1987年6月発売
熱帯安楽椅子熱帯安楽椅子
男の肌はいとしい。そして、男の吐息が調合する空気はかけがえのないものだ。愛しているという言葉、それはただの音楽だ。美しい音楽。軽々しく使われるべきあどけない言葉。私はこの島で決して性愛に不自由していなかった。けれど、恋することに不自由していた。
兵隊やくざ(戦中編)兵隊やくざ(戦中編)
「私」は北満・孫呉を守る上等兵。同じ中隊に貴三郎と名乗るテキ屋上がりの初年兵が入隊してきた。坊ちゃん育ちの私は驚くばかり。その貴三郎の生活訓練を私が受け持つとは!入隊式の日、貴三郎は早速、暴れた。が、私は彼に人間的な愛を感じていく。中隊に移動命令が下った。「列車を切り離して脱走を」と考えた2人は…。
ソルジェニーツィン短篇集ソルジェニーツィン短篇集
どんな不幸にも決しておおらかな気持を失わず、馬鹿がつくほどの正直者で他人のためにただ働きばかりしているお人好しの老婆。無限のいつくしみをもって描かれたこの『マトリョーナの家』の主人公の姿には「古き良きロシア」のすべてがぬり込められている。ほかに『クレチェトフカ駅の出来事』『公共のためには』など珠玉の3篇。