉の天下統一、この偉業は「二兵衛」と呼ばれた名軍師ー竹中半兵衛重治と黒田官兵衛孝高を抜きにして語れない。置かれた環境は異なり、性格も正反対であったにもかかわらず、互いの才を認め合い、相手を信頼し合って、秀吉の天下取りを補佐した半兵衛と官兵衛。二人がともに抱き続けた志、友情とはいかなるものだったのか。不世出の軍師二人の鮮烈な人生を描いた力作長編小説。
橘奈良麻呂の乱が平定され、三年半が過ぎた天平宝字四年(七六〇)秋ー。奈良麻呂を葬った藤原仲麻呂は、恵美押勝と名を変え、新帝を操って強大な権勢をふるっていた。黄金をねらい、陸奥支配の野望を抱く押勝に対し、牡鹿嶋足、物部天鈴らの智略を尽くした戦いが始まる!平城京の激しい権力闘争の渦中にあって、蝦夷の平和を守るべく奮闘する若き英傑たちを活写した歴史大河ロマン第二弾。
もともと攘夷討幕論者だった渋沢栄一が、一橋(徳川)慶喜に仕えることとなり、幕臣となったのは24歳の時であった。働きどころを得て実力を発揮し、その才を認められた彼は、幕末の動乱が風雲急を告げる慶応3年(1867年)、徳川昭武の随員としてフランスに渡る。▼現地で“提供する側がおごらず、受け手が引け目をまったく感じない公共事業”を目の当たりにし、衝撃を受けた彼は、その後、終生にわたって「人の道と経済利益の両立」を掲げ、事業を展開する。日本初の株式会社制度を導入した静岡商法会所の設立、大蔵省の組織改革、第一国立銀行や五百余の民間企業の起業・育成……。渋沢にとって、私利はすなわち利他(他に利益を還元する)であり、一貫して公益の追求者であり続けた。▼本書は、経済面から明治日本の近代化を推進し、“日本資本主義の父”と称えられた実業家・渋沢栄一の事蹟を活写した長編小説である。▼『論語とソロバン』を改題。 [第1部]慶喜との再会 [第2部]静岡藩再建 [第3部]人生意気に感ず [第4部]経世済民 [第5部]日本金融の礎 [第6部]論語とソロバン
江戸深川の仕出し料理屋・立花屋で事件が起きた。下働きの少年・元吉の過去と、何か関係があるらしい。元吉は青物商の伜で、付け火により親兄弟をすべて失い、与七のもとで働いていた。神田多町の青物市場で、探していた人物を見かけた元吉、それを知った与七は…。人情の機微をテーマに様々な作品をものしてきた内海隆一郎が、料理を彩りに添えつつ描き出した、初の長編時代ミステリー。
8世紀中頃の黄金発見に端を発する奥州動乱と、中央政界の血腥い権力抗争を描く大河ロマン。蝦夷の若者・丸子嶋足は、黄金を土産に帰京する陸奥守の従者となり平城京に上る。8年が過ぎ、衛士府の官人として異例の出世を遂げた嶋足は、やがて奈良朝を震撼させた政変・橘奈良麻呂の乱の渦中に、自らの身を投じるのであった…。迫り来る動乱の兆しの中での、若き蝦夷たちの躍動と葛藤を描く。
主家の乗っ取り、将軍弑逆、東大寺放火など、その非道な行動から戦国の梟雄と称される松永久秀。だが、浮浪の身から京の支配者にまで伸し上がった彼の評価を、本書は人間的な史観から問い直す。若き日、京の実力者であった三好元長に取り立てられたことに始まる、下剋上そのものの人生。何の後ろ盾もなく、自ら培った教養と処世の術で、乱世を疾駆した久秀の心情を見事に描出する力作長編。
筑後柳河十三万石の領主立花宗茂を描く長編小説。秀吉をして「鎮西一の忠勇、天下無双の勇士なり」といわしめた宗茂の生涯は、戦っては義戦多く、常に寡兵をもって大軍を破り、その生きざまは信義一筋、まことに誠実・清廉なものであった。これは実父高橋紹運、養父立花道雪という両父の高潔な生き方を範としており、ゆえに本編は、この三人の父子像が中心のテーマとなっている。▼ともに大友家の加判衆であった両父は、当主宗麟を守り立てる立場にある。たとえ非道な仕打ちにあったとしても、決して当主を見放さず、己の運命として受けとめ、恥じることのない生涯を終えるのである。この愚直なまでの廉潔な生き方を、著者は現今の知的ノウハウ重視の風潮に対するアンチテーゼとして提示、また自立する女性として描かれる妻ぎん千代と宗茂との葛藤も、今日的なテーマとして見事に描出している。▼現代人の心を癒し、人間の温もりをほのぼのとつたえる力作である。 ●盗妻 ●婿盗り ●旗立て ●初陣 ●死の秋 ●散華 ●立花城 ●謁見 ●柳河城 ●碧蹄館 ●離別 ●関ガ原役 ●流寓
無条件降伏か徹底抗戦か。“昭和の勝海舟”と称された海軍の異端児。この男なくして日本に「終戦」はなかった。継戦派が大勢を占めるなか、ほぼ独力で終戦工作を成し遂げ、八千万同胞の命を救いあげた最後の海軍大将、井上成美の爽然たる生きかたは、時代に流されず正論を堅持する美意識につらぬかれている。
生命保険業界で成功を極めつつあったマーク・クリストファーは、ある日、輝かしいキャリアを全部捨てて、作家になることを志す。二人の息子の成長に突然気づき、家族を顧みることのなかったそれまでの「競争人生」に大きな疑問を感じるようになったからだ。会社を辞めた彼は、家族とともに満ち足りた時間を過ごしつつ執筆活動を続ける。やがて、彼の書いた本は大ベストセラーとなるが…。世界中で最も多くの読者を持つ自己啓発書作家であるオグ・マンディーノが、「愛」を宿した選択の大切さをテーマに、ミステリー仕立てで描いた珠玉の1冊。
八四航空艦隊がついに実現した!南雲を司令長官とする第一航空艦隊は旗艦赤城以下八隻。小沢を司令長官とする第二航空艦隊は旗艦伊勢以下四隻。計十二隻の史上最大にして最強の大空母部隊は太平洋戦争を終結させる力となり得るのか。今、ハワイ諸島を制圧し米西海岸への進攻が始まった。
本年度直木賞を受賞した作家、宮部みゆき。そして中村隆資、鳴海丈、火坂雅志、安部龍太郎、宮本昌孝、東郷隆の時代小説の若き旗手7人が、一振りの剣の繰り広げる数奇なドラマを時代ごとに書き継ぐリレー小説。 鎌倉末期、備後長船で生まれた剛刀「のきばしら」。室町時代、足利将軍惨殺という嘉吉の乱を引き起こし、切腹を迫られた茶人・千利休の手により石灯籠を斬る。やがて江戸時代、転生した娘とともに質屋夫婦の命を救う。幕末には“人斬り”岡田以蔵の手に渡り、維新動乱のなかで女剣士の仇を討ち、ついに、終戦前夜の皇居に現れる……。 リレー小説は、最近ではあまり見かけないが、作家たちの卓抜たる個性をぶつけ合い、壮大なドラマを生み出すために、意欲的にこの形式に挑戦。鎌倉時代の刀の誕生から昭和の動乱期まで日本の歴史を縦断し、物語のバリエーションに富んだ作品に完成した。時代小説ファンならずとも垂涎の一冊である。 解説・縄田一男。
米濠補給路遮断を企図した連合艦隊は、陽動で角田覚治率いる第二航空艦隊をウェーク島沖に進出させる一方、南雲機動部隊を敵の内懐というべき珊瑚海へ出撃させる。しかし、ウェーク島沖にはハルゼー、珊瑚海にはフレッチャーの米機動部隊が待ち構えていた。熾烈な航空決戦を描く第2弾。
大艦巨砲か航空主兵か。海軍内で両派の対立が続く昭和十六年秋、一隻の巡洋戦艦が竣工する。艦名は妙義。その建造目的は、連合艦隊司令長官山本五十六にも知らされていなかった。一方山本は、密かに空母主体の大航空艦隊構想を抱く。両派の思惑を背に、南雲機動部隊は遙か真珠湾に向け出撃した。
累計10万部突破のロングセラー! 軍略の才と仁徳を併せもった戦国一の器量人。 官兵衛が荒木村重のいる有岡城に入ったまま出てこない、と聞いた信長は、裏切られたと思い、 直ちに 「官兵衛の子、松寿丸を殺せ」と秀吉に命令した。 しかし、官兵衛を信じる秀吉は竹中半兵衛と謀り、秘密裏に松寿丸をかくまうのだったーー。 秀吉の信任厚く、天下統一に向かって縦横無尽の活躍をした黒田官兵衛。 敵将からもその人徳を称えられた名軍師の生涯を描く長編人物小説。 信長は時代が生んだ天才である。そして天才に相応しく、古いこの国の慣習を根こそぎ改めていった。だが信長には、覇道はあっても王道はない。王道を歩もうとしない王は、いつかこの世から拒まれ、不慮の死を遂げる、と官兵衛は思った。 すると、官兵衛の心中に不逞の野望が芽生えた。 これから天下はどうなる、と思った時、官兵衛は秀吉の耳もとで囁いた。 「との! 天の時が訪れてござる。天下をお取りなされ!」 (本書より) 文庫書き下ろし。