1988年7月発売
曹操の策略に落ち入り、さしもの豪傑関羽も落命。だが曹操の夢には夜毎に関羽が現れ病篤く、跡を曹丕に托して死を迎える。張飛は部下の恨みを買って寝首をかかれ、劉備もまた二弟の亡霊が自分を招いているのを見て、死の近いことをさとるのだった。
南中を平定し成都に還った孔明は、劉禅を擁し中原の地をうかがうが、戦況はかばかしからず病も重い。弟子に自分の亡き跡を細かく指示して息絶える。それを知った司馬懿は進軍する。だが車に孔明の木像が端座しているのを見、仰天して逃げ出してしまうのだった。
蜀、魏、呉の創業の英雄たち、劉備、関羽、張飛、孔明、曹操、孫権らはすでに亡く、2代目以降の守成の時代となるやその活力の低下は苦しい。やがていずれも晋の皇帝司馬炎の軍門に下り天下は統一された。太唐元(西暦280)年のことである。
イスラム世界の民話・伝説が奔放不羈な空想の翼に乗って燦然と花開いた物語の饗宴アラビアン・ナイト。千と一夜にわたってシャハラザードが繰り広げる綺談のアラベスクは歓喜と陶酔の夜へとあなたをいざなう。文学的香り高いマルドリュス版の完訳。
バグダードの床屋、自称「沈黙家」が、生来の詮索好きから、恋にやせ細った若者をさんざん悩ませたあげく、自分がいかに慎み深く口数が少ないか、6人の兄を引合いにとうとうと語りだす「仕立屋の話」はまさに抱腹絶倒の面白さ。シャハラザードの話術が冴える。
回教王オマルの側女ソフィーアとは、実は海賊にさらわれて王のもとに献上されたキリスト教徒の王女にほかならなかった。復讐を誓うキリスト教徒軍と回教徒軍のあいだに、延々王家3代にわたる戦いが始まる。『平家物語』をおもわせる『千一夜物語』中の最長篇。
勇猛果敢の若き王子カンマカーンが登場。イスラム軍・キリスト教徒軍の最後の対決が迫る。前巻にひきつづいて語られる長篇物語の終幕の後は、孔雀や烏や狐など、小さな動物たちの語りだす知恵の数々が、さながら小粒の真珠のようにきらめく寓話集「鳥獣佳話」。
七たびにおよぶ航海の行く先ざき、海に陸に空に地に、シンドバードが出会う世にも怪奇で不思議な事どもと驚くべき冒険の数かず。このおなじみ「船乗りシンドバードの物語」を生み出したのは、旅に憧れ未知の世界に好奇心をもやす、古今かわらぬ人間の心だ。
正直男が曳く驢馬を歩いている最中に盗んだ泥棒の手口とは?愛人にするのによいのは青年か壮年か2人の細君のおしゃべりの結論は?読み書きのできぬ男がどうやって学校の先生をつとめたのか?愉しい21の小話からなる「智慧の花園と粋の庭」ほか。
盗みと詐欺の達人がその腕をみこまれて警察の隊長にとりたてられたと聞き、自分の評判をたてようと老婆ダリラがくわだてた悪だくみの数かずとは?バグダードの巷を舞台に、老若貴賎、男と女が入り乱れての無類に愉しいピカレスク「女ぺてん師ダリラ」の物語。
狩に出た教王ハールーン・アル・ラシードの前に現れたのは貧乏漁師のカリーフ。「どうだ、ひとつ俺の手伝いを始めて漁師の仕事を覚えないか?」王をしがない貧乏人とかん違いし、こうもちかけたが果たしてその成り行きは?「カリーフと教王の物語」ほか。
魔法のランプを手に入れたことから、魔神の助けを得て大金持となり、ついには王女をめとって一国の王にまでなるという、あまりにも有名な「アラジンと魔法のランプの物語」。時代をこえ、民族をこえて、永遠の夢を贈りつづける魔法の書物アラビアン・ナイト。
昼は夜はたらく泥棒を、夜は昼はたらくスリをと、いっぺんに2人の男を夫にした女の策略もついに露見。2人からなじられて、「では、見事な腕前をみせた方を夫に選びましょう」。そこで始まった腕くらべの軍配は?巷の民衆の姿が躍動する「羊の脚の物語」。
「開け、胡麻!」呪文を唱えるや、洞窟の岩はするすると口を開き、仰天するアリ・ババの目の前にまばゆいばかりの財宝の山があらわれたー。今も昔もかわらない、夢を抱きつづける人間の心が生んだこの魔法の呪文の物語「アリ・ババと四十人の盗賊の物語」ほか。
王子は宴から消えた美しい乙女を捜し求めて、彼女が落していった足環を町中の娘にはめさせる。アラビア版シンデレラ物語「足飾り」をはじめ11の短篇を集めた『のどかな青春の団欒』。あふれる歓喜と驚嘆のなかに人生の真理と教訓をひそませた物語の一大宝庫。
アラブ民族の歴史をはるか父祖の時代からたどった15のエピソード集「知識と歴史の天窓」など6篇。夜ごと、聞き手の心を驚きの限り驚かせ、喜びの限り喜ばせてきたシャハラザードの物語世界も、迎えていよいよ千一夜目、ここに華麗な幕を閉じる。
性に飢えた男は、狙った女を妄想の中で弄ぶ。そして、それが現実の行動に及ぶとき…。ベストセラー『生贄』シリーズに続き、警察調書をもとに迫真の描写で読者を圧倒する『暴行』シリーズの第3弾。
「行方不明になった19歳の留学生ベティを捜してほしい」-ブロンド美女のリタ・ターナーは、新宿のうらぶれた見上の事務所でそう告げた。リタに恋の兆しを感じた見上は、さっそく調査を開始した。が、唯一手掛かりであった男が惨死体で発見され、事件は意外な展開を見せはじめた。リタとのベッドまでの距離を測りつつ、調査を続行する見上の前に、やがて奇妙な宗教団体が浮かび上がった…。大好評『ニヒリズム・バーゲン』に続いて描くニュー・ハードボイルドの第二弾。
3年半の刑期を了え、出所した柴山は思わず目を疑った。かつて雑木林だった場所に中学校が新設され、強奪した2500万を埋めた欅の巨木のそばに住込みの警備員室があった。これが複雑怪奇な事件の発端となった。夜の校庭に忽然と現われた机文字〈9〉、机に彫られた〈怨〉の鏡文字、またその文字が記された脅迫状、さらに欅の下の殺人…。これら一連の事件は同一犯の仕業か、それともー。巧妙なトリックと画期的な手法で読者に挑戦する長編本格推理の傑作。