1989年10月発売
手始めは、少年だった。しばらくその頭を清流の中に押さえつけておくだけですんだ。次は、車の修理工。車の下敷きにするだけだった。眠っている赤ん坊はもっと簡単だ。タオルで顔を押さえて窒息死させれば事足りた…ニューヨーク州のある田舎町で、一見何の脈絡もなく人が死んでいった。いずれも事故や突然死とみなされたが,共通しているのは死者の髪がなぜかベっとりと濡れていることだった。誰が何を目的として動いているのか?事件の背後にソ連の謀略〈クロノス〉の存在を読みとった工作員トロッターと見えざる敵との息づまる対決。
真っ黒に塗りつぶされた特別検察官の報告書。それが、何度も噂に上り、疑惑を持たれ、現に証人が二人も消されている司法長官の裏金作りをめぐる調査の結果だった。政治家のスキャンダルはこうしてうやむやのまま終わることが多い。しかし、塗りつぶしのない完全な報告書を入手し公表できれば、灰色の司法長官に致命的な打撃を与えることも可能だ。テレビ記者の友人が私を呼び出したのは、そのためだった。自分の高い能力を証明するため、私はこの危険な仕事を引き受けたのだが…。一介の私立探偵がアメリカ司法長官の裏金スキャンダルに挑む。
報酬は十万ドルー選挙をにらんで、民主党の下院議員も私に調査を依頼してきた、時間も金もかかる仕事で、調査は難行していた。だが、急がねばならなかった。刑務所にいる証人にまで殺し屋の手が伸びできたのだ。証人の息子を殺した犯人たちの行方を探し出すこと。それがこの証人からすべてを聞き出す交換条件だった。情報を得た私はバハマに飛んだのだが…。新しい世代のハードボイルド『ただでは乗れない』で初登場した元ジャンキーの私立探偵トニイ・カッセーラが持てる力のすべてと男の矜持をかけて腐敗した権力に立ち向かう話題の雄篇。
夫に棄てられ心に深い傷を負い、一時の激情で行きずりの男を殺してしまったアンナ。妻との感情のもつれから鬱々として日々を送る警視バーニー。アンナの犯した忌まわしい殺人がふたりを出会わせたとき、孤独な人は互いを求めあう。…ニューヨークを舞台に愛をなくした男女の寂しさをサスペンス豊かに描き出す、血と哀しみに彩られた危検なラブ・ストーリー。
なんと美しい娘だー元ピアニストのローアルは、偶然見つけた一世紀前の写真の女を愛してしまった。彼女はなんという名前で、どんな生活をしていたのか?人里離れた山荘でひとり妄想をつのらせていく彼の前に、ある日写真と瓜ふたつの女が現れる。…人間心理の深淵を描いて並ぶ者のないB・M・ギルが、宿命の愛に溺れていく男の姿を描く心理スリラー。
黄金で造られたという名車、イスパノ・スイザ。舞姫ら、’20年代の上海を遊び尽した“選ばれたる冒険者”たちの象徴。この秘宝を巡って、東京、バルセロナ、パリ、香港、上海と、激しく渦巻く陰謀の数々…。書下し長篇国際冒険小説。
警視庁捜査一課の大谷努警部は、非番の今日、シックな3つ揃いでピタリときめて、部下兼恋人の愛くるしい香月弓江刑事と楽しんでいるホテルのロビーへ現われたのが、彼の唯一苦手の母親である。「努ちゃん、今日はお見合よ」と有無をいわせずラウンジへ。相手は杉山涼子という18歳の可愛い娘だった。息子に好意を持つ女性はみなライバルと敵視するママは、庭園を散歩する2人の後を尾けてゆく。と、突然、2人の男が涼子を襲った…。弓江も駆けつけてトリオの大活躍が始まる。「命がけのライバル」他4篇を収録。
いつの日か、常温超伝導は可能になる。自動車の歴史にまったく新しい一ページが書き加えられる可能性が見えて来た。騒音と排気を出さず、地球の環境を破壊しない電気自動車の可能性が…。超伝導現象に注目したダイハツは、独自のプロジェクトチームを組織し、超伝導蓄電池を積んだ電気自動車の開発にあたっていた。折しも開催された全行程一万八千キロ、スペシャルステージ二千キロのパリ-北京ラリー。人類と地球を愛する人々の夢は、技術の壁を突き破れるのか…。長篇カーノベル。
正義感と人情に溢れる熱血どてらい刑事・犬伏大太。故あって警察を辞め、今は気楽なフリーターだ。特異な“小便健康法”で体調もすこぶる良い。ある日、彼の住んでいるマンションの隣人・高村雲之進の依頼で、家出娘を捜すことになった。雲之進は、よく当ると評判の占師。家出人や落し物の行方を占っている。彼の占いを証明するため、大太が実地調査にのりだしたのだ。相棒は雲之進の孫娘・亜美。おっさんくさい大太を、初めは毛嫌いする亜美だったが、コンビを組むうちに…心あたたまるペーソスの世界。
タロット占いの名手・二階堂日美子の友人・京子が、柳島ロミを連れて日美子を訪れた。ロミが信仰する〈日本精霊教〉教祖の戸田芳香が不吉な予言をしているというのだ。日美子の占いでも同じ結果が出てしまった。その数日後、ロミが失踪し、日美子は名古屋の精霊教本部に教祖を訪ねるが、何ら手がかりは得られなかった。が、ロミから京子に宛てて助けを求める手紙が…。タロット日美子シリーズ、書下し長篇。
〈私〉には、奇妙な依頼がお似合いのようだ。マイケル・キスカドンという若者が、父親の自殺の動機を調べてほしいという。35年前の自殺を。だが、父親の名前を聞いて、にわかに興味が湧いてきた。パルプ・マガジンの大御所的作家ハーモン・クレイン、その人だったのだ。しかし、調査の結果でてきたのは、自殺と縁遠い作家の実像と、身元不明の“骨”だけだった…。“名無しの探偵”シリーズ待望の最新作。
エロスにはじまり死に終わる生の根源を幻想的光景のなかに鮮烈に描きだすマンディアルグ文学の極致。淫らで猥雑な行為も妖しい官能、高度のエロティシズムとして昇華する。孤高の作家マンディアルグのエロティシズム小説集。
『一握の砂』をかかえて、青春は北へ旅立った。苦汁にみちた炭鉱での少年期、そして上京後の挫折を記憶に甦らせながら…。石川啄木の軌跡に現代の青春を重ね、透明な詩情と緊密な思索が交響する青春文学の不滅の名作。
連合赤軍事件(1972)-かつて全国の学園を席券した全共闘時代の末期、ある驚くべき事件が起こった。あれから十数年、青春の熱はさめ世紀末と呼ばれる時代に、新たな銃声が響く…。セスジも凍る、オモシロ恐怖のワンダーランド。
連合赤軍事件(1972)-かつて全国の学園を席券した全共闘時代の末期、ある驚くべき事件が起こった。あれから十数年、青春の熱はさめ世紀末と呼ばれる時代に、新たな銃声が響く…。セスジも凍る、オモシロ恐怖のワンダーランド。
中国人船員・陳を射殺した日笠耕介が留置場内で自殺した。事件は犯人死亡により一応の終息をみる。だが、東西新聞の戸部新太は日笠自殺と陳殺害の真相を探り、暗黒の麻薬密輸組織の実態を掴んだ。一方、警察も極秘捜査を進め、組織の潰滅を行なおうとするが、日笠の関係者が次々と殺され、その魔手は戸部にも向けられた。迫りくる敵の罠をかい潜り、戸部が桃んだ黒幕の正体とはー?長篇ハードサスペンス。