1987年発売
顎に冷たい物を感じて目がさめた。ぬるついた物体が唇に這い上がり、口の中に滑り込んでくる。頭の傷に手をやると、何かが傷口にしがみついていた。粘液にくるまれた生物が温かい肉をむさぼっているのだー悲鳴をあげて飛び起きたときは手遅れだった。部屋は、うごめき這い回る食肉虫の群れに覆われていた。彼の肉体を喰い尽くそうとする大群に…異常発生したナメクジの群れが、食糧を求めて人間に襲いかかる!気鋭の若手がおぞましき恐怖を描く傑作スプラッター。
十二月のパリ、雪の夜。いつものように78番線のバスは市内を北上している。乗客十六人を乗せてカルポ公園の停留所に停まったとき、三人の男が乗車してきた。一瞬の出来事。機関銃が掃射され、バスの中は肉片飛び散る血の海と化した。-この残忍無比な無差別テロにパリ中が凍てついた。警察内では司法警察局のヴェルネ警視を中心に特別班が犯人逮捕に全力をあげ、一方、大手新聞のニューズ紙もいち早く事件をスクープすべく独自の捜査をはじめる…。現役ジャーナリストがテロに怯える現代社会と警察の実像を描き出す衝撃の犯罪サスペンス!
“もし1941年にヒトラーが英国を制圧していたら歴史はどう変わっていたか?”鉤十字に全土が塗りつぶされた占領下の英国。国王ジョージ6世はロンドン塔に幽閉され、国民は圧政に喘いでいた。治安維持の任にあたるナチ親衛隊は強大な権力を持ち、ロンドン警視庁もその支配を受けている。その中で同殺人課のアーチャー警視に委ねられた事件は、闇物資の取引きをめぐる平凡な殺人と見えた。だが、ベルリンから野心的な親衛隊将校フートが着任、捜査は意外な展開を始める!巨匠が綿密な調査を基に、もう一つの歴史の中で展開するスパイ戦を描く。
片腕の容疑者を追うアーチャーの前には迷宮のような世界が広がっていた。新興勢力たるナチ親衛隊とそれを快く思わないドイツ国防軍、そして両者と交渉して国王奪還を図る抗独グループ。その三者が怪しげな動きを見せていたのだ。どうやら殺人事件の背後にはドイツの新兵器開発計画が絡んでいるらしい。捜査を続けるアーチャーはやがて歴史を揺るがす秘密作戦に捲き込まれていく!本書は占領下の英国のリアルな描写が話題を呼び、同国でベストセラーの上位を何週間も占め続けた。スパイ小説と戦争冒険小説の魅力をあわせ持った巨匠の異色作!
えッ、スティーブンとトリシアがけんかしてるんですって!あんなに仲がよかったふたりなのに、デートもしない、電話もなし。どうやらトリシアがスティーヴンを避けてるみたいだけど、いったいどうしたのかしら。トリシアにはなにか秘密がありそうだけど…おかげでスティーヴンはどんぞこ気分。ふたりの恋はおしまいなのかも。ところが、ジェシカといっしょに病院でボランティアの看護助手をはじめたエリザベスが、そこの廊下で見かけたのは…?
自分自身と自己の限界を求めて旅に出た若い法学生の、優雅で勇敢な青春の彷徨を描いた海洋冒険小説。…愛、セックス、暴力、美しい女と野望にみちた男たち、テロリストと陰謀、国際舞台と、実に盛り沢山の内容で、どんな冒険小説ファンをも満足させるだろう。…
ノルマンディーの海辺。こよなく美しい夏の宵。ホテルのロビーに若い外国人とその恋人が現われる。彼らを偶然見かけて強く惹かれた男がいた…。デュラスが死ぬまで愛していく男に捧げた、ベストセラー『愛人』につづく最新ロマン!
この本はなんとシャーロック・ホームズの生涯を、ホームズ物語とその周辺の資料から再構成してしまったというホームズファンもびっくりの奇書である。「注釈つきシャーロック・ホームズ全集」で有名なシャーロッキアン、W.S.ベアリング=グールドによって完成されたこの架空の伝記は、ホームズ関係の古典として、ホームズファンの間でつとに有名である。ファン必携の名著ここに復刊!
「秀丸正太さん!」「はいっ!」銀行の窓口嬢の声に、若い男が2人同時に返事した。なんと彼らは同姓同名。でも、ヒラと常務取締役で身分がちがう。そんな2人が友情を結び、物語は急降下、急上昇、波瀾万丈!いつしか2人の立場は逆転しはじめたのだが…。まさかこんな話、あるかもしれない、の傑作ユーモア・ミュージカル。
“日本は古より呪いをかけられてきた国なのか?”摩訶不思議な夢に出てくる美女の姿に導かれて、男4人と女1人が揃った。上代の昔からの呪いと戦うために!そして、夢に現われた女も幾度もの転生を経て、現代に生き続けていた…。ホラー小説の若き担い手が、凄絶なる魔戦を妖しく蘇らせる!
ホワイトハウスの一室でアメリカ大統領ハマーの死体が発見された。中近東ではゲリラの指導者が次々と暗殺され、アフリカの小国では独裁者が変死をとげた。東シナ海ではソ連とアメリカの原子力潜水艦が一触即発の状態にあった。また人々の意識は平和派と過激派の二つに分かれ始めていた。事態を重く見たCIAは極秘に調査を進め、これらの異常現象の元凶が、日本の吉野山中の秘境で栽培されているソーマと呼ばれる薬草であることをつきとめた。一方、ソーマの里、吉野の秘境では、共にソーマの栽培者である殺戮と破壊を至上命令とする一族の長伊津瀬と超能力を持つ有尾人土グモ族の幼児照輝のすさまじい戦いが続いていた!著者快心の伝奇ロマン登場。
スペインの片田舎の紳士が、騎士道小説の読みすぎで妄想に取り憑かれ、「世の不正を正すため」従者を引きつれ、遍歴の騎士となって旅に出る。狂気と正気の衝突、夢想へ向かっての猪突猛進、溌刺とした純愛ー世界文学に永遠の生命をもって登場した長篇小説を全4冊で贈る決定版。
悪徳警官狩りを専門としたデトロイト市警保安特捜隊、人呼んで〈ヘッドハンターズ〉。銀行強盗のショットガンの犠牲となって死んだのはその一員、襲撃したのはヘロイン中毒の黒人三人組だった。数あるヒーロー・ペイパーバックの中でも、極め付けの残酷シーンで知られる本書は、大都市の暗部をハードボイルド・タッチで描破したアクション巨編。
密室状態での恋人の死に始まり、その調査を依頼した素人探偵まで、衆人環視のもとで殺された蓑浦は、彼に不思議な友情を捧げる親友諸戸とともに、事件の真相を追って南紀の孤島へ向かうことになった。だが、そこで2人を待っていたのは、言語に絶する地獄図の世界であった…!『パノラマ島奇談』や『陰獣』と並ぶ、江戸川乱歩の長編代表作。
純日本的な家屋における密室状況下の殺人事件を、心理的盲点を衝いて見事に解決してみせるのが、後にわが国を代表する名探偵といわれるようになった明智小五郎である。本書には、その「D坂の殺人事件」をはじめ、大乱歩の短編における傑作を集大成した。「赤い部屋」「白昼夢」「毒草」「火星の運河」「お勢登場」「虫」「石榴」等全10編を収録した。