1987年発売
1942年、ニューヨーク。ヨーロッパと太平洋では第二次世界大戦の戦火が拡大しつつあった。フットボールの花形選手ルー・キャシディは試合中の怪我がもとで選手生活を断念せざるをえなくなり、妻のカリンもドイツへ帰ったまま消息を絶っていた。そんなルーの前に美貌の歌手が現われ、次第に惹かれていく。だが、女は暗黒街のボスの情婦だった…。戦時下のマンハッタンに蠢く男たちの野望と裏切りを鮮烈に描いた傑作サスペンス!
第二次大戦下、アメリカの工作員マロリーは密命を受けて、レジスタンスの協力のもとに独軍占領下のパリへ潜入した。が、内部の裏切りによって作戦は崩壊。マロリーは敵に因われたが、辛くも脱出した。それから26年、CIA局員となっていた彼はベルリンへ飛ぶ。西側への亡命を望む東独情報部員に接触するためだった。26年前の悪夢と遭遇しようとは夢想だにしていなかった…。非情な諜報戦の只中でうごめくスパイ達を描く力作長篇!
元CIA局員キャシディはかつての上司アリスンの依頼でさる男を尾行した。だが、男の立ち寄った先に残されていたのは身元不明の死体と大量の高性能砲弾。キャシディは件の男の身辺を探り、やがて自分が密売兵器の争奪戦に巻きこまれていたことを知る。世界的な武器商人、中東諸国、アリスンらの思惑が複雑に交錯する中、果たしてキャシディを待つものは?斬新なタッチのサスペンス第2弾。
電話こそ知恵の根源であり、電話コードこそ人間の連帯の具現である。-現代人の絶対的交流を電話コードを通して実現しようと企てる〈電話男〉たち。現在が孕む人間の閉塞を、斬新な文体と想像力で描き出した表題作と姉妹篇「純愛伝」を収録。
天窓からの光が、いま体じゅうに降り注いでいる。「聖霊」がぼくの中に入りこんでくるーコンクリートガレージの宇宙船に乗りこんだ少年が、異界の光と交感する幻想的な都市小説の表題作ほか、無人世界の不思議な力と感応して現代文学に新たな地平を切り拓いた6篇を収録。
マイナスをすべて集めればプラスに転化しうるー思索に思索を重ねた末に辿りついた、後年のドストエフスキイの逆説の世界観がちりばめられた後期傑作8短篇。文庫本初収録。
天下統一の野望に賭けた雄将・武田信玄と、その子勝頼の主戦力、勇猛をもって鳴る武田軍団の底辺を支える無名戦士たち…山容険しい甲斐の地に生をうけた雑兵群の、戦渦に蹂躙されながらも力強く生きつづける愛と哀しみの日々。歴史長篇。
科学捜査研究所の敏腕次長・近江小四郎は、久しぶりの休日に部下の浜松技官に誘われてのんびり東北への旅へ。沼田駅に降り立った二人を待っていたのは、縄文時代の古墳から出土した美女の死体…。この事件に端を発した連続殺人は、意外な展開となって二人に迫まる…。本格推理長編!
不思議な商売もあったものだ。美女が床に臥す病人の顔に跨り、女陰を近づけ「お立ちーい」と呼ぶ(表題作、床あげ屋異聞)。他、14作品を掲載。時代のエロティシズムを軽快なタッチで描いた掌篇小説集。月刊カドカワ掌篇小説大賞受賞作。
大阪は通天閣の下、しがない芸人の集り住む一郭があった。時代の波にとり残され、二度と陽の目を見ることのあろうとも思われなかった82歳と55歳の漫才コンビに、一度だけ華やかなテレビのスポットが当てられる。身を寄せあって生きていく善意の人々の哀歓をしみじみと描いた第91回直木賞受賞作。
「おまえ俺の嫁にならんか」が仙作の口癖だった。北海道の過疎村に生まれ育った仙作は何事にも真直ぐな生き方を好んだ。たった一度の契りを交わした栗子を求め東京のウズの中にまき込まれた。栗子がくれた1枚のハガキをたよりに…。歯切れよい文体の中に濃厚なエロティシズムが勾う長篇力作。泉鏡花文学賞・北海道新聞文学賞受賞作。
「これまでにいくつか恋をして、いくつか恋を失って、そのたびに3日で立ち直ってきたじゃないか。しっかりしろ!」ジョン・レノンが死んだ日にふられた男の消すに消せない恋の記憶…。以来、すっかり落込んだ日常と輝やかしい甘美な過去を交錯させて、男に再び訪れた新しい恋の季節を、ホロ苦いユーモアで描く青春小説。
学生の透、コンピュータ・システム・エンジニアの明、駈け出し少女漫画家のあすか、長田オートの老ライダー、純正右翼少年の仁等々が、著者の豊かな感性で都市を駈け回る。十代で作家デビューした川西蘭の感受性と想像力のすべてを傾注した都市小説。
奥州街道沿いで、柳生の嫡流、権右衛門の死骸が打ち捨てられていた。胸をひと突きにした傷口は異様に丸く、左手の小指は砕かれていた。何者の仕業なのか?柳生十兵衛は、父、宗矩の命令で狭間新三郎を連れて、みちのくへ旅立つ。白石城下へ向かう途中、柳生の諜者、道哲の出迎えを受け、風流な家に案内される。だが、それは罠だった!火薬が床下に仕掛けられており、家はふっとんだ。道哲を装った男は、十兵衛もろとも死のうとしたのだ。それは真田者のやり口だった。伊達藩に真田の残党が入り込んでいる!彼らが死を覚悟で守らねばならない秘密とは、何なのか?伊達政宗の青葉城、西ノ館で驚くべき秘事が繰り広げられる長編時代小説!