1989年10月1日発売
〈異来邪〉を名のる人物から届いた死の予告状どおり、地上80メートルの密室から消失した甲斐辰朗。4時間後、マンションの1室で発見された首なし死体は二重生活を営んでいた辰朗のものなのか。なぜ犯人は首を持ち去ったのか。息つぐ暇もなく繰りひろげられる推理戦の果てに、閃光のごとく顕れる度胆をぬく真実。
21時00分東京発ひかり323号。この最終ひかり号新大阪行グリーン個室に、毎夜乗り込む若い女がいた。そしてある夜、最終ひかり号個室で会社社長が刺殺される。現場には香水のかおりが漂っていた!その夜限りで姿を消した謎の美女を追う十津川警部の秘策とは…。新鋭車両を舞台にした最新傑作ミステリー集。
窓際の中年社員が楽しむ唯一の趣味はプロはだしのハーモニカ演奏。ブルース・ハーモニカの魅力にとりつかれた男はコンテスト会場で妙齢の婦人と知り会い、ラブロマンスに発展した。50万円のハーモニカを買うため、男は社長と業者の罠に落ちたかに思えたが…。中年社員のほろ苦い抵抗劇(表題作)。おしゃれで懐しい味の7つの恋物語。
北海道大雪山麓。苛烈な自然と貧因に怯えつつ暮らす両親と6人の子供。生活の辛さ、女教師への憧れ、淡い性の日覚め、そして何より自然と人情の美しさの中で、少年は成長していく。その目は、重い真実と胸底の暗い澱みを見据えながら、爽やかな明るさを失なわない。まさに、著者が“ぼくの原風景”と呼ぶにふさわしい感動的な長編小説である。
人生の機微、男と女の心理の綾を、心憎いばかりのみごとな筆致で浮き彫りにするショー。訳すのは、私小説の世界に新しい地平をひらいた直木賞作家。この日米の短編小説の名手がコンビで贈る“人生模様”。「心変わり」「かなしみの家」「不道徳な話」「ニューヨークの喧騒」など、珠玉の13編を収録。
読書はパスティーシュという言葉を知っているか?これはフランス語で模倣作品という意味である。じつは作者清水義範はこの言葉を知らなかった。知らずにパスティーシュしてしまったのだ。なんととんでもない天才ではないか!鬼才野坂昭如をして「とんでもない小説」と言わしめた、とんでもないパスティーシュ作品の数々。
悲惨な爆発は信じられない人為的ミスで惹き起こされた。だが、その事故がさらに恐ろしいものになることを防ぐために、幾百人もの人間が命を捧げた。献身と勇気、人間愛が、官僚性と無気力にいかに立ち向かい、打ち勝ったか、米国著名SF作家が刻明な取材と極秘に入手した資料をもとに描いた傑作長編小説。
三題噺とは客席からの出題に即席で演じる窮極の話芸。すこぶるつきの美女からお題を頂戴、文学界の真打連中が高座ならぬショートショートで腕をふるいます。吉行淳之介から村上春樹、高橋源一郎ら若手まで20人が、起承転結の妙、かくし味をピリッときかせて、読みごたえ十分。さて勝負はいかが?
親友ユミの結婚式に出席したのが縁で麻矢はユミの義兄杉原太郎と結ばれる。豪華な挙式、京都に一泊して外国へのハネムーン。麻矢は幸せだった。ところが初夜が明けると、太郎がベッドで毒死していた。初めに疑われた麻失だが、嫌疑が晴れると、再婚の太郎が過去に持った女性関係を自ら追及する…。愛をテーマにした、本格長編推理。
地球上の数十億の人間のなかからただ1人選ばれて、スーパーマンになった男。ところがこれが、高所恐怖症やら対人赤面恐怖症などなど、欠陥だらけの実験用だった!が、人類の幸福と正義のために、猪突猛進あるのみー。ハチャハチャの元祖による、珍無類、涙と笑いがいっぱいのスーパー騒動譚。
致命率70パーセント、エイズよりも恐ろしいという国際伝染病“エボラ出血熱”の男性の真性患者が東京で発見された。さらに疑似患者も次々に出た。第一次感染者と思われる女は行方不明。国立微生物医学研究所内部の人間によるウイルス漏出説を探る新聞記者は殺されてしまう。綿密な取材と完壁なデータに裏打ちされた俊英の都会派ミステリー。
奇妙な噂を追う情報の犬・堂田将司。悪徳役人をつぎつぎに暗殺する都市ゲリラ雀部隊。解放の神学を唱え浸透する新人民軍。復活祭の主役・黒いキリストにしかけられた大陰謀。俳優、ジャーナリストの中村敦夫が書下ろす国際情報小説第3弾。
外では、はじめての恋に揺れてときめくいじらしい少女。家では、手のつけられなくなったワガママ娘ーこれがあたし、結実の本当の姿。従姉の待子が兄・圭と親しくなるなんて、敵意と嫉妬を感じるわ。で、あたしはスポーツマンの大垣駿に恋する少女役を演じることにしたの。ところが大垣ったら、待子をかばうようなことばかりするんだから。あげくに、待子にデートを申し込むなんて…。
山咲秋未は高校二年生。仲良しはしっかり者の都と、美人で発展家の亜利沙。秋未自身はふたり姉妹のせいか、ちょっと内気であまったれ。だって5年間も俊彦に片想い中。浩介なんてカルイやつはメじゃないけどね。でも、そんな平凡な日々にヒビが入った。街の画廊で三田村という画家に会った母の綾乃の態度が一変したのだ。恋と友情と家庭の問題に傷つきながら少女が選んだ道は…。
私、小椋未夏は暑さにとても弱い。今日もうたた寝しながらあの夢ー雪野原でひとり立ちつくす夢、を見て泣いていた。私にはなぜかその4歳の時以前の記憶がないのだ。「そんな12年も前のこと、忘れろよ」幼なじみのかっちゃんはそう言ってくれるし、彼の兄の勇人さんも私を包みこんでくれる。でも私は逢ってしまったの。雪見ー私にそっくりな女の子に。何かが始まる…。